初心者でも怖くない!リスティング広告のCPAが高騰してしまったときの基本的なフレームワーク

初心者でも怖くない!リスティング広告のCPAが高騰してしまったときの基本的なフレームワーク
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リスティング広告の運用に関わるプレイヤーであれば、誰もが抱える悩みとして尽きないのがCPAや広告費の抑制です。これらの実績値は下げられるならいくらでも下げたいですよね。

これを達成するために「入札単価をただ下げ続ける」「日別の予算を減らす」などベストではない施策が行われている広告アカウントは少なくありません。これらのような緊縮施策を闇雲に行っていても、CPAや広告費といった目標値は達成できるかもしれませんが、コンバージョン自体が減ってしまってはビジネスの拡大は望めなくなるので元も子もありません。

CPAが高騰してしまった!CPAを下げないと!と思ったときに取る行動でその後の成果は変わってきます。今一度対処法について振り返ってみましょう。


前提:ビジネスにおけるCPAの定義に相違はないか?

CPA(Cost Per Action)とは、アクション1件当たりのコスト(広告費)のことです。業界によっては、CPO(Cost Per Order)と呼ぶこともあります。このActionやOrderの部分を同じビジネスに関わる全員が共通の条件で認識していないと意味がありません。

広告主はActionを「新規ユーザーの購入」のみで考えていたのに、広告代理店は「すべての購入」でカウントしていた。ということではいけませんので、そもそも計測方針の確認からやり直す必要があります。業界・商品・サービス・会社方針によってCPAの定義が違うことはよくありますので、まずは大前提を該当のビジネスに関わる全員で確認しましょう。

全員の共通認識が確立されたところで、適正な限界CPAを下げる or 上げる余地はないのか?も確認しておきましょう。CPAの計測方針が同じでも、ビジネスのオーナーと広告の運用者で異なる目標CPA数値を追っていては広告の成果を最大化することは不可能です。

※レポートでCVと書かれた成果指標はユニークコンバージョン数なのか、総コンバージョン数なのかの確認は必須です。

CPAの因数分解から分かる改善の手段

CPAという横文字を難しく考える必要はありません。

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CPAがどのような要素で構成されているか因数分解してみますととてもシンプルで、CPA = COST(広告費) ÷ CV(コンバージョン) と表すことができます。すなわち、CPAを下げるためには分母であるCVの数を増やすかCOSTを減らすかどちらかの施策を講じれば良いということです。

CPAはCVとCOSTに分けられますが、実はさらに因数分解すると「CVR」と「CPC」に分けられます。
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アカウント構築や広告運用の際に考える指標としては、CVR(コンバージョン率)・CPC(平均クリック単価)も重要です。これを理解している広告運用者であれば、目標とするCPAからおおまかに全体の平均CVR・平均CPCを想定してアカウントを構築し、広告を運用しているのではないでしょうか。

たとえば同じようなビジネスでCPA\5,000の設定でも、以下のそれぞれのパターンでは全くアカウント構造が異なるはずです。ビジネスモデル、コンバージョンポイント、競合優位性など様々な判断材料をもとに、常に上記のような想定値があると心強いものです。

  • 想定CVR = 1% 想定CPC = \50 (費用対効果の良い配信先重視)
  • 想定CVR =0.2% 想定CPC = \10 (安く配信できる広告を広く配信)

以上から、CPAを改善するために取るべきアクションは以下のように整理されます。

CV数を増やす

  • CVRを上げる
  • クリック数を増やす

COSTを減らす

  • CPCを下げる
  • クリック数を減らす

ここからは「CVを増やす」「COSTを減らす」どちらの施策を優先すべきか、施策のCPAやCV獲得状況を踏まえケース別に見ていきましょう。

※実際にはこれら以外にもパフォーマンスに影響を及ぼす要素や個別の事情によって取るべき対策も異なる場合があります
※細かく分類すればもっとやることはありますが、ここでは代表的なものを記載しています

CPAを下げるための最善策はCV数を増やすこと。まずは「CVの多い順」に見る

お申し込みが殺到し、オペレーションが回らなくなり、結果的に質や満足度が下がってしまうようなリアルな接客が必要となるサービスECや在庫が限られている商材などを除いて、通常はCV数は増えれば増えるほどうれしい(重要な成果や収益が伸びている)はずなので、CVを増やしてCPAを改善できるパターンが最善策です。広告アカウントの中のキャンペーン・広告グループ・キーワードなどの要素をCVの多い順に並べて見てみましょう。正しくソートできていれば、同じ一手でもビジネスインパクトが大きくなる順番に並んでいるはずです。

具体的に考えられる施策としては、たとえば下記のようなものがあるでしょう。

CVが獲れていてCPAが見合っている施策のクリック数を増やす

  • インプレッションシェアを高める

インプレッション、つまり広告の表示回数を増やせれば、それに応じてクリック数も増やせます。

CVが獲れていてCPAが見合っている施策の費用を抑える

  • CPCを下げる

誤解を招かないように補足すると、CPCを下げるために入札価格を引き下げることはおすすめしません。なぜならばオークションでの競争力を下げる方に作用するため、インプレッションシェアが下がりクリック数もCV数も減少という負の連鎖となりうるためです。

では、インプレッションシェアの拡大と入札価格を引き下げずにCPCを抑制するためには何をすればよいのでしょうか?

「広告の品質」を高める

広告のパフォーマンスを改善するのに「広告の品質」は欠かせない要素です。

検索結果の順位など広告がどの位置に表示されるかはおもに推定されるクリック率やキーワードと広告の関連性、ランディングページの品質などによって評価される「広告の品質」と、入札価格の掛け合わせによる「広告ランク」に基づいて決定されます。つまり「広告の品質」が高ければ高いほど、目立つ位置や多くの配信先に掲載できる可能性が高まります。また、費用も少なく済む可能性があります。つまり「広告の品質」を高めることが、インプレッションシェアを高めることにもCPCを下げることにも繋がります。

参考:広告の品質について - Google 広告 ヘルプ

広告の品質が「推定されるクリック率やキーワードと広告の関連性、ランディングページの品質など」によって評価されるとお伝えしましたが、実際にはユーザーが検索を行ったときの背景(コンテキスト)や競合の状況などもオークションごとに加味される複雑な仕組みです。しかしながら原則的には「みんながいいと思う広告」がより上位の検索結果に表示されたり、より多くのユーザーに表示されたほうがいいですよね。

広告が表示されるユーザーにとって魅力的な広告クリエイティブか、スムーズに欲しい情報にアクセスできるランディングページになっているかを考えることが大切です。

CVが獲れていてCPAが見合っている施策のCVR(コンバージョン率)を上げる

  • ランディングページ(広告のリンク先)を改善・変更

集客した先のランディングページでのCVRはCPCと並んでCPAに大きく作用する要素です。一方で、手間も時間もかかる施策となることが多いため、ランディングページの改善が本当に必要かは慎重に判断するのをおすすめします。

以下の記事ではランディングページを改善するために、最低限押さえておきたい5つのポイントをまとめていますので、よろしければご覧ください。

ランディングページを改善するために、最低限押さえておきたい5つのポイント

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ここまでCVが獲れていてCPAが見合っている施策について見てきましたが、現状も十分に費用対効果が高く改善の余地がない、あるいは改善しても相応のインパクトが得られなさそうであれば、これ以降の施策を優先するほうが効果的です。

CVの獲得が見込める配信先を増やす

  • 掲載する検索キーワードを広げる(キーワードの追加、マッチタイプの変更)
  • ターゲットとするオーディエンス・配信先の追加・変更

CPAを下げるための二番手策は、無駄なCOSTを減らすこと。「COSTの多い順」に見る

CPAを下げたい場合、厳密には「CPAの高い順」に見ていくべきなのですが、多くのアカウントではそのようにソートすると寄与度が低いキャンペーンや広告グループが上位に並ぶはずです。そのため、ここではアカウント全体のCOSTに対してCOST寄与率が高い順に要素を並べて俯瞰することで、どこに優先的に手を加えた方がビジネスインパクトの大きい改善ができるのかが一目でわかるはずです。

具体的な施策としては、たとえば下記のように分類してみてはいかがでしょうか。

CVは獲れているが、CPAが見合っていない配信先の取り扱い

  • 広告やランディングページの内容に改善の余地はないか検討する(CPCを下げる・CVRを上げる)
  • 費用対効果の低いセグメント(デバイス・曜日や時間帯・地域・検索語句・プレースメント)を除外・抑制する
  • 入札価格やコンバージョンの目標値(目標コンバージョン単価など)を下げて調整できないか検討する

CVが獲れておらず、許容以上のCOSTを消化している配信先の取り扱い

  • 広告やランディングページの内容が配信先のユーザーにとって魅力的か
  • ラストクリック以外での成果への貢献を評価できないか(ビュースルー効果の確認、アトリビューションモデルの変更など)
  • 撤退の基準を定めて停止・除外する

CVが獲れておらず、COSTも十分に利用できていない配信先の取り扱い

  • 配信を伸ばして集客数を増やす余地がないか検討する(入札価格を引き上げるなど、インプレッションシェアの損失を減らす)
  • まずはCOSTを削ることが先決なので、一旦停止してしまう

※細かく分類すればもっとやることはあります。ここでは代表的なものを記載しています。

【注意】月額や年額での予算が大幅に削減されるようなシーンでは、CV増よりもCOST減を優先してまずはざっくりと全体の無駄なCOSTを削ってから費用対効果の良い配信先でCVをといっていくという施策の順番も考えられます。緊急度によって、優先度をうまく判断してください。

CPAが高騰しても実はリスティング広告の価値が高まっているケースも存在する

Value_4

CPAだけに踊らされない!リスティング広告の価値を引き上げる4つの判断基準」でも解説しましたが、CPAが高騰してもリスティング広告の価値が高まっているケースも存在します。それは、CPAが高騰しているがCVも大きく伸びていて、結果、損益分岐点を割り込んでいないケースです。ただし、CVや利益率によってはこのケースに当てはまらない場合も往々にしてあります。

※上図においてValue(価値)は利益、FunctionはCVとしています。

ケースごとに施策の優先順位が脳内にインプットされていれば、焦らずに一つずつ改善を進めていくことができる

CPAが高騰してマズイ…というシーンに陥ってしまった場合は、まずは冷静になって因数分解をしてみましょう。CVの数が減っているのであれば、クリック数×CVRに因数分解できるので、これらの数値に変動がないか確認、クリック数であればさらにインプレッション数×CTRに因数分解できるので、これらの数値に変動がないか確認といいた具合に分析してみましょう。ボトルネックは必ず埋もれているはずです。ボトルネックを見つけることができれば、後は今回ご紹介したケースに当てはめてみて改善施策を打っていくという流れになります。焦らずに小さな部分からコツコツと改善していきましょう。

さまざまな問題に対し、常に考えをゼロベースで行っているようでは優れたプレイヤーとは呼べません。その先に待っているのは"疲弊"だけです。優れたプレイヤーというのはこれらのフレームワークを反射的に、半ば無意識的に活用していることがほとんどです。「CPAが高騰している」という状況に陥ったら、今一度立ち止まって自分の思考を棚卸してみましょう。

この記事を最後までお読みいただいた方のアカウントがより成功し、ビジネスが発展することを祈ります。

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