【年末商戦を成功に導く】購買行動の注目すべきトレンドと課題

【年末商戦を成功に導く】購買行動の注目すべきトレンドと課題

気が付けば今年もクリスマスシーズンまで残りわずかですね。

多くの小売業者やEコマース部門の広告主の目は、来たる年末商戦に大きく注がれているわけですが、ここ数年を振り返るだけでも、2020年のコロナ禍の影響をはじめ、物流のボトルネックを経て、最近のインフレまで大きな課題が連続で立ちはだかっています。

こうした背景や買い物客の行動変化を踏まえて、今年の年末商戦のトレンドと課題にスポットを当てていきます。


Eコマースが今年の成長要因

まず、2023年の年末商戦の売上予測を見ると、状況は明るいと言えます。

画像引用元:Half of consumers plan to start their holiday shopping before November - Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics

米国のデジタル広告に特化した市場調査会社eMarketerの予測によると、2023年11月と12月の米国の小売売上高の合計は約1兆3,000億米ドル(おおよそ194兆円)と推定されています。成長率も2022年の3.9%から今年は4.5%に上昇する見込みです。

画像引用元:Holiday Shopping 2023 - Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics

もう少し詳細に見ていくと、成長の可能性は主にeコマース部門にあるようだと、上記eMarketerによって推測されています。例えば、オフライン・ビジネスが3.5%から3.0%へとわずかな減少傾向を示しているのに対し、eコマース部門は6.0%から11.3%へと比較的大きな伸びを示している模様です。

経済状況が大きなプレッシャーに

しかし、今年のクリスマス商戦に明るい兆しが見えてきたものの、それなりのハードルがあるのも事実です。というのも、現在の経済状況を受け、多くの買い物客がクリスマス予算に対して慎重になっている傾向があるからです。

コンサルティング会社アクセンチュアの調査によると、回答者の約60%が、自身の経済状況を考慮して、今年は家族や親しい友人へのクリスマスプレゼントを制限する意向を示しています。

参考:Financial Pressures Spurring ‘Creative Pragmatism’ as U.S. Holiday Shoppers Look to Make Festive Dollars Work Harder, Accenture Survey Finds

上記の今年の成長予測からするとやや矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、購買行動の詳しい変容を見ていきましょう。

画像引用元:Financial Pressures Spurring ‘Creative Pragmatism’ as U.S. Holiday Shoppers Look to Make Festive Dollars Work Harder, Accenture Survey Finds

ここで注目すべきは、クリスマス・シーズンの買い物を8月というきわめて早い段階から始めていると述べた人が多かった2022年とは対照的に、今年の大多数の買い物客(65%)がクリスマス商戦を最終四半期にシフトしていることです。

この点を考慮すると、11月と12月だけに焦点を当てた上記のeMarketerの予測値は、そもそも実態を正確に捉えている比較とは言えない部分はあります。しかしながら、このようなシフトバックは、過去約2年間の大きな困難の後、サプライチェーンが回復しているように見えつつあるというポジティブな一面は確かにあると考えられます。

参考:Global shipping costs are returning to pre-pandemic levels - The Economist

それに加えて、今年は上記のような多くの家計の緊迫した経済状況に鑑み、逆に消費が第4四半期の大型セールに集中する傾向も高く、クリスマス商戦の中心的な成長ドライバーになる可能性もあるでしょう。

カギは大型セールと柔軟な配送オプションか

アドビ社の調査も似たような傾向を示しています。今年は、特にeコマースの分野で、大規模なセール・イベントを通じて売り上げが大きく伸びる見込みが強いと想定されています。

画像引用元:Adobe Forecasts $221.8 Billion U.S. Holiday Season Online, Cyber Monday To Top $12 Billion

ブラックフライデーやサイバーマンデーなどのような大型のセールに牽引され、今年の売上総額は2,117億米ドルから2,218億米ドル(おおよそ33兆円)へと拡大すると予想されています。

また、魅力的な割引キャンペーンに加え、後払い決済(BNPL=Buy Now Pay Later)のようなより柔軟な配送オプションも、クリスマス商戦の売り上げに追い風をもたらすと考えられるもう一つの要因です。

画像引用元:Adobe Forecasts $221.8 Billion U.S. Holiday Season Online, Cyber Monday To Top $12 Billion

同アドビの調査では、今年のBNPLによる購入額は去年の145億ドルから170億ドルに拡大する見込みです。

セールにしろ、決済方法にしろ、こうして潜在顧客のニーズに応えることこそが、今年の年末商戦を前にした小売(および宣伝の)戦略の成功のカギをにぎる可能性が高いでしょう。

Z世代とのコミュニケーションは縦型ショート動画で

また、その顧客のニーズも対象のデモグラによって異なる傾向が強くなってきた、と言えます。

この中で、今年さらに注目を浴びるポテンシャルが高そうなグループのひとつがZ世代なのではないでしょうか。なぜなら、この年齢層が年々購買力を増しており、特にデジタル分野で重要な顧客グループとしての地位を確立していると考えられるからです。

参考:Generation Z: Latest Gen Z News, Research, Facts 2023

Z世代に関しては、縦型ショート動画がクリスマス商戦の重要な原動力となる可能性があります。

画像引用元:37 Holiday Shopping Statistics & Key Marketing Insights [2023]

パフォーマンス・マーケティングを専門としているTinuiti社の調査の中で、「クリスマスの買い物のインスピレーションを得るために、どのソーシャルメディアプラットフォームを利用しますか?」という質問に対して、Z世代の回答者の50%以上が(縦型ショート動画が強みの一つである)TikTok、YouTubeとインスタグラムと答えていることが興味深く、大きなヒントになっているかもしれません。

また、Shopifyの調査によると、Z世代はクリスマス・ショッピングに関して前年よりも多くの出費を予定しているだけでなく、魅力的なオファーがある限り買い物を早めに始めたいと示しています。この傾向を加味して、お買い得情報を縦型シート動画の形でタイムリーに提供するようにコミュニケーションをとれるかどうかは、ブランドにとって重要な成功要因になり得るのではないでしょうか。

参考:Americans say they’re holding firm on holiday shopping – the season starts now

顧客ニーズへのフォーカスがこれまで以上に重要に

クリスマス・シーズンまでそう長くはありませんよね。インフレなどの要因から価格に対する意識が高くなっている中で、変わりゆく買い物客の購買行動に遅れを取らないようにブランドは柔軟に応用することが、今年の大きな課題の一つと言えます。

上記で触れたアクセンチュアの調査が顧客の行動の方向性を「Creative Pragmatism」(独創的な現実主義)と表現していることがかなり印象的で、簡単に言えば経済的なプレッシャーに直面している買い物客は、クリスマス・ショッピングのコスト負担を軽減するためにこれまで以上に安価な選択肢を求めていることを表している、と捉えられます。

つまり、一見ポジティブに感じられる年末の売り上げの予測値を上辺だけで鵜呑みにせず、ブランドはクリスマスシーズンに決定的な優位に立つために、こうした「選択肢」をいかに提供できるかが非常に重要なポイントです。

そのために、オファーからコミュニケーションまでもう一度、年末の戦略を棚卸しし見直す価値がありますね。

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