医療広告ガイドラインとは?Web担当者も知っておきたい代表的なNG表現

医療広告ガイドラインとは?Web担当者も知っておきたい代表的なNG表現

2018年6月に改正された医療法により、広告規制の対象範囲が拡大されたことをご存知でしょうか。

法律は弁護士など専門家の仕事。と自分には関係ないと考えるWeb担当者もいるかもしれません。しかし昨今、法律に違反した広告代理店や制作会社が逮捕された事例も存在します。つまり、「専門家ではないので知らなかった」ではすまないのです。

そこで今回紹介するWeb担当者でも最低限知っておきたいのが、厚生労働省がまとめた医療機関における広告規制のルールブックである「医療広告ガイドライン」です。筆者も美容医療業界のクライアント支援を行う際に、広告で使用できない表現を使っていないかなど「医療広告ガイドライン」と照らし合わせながら確認していました。

参考:医療法における病院等の広告規制について

今回は、医療広告ガイドラインに掲載されている「広告でのNG表現」を分かりやすく解説します。

※この記事は、弊社の顧問弁護士による法規制に関する監修を受けて執筆しています。

錦華通り法律事務所

企業から個人まであらゆる方々の身近な法律家となることを目指し、2012年1月に設立された法律事務所です。2019年1月に志を同じくする弁護士により設立された三浦法律事務所と業務提携し、日常のさまざまな場面で発生した法律問題はもちろん、各種契約書の作成・チェック、M&A,、資金調達、企業のコーポレートガバナンス、不動産取引まで個人・法人を問わず幅広い総合的な法律サービスを提供しています。医療広告ガイドラインへの適合性の確認なども提供しています。

「医療広告ガイドライン」とは?

医療広告ガイドラインは、正式名称「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」と呼ばれます。医療業界における広告で「禁止されている内容」や「広告可能な事項」などが記載されたルールブックのようなものです。

参考:医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)

以前から「医療機関ホームページガイドライン」という名のルールブックはあったものの、法的な拘束力はなく、自主的な取り組みに委ねられていた状況でした。しかし、美容医療に関する虚偽や誇大等の広告や医療事故が増加し、利用者をトラブルから守るために2018年に改めて制定されたのが「医療広告ガイドライン」です。

これにより、従来は規制の対象外だったWeb広告やホームページなどへも規制範囲が広がっただけではなく、悪質な場合には「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」などの処分が科される場合もあります。

広告規制の対象範囲

医療広告ガイドラインに定められた、規制の対象範囲は以下の通りです。

① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
医療広告ガイドラインより引用

このように、特定の医療機関または医療従事者を紹介する、集患目的の情報が対象となります。一部、規制対象外になる媒体はありますが、広告代理店として携わる可能性のあるほぼ全ての広告媒体が規制対象であることは覚えておきましょう。

具体的な規制の対象となり得る媒体例は次の通りです。

  • チラシ
  • パンフレット
  • ダイレクトメール
  • ポスター
  • 看板
  • 新聞
  • 雑誌
  • テレビ
  • Eメール
  • WEB広告
  • 説明会

一方で、誘引性がないと判断される以下の例は規制対象にはあたりません。

  • 学術論文等:集患目的でないため誘引性を満たさない
  • 新聞や雑誌での記事:出版社が企画したインタビュー記事などであれば目的は集患ではないため誘引性を満たさない
  • 院内掲示:院内パンフレットは受け手が既に受診済みの患者等に限られるため誘引性を満たさない
  • 職員募集の広告:集患目的ではないため誘引性を満たさない

医療広告ガイドラインで禁止される代表的なNG表現

実際に医療広告ガイドラインで禁止されている表現を具体例と共に紹介します。

この記事で紹介する表現は医療広告ガイドラインで禁止されている全ての表現を網羅しているわけではありません。この記事で紹介している表現以外にも、禁止されている表現はあるので医療広告ガイドラインと合わせてご確認ください。

誇大広告

誇大広告とは、必ずしも噓ではないが、訴求を不当に盛るなどして結果的にユーザーに誤認を与える広告を指します。

違反の条件は「人を誤認させるかどうか」とやや抽象的ですが、下記の具体例を参考に自社の掲載している広告が該当していないか改めてご確認ください。

具体例禁止される理由
知事の許可を取得した病院です!都道府県知事の許可を得ての開院は、法における義務で当然であり、「許可」を誇張している
医師数○名(○年○月現在)記載時点では事実でも、その後に医師数が大きく減少した場合には誇大広告として取り扱う
顔面の○○術一ヵ所○○円実際には複数同時に実施した際の一ヵ所あたりの費用であった場合は、誇大広告として取り扱う
比較的安全な手術何と比較して安全であるか不明
○○手術は効果が高く、おすすめです科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず、特定の手術等の有効性を強調してはならない

「顔面の○○術一ヵ所○○円」の表記も複数の箇所を同時に施術する前提で実際に支払う合計金額とLPで訴求している金額との誤差があると、誇大広告に該当する可能性があるため注意が必要です。

画像引用元:医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第4版)

また、医療広告ガイドラインの遵守を文字の大きさ・色・太字等で強調する表現は医療広告ガイドラインの遵守を過度に強調する誇大広告にあたる可能性があります。同様に、「厚生労働省医療広告規制適合」などと、行政機関が制度として認証を与えていると誤解を与える表現も同様に認められません。

比較優良広告

比較優良広告とは、自らの施設・施術を他と比較して「優良」と宣伝する広告です。

医療ガイドラインには下記が比較優良広告にあたるとして明記されています。

具体例禁止される理由
「最高の医療を提供」「日本一の実績」最上級表現は誤解を与える可能性が高いため禁止
○○クリニックよりも安い他の医療機関と比較して優良である旨の内容は認められない
他院では未熟な医師が質の低い医療を提供しており、大変危険です! 他の医療機関を誹謗した結果、自らの医療が優良であると受け取れる
モデルの〇〇さんが当院に来院されました!著名人との関連性を強調する内容は比較優良広告として取り扱う
画像引用元:医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第4版)

著名人との関連性を過剰に強調する内容も、他の医療機関よりも優れているとの誤解を招くとして、比較優良広告に該当する場合があるため注意が必要です。

体験談

主観的な体験談に基づく治療や効果に関するユーザーの感想は、個々の状態により感想が異なり得るため、誤解が生じるおそれがあることから広告として禁止されています。

具体例禁止される理由
口コミサイトからの転載主観的な体験談は誤解を招く可能性が高いため記載してはいけない
当院の院長である○○も実際に体験!医療機関スタッフ自身の体験談であっても、患者等が記載した体験談と同様に認められない
口コミサイトに掲載された体験談の編集依頼医療機関からの依頼によって、体験談の内容を編集・上位表示するなどして、有利に編集している場合は医療広告に該当
利用者の直筆アンケートをWEBサイト内に画像やPDF形式で掲載画像トリミングやPDF化等の手法で加工・転載された体験談も規制の対象

下記のように、口コミサイトやSNSに投稿された個人の感想をそのままホームページに掲載したり、恣意的に口コミの内容を編集し掲載することはできません。

画像引用元:医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第4版)

一方で、第三者の口コミサイトやSNSに投稿される個人の感想は、集患目的ではなく、医療広告ガイドラインの規制範囲には含まれないことも知識として覚えておきましょう。

虚偽広告

虚偽広告は、「失敗しません!」や「都合よく加工・修正した写真等」など、ユーザーを騙すような広告です。医療広告ガイドラインでは下記が虚偽広告としてあたるとされています。

具体例禁止される理由
絶対に安全な手術です!絶対安全な手術は医学上あり得ない
厚生労働省が認可した専門医専門医の資格認定は、学会が実施するものであり、厚生労働省が認可した資格ではない
都合よく加工・修正した術前術後の写真等の掲載あたかも効果があるかのように加工・修正した術前術後の写真等は、虚偽広告として扱われる。
一日で全ての治療が終了します!治療後の定期的な処置が必要な場合は1日で終わると訴求してはいけない。ダウンタイムなど治療後の処置も含めてその期間で完了するかどうかを考慮する必要がある。
満足度○○%データの根拠・調査方法等を明確にせず、結果のみを示してはいけない
画像引用元:医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第4版)

たとえ事実であっても記載の仕方によっては、虚偽広告として医療広告ガイドラインに違反してしまう場合があります。

例えば、第三者機関による調査で「満足度○○%」という結果が事実だとしても、根拠と調査方法を並記しなければLP等で謳うことはできません。そのため、広告枠の大きさによっては記載できる情報量に限りがあるため、結果的に「事実であっても訴求できない」といったケースが出てくるので注意が必要です。

画像引用元:医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第4版)

また、「都合よく加工・修正した術前術後の写真等の掲載」は後述しますが、医療広告ガイドラインに基づき詳細な説明を併記した術前術後の写真はホームページ等に掲載することができますが、実際には施術していないフリー素材を都合よく加工した広告は虚偽広告に該当します。

ビフォーアフター写真

前述の虚偽広告のように、実際には施術していないフリー素材を都合よく加工した広告でなくとも、術前術後の写真や、施術の効果があるかのように見せる加工や修正をした「ビフォーアフター写真」はユーザーに誤解を与えるとして原則禁止されています。

具体的には下記のような内容がビフォーアフター写真にあたります。

具体例禁止される理由
ビフォーアフター写真のみが掲載され説明が一切ない誤認させるおそれがある写真等については医療に関する広告としては認められない。しかし、詳細な説明を並記した場合には客観的な事実の記載として認められる
複数の症例写真に対して説明をまとめて記載それぞれの症例写真に一つずつ詳細な説明が必要
詳細な説明を長所を大きく、短所は小さく記載全ての詳細な説明は分かりやすい場所に、見やすく掲載する必要がある
画像引用元:医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第4版)

ビフォーアフター写真は、治療内容や費用等に関する事項をはじめ、治療等の主なリスクや副作用等に関する事項等の詳細な情報を付すことで広告が可能となります。

しかし、同一の場所に明示していなかったり、利点や長所の情報と比べて短所を極端に小さな文字で掲載したりすることは認められませんので、実際の広告の内容に応じて、ユーザーに誤解を与えない対応を検討する必要があります。

「限定解除」を活用して表現の幅を広げよう

医療広告では、利用者保護の観点から「医師又は歯科医師である旨」「診療科名」「病院又は診療所の名称、電話番号」「診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無」等のいわゆる「広告可能事項」以外の事項(自由診療の詳細な治療方法など)は、広告してはならないこととされています。

そうすると、「訴求したいことが何も言えないじゃないか!」と感じてしまいますよね。

そんな時に思い出してほしいのが「限定解除要件」です。

医療広告ガイドラインでは、表現の制限によりかえって適切な情報開示を妨げてしまわないよう「限定解除要件」が用意されています。

「限定解除要件」を満たせば、表現の制限が緩和され「広告可能事項」以外の事項も掲載可能になります。

しかし、限定解除が認められるためにはいくつかの要件があるため、以下で詳しく説明していきます。

限定解除要件について

「限定解除」が認められる場合は、健康保険が適用される保険診療と保険が適用されない自由診療とで要件が異なります。

保険診療については、以下の①及び②、自由診療については以下の①~④のいずれも満たした場合のみ限定解除が認められます。

① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
医療広告ガイドラインより引用

ここでは、自由診療のインプラント治療でビフォーアフター写真をホームページに掲載するための限定解除を例に説明していきます。

画像引用元:医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第4版)

施術前後のビフォーアフター写真は、医療広告ガイドラインに基づき、原則禁止されているNG表現の一つです。しかし、「限定解除要件」を満たすことに加えて、「誇大広告」等の禁止される広告に該当しない場合に広告可能となります。

このように、限定解除の要件を満たすと、ホームページに掲載できる内容が増えるため、ユーザーに伝えられる情報量が増えるという大きなメリットに繋がります。

なお、ビフォーアフターの表現以外にも、下記の事例解説書にはイラスト付きで分かりやすく限定解除要件がまとめられているのでご参照ください。

参考:医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第4版)3.限定解除要件の 記載が不適切な 事例

医療広告ガイドラインとどう向き合っていくべきか

医療広告ガイドラインは、医療に関する広告を行う者の責務として遵守すべきものです。これは、道路交通法に基づき自動車の運転者に安全運転の義務が課せられているのと同じような役割を果たしています。

安全運転を続けるためには、周囲の自動車や歩行者に気を配るのがが重要なように、医療広告の出稿に携わる方も日々の業務において、広告を受け取るユーザーを意識し続けることが大切です。

日々の業務において広告を受け取るユーザーを意識すること、またそのために何ができるかについてはこちらのブログも合わせて参照ください。

医療広告ガイドラインは消費者を守るためのルールでもありますが、それ以上に広告主が意図せずユーザーに不利益になる行き過ぎた広告表現を抑制するための仕組みだと筆者は考えています。

医療広告に関わる方はぜひ一度、医療広告ガイドラインをチェックしてみてくださいね。

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