リスティング広告のシミュレーションとの付き合い方

リスティング広告のシミュレーションとの付き合い方
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筆者は、元事業会社でマーケティングの部署に所属し、その後その中でインハウスの広告運用、そして現在は代理店としてリスティング広告に携わってきました。これまで幾度もリスティング広告のシミュレーションをもらったり、逆に作成したりしてきました。そうした筆者の経験から、リスティング広告のシミュレーションとの付き合い方についてお話していきたいと思います。


リスティング広告のシミュレーションは困難

リスティング広告を運用している現場では、クライアントから幾度もシミュレーションを求められることがあります。運用後の数ヶ月間コンバージョン・CPAはどうなるか。新規に追加するキーワードはどのくらいコストを使い、何件コンバージョン獲得できるか。目標CPAを300円下げた場合、コンバージョン・CPAはどうなるか。

お恥ずかしいお話ですが、筆者はシミュレーションを外してばかりです。良いほうにも、悪い方にも。

3ヶ月後の日経平均株価はいくらになる?

例えばですが3ヶ月後の日経平均株価を予測する場合、いろいろシミュレーションして精度の高い予測を回答できる人はどのくらいいるでしょうか? 筆者はリスティング広告のシミュレーションもこの設問と同程度に難しいものと考えております。それはリスティング広告を形成している市場が、金融市場並に複雑だからです。

広告表示は世界中の一人ひとりの行動にかかってきます。日々新しいコトバが生まれ、使われなくなっていく言葉もあります。配信先もメディアも、リスティング広告に出稿する企業も同様に、日々変化します。それ以外にも変数はたくさんあります。

検索連動型広告では、一つひとつのキーワード毎に検索ボリュームも違えば、クリック単価、コンバージョン率が変わっていきます。そうした様々な変動要素の塊がアカウントの成果となっていくのです。

そのためリスティング広告のシミュレーションは非常に困難です。テレビや新聞でエコノミストなどの専門家たちが日経平均株価を予想している場面がありますが、思い返してみるとかなり外れているのではないでしょうか。リスティング広告のシミュレーションもそれくらい予測するのは難しいものだと筆者は考えております。

リスティング広告はリスク性の高い金融商品に似ている?

金融商品を売る場合、数ヶ月後の値動きを予測して”確実に儲かります”といった売り方はできません。リスティング広告も同様なのではないでしょうか。広告運用者として、運用によって数字を改善させる自信があったとしても、同時にリスクの存在も認識しているはずです。シミュレーションなどの数字の説明よりも、起こりうるリスクやその施策を実施すべき背景の説明を中心としたコミュニケーションを重視していくべきだと考えます。

また金融(投資)商品でもたまに怪しいものがあったりしますが、リスティング広告でも変に数字の良いシミュレーションを出すところが多々あります。投資で損しないためには金融リテラシーをつけていく必要がありますが、リスティング広告においても同様です。良い代理店を選ぶためにはシミュレーション数値だけではなく運用内容で選別できるような能力が必要となるのです。

予測するよりも作っていこう!

これまで述べた通り精度の高いリスティング広告のシミュレーションを作るのは困難です。ただ一方で、リスティング広告はいくらでも数字をつくっていくことができるのです。

シミュレーションをつくる時を思い返してみましょう。

  • あのメニューが未実施だからもう少しインプレッション数は増えるな
  • 広告文に改善の余地があるからクリック率はもっと改善するな

そういった仮説をもとに各指標や係数をいじっていると思います。つまりリスティング広告においてシミュレーションは予測というよりも仮説と言い換えることができるかもしれません。予測するものというよりは作っていくものに近いのです。

リスティング広告は数字が絡むためシミュレーションは大事です。ただここでいうシミュレーションというのは、予測のためのシミュレーションというよりは、クライアントのマーケティング目標を達成させるための思考実験(≒仮説立て)のためのシミュレーションのことを指します。

どんなに時間をかけたシミュレーションでも確実に外れます。ただいくら外れても数字を作っていくことができます。予測のためのシミュレーションに力を割くのは止め、目標達成のためのライトなシミュレーション(仮説立て)を繰返して数字を作っていきましょう。

それが運用型広告の楽しさだと筆者は考えております。

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