広告クリエイティブを制作する上で、商品・人物撮影をすることがあります。
素材サイトから写真や動画を調達することもできますが、イメージ通りの素材がなかったり、商品・社員を登場させる場合は、撮影が必要になりますよね。
「撮影機材+カメラマン+商品/出演者さえ用意すればOK」と思う方もいるかもしれませんが、準備が足りていないことで撮影当日に思わぬトラブルが発生したり、想定外の工数増加、納期遅れ……などの事態になることもあります。
そのため、撮影を円滑に進めるには、事前準備をしっかりと行うのが大切です。また、カメラマンや出演者、デザイナーなど複数人の協力が必要不可欠なので、全体を取りまとめる責任者、いわゆる撮影ディレクターを決めておくとスムーズに進められます。
本記事では、商品・人物撮影を行う前にディレクターが確認しておきたい情報や当日の流れ、撮影後にやるべきことまで徹底解説していきます。
目次
撮影ディレクターの役割
撮影ディレクターの主な業務は、以下のとおりです。
- 撮影パターンの洗い出し
- 予算見積もりやスケジュール作成
- 関係者への情報伝達、進行管理
- カメラマン・出演者の手配、撮影で使用する物品の調達、ロケ地の確保
- 撮影データのチェック
やることは多岐に渡りますが、撮影をスムーズに行い、品質を担保するために欠かせない役割です。
撮影ディレクターは、広告クリエイティブを制作するデザイナーだったり、広告運用者だったり、誰が担うかは状況によって異なります。目的に叶ったクリエイティブを生み出すために、企画から制作の全過程を統括し、関係者に的確な指示を出せる人が担当するのがベストです。
撮影前に準備しておくべきこと
あとで「あのカットも撮っておけばよかった」と慌てないためにも、いきなり撮り始めるのではなく準備をしっかりした上で臨むのが大切です。当日スムーズに撮影を進めるためには、何をしておくべきでしょうか。
広告クリエイティブ案の作成
せっかく撮影をしても、広告クリエイティブに活かせなければ意味がありません。まずは「撮影した素材を使ってどんなクリエイティブを作るか」から考えます。
作りたいクリエイティブのイメージは、以下の手順でまとめていくとスムーズです。
- 広告の目的から、訴求軸やターゲットを固める
- 伝えたいことをどうやって表現するか、見せ方を考える
- クリエイティブ案を1つのファイルにまとめる
以下のように1つのファイルにまとめることで、漏れなくクリエイティブ案を整理することができます。
静止画バナー
動画(絵コンテ)
ファイルの形式はスライドやテキストドキュメントでも差し支えありませんが、制作点数が多いときはGoogleスプレッドシートやExcelなどの表形式を推奨します。全体を俯瞰的に見たりクリエイティブの比較や複製がしやすいのが利点です。共同編集できるオンラインのファイルであれば、複数人で同時に作業したり添削することも可能です。
クライアントがいる場合、クリエイティブ案ができた段階で、一度イメージの擦り合わせをしておきましょう。特にブランドイメージ的にNGな表現はないかは要チェックです。細かくすり合わせなければ、良い画が撮れたとしても使用NGで水の泡となってしまう可能性もあります。
クリエイティブ案を考える際は、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
撮影パターンの作成
クリエイティブ案が固まったら、次に撮影パターンを作成していきます。当日は、この撮影パターンをもとに撮影していくので、以下のような情報を漏れなくまとめておきましょう。
- 画角・イメージ
- アスペクト比(縦型動画の場合は9:16、横型動画なら16:9 など)
- (動画の場合)動き
- 必要な小物、出演者
- 撮影場所
撮影に携わる関係者に共有しやすいよう、上記の情報を表にまとめていきます。
表にまとめ終わったら、クリエイティブ案と照らし合わせ、撮影パターンが網羅できているかを必ずチェックするようにしましょう。
表を撮影場所別にまとめておくと、あとでスケジュールを考える時にその場所で何パターン撮るか、どのくらい時間がかかるか把握するのに便利です。
撮影スケジュールの作成
次に撮影スケジュールをまとめた「香盤表(こうばんひょう)」の作成に入ります。香盤表には以下のような情報を盛り込みます。
- 日付
- 時間帯
- 撮影にかかる想定時間
- 場所
- 撮影内容
- 撮影に必要なスタッフ、出演者
以下のポイントでスケジュールを組んでいくと、撮影当日もスムーズに進行できるでしょう。
- 想定時間には余裕を持たせる(1シーン撮影するのに、複数回撮り直すことも多い。品質チェックの時間も考慮)
- 撮影場所への移動時間を考慮する
- 想定時間が1日でギリギリの場合は、2日に分けて撮ることも考える
- 野外での撮影の場合、日中と日が沈んでからどちらがいいか考える
- 時間が長時間となる場合、休憩の時間を確保する
- スタジオを借りる場合など、利用時間に制限がある場合は考慮する
見積もりの作成
香盤表を元に、見積もりを作成していきます。
自社の広告クリエイティブ用の撮影で、ディレクション、カメラマン、出演者などすべて社内でまかなう場合は人件費はかかりませんが、クライアントがいる場合はスタッフの工数も加味して見積もりを作成しましょう。
- 人件費
- 企画・構成・ディレクション
- カメラマン
- アシスタント
- 出演者
- ヘアメイク
- 諸経費
- 機材
- スタジオ
- 撮影小物
金額感がわからない場合は、撮影映像制作会社の相場を参考にしつつ考えていくのも良いでしょう。
クライアントがいる場合は、写真・映像の二次利用についても確認しておきます。広告素材として撮影した場合でも、コーポレートサイトやオーガニック投稿など別の用途でも使いたいという場合もあるので、どの範囲まで使用可能か、二次使用料が別途かかるのか、事前にクライアントとすり合わせておきましょう。
見積もりを関係者に確認して、合意がもらえたら撮影の準備に入ります。
撮影スタッフのアサイン・キャスティング
カメラマン、ヘアメイクなど外部の方に依頼する場合は、以下の情報を共有しておきます。
- 撮影の目的
- 予算
- 撮影日時、場所
- 撮影パターン
- 出演者の情報
また、出演者がいる場合はキャスティングが必要となります。社内メンバーであれば出演依頼のみですが、クライアント、モデルなど外部の方を起用する場合は、以下の情報をすり合わせた上で依頼しましょう。
- 撮影する際どこまで映るか(手や足など一部のパーツのみ、顔出しなど)
- ヘアメイクの必要
- キャスティング費用
- 撮影したデータの利用範囲
撮影場所の確保・ロケハン
スタジオを借りたりクライアント先で撮影する場合は、実際に見られそうであれば下見に行ってみることをおすすめします。実際に見ることで、希望の画は撮れそうか、撮影当日どの位置に何を配置していけばスムーズに進められるかなど、イメージしやすくなります。
クライアント先で撮影する場合は、撮影パターンをまとめた表を見せながら、必要な場所や映る範囲を伝え、どの時間帯なら撮影しても問題ないか確認しましょう。
自然光と人工光のどちらが良いか、照明が必要か、コンセントはあるかなども合わせて確認しておきます。
撮影道具の調達
撮影に必要な機材や小物を調達します。
クライアントの商材を扱う場合は、提供いただけないか相談してみましょう。提供が難しい場合は、商品を購入し見積もりに追加する必要があります。
撮影パターンや香盤表に記載されているだけだと見落とす可能性があるので、撮影に必要な道具や機材を一覧化したチェックリストを別途用意するのがおすすめです。
出演者の昼食や飲み物など、撮影と直接関係が無いものが必要になることもあるので、注意してください。
撮影について最終確認・リマインド
撮影に必要な準備が一通り終わったら、撮影パターンと香盤表を見ながら、当日の流れや役割、動きの確認、小物を誰が持っていくかなど、細かくチェックを行います。
天候に左右されるような場所での撮影の場合、最低でも3日前には決行・延期の判断をしましょう。撮影に関わるスタッフやクライアント、キャストなどそれぞれのスケジュールがあるので、撮影前日に中止を判断するのは避けた方が良いです。
撮影の2、3日前に、関係者全員に以下のことをリマインドしておきましょう。
- 当日のスケジュール
- 必要な持ち物
- 集合場所
- 集合時間
- 緊急連絡先
撮影当日
ここからは撮影当日にディレクターがやるべきことを紹介します。撮影がスムーズに進むかはディレクターの動きにかかっているので、事前に頭に入れておきましょう。
撮影環境の準備
撮影場所に到着したら、機材やキャストの位置確認、休憩場所の確保などをスピーディーに行います。
ディレクターだけでは手が回らないので、撮影スタッフに指示を出しながら進行していきます。また、撮影に関わる人全員が対面で会うのが初めて、ということも少なくありません。
当日の進行をスムーズにするためにも、はじめに挨拶やメンバーの紹介を忘れずに行います。
時間管理
香盤表をもとに、進行していきます。撮影場所の利用時間が決まっている場合や出演者・スタッフのスケジュールもあるので、時間が押していたらカメラマンに声かけするなどし、スピーディーに進められるよう動いていきましょう。
雰囲気づくり
雰囲気作りは撮影をスムーズに進行する上で大切です。特に、出演者がいる撮影の場合は、リラックスしてもらうことが重要なので、積極的に話しかけたり、飲み物や体調面での配慮を忘れないようにしましょう。
品質チェック
1シーンを撮影するごとに、品質チェックを行います。
あとから撮り直しとなると大変なので、本当に撮りたい画が撮れたか、余計なものが映り込んでないかなどはその場で確認しましょう。クライアントがいる場合は、クライアントにも必ず品質チェックをしてもらいます。
片付け・撤収・挨拶
撮影が無事終了したら、片付けをし、撤収します。撮影に必要なものをまとめたチェックリストを使い、忘れ物がないか確認しましょう。
また、撮影後の現場は散らかってしまっている場合も少なくないので、必ず綺麗にした状態で撤収します。
撮影後
撮影が終わったら、ほっと一息つきたいところですが、広告クリエイティブ制作までもうひと踏ん張りです。
撮影に関わった方々へのお礼・挨拶
撮影が完了したら、撮影に関わった方々へのお礼や報告を忘れずに行うようにしましょう。
自分が関わった撮影の素材が最終的にどのようなクリエイティブに仕上がったか気になるという方も多いので、撮影データの共有だけでなく、できあがったクリエイティブもあとで共有するとより丁寧です。
撮影データ共有や写真選定
写真・動画のデータをカメラマンからもらい、広告クリエイティブに使う素材を選定します。クライアントにデータの二次利用を許諾した場合は、レタッチ前のデータをまとめて共有しておきましょう。
レタッチ・クリエイティブ制作へ
カメラマンにレタッチをお願いすることが多いと思いますが、世界観を変えるような加工ではなく、綺麗に撮影データを整えてくれるだけであれば、細かく指示は出さず、基本的にお任せしてしまって大丈夫です。
もしレタッチしてもらった結果気になる部分があれば、カメラマンに調整してもらうか、デザインの段階で加工するようにしましょう。
最後に
撮影というと、どうしてもカメラで写真や動画を撮る場面が思い浮かびますが、実際は撮影前の準備が非常に重要です。
撮影当日、いかにスムーズに高品質な素材を撮れるかは、撮影ディレクターの準備にかかってくるので、今回紹介した手順を元に、しっかりとディレクションしていきましょう。