Webデザイナーも持っておきたい、成果につながるクリエイティブのための3つのマーケティング視点

Webデザイナーも持っておきたい、成果につながるクリエイティブのための3つのマーケティング視点
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自分では満足のいくデザインに仕上がり、クライアントからのリアクションも上々だったのにビジネスに対する成果は散々だった……という経験をしたことのあるデザイナーの方も多いのではないでしょうか?

Webデザイナーから広告運用の世界に飛び込んだ私は、初仕事でデザイナーのスキルを駆使して渾身の広告クリエイティブを制作しました。しかし成果では、素材サイトの画像をただ切り取ったような広告クリエイティブに及びませんでした。

敗因は、ターゲットとなるユーザーのニーズやウォンツを考えずに、デザインを整えることばかりを意識していたことです。この経験から、私は自分に「マーケティング視点」が欠けていたことを痛感しました。

デザイナーがマーケティング視点を身につけることで、よりビジネスに貢献できるデザインの提案や制作を行えるようになります。

今回は、ビジネスの成果につながる広告クリエイティブを作るために、デザイナーも持っておきたい3つのマーケティング視点をご紹介します。


マーケティング視点のないデザインのデメリット

マーケティング視点ではないデザインとはたとえば次のような例が挙げられます。

  • スタイリッシュにするために文字を小さめにした
  • クライアントの要望だからロゴを大きくした
  • 海外サイトの最新トレンドだから取り入れた

これらは、ビジネスの課題やデザインを目にする顧客のことが考慮されていません。マーケティング視点がないとデザインの根拠は弱くなり、冒頭で紹介した以前の私のような失敗を招きかねません。

ビジネス課題の解決を求められる場面では説得力に欠けていることで苦労することもあるでしょう。実際、例にあげたような根拠では「なぜそうするのか?」の問いに答えるのは難しいですよね。

マーケティング視点のデザインとは?

では「マーケティング視点」のデザインでは何から考え始めれば良いのでしょうか。販促を目的とした広告クリエイティブの制作で、僕がいつも意識している考え方をご紹介します。

クライアントの戦略を理解し、目的から考える

同じ商品の広告でも、ビジネスのフェーズや目標とする数字によって、達成のための広告クリエイティブにも違いが出ます。例えば商品が世に出て間もないタイミングで月間100件の注文を目指す場合と、ビジネスが軌道に乗って月間10,000件の注文を目指す場合とでは、適切な商品の見せ方や必要なリーチ人数にも違いがあるはずですよね。

広告のターゲティングを絞り込み、広告クリエイティブの訴求もターゲットとなる人物像に合わせることで、一般的にはコンバージョン率は向上します。しかしターゲットや訴求の絞り込みによって一部の人にしか関係のない内容になってしまうことで、規模拡大を目指す場面では逆効果になってしまうことがあります。目標達成の観点では、必要に応じて広告のターゲティングを広げ、訴求も抽象化するべき場面もあるのです。

絞り込みの発想ではターゲットが「働く30代の母親」でも、拡大の発想では「アクティブでいたい全ての人」にするべきかもしれませんし、訴求もターゲットに合わせて適宜抽象化するべきこともあるでしょう。もちろん絞り込みが悪いわけではなく、限られた予算内で最大限費用対効果を高くしたいなどの状況では、広告のターゲティングや訴求を絞り込んで出来る限り見込み客に近い人に優先的にリーチすることが有効です。

どこまで絞り込みや拡大をするべきかは、ビジネスのフェーズや目標とする数字の他にも、ブランドの立ち位置や商品自体の設計などに大きく左右されるため、デザインだけで完結する話ではありません。しかし最終的に見込み客の目に触れるデザインに、目標とのギャップを生じさせないためにも、デザイナーの想像だけで制作するわけにはいきませんよね。デザイナーも積極的にビジネス目標や広告の目的を把握し、どのようなコミュニケーションであれば目標達成できるのかから逆算して制作することが大切です。

ターゲットから考える

広告配信の目的が明確になっていれば、自ずとターゲットも決まるでしょう。ただしターゲットから考えるといっても「女性向けだから色はピンクで丸みを……」のようにデザインを起点にするとマーケティング視点を失ってしまいます。

広告がターゲットに受け入れられるために、どのメディアに、どんなメッセージを、どのような表現で伝えるべきなのでしょうか。


フリマアプリの『メルカリ』では、非スマホネイティブ世代である40代以上の顧客を獲得するために、折り込みチラシというメディアを選択し、デザインも元々のイメージとは全く異なるチラシ特有のものを取り入れ、大きな反響を得ることに成功しています。

『メルカリ』という名前自体は聞いたことがあるけど、実際にどんなものが売られているのかわからない」と考える非スマホネイティブ世代に対してサービスを訴求するには、折り込みチラシが有効だと考えました。

また、「『メルカリ』×折り込みチラシ」という組み合わせから生まれる違和感や驚きが、実際に折り込みチラシを手にした家庭内で会話のフックになることにも期待しました。「『メルカリ』知らないの? スマホにアプリを入れてあげるよ」といった親子のやりとりが起きるかもしれないですよね。そうした考えから、今回の施策を仕掛けることになりました。

(中略)

弊社は、クリエイティブにおいてはタッチポイントに即した表現を選択することが重要だと考えています。そのため、折り込みチラシの文脈に合った表現方法を採用しました。

引用元:メルカリが「折り込みチラシ」を配布した理由/ネットで話題を生むために仕掛けたクリエイティブとは?

ターゲットから考えるからこそ、彼らの懐に潜り込むような自然に受け入れてもらいやすいクリエイティブが発想できるのではないでしょうか。もしこれが「イケてるフリマアプリ」として折り込みチラシをしてもここまでの効果はなかったのではないかと思います。

商品のポジショニングから考える

もし牛丼屋の広告を制作することになったら、何から考えはじめるべきでしょうか。「美味しそうに、お得そうに」や「食欲が刺激されるよう赤や橙を基調に」といった具体的な表現から考え始めるのではなく、まずはポジショニングから考えてみましょう。

ポジショニングは、ビジネスで優位に立つために自社をどのように認識してもらうかの戦略と言い換えることもできます。牛丼屋で例えると『吉野家』と『すき家』の商品は機能だけを考えれば同じ牛丼です。しかし両者はポジショニングに違いがあり、その差が広告にも表れています。

吉野家の広告は若い男性が牛丼をかき込むような描写で、一人向けで安い・早い・美味いといった印象を受けますよね。一方、すき家の広告は家族が来店してそれぞれの好みに合ったメニューを注文していたり、女性がテイクアウトして楽しむ描写になっています。商品を通して誰のどのような課題を解決するのか、どんな人にどう認識してもらいたいのかといったポジショニングが違えば、同じ商品でも全く違う広告になるのです。

この差を認識しないまま具体的な表現から考え始めてしまうと、自社のポジショニングとズレたものになってしまいそうですよね。まず「どんな人に何を伝えるための広告なのか」を確認し、その次に「どのような表現で伝えると効果的か」の順序で検討すると良いでしょう。

このような考え方はマーケティングのフレームワークを通して学ぶことができます。フレームワークは万能ではなく状況により活用できたりできなかったりするものですが、頭に入れておくと必要な場面で思い浮かべることができるでしょう。まずは担当する案件を思い浮かべながら一通り目を通してみるのもお勧めです。アナグラムのブログでもいくつか紹介しています。

広告主のビジネス理解を深めるために、広告運用者が押さえておきたいフレームワークと情報収集法

最後に

「Webデザイナーもマーケティング視点を持つべきだ」

Webデザイナーとしてある程度長く活動されている方であれば、そんな言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。筆者自身も、前職で8年間Webデザイナーとして働く中でよく悩み、結局在職中にその悩みが解消されることはありませんでした。

運用型広告はマーケティングの一部であり、バナーやランディングページといったデザイン・クリエイティブ制作などWebデザイナーの業務内容との親和性が高いです。そのため、Webデザイナーがマーケティングに踏み込むのにうってつけの領域だといえます。

デザイン制作のツールや最新トレンドといった制作プロセスに熱量を持っていることは、デザイナーにとって非常に大切です。しかしマーケティング課題の解決を求められている場面では、それらだけでは太刀打ちが難しいこともあるでしょう。本記事で取り上げたような「マーケティング視点」が有効な場合もあるのです。

この記事が、マーケティング視点を身につけたいWebデザイナーさんの助けになれば幸いです。

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