「”やりたいこと”はあって当然?」就活生に伝えたい、陥りがちな5つの思い込み
「"やりたいこと"って一体何だ?」「会社ってどう選べばいい?」「何者かになるにはどうしたら?」

考えても考えても、「これだ!」という答えになかなかたどり着かなくて悩んでいるそこのあなた。もしかするとそれは「一般常識」という思い込みが邪魔しているせいかもしれません。ではその「思い込み」に気づくためにはどうすればいいのか?もっとも身近な解決方法は、経験者に学ぶことですよね。

これまで多くのインターンや新卒メンバーを受け入れてきたからこそお伝えできることもあるはず、ということで人事の私が「当時、就職活動で悩んでいたこと」を代表・阿部にぶつけてみました。

思い込み①「やりたいこと」はなくてはいけない?

―――就活を始めるときに「自分の”やりたいこと”って何だろう」とウンウン唸ったことを覚えています。まず、やりたいことってどうやって見つけたらいいですか?

まだ見つかっていないなら、いろんなビジネスに触れてみたら良いと思います。その中で「悪くない」と思えることが見つかればそれがヒントになる。「好き」とまで言えなくても、「悪くない」なら意外と見つかりますよね。その感覚を集めて重なるところを探したら、なりたい自分もそのうち見えてくると思いますよ。

―――阿部さんもそうやってやりたいことを見つけたのでしょうか?

いえ、カミングアウトすると、私の根源的なエネルギーはすべて反面教師です。あの人のようには、あの経営者のようにはなりたくない、という思いが原動力だったんですよ。当時、強烈な「こうなりたい」という欲求がなかった代わりに、「こうなりたくない」というものはリアリティを持って語ることができました。

―――なるほど、「反面教師」からのアプローチもありなのですね!

あくまで「やりたいこと」が明確でない場合の選択肢として有効である場合もありますよ、という意味ではそうですね。

そもそも、最初から「なりたいもの」「やりたいこと」が明確な人なんて一握りで希少種なんですよ。希少だからこそ、成功した有名人の物語はコンテンツになります。ましてや、彼らは掲げた目標を自らの強い意思で成し遂げた人達なわけで。その上で語られる言葉なんて、それはそれは説得力を持って響いてくるでしょう。結果、やりたいことが明確にあることが当たり前だと勘違いする人が多発してしまう。

私に言わせれば「やりたいことがあって当たり前」という風潮は一種のハラスメントですね。

―――「やりたいこと」の強要はハラスメント…少し気持ちが楽になりました。この言葉に救われる人はきっと多いのではないでしょうか。

思い込み②「何者か」にならなくてはいけない?

―――では、現時点でやりたいことが見つかっていない場合、どう仕事を選んだらいいのでしょうか?「やりたいことを見つけて何者かにならなければ」という観念に囚われて焦ることは(就活生に限らず)誰しもあると思います。

まず、何者かになろうとしなくていいと思いますよ。現に、いま何かの職業で名を馳せている人も、おそらく「何者かになること」を目的にやっていたわけではないですよね。あくまで結果としてたどり着いた境地に過ぎない。だから、これも一種のハラスメントであり、ミスリードだと思っています。だって、すでに皆さんは「何者か」として存在しているんですから。

―――たしかに、人は職業だけで決まらないですよね。「何者かになれ」というメッセージは裏返すと「まだ人間じゃない」と言われているようで息苦しいのかもしれません…

そう。20代前半~60代後半までの約50年間、1日24時間のうち8時間としても、人生において働く時間は全体の1/4くらいにすぎないわけです。

仕事以外に費やす時間の方が残り3/4で多いのに、1/4の中で「何者かになれ」というのがまずおかしいですよね。

―――ほ、ほんとうだ…!仕事が人生に占めるウエイトを考えても、論理的に破綻してますね…

だから、質問に対する答えとしては、「どう生きたいか」「誰と生きたいか」で決めたらいいと思います。例えば、良い服を着て、良いご飯を食べて、良いお酒を呑んで、広い家に住みたいとする。そしたら当然その分のお金を稼ぐ必要がでてきますよね。だったら、そのために何が必要か逆算して考えたらいいんです。

仕事はあくまで、自分のこだわりを守るための手段であるべきものですし、場合によってはアイデンティティを発揮する場所ですが、それも本当に人それぞれになると思いますね。そうなると究極、職業なんて何でも良いといえるかもしれません、ちょっと乱暴ですけどね。

思い込み③「自分のために働く」のは良くない?

―――でも、自分の望む生き方を実現する手段として仕事を選ぶとなると、その動機は利己的なものになってしまいますよね。アナグラムでも、入社のオリエンテーション時に「自分のために働いてください」と言われたのが印象的でした。一方で、実際の業務としてはお客さまのためにビジネスの支援をしています。これって矛盾せず両立するのですか?

何の矛盾もなく両立しますね。前提として、すべてのビジネスパーソンは「自分のために働くべき」だと思っています。一方で、これは実体験からですが、「自分のために」はあくまで入り口であり、一過性の状態であることが多いんです。

それを突き詰めていくと「自分以外の誰かや何か」に行き着くと半ば確信を持って言えます。なぜかというと、自分本位にお金を稼ぐだけだと、やがてつまらなくなってくるときがくるからです。

―――「自分のため」に働き始めても、「自分のため」のままだとつまらなくなる、ですか?

もちろん、自分が幸せでないと他人を幸せにはできないので、そういう意味で自分の欲を満たせるだけの成果を出す必要はあると思います。だから入り口の動機としては何の違和感もないですね。

ただ、一生それだけではモチベーションが続かない。

幸福度はお金があるほど上がるとは言い切れませんし、欲求には終わりがありませんから。例えば、お金があって、平日暇だとします。でも周囲の友人たちは働いているので誰も遊んでくれない。そんな日々はつまらないですよね。そうなったら、周りにちゃんと矢印を向けていかないと、心穏やかには生きられないとわかるはず。本当の幸せは独りよがりでは成立しないといつか気がつくときが来るんですよ。

―――なるほど。「自分のため」というモチベーションは、ひいては一緒に生きる人のため、一緒に働くひとのため、社会のため、に発展する可能性を秘めているのですね。

そうです。それが「抽象度が上がる」ということですね。これについては社内でもよくレンガ職人の例え話を用いて話すことがあると思います。簡単に教訓だけ要約すると、同じ仕事をしていても、視座や視野の違いで数年後大きな差が開くという内容です。

少し話はそれますが、これはスティーブ・ジョブズの「Connecting the dots(点と点を結びつける)※下記に引用」とも通ずるところがあります。

将来を見据えて点(出来事)と点(出来事)をつなげていくことはできない。過去に打ってきた点(出来事)のつながりや意味は、時間が経って振り返ったときにしか見えないのだ。だから、たとえそのときにはわからなかったとしても、苦難の時期にもたらされた縁や学びは後の人生に大いに役立つのだと信じなければならない。

by スティーブ・ジョブズ(2005年、スタンフォード大学卒業式にて行われたスピーチより)

というのも、一見関係のない事柄同士であっても、抽象度を上げて捉えると一連の真理として線になってつながるときがありますよね。

目の前の仕事から最大限学び続けることで、ある日突然本当にやりたいことを見つけることもある。実際にそうやって卒業(退職)していった社員もいて、もちろん当初は葛藤※もありましたが、今では折り合いをつけてその選択を心から応援しています。

※退職についての考え方は「離職に向き合う」という記事でお話しています。興味があればぜひ読んでみてください。

思い込み④「就活に失敗したら巻き返せない」?

―――先ほど転職の話が出ましたが、そうは言っても「最初の就職に失敗してはいけない」という固定観念は、終身雇用制度の崩壊を何度説かれても拭いきれないほど強力だと感じます。どんな心持ちで就活に臨めばいいですか?

「最初の就職を成功させたい」または「転職も見越して長い目で潰しの効くスキルをつけたい」と思う気持ちはわかります。ですが、永遠に潰しの効くスキルなど存在しないので何を選んだとしても常にアップデートを重ねていかないとなりませんし、その仕事と合うかどうかなんて実際のところやってみないとわかりませんよね。

その上で、やりたいことがあればそれをやってみれば後悔は少ないですし、やりたいことがまだない場合は、「悪くない」と思えて自分と合う確率が高そうなものから試していく、くらいの気持ちでいいと思います。

それに、これから社会に出ていく段階だと信じられないかもしれませんが、数回転職したという事実だけが大きくマイナスに作用することは意外とありません。現にアナグラムでも、転職回数だけでジャッジはしていません。

―――転職はあくまで一つの出来事に過ぎないですよね。背景も理由もわからない段階では何も断定はできないと思います。

そうなると、なおさら本来一回で最適解を引き当てなければと気負いすぎる必要はないんですよね。長いキャリアの中ではポジティブな理由で場所を移すタイミングだって出てきます。例えば、別のやりたいことが見つかったり、次のピースを埋めるために必要だったり、コンフォートゾーンからの脱却だったり、それを実現する手段が転職であることも往々にしてある。

キャリアを通して幸せを形造る上では自分の感覚がすべてです。「何があると心地よいか」を測るものさしはどこまでいっても自分の中にしかありませんから。であれば、自分の目で見て情報を集めていくのが遠回りなようでいて実は近道なのは明白ですよね。

―――現段階でまだ”やりたいこと”が見つかっていないのであれば、「悪くない」の感覚を頼りに仕事を選ぶことで、いつか線になるかもしれない点を打っていけばいいのですね。

逆に言うと、”やりたいこと”が見つかっている場合、「新卒」という最強のカードを切って入社にトライするのをおすすめします。今の日本では新卒カードは事実上のジョーカーとして利用することもできます。行きたい会社が中途採用では絶対に入れない場合などは、迷わず挑戦してみるのがいいですね。

思い込み⑤「就活の成功」とは「“良い”企業にはいること」?

―――キャリアが最初の就職で決まらないのであれば、どの選択も即「失敗」になることはないということですよね。それでも、この先にやりたいことが見つかったときの成功確率を少しでも上げておくために、今どうやって企業を選んだらいいでしょうか?

「どう生きたいか次第なので人による」ですね。ただそれでは埒が明かないので、極力多くの可能性を射程圏内に入れておける選択が良いと思います。なぜなら、誰であれ年齢を重ねると選択できる範囲はどんどん狭まっていくからです。

―――多くの可能性を残しておける選択…具体的にはどんなイメージでしょう?

学生時代であればいい大学に行くのが鉄板ですよね。また、社会人であれば競争の激しい企業に新卒カードを使うのも選択肢を広げる可能性が高いです。

✕✕大学卒、○○株式会社出身、元△△株式会社マネージャーというのを見たことがある人は多いはず。企業の知名度はあらゆる説明コストを下げるので、射程圏内を広げておきやすいからです。

もちろん、「どの企業に入るか」より「そこで何を経験して得るか」が大切なのは大前提ですけどね。やりたいこと、なりたい姿が明確でない場合に人生の選択肢を広げておくことは、とても大事なことだと思います。

―――では、選考を受ける企業はどう絞っていくべきですか?業界、組織の規模、事業の規模、給与などいろんな軸がありますよね。

自分の「悪くない」の感覚を頼りにすれば自ずと絞られてくるはずです。また、「悪くない感覚を見つけられる環境」を軸に探していくこともできます。例えば、代理業の会社であれば、クライアントの支援を通して世の中にある数多くのビジネスに触れられる。

さらに、アナグラムの場合は1社1担当者制のマーケティング支援会社という特性上、決裁者の近くという一等席で、上流から下流まで目の当たりにすることができます。やりたいことをつかむためにも、自分にしかできない仕事を作るためにも、幅広い業種のクライアントに関わる経験は大いに役立つはずです。

未来の武器を増やすことにもつながるので悪くない選択ではないでしょうか。その中で特定の分野に詳しくなって頼りにされるようになれば、それがキャリアの軸になっていくかもしれません。

―――まだやりたいことが決まっていなければ、それを逆手に取って企業選択につなげることもできるとは...!最後に、後悔なく就活を終えるために何かヒントになることはありますか?

まず、親はドリームキラーになりうるということです。愛するがゆえに多くの助言をくれることはあると思いますが、それが今も正しいとは限らない。親が知っているのは、親の時代の正解であって、今の時代の正解ではありません。

さらに、幸福度を最も上げるのは所得でも学歴でもなく、「自己決定」だというデータがあります。

出典:西村和雄, 八木匡(2018)「主観的幸福感を決定する要因の重要度」

きっとどんなキャリアを選んでも、いつも順風満帆とは行きません。そして転んだ時に、自分の力で立ち上がれるのは自分で決めたときだけですよね?

キャリアとは自分の幸せを探す長い旅のようなものです。であれば、「自分で決める」以外に後悔のない選択はありえないと思いませんか?

ここまで読んでくれた方へ

就活中のあなたにとっての”常識”はもしかすると、社会人になり数年経ったあなたにとってはまったくの”非・常識”になっているかもしれません。

先人から言葉をかけられても、渦中にいるときに腹落ちさせるのは難しいものですが、あなたが自分なりの幸せを見つける旅のヒントになる内容があればうれしく思います。

アナグラムではカジュアルな会社説明会として代表・阿部との座談会を開催します。

満員御礼!定員に達したため応募を締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございます。

※zoomにて開催。途中参加・退室OK、耳だけのご参加もOK。

訊いてみたいことがあるという方、お話してみたいという方、参加してみませんか?

中途の方向けのMeetupも適宜開催しています。