課題を見つけるには「より良い世界を知ろうとする」こと。現状に満足せず、常に何か足りないと思い続ける菅原さんの考え方

自分にとって背伸びするような環境に身を置くことはプラスに働く

ーー菅原さんは確か前職から運用型広告のお仕事をされてたんですよね。どういった経緯でこの仕事に携わるようになったのですか?

気づいたらいつの間にか、という感じですね(笑)。新卒では比較サイトなどを運営しているWEBサービスの会社に入社しました。そこでは最初から広告運用をガッツリやっていたわけではなく、プロモーション担当として運用型広告をはじめ、アフィリエイトやLPO、アクセス解析など幅広くみてました。

たとえばASPさんを介して広告を掲載してくださるメディアさんを開拓したり、当時はスマホ普及期で、アクセス解析を見るとスマホからの流入がぐんぐん伸びてきていたので、スマホ専用LPを用意して数値を伸ばしたりなど。ただ担当していたサービスの一番大きなチャネルがリスティング広告だったので、いろんなことやりつつもリスティング広告に一番リソースは割いてました。神の見えざる手じゃないですけど、前職の方々が菅原に適性あるのはコッチなんじゃ?と配慮してくれた結果、最終的にはプロモーション担当から運用型広告専任のポジションに行き着いたのだと思います。

ーー最初はインハウスマーケターのキャリアからスタートされたんですね。アナグラムは代理店ですが、インハウスと支援側の両方を経験されていたということで、そこに違いを感じたりしましたか?

実はあまり違いを感じていなくて。というのはインハウス運用とアナグラムの運用スタイルが似ているからかもしれません。

ーーアナグラムのスタイルと似ている?

はい、管理画面上の数字にとらわれないというか。全体視点・ビジネス視点を持って広告運用に取り組んでいるのが近しいなと感じています。

インハウス時代はコンバージョンの件数やCPAは数値目標としてありつつも、”コンバージョンのその先”みたいなものは意識させられました。たとえば営業さんが件数を握って契約をとってきたのであれば、CPAを多少上回っても件数を確保するために入札を強化したり、全体の数値は好調でも特定地域の件数が足りなければCPAに傾斜をかけて調整したり。管理画面のコンバージョンは”見積もり完了地点”なのですが、実際は追っていくものは”成約”になるので経路別に成約率を見たりしてました。

結局、運用型広告で追う数値やらはビジネスフローの中の一部でしかなく、いくら管理画面上の数字を改善したとしても、最終的な利益を増やすことにつながらないと意味ないんですよね。管理画面上の1つ1つの数字がビジネス全体で見た際にどういう位置づけなのか、そうしたビジネス視点を持って運用型広告に取り組むことは当時も今のアナグラムもそこまでかわらないと思っています。

ーー支援側にいてもすごく大事な考え方ですよね。インハウス運用や事業主側のご経験がある方は、全体で最適化していくという考え方が染みついている方が多い気がします。

そうですね。なのでもしインハウス運用者が代理店に転職するなら、アナグラムはとても合っていると思います。タイヘンそうに思われる代理店稼業ってイチ業者みたいな付き合い方の場合かと思います。一方アナグラムの場合はパートナーというか、クライアントさんのマーケティング部の一員のような立ち回りを期待されますので、インハウス経験はめっちゃ活きると思っています。

ーー1社目からアナグラムへ転職されたわけですが、菅原さんはリファラル(従業員からの紹介)での入社ですよね。誘われたときに迷いはなかったですか?

正直、迷いました。はじめての転職でしたし、当時からブログを読む限り、外から見たアナグラムは広告運用者の猛者たちの集まりのような印象で(笑)。

ーー猛者(笑)、たしかにそんな雰囲気ありましたね。

はい。紹介してくれた森野さんからも「大丈夫だよ~☺」と話は聞いてはいたもののイマイチ信用できず(笑)。

ただ自分の過去を振り返ると、昔から周りに引っ張られて成長してきたんですよね。学生時代は高校も大学も背伸びしたところに滑り込み、底辺からスタート、なんとか周りに食らいついて卒業までにはある程度のレベルまでは行くという。前職でも取締役など上の方々との距離も近く、優秀な方も多く、おかげさまで上司も5年近くで10人くらい変わって(笑)、いろんなことを教えてもらえたように思います。

そんな経緯もあり、多少自分にとって背伸びするような環境に身を置くことはプラスに働くと思い最終的に決断できました。あとはブログなどで発信している内容やスタンスが自分が目指していきたいものと近しかったのも後押ししたかもしれません。

ーー実際に入社してみてどうでしたか?

外から見ているときは、アナグラムの中にだけある魔法の杖的な秘密のノウハウを使って成果をあげているのだと思っていました。なので自分も「入社すればそのノウハウを手に入れてすぐに結果が出せるぞ!」と思ってたんですけど、魔法の杖はどこにもなかったですね(笑)。もちろん原理原則の理解や、ツールを使いこなすことなど、多くの面において以前よりも高いレベルでおこなってたのは確かなんです。ただそれ以上にみんなひたすら頭を使って考え、泥臭くやっているだけでした。考えることなど本質的なことに時間を割ける体制や仕組み作りが魔法の杖だったのかもしれません。そうした環境を提供してくれる会社に感謝です。

課題を見つけるには「より良い世界を知ろうとすること」

ーー以前菅原さんが全社に向けて勉強会をした際に、広告運用をBTC(Bidding,Targetting,Creative)で考えているというのをおっしゃってましたよね。普段当たり前にやっていても、体系立ててアウトプットできるのってすごいなぁと思ってました。

ビットコインじゃない方のBTCですね。広告運用をビッディング(入札)、ターゲティング、クリエイティブの3要素で理解しておくと捗るよー、ってヤツで、実はこれ前職の新卒向けの研修に用意した内容が元ネタなんです。前職では運用型広告を体系的に学ぶ機会もあまりなく現場で覚えることが多かったりと、広告運用の勘所を掴むまではけっこう苦労していたと思います。そんな自分でも複雑に思っていた運用型広告を新卒に人たちにわかりやすく教えるにはどうしたらいいか、いろいろ考えて生み出したのがBTC理論です。

広告運用ってなんか複雑なことをゴチャゴチャやっているように見えるけど、要は入札をいじるか、ターゲティングをいじるか、クリエイティブをいじるか、なんですよね。だいたいはこの3要素で整理できる。当時は、町の引越し屋さんが広告を出すとしたら、を例にTVCMと運用型広告を比較しながら運用型広告の研修を実施しました。TVCMに比べ運用型広告であれば、引越しをするタイミングの人にだけリーチできるからターゲティングが自由だし、予算や入札単価も出せる範囲でオークションに参加できるからビッディングも自由だし、広告文も柔軟に変更し改善できるからクリエイティブも自由。たしかそんな感じの説明をしました。

ーーそんな経緯があったんですね。たしかに教える立場になると自分の頭の中でふんわり理解していたものを強制的に言語化していく必要が出てくるので、これまでの知識を整理するいい機会になりますよね。

そうですね。教える側を経験して自分自身も成長したように思います。

BTCの3要素で整理できるようになってから僕自身の仕事も捗るようになりました。分析をする際や、見つけた課題に対処する際もビッディング(入札)、ターゲティング、クリエイティブの3要素で探し、解決していくことになります。また新たな機能が出たり消えたり、微妙に名前を変えて刷新されたりと、運用型広告の世界って移り変わるがとても早いと思います。そんな時に理解力・記憶力に乏しい僕は、このBTCの3要素で整理することで理解が早まったり記憶の定着ができるものだと感じてます。一つひとつをバラバラに理解していってたら間に合わないので、それらを整理するフォルダを作っておけば後から引き出しやすいですよね。

また『ターゲティング』に関する個別の機能やメニューは出ては消えを繰り返しますが、『ターゲティング』という概念そのものはなくなることはないので、それぞれの機能を固有名詞として具体的に記憶するのではなく、こんな風なターゲティングができる機能なのね、みたいな覚え方をします。「ターゲティングをなんとかしなきゃ」という意識だけ持っておけば、細かい機能とかその時に調べていくのでも最悪なんとかなるのではないかなと思ってます。枝葉のトピックはコロコロ変わりますが幹部分は変わらないものだと思ってます。

ーー菅原さんといえば、ひと味もふた味も違ったブログを書かれていますよね。ブログを書く時やネタはどのように考えているのですか?

社内のメンバーやクライアントさんに対して伝えたいこと、言いたいことをネタにすることが多いですかね。『施策に行き詰まったら管理画面から離れてみよう。』はメンバーに教えていく中で、ずーっと管理画面とにらめっこしながら行き詰ってる様子を見かけたので、「管理画面を見て解決できることもあれば、見ても解決できないこともあるよ!」というのを伝えたかったんです。

あとは”考えている状態”になっていなくて”悩んでいる状態”のメンバーがいたので「まずは、課題をちゃんと見つけようね」というのを伝えるために『問題解決は課題設定能力が9割』という記事も書いたりしました。まぁ一番の想定読者は勘所が掴めず苦労していた昔の自分なのかもしれません。

ーー『問題解決は課題設定能力が9割』の記事は個人的にもすごく好きなのですが、改めて菅原さんなりの課題設定のコツってありますか?

課題を見つけるには、”より良い状態”を具体的にイメージできることがまず大事だと思うんですよね。理想とする”良い状態”と現状のギャップが認識できて初めて課題に気づくことができますから。

ーーなるほど。もし今の仕事や担当している案件に対して「やりつくした」と感じてしまっていると危険信号かもしれないですね。

そうですね。「やりつくした」「現状がベストで、これ以上いい状態はない!」という認識だとそれ以上の進歩は生まれないと思うんですよね。なので記事を読むなり、人に話を聞くなり、なにかしらの行動を起こしてより良い世界と出会えるよう努力をすることが大事ですね。


また”より良い世界”みたいな大それたコトバを使ってますが、実際は”ほんのチョットいい状態”くらいを目指せばいいかなと思っています。壮大な理想や目標だとどこか他人事に思えて臨場感を持ちづらくなってきますが、チョットいい状態であれば現状と地続きであると思えるので、頑張って辿り着こうとヤル気も出てきます。宇宙旅行よりも熱海旅行に行きたい感じですかね。

ーー熱海旅行……、わかるようなわからないような(笑)

より良い世界を見つけるにも、ただ単にミーハーでいればいいのだと考えてます。たとえば社内のSlack(社内のコミュケーションチャットツール)でも良かった記事や媒体アップデート情報、各案件での気付きなどが日々共有されてますが、何か面白い情報ないかなっていろいろ覗くのでも課題は見つかっていくと思うんですよね。

「ほうほう、こんな機能が出たのか」「他の人はこんなことやって成功したのか」「じゃ、試してみようか!」みたいな。チョットいい世界を見つけたら、今の自分にどこか”たりない”感じが生まれてくる、つまり課題が見つかってくるので、そこから実際の行動につながってくるのだと思います。

ーーそういう意味ではグロースハックはまさに自分自身の課題を発見する場ですよね。毎週参加するたびに「他の人はこういう視点で考えているのに、自分にはその視点がなかった!」と気づいてます。

そうですね。自分からの視点では完璧に思えていたアカウントでも、いろんな人に見てもらうことで岡目八目的にいろいろ改善点が見つかりますよね。グロースハックはたくさんのメンバーが参加するので、得意領域が全然違う人や、商材のターゲットに近しい人など、自分以外のいろんな視点が得られるので新たな課題を発見するいいチャンスですね。

ーー菅原さんは安定してクライアントさんから信頼を得ている印象がありますが、信頼してもらうために意識していることはありますか?

安定してるのかな(笑)。意識していることがあるとすれば……、コトに向かうようにしていますかね。クライアントさんが言ったことを意識するのではなく、クライアントさんの本来の目的に向かってちゃんとコトを進められるのか、を意識するといった感じでしょうか。

たとえばクライアントさんから広告の設定に関して具体な指示内容だった際、つまり目的ベースではなく手段ベースで依頼があった際、指示内容をそのまま実行する前にまずは本来の目的や意図を考えるようにします。手段ベースの指示内容がちゃんとコトに向かっているようであれば問題ないのですが、本来の目的と逆行したり別により良い解決手段が存在するのであれば、しっかり訂正していくことが大事だと思っています。そのためせっかく考えてくれた指示内容を訂正してしまうこともままあるので短期的には「面倒くさいやつだな」と思われるかもしれません。ただしっかりコトに向かっていれば長期的には信頼を得られるのかなと思っています。

最後の唐揚げを食べてくれる人と働きたい

ーー最後に、菅原さんはどういう方と一緒に働きたいですか?

僕の中で小さなリーダーシップと呼んでいるものがあって、そうした気質を持ち合わせている方と一緒に働きたいですね。

たとえば居酒屋での飲み会終盤に、お皿に唐揚げが最後一つ残っているとします。みんなおそらく心のどこかで「誰かがこの最後の一つを食べてくれれば、店員さんは洗い物を回収できるし、我々もテーブルが片付いて気持ちいいのにな」って思っているはずなんです。ただみんな誰かが食べてくれるだろうと思っているのか遠慮なのかわかりませんが、唐揚げはテーブルに残り続けちゃうんですよね。いわゆる遠慮の塊です。そんな時に自ら唐揚げを食べて処理してくれる人、食いしん坊に「食べなよ」と一声かけてくれる人。そうしたより良い状態になるよう自ら行動してくれる人ってめっちゃ尊いなってと思っているんです。


なのでどんな小さなことでもいいので、自ら課題を見つけ、主体的に解決に向け行動していく。現状を少しでもより良い状態なるようコトを進めていく。そんな小さなリーダーシップを発揮してくれる人に来て欲しいなと思ってます。贅沢かもしれませんが。