問題解決は課題設定能力が9割

問題解決は課題設定能力が9割

これまで数年間リスティング広告プレイヤーとして、この業界にいると「この人すごいなぁ」という方々に何人も会ってきました。そういった方々を観察していると、共通した”ある能力”を持っているんじゃないかと感じるようになってきました。その”ある能力”をあえてコトバにすれば「課題設定能力」。今回はその「課題設定能力」について考察していきたいと思います。(人によっては当たり前過ぎる話かもしれません)


課題設定能力とは?

まずは問題と課題の定義について。

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問題とは目標(あるべき姿)と現実との差異になります。例えば、理想とする体型があり、現実の体型がそれよりも太めであった場合、理想と現実にギャップが発生しています。”太っている”が問題になります。

問題があれば解決していかねばなりませんが、”太っている”という問題に対し”痩せる”ではなかなかやせられないよですね。なぜなら”痩せる”では具体的に何をするのかが決まっておらず実行ベースになっていないからです。「痩せるぞー」と決意を新たにしても何もアクションがなされなければずっと体型は”太ったまま”です。問題を解決に導くために必要なアクションを求めるためには、問題を実行ベースに落とし込まなければなりません。これが「課題」です。

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問題解決は、問題から課題を抽出し、それに対するアクションを考え、実行していく、そうすることによって初めて達成されます。また課題とアクションは表裏一体であるため、課題設定ができてしまえば具体的なアクションはほぼセットでついてきます。問題解決は課題設定が要なのです。加えて、問題の把握→課題の設定→アクションの設定(→実行)、といった思考の順序も大切です。


図1:課題設定が不十分な場合

リスティング広告の現場でのかんたんな例を挙げます。目標に対して”検索連動型広告のCPAが高騰”という問題には、さまざまなアクション(施策)が考えられます。入札価格を下げてCPCを抑える方法もあれば、キーワードを停止して余分な露出を宣言するのも一つの手です。課題設定が不十分でこのようにアクション先行で考えてしまうと、いくつもの施策が思いつきますがリソースによって実行できる数は限られますし、有効な施策もあれば不要な施策もあります。上記の図1では、すべてのアクションが選択肢となっているため、これではどのアクションに取り組むべきかが分かりません。場当たり的に施策を打っても、問題を解決するために本当に取るべきアクションにたどり着くのに不要な時間が掛かってしまいますし、場合によってはさらに新しい問題が生じてしまい、当初の問題が未解決になってしまう可能性すらあります。


図2:十分な課題設定がなされている場合
※図は説明のために簡略化しています。

これに対し、十分な課題設定ができていれば不要なアクションを考える必要もないですし、実行する必要もありません。問題を解決に導くために取るべきアクションは自ずと明確になり、問題の解決に速やかに向かうことができます。

例えば、CPC・掲載順位に変動がなく、広告文もLPも変更していない状況であれば、不必要にCPCを下げたりキーワードを停止してもCPAは下がるかもしれませんが、”コンバージョン数が減っている”という別の問題を招いてしまうでしょう。しっかり最初に課題はどこかを考え、”変更された競合他社の広告文の訴求に内容で見劣りしていること”という課題設定ができれば、「広告文を変える」という必要最低限のアクションだけで問題は解決するのです。

よく現場で「未実施のメニューなので、とりあえずやってみましょう」といった提案をする方がたまにいますが(いますよね?)、問題→課題→アクションといった適切なフローを踏まず前述のような行き当たりばったりのパターンに陥っています(手段の目的化に近い)。そのアクションが実際に問題解決につながる課題を解決すれば良いのですが、一連の思考を欠いた施策は打率が低い場合が多いです。またどの課題に効く施策なのかといった考え(仮説)がないため、結果に対して考察(仮説検証)もできず、常に当てずっぽうな提案に留まり、プロとして再現性のある施策提案能力が身に付きません。適切に考えられていない課題設定は、健康な人に風邪薬を飲ませるのがいけないように、時としてビジネスに悪影響を与えてしまうこともあるのです。

時間もリソースも限られるビジネスの現場においては、実行できるアクションも限られてきます。そのため、いかに早く問題から課題を抽出しその中から適切な課題を見極め、問題解決へのインパクト(工数×効果)から優先度を決め、課題を評価できるか、これが「課題設定能力」です。

課題設定能力を養うには?

では課題設定能力を養うにはどうしたらいいか。筆者は以下3つのことを意識的におこなうのが良いのではないかと考えております。

掘り進む、分解する、俯瞰する

アカウントを分析する際は、アカウント全体からキャンペーン、広告グループ、キーワード、検索語句と、ドリルダウンして課題を発掘していきます。そのように森から木、枝、葉とどれだけ細かい粒度まで掘り進めて課題発見をしていけるか。

もう一つはKPIツリーを考え(≒因数分解)、どの因子がボトルネックとなっているかといった分解して課題を発見していく方法。KPIツリー以外にも、ファネルやバリューチェーンなどのツールを使ってビジネスの一連の流れを図解し、課題をあぶり出していきます。

参考:全てのリスティング広告プレイヤーは因数分解思考を手に入れよう

最後に単なる運用型広告から、ウェブプロモーション、プロモーション、マーケティングなど、見ていくレイヤーを上げて(俯瞰して)課題を探していく方法。これらによって課題を発見していく能力が養われます。

多数の課題解決を行う(=経験)

経験は大事です。多数の問題解決を行うことによって、多数の課題設定をしていきます。いろんな案件を知る、成功事例・失敗事例を知る。成功体験を再現性のあるものとして(課題解決の一つの”型”として)抽象化できるか、そしてそうした”型”をどれだけストックしていけるか、これが課題発見のスピードを早めてくれます。

常に情報を得る(勉強する)

たくさんの事例を得て、そのエッセンスを取得する。運用型広告はもちろんのこと、その周辺領域の情報を得ていく。ランディングページの基礎を知らなければ、今のリンク先ページを見ても課題だとは思わないでしょう。語彙を知らなければ、ターゲティングが広げきれていないという課題に気付くことはないでしょう。知識は課題発見の源であり、課題解決の手段です。手段と課題は表裏一体の関係なのです。手段が目的化するのはベターではありませんが、手段をたくさん知っていなければ目的を達成すること(問題解決をすること)は難しいです。

その問題は解くべきものなのか?

課題設定をおこなっていく前提として、”その問題設定は適切なものである”ということがまずは重要です。なぜなら問題設定自体が間違っていると、その問題自体が解決しても利益につながらなかったり、そもそも解くことができなかったりすることがあるためです。そうした問題は取り組んでも時間ばかり浪費し、成果もあがらず、お互いの利益になりません。そのため課題設定を始める前に、その問題は解くべきものなのか、をまずはしっかり見極める必要があります。

例えば、クライアントからコンバージョンが足りないのが問題とされているなか、サイトのスマートフォン対応が済んでいない、在庫が頻繁に無くなる、競合商品が多い中USP(Unique Selling Proposition:独自の売り)が全く無い、といった状況だとします。そうした場合ではいくら広告側で頑張ってもそれらのボトルネックで引っかかりコンバージョンはなかなか伸び悩むケースも往々にしてあります。解くべき問題は広告側ではない!当然のことながらそういうケースだってありますよね。まずは一番のボトルネックを解消する、解消できるように動く。でなければ、それ以外のところの改善に取り組んでも大きなインパクトは出し難く、結果的にその努力は徒労に終わる可能性すらあります。

プロモーションを依頼される際、クライアントからさまざまな要望(=問題設定)をいただくかと思います。しかしそれが誤った問題設定の場合、それをそのまま鵜呑みにしてしまうといくら課題を考えても問題解決にはつながらず、時間とお金を浪費してしまう可能性が高いです。そのためまずはしっかりその問題設定が適切どうかの判断をし、もし誤っていた際は別のインパクトが大きい問題設定を提案できるようすることが大事です。

上のレイヤーにいくために

まずは運用型広告のプレイヤーとして。まずは課題設定できるようになりましょう。現場でクライアントから「○○やって」といったことを依頼され、そのまま実行していたりしませんでしょうか?そうした場合、あなたは課題設定をクライアントに任せ、単なる作業しかしていないことになります。運用型広告のプレイヤーとして基本的なバリューは課題設定にあると思います。クライアントの問題設定から適切な課題を設定し、実行していく。単なる作業者に留まるか、一端の運用プレイヤーとして活躍できるかどうか。それは課題設定能力にかかってくると思います。

次にあなたがチームのリーダーや、新人を教育する立場なった時。あなたの役割は問題を各メンバーが対処可能な問題の大きさに分解してあげることです。新人の場合は、もう実行可能な課題ベースから始めてみてもいいでしょう。あなたにとっては対処可能な問題に思えても、メンバーのレベルによっては対処不能な巨大な岩に思えてしまうかもしれません。経験の浅いメンバーが潰れないよう、上流にいるあなたが問題の大きさをコントロールしていきましょう。また同時に、最初に問題に当たる人間として、その問題ははたして解くべきものなのか、問題設定は適切かどうか。それらの判断がしっかりできるようになっていく必要があります。間違った問題に取り組んでも、ビジネスとしての成果は得られません。

ある程度、課題設定能力が身に付き、問題解決ができるようになってくると次に求められる能力は何になるでしょうか。筆者は問題設定能力だと考えております。よく現場ではCPAを達成したら、さらに低いCPAを目標とし新たな問題設定とするケースがありますが、はたして次に取り組むべきことはより低いCPAを目指すことなのでしょうか。別のターゲット層を狙うために、別の商品ラインを作ることはできないか。LTVをあげるために、顧客体験価値をどう高めていくか。中長期的な利益を産むといった視点で考えるとCPA以外の別の問題設定もありえるでしょう。ある問題を解消するとボトルネックが移動するということがあります。リーダーや経営者に頼られる存在となるためには、問題解決だけではなく、より良い問題設定を考えていくことが求められるのだと思います。

我々リスティング広告プレイヤーは日々、大小さまざまな問題に立ち向かっていると思います。課題を見つけられればただ黙々と施策を実行すれば良いだけですが、もしも問題に対しての課題が見つけられず、ただ足掻いている、悩んでいる、といった状況でしたら一度立ち止まってはいかがでしょうか。いろいろ手は打っている、だけど効果が出ない、そういった場合は効果的な課題設定ができていない、課題設定ができるほど自分の知識量が足りていない、もしくは問題設定から間違っている可能性があります。一度、問題にゆっくりと向き合う時間をとってみてはいかがでしょうか。

最後に、アントニオ猪木の名言で締めさせていただきます。

ピンチっていうのはね、ひとつのものじゃなくて、いろんなヤッカイ事が 『ダマ』になってやってくる。だからみんな負けちゃうんです。その『ダマ』をひとつずつ解きほぐして、ひとつずつやっつけていけば、ピンチってのは必ず乗り切れる!(アントニオ猪木:中島らも「恋は底ぢから」より)

※タイトルの”~9割”は筆者の体感値です。

Kosuke Sugawara

Kosuke Sugawara

アナグラム株式会社 運用型広告エキスパート。SG/172cm/70kg 87世代。前職である新卒で入社したウェブサービス会社ではマーケティング全般から、インハウスでのリスティング広告の運用に従事。2016年1月、ふとしたきっかけでアナグラムへ参画。平凡な一般人としての感性を活かしたテキスト広告の作成に定評がある。2015年AdWords川柳で優秀賞を受賞。

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