※2021年7月:メールアドレスのハッシュ化が必須ではなくなり、ハッシュ化する際のソルト値も不要となりました。
Yahoo!広告のディスプレイ広告(以降、YDA)では、広告主が保有しているメールアドレスなどの顧客データをインポート可能です。インポートしたデータは、Yahoo! JAPANの登録データと照合され、カスタムリストとして広告配信に利用できます。
今回はYDAで顧客データを用いて配信を行う方法やその活用例を解説します。
目次
カスタムリストとは?
カスタムリストは広告主が独自で蓄積、分析をして作成したユーザーのリストを、広告の配信対象として格納するためのリストです。
ユーザーのリストデータをYDAと連携することでYahoo! JAPANの登録データと照合し、カスタムリストを作成できます。
カスタムリストを使った配信では、接点のあった見込みの高いユーザーへのアプローチが可能になります。
カスタムリストを使った配信を行うには?
カスタムリストを使った配信を行うにはユーザーのリストをアップロードする必要があり、その方法は2つあります。
- Yahoo!DMPなどのデータ連携ツールを経由してアップロード
- データインポート機能を使って直接アップロード
以前はデータ連携ツールを経由しないとカスタムリストを作成できませんでしたが、2020年9月にデータインポート機能が追加されたことで簡単に作成できるようになりました。
参考:【ディスプレイ広告】データインポート機能追加のお知らせ - Yahoo!広告
既にYahoo! DMP(※)を利用している場合は同様の機能が利用できるため、アップロード方法を変更する必要はありません。
参考:リストデータを連携してターゲティングを行う - ヘルプ - Yahoo!広告
※Yahoo! DMP以外でもデータ連携が可能なツールがありますが、ディスプレイ広告に連携できるのはアプリユーザーのリストのみです。
今回はデータインポート機能を使った方法をご紹介します。
カスタムリストの作成方法
カスタムリストの作成はリニューアルされた広告管理ツールから設定が行えます。
①広告管理ツールの右上にあるスパナ型のアイコンをクリックします。
②「共有ライブラリー」の「ターゲットリスト」をクリックします。
③「ターゲットリストを作成」ボタンを押し、「カスタムリスト」を選択します。
④必要な項目を入力します。
項目 | 説明 |
---|---|
ターゲットリスト名 | ターゲットリスト名を入力します。作成済みのターゲットリストと同一の名称は設定できません。 |
連携データの有効期間 | インポートしたデータが、連携完了してからリーチを何日間有効とするかを設定します。1~60日の間で設定可能です。 |
説明(任意) | ターゲットリストの説明を入力します。入力は任意です。 |
連携データファイル | アプリ用広告識別子(IDFAまたはAAID)かメールアドレスを選択します。 |
連携データファイルの仕様は以下の通りです。
ファイル形式 | テキストファイル(.txt)をzipで圧縮 |
---|---|
文字コード | UTF-8(BOMなし)、Shift JIS ※ファイルには日本語などの半角英数記号以外は含まないこと |
改行コード | LF、CRLF |
ファイルサイズ | 広告管理ツールからのアップロード:200MBまで ※API経由では最大サイズが増える予定 |
データ数 | 件数制限はありませんが、ファイルサイズの上限以下 |
連携データファイルの注意点
連携データファイルをインポートする際には次の注意点をよく確認してからリストを作成しましょう。
アプリ用広告識別子(IDFA、AAID)をインポートする場合
顧客から同意を得て収集したアプリ用広告識別子しか使用することが出来ません。インポートする時点で、対象の顧客がオプトアウト(ターゲティング広告の配信を拒否すること)していないことを確認してください。
メールアドレスをインポートする場合
事前にハッシュ化(復号できない形にデータを変換する方法)する必要があります。ハッシュ化を行うにはソルト値(ハッシュ化する際、セキュリティを強化するために付与するデータ)が必要になるので、Yahoo!広告の専用フォームから申請を行いましょう。
メールアドレスの場合、ソルト値を使ったデータのハッシュ化が必須でしたが、2021年6月30日より以下の通り変更となっています。
メールアドレスのハッシュ化
ハッシュ化していないメールアドレスもインポート可能になりました。ハッシュ化したメールアドレスも引き続き利用は可能です。
ソルト値
メールアドレスをハッシュ化する際のソルト値が不要になっています。これに伴いソルト値の新規申請の受け付けも2021年6月30日に終了しました。
※ソルト値を使ってハッシュ化したインポート済みのデータは、2021年12月頃(予定)に利用できなくなります。
参考:ディスプレイ広告 カスタムリスト作成におけるメールアドレス連携の仕様変更について
⑤作成ボタンを選択します。
ターゲットリストの一覧画面で「ステータス」が「データ取り込み完了」になれば、データのインポートが完了しています。完了後にカスタムリストが作成されます。「ファイルフォーマットエラー」が出た場合には、ファイルの形式に問題がないかなどご確認のうえ、再度アップロードをお試しください。
広告グループへの設定方法
続けて、広告グループへの設定を行います。カスタムリストはYDAだけでなく、ディスプレイ広告(YDN)で作成した広告グループに対しても設定可能です。
①広告グループ設定をクリック
②ターゲットとするカスタムリストの「配信」を押す
③編集内容を保存
以上で、YDAのカスタムリストの設定は完了です。
カスタムリストを利用する上での注意点
カスタムリストは条件を満たしたデータしか広告配信に利用できない点、一度アップロードしておわりではない点に注意が必要です。
インポートするユーザーのリストは一定のボリュームが必要
インポートしたデータ数が少ない場合、リーチ数(配信対象者数)を確保できません。また、メールアドレスを用いてカスタムリストを作成する場合は、メールアドレスとYahoo!JAPANの登録情報が結びついたユーザーにしか配信が行えないため、アップロードしたデータ数よりもユーザーサイズが減る可能性が高いです。
定期的にデータをインポートしないと配信できなくなる
インポートしたデータには有効期間があるため、同じターゲットリストに対して追加でデータをインポートしないと配信できなくなります。
APIでのアップロード機能は、Yahoo!広告API v3(10月リリース予定)で提供予定とのことなので、それまでは定期的に手動でアップロードする必要があります。
参考:データをインポートしてカスタムリストを作成する - ヘルプ - Yahoo!広告
インポートしたデータの中に、たとえばメルマガの配信停止やサービスから退会したユーザーが含まれてしまう場合には、これらのユーザーをリストから除くための更新作業が現実的か、よく検討することをおすすめします。
カスタムリストの活用例
カスタムリストを活用して広告の効果を高める方法は大きく分けて2つあります。
見込みの高いユーザーにアプローチ
既存顧客の情報をインポートすれば見込みの高いユーザーに対して、直接配信を行うことができます。
例えば、ECでの収益アップを目的とした配信であれば、LTVの高い顧客のみでリストを作成し広告を配信することで、他のユーザーよりも高い収益が見込めるユーザーに再度アプローチすることが可能になります。
他にも、YDAではカスタムリストのユーザーと、ウェブ上の行動履歴が類似しているユーザーを抽出したリスト(類似リスト)へのターゲティングができます。
上記の例で挙げたような質の高いリストの類似ユーザーに配信することで、他の新規配信よりも高い獲得効率でコンバージョン数を伸ばせる可能性があります。
広告を配信したくないユーザーを除外
作成したカスタムリストのユーザーを除外設定することで、特定のユーザーへの配信を行わないようにすることができます。
新規獲得目的やリピートのない商材の広告配信でコンバージョン済のユーザーを除外すれば、無駄なインプレッションや広告費の削減ができます。これにより、費用対効果の高い配信が見込めるだけではなく、しつこい広告表示による自社イメージの毀損を防ぐことにも繋がります。
まとめ
顧客情報を用いたターゲティングはユーザーとのコミュニケーションを密にする便利な手法ですが、昨今ではセキュリティの観点から顧客データを広告配信に利用するハードルはどんどんと高くなっています。そのため、顧客データに頼った広告配信ばかりを行っていくのはおすすめできません。あくまで手法の一つとして依存しない範囲での利用がよさそうです。
もし利用する場合でも、ユーザーが不快に思わないよう、配信の頻度や広告の内容などに十分に配慮して活用していくことを心がけたいですね。