
2023年5月開催のGoogle Marketing Live 2023で発表された「Google Merchant Center Next」。既に一部のアカウントでは自動アップデートが進んでおり、見慣れない管理画面に戸惑いを覚えた方も多いのではないでしょうか。
Google Merchant Center Nextはユーザーインターフェースが一新し、いくつかの新機能も追加されています。一部機能の名称やアクセス方法も変わっているため、再学習が必要です。また、発表されてから直近までに何点かのアップデートもあり、現状ではできることも増えています。
本記事では、最新の状況を踏まえたうえで、Google Merchant Center Nextの新機能や、旧Google Merchant Centerからの変更点などを中心に解説します。
※この記事では、従来のGoogle Merchant Centerは「旧GMC」、Google Merchant Center Nextは「GMC Next」として表記します。


目次
Google Merchant Center Nextとは
Google Merchant Center Nextとは、Google Merchant Centerのアップデート版で、新しいユーザーインターフェースへと変わり、いくつかの新機能が追加されています。中でも最も注目されている新機能は「商品データ(商品名、説明文、価格、商品画像など)の自動取得機能」で、その他にも生成AIを活用した商品画像のカスタマイズなど、これまでにない機能が追加された新しいMerchant Centerです。
参考:Google The Keyword:What retailers can expect from the new Merchant Center
Google Merchant Center Nextの新機能
ここではGMC Nextで追加された2つの新機能「商品データの自動生成」と「Product Studio」について紹介します。ともに、状況次第では非常に有益な機能になり得ますので、どんな事ができるのかしっかり把握しておきましょう。
商品データの自動生成
GMC Nextで最も注目されている新機能は「商品データの自動生成」です。
ウェブサイトのURLをGMC Nextに登録すると、Googleはウェブサイトをクロールして情報を取得、最新の商品データをMerchant Centerと同期します。Googleがドメインをクロールできるようにするには、ウェブサイトにサイトマップを追加し、構造化データを追加する必要がありますが、それが済んでしまえば、あとは商品データを自動で取り込めます。
これまで、「商品フィードの作成」がハードルとなり商品データの活用に取り組めないケースもありました。商品データの自動生成により、どのようなEC事業者でも取り組みやすくなることが期待されます。
残念ながら現時点ではまだ日本ではその機能はリリースされていないため、実際に利用できるようになるまでにはまだ少し時間がかかりそうです。
しかしながら、自動生成された商品データが必ずしもベストではないことには注意が必要です。例えばショッピング広告では、ユーザーの目に触れる機会が多い「商品タイトルの冒頭」に表示させる情報によって成果が変わってくるため、タイトル構成の重要度は高いですよね。自動生成されたフィードが、そのように成果を期待できる構成になっているかの確認は必ず行いましょう。
もし構成に改善点があるような場合は、ルール機能や補助ソース(補助フィード)を使用し構成を変更するか、データフィード管理ツールの利用を検討することをおすすめします。
Product Studio
「Product Studio」はGMC Nextで新しく追加された機能で、生成AIを活用して商品画像の編集ができます。具体的には、商品画像の背景を削除したり、商品サイズを調整したり、異なる背景に置き換えるといったことが可能です。これにより、より魅力的な商品画像を簡単に作成できます。
Product Studioで商品を選択します。
すると、自動で商品がマスクされ、背景無しの状態になります。拡大・縮小もこの時点で自由に変更できます。
希望する画像のシーンの説明を入力すると、そのシーンに応じた背景が自動で生成されます。シーンの説明が難しい場合は、既に用意されているテーマを選ぶことで、それに応じた画像へと編集することもできます。
ただし、こちらは商品単体でのみ機能し、複数商品を一括で編集することはできないため、大量に商品をもつEC事業者にとっては、若干活用が難しいかもしれません。商品点数が少ない小規模な事業者、または特別にカスタマイズしたい注力の商品に対してのみ、個別にカスタマイズできる、といった使い方が主になってくると思います。
注意すべき旧GMCとの違い
旧GMCとGMC Nextとではユーザーインターフェースが変わっており、かつメニューの名前も変わっている場合があるため、旧GMCのメニュー配置に慣れ親しんだ人にとっては「あのメニューはどこに?」と迷う機会は多いと思います。主要な部分を解説しますので、参考にしてみてください。
ユーザーインターフェースの大幅変更
基本的な機能はGMC Nextに引き継がれていますが、名称が変化していたり、アクセス方法が変わっていたりするため、最初は戸惑うこともあるでしょう。
例えば、旧GMCでは「ツールと設定」の中にあった「ツール」の項目(ビジネス情報や送料の設定など)が、GMC Nextでは左サイドメニューに移動しています。
また、「フィード」は「データソース」に名称が変化していたり、旧GMCでは確認頻度が高かったであろう、商品の問題点を確認できる「商品」内の「診断」は、GMC Nextでは同じく「ビジネス情報」配下の「商品」内の「注意が必要」へと変わっています。
- 旧GMC では「ツールと設定」内の送料やお店の情報から編集できた。
- GMC Nextでは一部が左メニューへ移動。フィード(データソース)は右上の設定内に移動している。
- 旧GMC での「商品 → 診断」の画面
- GMC Nextでは、「注意が必要」へと名称が変わり、表示内容も変更されている
ちなみに、「ANALYTICS(ログ解析)」の配下にも「商品」が存在しており、ビジネス情報の商品と混同してしまうかもしれませんが、内容としてはどちらも旧GMCと同じです。
その他にも細かな変化が多く、本記事では全てを説明しませんが、基本的な内容そのものは変わっておらず、一度慣れてしまえば大きな問題となるような変化はないように筆者は感じました。一方で、「補助フィード」や「フィードのルール」については、同様の機能は存在しているものの、名称が変更され、かつ利用の前にひと手間の作業が必要になり、分かりにくく感じる人もいるでしょう。そちらについては次項で解説します。
「補助フィード」は「補助ソース」に変更
補助フィードとは、メインのフィード内の情報を、補助フィード内の情報に上書きすることができる機能です。この機能を利用している事業者は多いと思いますが、GMC Nextがリリースされた当初は補助フィードの機能がそもそも存在しておらず、GMC Nextへのアップデートがしづらい状況でした。ただ最近になってやっと機能が追加され、名称も「補助ソース」へと変わりリリースされています。
アクセス方法は、まずビジネス情報の商品、または右上の設定からデータソースを表示させます。「プライマリソース」というタブがあり、その隣に「補助ソース」というタブが存在しています。こちらをクリックすると、「補助商品データを追加」というボタンがあり、それをクリックすると補助ソースを追加することができます。
補助ソースの追加・設定作業自体は、旧GMCの補助フィードと同じなので、特に迷うことはないでしょう。
「フィードのルール」は「属性ルール」に変更
フィードのルールとは、フィードの項目に入力する値の変換ルールをGMC上で設定できる機能です。この機能も利用している事業者は多いと思われますが、補助フィード同様、GMC Nextリリース当初は存在していない機能でした。こちらも最近になって「属性ルール」という名称でリリースされています。
アクセス方法は、同じくデータソースを表示し、該当の商品ソースをクリックします。すると、「最新の情報」の2つ右隣に「属性ルール」というタブが存在しています。こちらも補助ソース同様、旧GMCのフィードのルールから名称や若干の見た目が変わっただけで、操作方法は共通なので、特に迷うことなく設定を進められるでしょう。
補助ソースや属性ルールの使用にはアドオンが必要
旧GMCではデフォルトで用意されていた補助フィードとフィードのルールですが、GMC Nextではデフォルトでは用意されていません。これが多くの人を迷わせている要因なのですが、これら機能を表示させるためには、アドオンを追加する必要があります。
右上の「設定とツール(歯車アイコン)」をクリックし、「アドオン」をクリックします。いくつかのアドオンが表示されるので、その中の「高度なデータソース管理」を追加しましょう。すると、前述した「補助ソース」や「属性ルール」が表示され、利用できるようになります。
なぜこのような仕様に変更されたのか疑問に感じましたが、恐らくより多くの商品データを集めるために裾野を小規模事業者へも広げ、できるだけ分かりやすくシンプルに簡単に、という狙いがあるのだと考えます。
補助フィードやフィードのルールは、より高度でカスタマイズな機能となるため、デフォルトでは表示させずに、必要なユーザーはアドオンで利用させるという方針変更があったのではないでしょうか。
旧GMCとGMC Nextとの切り替え方法
※従来の Merchant Center は2024年9月30日に提供終了となったため、切り替えはできなくなりました
これまで、GMC Nextにアップデート後に旧GMCに戻すことは可能でしたが、その後はGMC Nextに再度切り替えることはできませんでした。しかし、こちらも最近になって双方向に自由に切り替えることができるようになっています。
GMC Nextから旧GMCへの切り替え方法は、左上のヘルプマークをクリックすると、「従来型のMerchant Centerを使用する 以前のバージョンに戻します」という表示があるので、それをクリックすると旧GMCを利用することができます。
ただし注意点として、Googleのヘルプページによると「アカウントを Merchant Center Next に移行してからしばらく経っている場合、「従来型のMerchant Centerを使用する」は表示されなくなる」という記載があります。もし、GMC Nextから旧GMCに戻したい場合は注意しましょう。
参考:Merchant Center Next と従来の Merchant Center の切り替え
逆に、旧GMCからGMC Nextにする場合は、「概要」の上部に表示されている案内の「新しいバージョンを試す」をクリックするだけで、GMC Nextに再度アップデートできます。ただし、この案内が表示されるのはGMC Nextを利用できるアカウントのみで、そもそもまだGMC Nextを利用できないアカウントには表示自体がされていません。9月までには案内が表示されるか、もしくは自動でアップデートがされると思いますので、それを待ちましょう。
一方で、旧GMCも間もなくサポートが終了され、その際はGMC Nextに自動で切り替わります。直近のアップデートが進んだこともあり、基本的な機能はGMC Nextでも備わっているため、特別な理由が無い限りはGMC Nextでも問題ないのではと考えています。
まとめ
魅力的な機能が拡充されたGMC Nextですが、これまで記載した通り新規の小規模なEC事業者にとっては注目の新機能が備わっている一方で、現在既にGMCを利用していて、かつ数多くの商品を扱っている、既存の大規模事業者にとっては、正直なところあまり目新しい新機能はないため、アップデートを急ぐ必要はないと思います。
しかしながら、商品データの自動生成や、生成AIを活用した新たな取り組みについては、様々な理由でこれまでGMCを利用できていなかった層の垣根を取り払うことにも繋がり、可能性を広げ、よりよいEC体験の実現に向けた大きな前進であると捉えています。
現時点では切り替えの時期ということもあり、まだ利用できない機能も残っているものの、GMC Nextへのアップデートがされた際は、ぜひ一度触れてみてはいかがでしょうか。
