魔法の施策は存在しない。泥臭いPDCAでCVを2倍にした広告運用の振り返り

魔法の施策は存在しない。泥臭いPDCAでCVを2倍にした広告運用の振り返り

「成果改善の一発逆転ホームラン施策はないだろうか」
「媒体仕様をハックして、競合を出し抜けないか」
「今すぐCPAを下げたいんだけど、配信量を下げるしかないか…」

場合によっては、1つの設定を変えるだけで成果が大きく違ってくることもあるでしょう。ただ、ほとんどのケースにおいてそんな魔法のような施策は存在せず、地道なPDCAの繰り返しであることは、この記事の読者であれば身をもって知っているはずです。

それは、ゴールの見えないマラソンのようなもので、しかも走っているのは基本的に自分一人。だからこそ、途中で方針を変えたり、検証のペースが落ちて、いつの間にか手が止まっている。そんな経験は一度や二度ではないかもしれません。

ただ、試行回数を重ねていくと、どの訴求が響いてどの表現が響かないのか、判断の精度は確実に上がっていきます。走り切った先に見える景色は、始める前とはまるで違うものです。

今回の記事では、一発逆転ホームラン的な裏技やテクニックの紹介ではなく、とある案件において筆者がひたすらにPDCAを繰り返し行い、その結果得られたものについてプロセスで紹介します。

それぞれ商材・タイミングなどの違いはあるため数値の再現性は保証できませんが、広告運用への向き合い方としては参考になる部分があると思います。


配信設計ではなくクリエイティブが課題。何をしたか?

まず分かりやすくイメージしてもらうために、その案件について簡単にご紹介します。

  • 商材カテゴリ:金融商品
  • コンバージョン地点:申し込み
  • 媒体:Meta・Google
  • 予算:数百万円/月間

検索広告はCPCが高く、商品の魅力も短い文字数の中で伝えきるのが難しいため、画像や動画でリッチなコミュニケーションが取れるMetaや、Googleでもデマンドジェネレーションを主力としていました。

別担当からの引き継ぎで自分が担当することになりましたが、その時点で配信設計に大きな改善点があったわけではなく、改善前後で基本的な設定は共通です。「致命的な設計ミスを修正したから大幅改善した」ような事例ではありません。

当時の課題は、CPAの高さだけではなく、獲得した申し込みリードの質が想定より低く、その先に繋がらないことが問題でした。

当時は配信設計に大きな問題はなかった一方で、広告のクリエイティブ・メッセージについては軸となる訴求がありませんでした。金融商品という特性上、特徴やメリットをユーザーに理解してもらう難易度が高く、広告表現が行き詰まっている状況です。

結果として、商材の表面的な特徴や競合でも言えてしまうような中庸な訴求が中心になっており、商品の魅力を伝えきれていない。だからユーザーの反応も鈍い。この点が最も大きな課題ではないかと考えました。

クライアントとスタンスを揃える

そこで、上記内容をクライアントとも共有し、今後の取り組みを以下のように定めました。

  • ユーザーに響く訴求の開発を最優先とする
  • 良い・悪いの判断がつくまで、振れ幅を大きくとって様々なメッセージや表現を試す
  • 方向性が見えてきたら横展開し、最も効果的な訴求を突き詰める
  • この取り組みをひたすら繰り返し、データを蓄積する

そのうえでクライアントには「短期的なV字回復というより、時間をかけてでもじっくりと正解を探っていく」というスタンスを共にしていただくようお願いしました。

クリエイティブに課題がある以上、様々なデザインや訴求を試す必要があり、制作や検証にはどうしても時間がかかります。ただ、この期間は無駄ではなく、良い・悪いのデータを積み重ねて今後の方向性を見定めるための、土台作りの「筋肉痛」期間です。

データの蓄積には別の意味もありました。自分やクライアント側の担当が変わったとしても、検証データがあれば初日からデータに基づいた会話ができる。個人の頑張りではなく、資産としての検証結果を残していくことも、この取り組みの目的でした。

振り返ると、このスタンスを関係者全員と共有できたことが、すべての起点だったと感じています。

メッセージ × 表現の掛け合わせで検証する

闇雲にメッセージをバラまくのではなく、狙いを定めた上で検証をスタートしました。やり方としては、「メッセージ」と「クリエイティブ表現」の掛け合わせで、ベストな組み合わせを模索する進め方です。

メッセージ開発では、商材がもつ強み・メリットを整理し、それがユーザーにとってどのような便益に繋がるのかを洗い出します。クリエイティブ表現では、画像、イラスト、人物あり・なし、動画、静止画、テキストのみなど、考えられるパターンをすべて試しました。

この掛け合わせで、まずはど真ん中のターゲットである金融商品に関心がある層に響く組み合わせを探りつつ、関連する別のターゲットにも同じバナーを配信し、傾向の違いについてもデータを収集していきました。

外れたクリエイティブから次の仮説を立てる

クリエイティブの検証を開始しましたが、初期はいずれのパターンも反応が悪く、厳しい結果が続きました。配信したバナーにはすべて意図した狙いを込めており、「取れるはず」と心から考えていただけに、その狙いが外れ続けたことは純粋に悲しかったのを覚えています。

ただ、外れた結果そのものが「自分の考えの何が違っているのか」「どう方向性を修正すべきか」を教えてくれる道しるべでもあります。想定と違っていても、以下のフローを繰り返し、データを基に検証と改善を回していきました。

まず計画の段階で、どんなユーザーに、何を、どのように伝え、どう行動してほしいのかを明確にします。次に配信結果を見て、事前の狙いと異なる結果が出た場合は、ターゲット・メッセージ・デザインのどこにズレがあったのかを仮説として整理します。その仮説をもとに修正を加え、再度配信して検証する。この繰り返しです。

なかには、クリエイティブの開発を続けても結果が得られず、開拓を断念したターゲットカテゴリーもあります。表面上はコア層に近いユーザー群と考えていましたが、実際には商材との距離が遠く、広告だけでは態度変容を促すのが難しいと判断しました。

撤退の線引きは簡単ではありません。ただ、クリエイティブやメッセージの改善幅とその期待値が小さくなってきた時が判断のポイントになるでしょう。逆に言えば、試したい表現や訴求が残っていれば、最終判断にはまだ早い。今回の案件では、予算や状況と相談しながらも、「もうダメだ」となるまで検証を続けました。

「共通の目線」が検証を止めなかった理由

成果が伴わない時期が続く中で、検証を止めずにいられた理由は何だったか。振り返ると、クライアントを含む関係者全員が同じ方向を向けていたことに尽きます。

サービスの価値とそれがユーザーにもたらす便益。その価値を最も高く感じてもらえるターゲット選定。ターゲットに伝わりやすい広告表現。これらの戦略意図と背景を全員が共有していたことで、結果が想定と異なっていたとしても、納得感をもって受け入れ、次の施策へ展開しやすくなっていました。

加えて、今回の取り組みのポイントを「試行回数を多くし、確実な勝ち筋を見つけること」と定めていたため、失敗も成功へのプロセスの一つであるという考え方がチームに浸透していたことも大きかった。

こうした共通認識は放っておいて生まれるものではありません。普段から密なコミュニケーションを意識し、「それって何でやるんだっけ?」「目的はなんだっけ?」と施策の根底部分を繰り返し確認していくことが重要です。

地道な検証の先に見えた「CV2倍・CPA1/3」

こうして、一見当たり前とも思える検証をひたすら繰り返したことで、徐々に勝ち筋がクリアになっていきました。結果としては、この取り組みを始める前後でCV数を2倍以上増やしながら、CPAは1/3まで圧縮させることができました。

結果だけ見ると大きな変化ですが、ここに至るまでには時間も労力もかかっています。無反応だった広告バナーも数多く、超効率的な動きだったかと問われるとNOと言わざるを得ません。

ただ、徹頭徹尾「時間をかけてでもじっくりと正解を探っていく」スタンスを貫いていたため、ある意味この成果は必然でもありました。

柳井正氏は著書『一勝九敗』(新潮社)の中で「10回新しいことを始めれば9回は失敗する。しかし、1の成功の積み重ねが今日のユニクロをつくっている」という趣旨のことを述べています。

今回の案件はまさにこれでした。何十本と配信したクリエイティブのほとんどは期待した反応を得られませんでしたが、その一つひとつが「この方向ではない」という確かなデータになり、最終的に勝ち筋を浮かび上がらせてくれた。回り道に見えた道が、振り返れば最短ルートだったと感じています。

広告運用の体制は各社で異なりますので、ベストな進め方はそれぞれで検討いただければと思います。ただ、「試行回数を担保する環境をまず整える」という意識の部分は、体制を問わず参考にしていただけるのではないでしょうか。

まとめ

今回の事例を通じて最も強く感じたのは、「試行回数を担保する環境づくり」こそが成果への最短ルートだったということです。クリエイティブの当たり外れは事前に予測しきれませんが、外れた結果から学び、次に活かせる体制があれば、勝ち筋は必ず見えてきます。

以下の観点で、現在の運用を振り返ってみてください。

  • 訴求の振れ幅を大きくとり、ユーザーに響くメッセージを探索できているか
  • 勝ち筋が見えた訴求を横展開し、成果を最大化できているか
  • 月に何回の仮説検証ができているか。その回数は十分か
  • 成果が出ない期間を「データの蓄積」と捉え、撤退判断も含めてネクストアクションに活かせているか
  • 広告主・制作者を含むチーム全員が、同じ戦略意図を共有できているか

広告運用が、冒頭で記載した「孤独な戦い」のように感じているのであれば、改善できる余地は大きく残っているかもしれません。チームの力を存分に発揮し、勝てる広告運用を目指しましょう。

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