If you want to go fast, go alone, if you want to go far, go together. To solve the climate crisis, we have to go far. Quickly.
ー1人のほうが早く、チームのほうが遠くへ行ける。気候危機を乗り越えるために、わたしたちは遠くへ、それも早くいかなければならない。
ノーベル平和賞を受賞した第45代アメリカ副大統領のアル・ゴア氏が、環境問題に対して述べた言葉です。1人とチームにはどちらにも利点があることを認めた上で、スピードもインパクトもともに重要なのだと説いています。これはどんな問題解決にも通じますよね。
では早く遠くへ行きたいとき、わたしたちはどんな方法をとれるでしょうか。1人でも遠くへ、チームでも早く行くには何ができるでしょうか。この問いに対する一つの答えは、質問によって互いから学び合うことだと筆者は考えます。質問は、チームをより早く遠くへ運ぶ力を持っているからです。
この記事では、個人が組織で働く意義を深め、組織がより良い社会を創るために、質問が果たす役割について紹介します。
なぜ質問するほど成長が早いのか?
「活躍する人の特徴は?」という、業界や職種を問わず注目を集める普遍的な問い。
専門的な技能が必要な場合はその限りではないですが、「よく質問する人ほど成長が早い」あるいは「意思決定の数が多いほど早く成長する」現象は、仕事に限らずおおよそどんな分野においても再現性があるといえるのではないでしょうか。
人がインプットとアウトプットを繰り返して成長するなら、質問ほど有用なツールはありません。
言語化によって自分の思考に形を与えながら現在地を確認し、相手から必要な情報が得られるように整理し、他者からの助言を元に考えをブラッシュアップする。
質問は攻守のバランスが取れた成長プロセスに他ならないからです。双方向のコミュニケーションが増え、お互いへの理解が深まるのもうれしい副産物ですよね。
加えて質問は、姿勢や理解度のバロメーターにも、物事が好転する起爆剤にもなりえます。
質問は自分で決めながら前に進むための第一歩となり、意思決定のチャンスや世界への接続点を増やします。物事の習得は「まず問いより始めよ」といっても過言ではありません。
ですが質問は双方向のコミュニケーションでもあるので、その有用性をいくら理解したところで、1人の心がけや行動だけでは成り立たないところがありますよね。
そこで対をなすのが質問を促す”仕組み”です。
アナグラムでは精度の高い情報によって疑問をノータイムで解決するため、slack上に「ヘルプセンター」なるチャンネルを設けています。
質問の大小を問わず何でも訊いてよい場所で、投稿される質問数は平均して1日に4-5件ほど。判断材料を得て、自ら意思決定するためのライフラインとして機能しています。
コミュニケーションは対面のほうが捗る、という意見には一定以上の合理性があるでしょう。ですがヘルプセンターは、質問のハードルをあらゆる面で下げるだけでなく、制約をむしろ逆手に取り会社全体のリソースを結集しやすくして、わたしたちが組織で働くメリットを最大化しています。
質問がチームにもたらす化学反応
質問への積極性は、もちろんチームにも多大な恩恵をもたらします。自分と違う環境で過ごしてきた他者ほど、ランダムな化学反応が起こせる相手はいないからです。
人の発想や行動には、過去の経験が大きく影響します。自分の体験が元になる一次情報のみならず、他者の経験を見聞きした疑似体験も同様です。
もし各々が持ち合わせた体験の解像度✖幅✖数の総量によって、チームが発想できるポテンシャルが決まるのだとしたら、新しい結合を促して発明のきっかけを増やすツールこそ、質問なのではないでしょうか。
例えば過去に「これだ!」と思うアイデアが浮かんだとき、どんな状況にあったか思い出してみてください。たくさん試行錯誤して考えた末の、ふとした瞬間ではなかったでしょうか。
それはきっと集めてきたアイデアの種が、ある程度の時間をかけて熟成し、最後のトリガーとなる外部の刺激に反応して変化したからです。
世の中やクライアントが驚く成果を出すためには、予想可能な延長線上を超えていかなければなりません。
手元のアイデアが新鮮さにかけるなら、一見関係なさそうに見える分野からも学び、思い込みの垣根を壊して、新しく掛け合わせるのが近道になる場合があります。
情報量や質問の機会は意識的に増やせるもの。
アナグラムでは特に制約がない限りにおいては、案件に関するチャンネルを担当外にもオープンにしています。また意見交換の場として、週に1度グロースハックという勉強会を10年以上継続してきました。
ビジネスモデルの構造上の限界を超えやすくなったり、多様なバックグラウンドの魅力を引き出したりと、質問がチームへもたらすポジティブな作用は1つではないのです。
質問によって他者の思考にアクセスし、自分の意思決定に活かす。このスタンスが文化として根付くと、組織が前にすすむスピードは何倍にも加速します。
かつて文明が飛躍するきっかけとなった歴史上の出来事に、イタリアに始まったルネサンスがあります。
当時中心となったフィレンツェという街には、異なるアイデアが交差する場所として、画家や彫刻家、建築家や哲学者などさまざまな個性が集結し影響を与えあったそうです。
大きな功績の裏で、彼らも互いに質問を歓迎しあっていたのではないでしょうか。
チームに身を置くなら“質問しないと損”
人が質問せざるをえないのはどんなときでしょう。疑問が湧いたとき?もっと知りたいと思ったとき?それとも質問による成功体験を得たとき?何にもまして強烈な動機づけになるのはきっと「質問しないとむしろ損である」と鮮明に認識できた瞬間です。
その上で、筆者はチームに身を置くなら質問しないと損だと考えています。簡単な会話のきっかけになるのはいうまでもなく、質問は「自分やチームの数年先も含めた未来」を左右する大きな鍵だからです。
加えて何より無視できないのは、質問と自己決定のサイクルを繰り返し判断の精度が上がれば、より責任ある意思決定の機会に恵まれやすくなるという事実です。つまり、レイヤーが上がり、関わる人数が増え、自分の選択の影響が及ぶ範囲も広がるのです。
アナグラ厶には挙手が伴わない仕事はありません。担当する案件だけでなく、配属においても同様です。上長候補は自分を含めた既存メンバーとの相性を考慮に入れつつ挙手し、自らチームを構成する経験も積めるようになっています。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
これはビスマルクの格言です。直接見聞きした自分の経験から学ぶだけでは不十分で、他者の失敗や教訓も自分の糧とするのが賢明だと説くのですね。
この表現を借りるならば、責任が増すとそれだけ自分事が増え、学びの対象となる事柄や相手も増えていきます。結果として実力が底上げされ、1人で食べていける力も増していくのです。
チームに身を置くなら、質問しない手はないですよね。
他者への敬意と好奇心がチームを早く遠くへ運ぶ
質問とは、その瞬間目の前にある疑問を解消するだけのものではありません。今選ぶ「質問」のアクションはいっときの効果で終わらず、長期的な未来に繋がっていきます。質問によって情報を得ては自己決定するサイクルが、成長を加速度的に押し上げ、結果として決裁の機会や判断の重みが増すからです。
もちろん、質問はむやみにすればいいわけではありません。正確な言語化や他者への敬意と好奇心など、土台やスキルがあってはじめて成立するものです。
ですがそれができれば、質問はまだ見ぬ発明の種や今は想像できない未来を連れてきます。つまり自分と、自分が属するチームを早く遠くに運ぶのです。
この記事で紹介してきたことはアナグラムの”当たり前”といえます。仕組みと文化が手伝い「広告運用に関する、誰も解決できない疑問」や「質問を疎まれる場面」はほとんど見かけないといって差し支えありません。
”当たり前”というものはとかく軽視されがちですが、一朝一夕には築けず、相応のコストをかけて初めて得られる資産でもあります。
質問を取り巻く得難い”当たり前”はチームである意義を何倍にも大きくしてきました。
アナグラムは「1人でも食べていける力」を大切にする組織ですが、それでもわたしたちが組織をなす理由はここにあるのです。