さまざまなビジネスにおいてEC売上の伸びが著しいと言われて久しいですね。私たち広告運用者も、ECをはじめとしてオンラインでユーザーに対してどのようにアプローチし、オンラインで如何にして購買行動を起こしてもらうおうかと、頭を使い手を動かしていることが多いかと思います。
ところで、日本におけるBtoC商材のEC売上率はどの程度かご存知でしょうか??
なんと6.22%という調査もあります。90%以上はオフラインの売上に依存しているということになりますね。
参考:【2019年版】国内EC市場のEC化率|BtoCとBtoBをプロが徹底解説
つまりいくらEC売上の伸びが顕著であっても、オフライン店舗の売上のほうが大きいビジネスがまだまだ多いのが現状です。その中には実店舗への誘導に予算を割いたほうがより伸びるビジネスもありそうです。
では実店舗への誘導のためにはどんな打ち手があるしょうか?折込チラシもいいかもしれません。でも実は、私たち広告運用者が得意なオンライン広告にも実店舗誘導に適した打ち手があるんです。
本記事では、広告を店舗誘導に活用する際に欠かせない来店コンバージョン計測の仕組みと、特に来店促進向けの広告手法が充実しているGoogle 広告における来店コンバージョンに最適化された配信メニューをご紹介します。
目次
来店コンバージョンとは?
「来店コンバージョン」とは、オンライン広告のクリックや閲覧が、小売店や飲食店、自動車販売店などの実店舗への来店につながっているか、効果を把握する方法のひとつです。オンラインでユーザーの購買行動が完結しないビジネスでも、よりキャッシュポイントに近い箇所の効果測定ができるため、より広告費の投資対効果が見えやすくなり、広告運用に活かせるのが大きなメリットです。
来店コンバージョン計測の仕組み
Google 広告の来店コンバージョンは、匿名で収集されたデータに基づいて「推定」されます。「推定」としているのにはつぎの2つの理由が考えられます。
- 個人のプライバシー保護のため
- 取得できないデータを補うため
ロケーション履歴はGPSシグナルに加えてWi-Fiからのシグナルも組み合わせた三角測量によって計測されています。そのため、ビルの何階のどの店舗(例:渋谷パルコ6Fのポケモンセンター)に滞在したのか、という粒度での計測が可能になっています。
参考:三角測量
Google 広告の来店コンバージョン計測の要件
来店コンバージョン計測には導入条件があり、下記3つをすべて満たしている必要があります。
1.GoogleマイビジネスとGoogle 広告アカウントの連携
実店舗への集客にあたりマイビジネスの設定は重要性になっているので、来店コンバージョン計測をするしないに関わらず、まずは確実に設定しておきましょう。その上でGoogle 広告アカウントをGoogleマイビジネスと連携することが必須です。
来店コンバージョン計測のためにGoogleマイビジネスでクリアすべき条件は下記になります。
- 対象国内に複数の実店舗がある。(利用できるかはGoogleの窓口へ確認が必要)
- Google マイビジネス アカウントに各店舗のビジネス情報を作成している。
- リンクされたビジネス情報の 90% 以上について Google マイビジネスでオーナー確認が済んでいる。
ウェブサイトにおけるコンバージョンと異なり、すべてのアカウントで計測できるわけではない点は注意が必要です。
2.十分量のクリックやインプレッションが発生している
来店コンバージョン計測が可能なデバイスは、上述したとおりロケーション履歴をオンにしているデバイスのみである関係から、管理画面に計上される来店コンバージョン数は実際の来店数ではなく統計処理を経た推計値にならざるを得ません。
そのため来店コンバージョン数が「統計的に信頼できる数値」であり、かつユーザーのプライバシー保護の観点から個別の来店に紐づく個人の特定ができないように配慮する必要があることも相まって、「十分量(具体的な閾値は非公表)」のクリックやインプレッションが発生しているアカウントしか、来店コンバージョン計測をおこなうことができない仕様になっています。
3.住所表示オプションを有効にしている
広告に会社や店舗の住所、地図、または距離を追加表示できる住所表示オプションもアカウントに設定しておくことが必要です。
参考:来店コンバージョンについて - Google 広告 ヘルプ
来店コンバージョン計測やGoogle 広告とGoogleマイビジネスの連携については、アナグラムブログでも既に解説記事がありますのでご参考ください。
参考:GoogleマイビジネスとGoogle 広告の連携方法とよくある3つの質問
Google 広告の来店コンバージョン計測範囲
なお、来店コンバージョンは、検索・ショッピング・ディスプレイ・動画キャンペーンと、ひと通りの広告配信で計測可能です。
検索広告の場合は広告をクリックしたユーザーが対象となります。ディスプレイ広告はクリックに加え、視認範囲(画面内に広告の 50% 以上が 1 秒以上表示)のインプレッションもビュースルーコンバージョンとして計上されます
また、動画広告であれば対象動画広告を「視聴」したユーザーが計測の対象となり、下記のいずれか満たすことで「視聴」したと定義されます。
- 30秒以上動画を再生(30秒以上の動画)
- 動画を再生完了(30秒以下の動画)
- 動画をクリック
Google 広告で活用できる配信手法の多くをカバーできている状況ですね。
来店コンバージョンを利用できるGoogle 広告の配信手法
Google 広告には来店コンバージョンへの最適化に適した広告配信手法が豊富にあります。各手法を実施する際の要件と特徴についてまとめてみましょう。
ローカル検索広告
広告掲載先 | Google検索ネットワーク
Googleマップ |
配信アセット | 通常の検索連動型広告+住所表示オプション |
入札 | 手動入札・自動入札 |
ポイント | 来店意欲の高いユーザーのマイクロモーメントを捉えることが可能
来店数だけでなく、問い合わせ電話数も最適化対象に含められる |
ローカル検索広告は掲載面にGoogleマップが含まれているため、来店意欲の高いユーザーに最高のタイミングで直接アプローチできるのがポイントです。たとえば、あなたが新宿のラーメン店のオーナーだとして、Googleマップで「新宿 ラーメン」と検索しているユーザーに、Googleマップの検索結果の一番上に自身のラーメン店の情報を見せられるとしたらすごく価値がありそうですよね。
アナグラムブログでもローカル検索広告について解説していますので、細かい設定方法や注意点などを知りたい方は確認してみてください。
参考:ローカルビジネスには欠かせない、Googleマップに表示できる「ローカル検索広告」とは?
ディスプレイロケーション広告
広告掲載先 | Google ディスプレイネットワーク |
配信アセット | 通常のバナー広告orレスポンシブディスプレイ広告
+住所表示オプション |
入札 | 手動入札・自動入札 |
ポイント | セール情報などとセットでビジュアルによる訴求することで潜在層への来店促進が可能 |
参考:住所表示オプション付きのディスプレイ広告を作成する - Google 広告 ヘルプ
ディスプレイロケーション広告は、ローカル検索広告のディスプレイ広告バージョンです。潜在層にアプローチしやすいディスプレイ広告と住所表示オプションの組み合わせは、配信面や訴求・ターゲティングやプレースメントの工夫次第で、大きな効果を生む可能性があります。
注意点としては目標なしのキャンペーンでしか作成できないフォーマットであるという点と、2020年3月現在は限定されたアカウントでのみ作成可能という2点です。
ローカルキャンペーン
広告掲載先 | Googleマップ
Google検索ネットワーク YouTube Googleディスプレイネットワーク |
配信アセット | 広告見出し(必須)
説明文(必須) 行動を促すフレーズ(必須) 最終ページURL(必須) 1:1の画像・1.91:1の画像・1:1のロゴ(各1枚以上・計20枚以下) 動画(必須・10秒以上。要YouTubeにアップロード) |
入札 | 自動入札のみ |
ローカル在庫との連携 | 可能(別途マーチャントセンターと連携の必要あり) |
ポイント | 多店舗展開をするチェーンや多くのリテールに卸しているメーカー向けのメニュー |
参考:ローカル キャンペーンについて - Google 広告 ヘルプ
参考:ローカル キャンペーンの作成 - Google 広告 ヘルプ
ローカルキャンペーンはローカル検索広告とディスプレイロケーション広告と合体させ、YouTube動画広告も加えて配信し入札は自動入札のみという、Google 広告のトレンドを全部のせしたようなメニューです。2020年3月現在は特定広告主限定メニューとなっています。
またThink with Googleに掲載されているサイクルベースあさひさんの事例では、ローカルキャンペーンによる来店CPA(クリックスルー)は106.6円、来店コンバージョン率(発生したクリック数に対する来店数の割合)は21.2%となっています。
参考:Google 広告と Google マイビジネスを活用し、売上アップと来店コンバージョンの計測に成功ー株式会社あさひの事例
様々な来店コンバージョン計測プラットフォームを試したことのある筆者の私見ですが、上記実績は率直に言って衝撃的に良い数値です。あらゆるパターンの広告素材を準備する必要があったり、そもそも多店舗展開していることが前提であったりと、導入ハードルはかなり高いのですが、とにかく来店を促したいというシチュエーションならば、第一選択になりうるメニューと言えます。
ローカル在庫広告
広告掲載先 | Googleショッピング広告枠 |
配信アセット | データフィード(Googleマーチャントセンターとの連携) |
入札 | 手動入札・自動入札 |
ポイント | 特定の商品に関する検索行動を起こしているユーザーに対して近隣の実店舗の在庫状況を知らせることができる |
ユーザーの現在地や検索語句に応じて、実店舗の在庫状況をショッピング広告枠に記載することができるメニューです。
「検索→実店舗へ来店→実店舗での購入」というユーザーの行動を促すためには、来店してもらう実店舗の在庫の有無を検索結果に明示できることの大きなメリットは想像に難くないでしょう。
実店舗在庫とGoogleマーチャントセンターの連携が必須なため、導入ハードルはなかなか高いのですが家具や家電など商品を実際に手にとってもらうことが購入のきっかけになるビジネスならばトライする価値は高いと言えます。
ローカルカタログ広告
広告掲載先 | Googleディスプレイネットワーク |
配信アセット | データフィード(Googleマーチャントセンターとの連携) |
入札 | 手動入札・自動入札 |
ポイント | 店舗在庫のカタログをディスプレイ広告面で配信できる |
ローカル在庫広告のデータフィードを用いて、ディスプレイ広告の配信面に商品カタログのような形式で配信できる手法です。リアルタイムに店舗在庫状況がわかる、オンラインチラシのようなイメージです。紙の新聞折込チラシの進化版とも言えるかもしれません。ローカル在庫広告を実施している場合にはセットで実施したいメニューです。
参考:ローカル カタログ広告について - Google 広告 ヘルプ
オンライン広告による来店施策実施の判断基準
「来店を促進する広告が向きそうなビジネスをやっているし、とりあえず配信してみよう!」と、見切り発車で始めるのもありえなくはないです。しかし予算を投下するからには、その施策のポテンシャルを事前に見極め、投資判断ができるならばそれに越したことはありませんよね。
この投資判断の基準になるのが、来店コンバージョンあたりの単価の上限(上限来店CPA)です。次の計算式で上限来店CPAを算出することが可能です。
上限来店CPA=平均購入単価×購入率×売上総利益率
※購入率=購入者数÷来店者数
もちろん、平均購入単価や購入率は時期により大きく変動するパラメータです。たとえばセール期間中などは購入率が上がりそう、などは容易に想像できますよね。そのため「来店促進施策を打つタイミングでの予測値」をクライアントと入念にすり合わせることが重要になってきます。
というわけで、上限来店CPAがわかれば、これを基準にしてスマート自動入札の目標CPAや、推定コンバージョン率から逆算した手動入札単価の基準ができます。
参考:もう迷わない、適正なリスティング広告の予算とCPAの決め方
ここで想定される来店CPAが上限を大幅に上回ってしまうようなら、明らかに投資対効果が見合わないメニューになると考えられます。入札調整やターゲティングやキーワード設定の工夫、広告での訴求内容など、いわゆる運用調整でも改善の余地がなければKPIの見直しや来店を広告の目的とするのか再検討が必要でしょう。
まとめ
Google 広告の来店コンバージョン計測は意外と歴史が古く、日本では2015年10月からサービス提供がなされていますが、筆者の肌感覚ではそれほど活用されていないという印象です。
その理由を考えてみると、私もかつてそうだったのですが「Web広告はオンラインで完結するもの」という思い込みが少なからずあり、Web広告でオフラインの行動を促したのち効果測定までできるという知識や発想がそもそもなかったからという可能性がありそうです。
ここまで読んでいただいた皆様は、上記の思い込みからは既に自由になっているかと思いますので、本記事でご紹介した来店コンバージョン最適化配信メニューもまずは皆様の打ち手の道具箱に整えておき、然るべきクライアントと然るべきタイミングを見極め実施していただければ幸いです。