作って終わりじゃない!”運用”するためのFacebook インスタントエクスペリエンス(旧:キャンバス)の制作・分析手法

作って終わりじゃない!”運用”するためのFacebook インスタントエクスペリエンス(旧:キャンバス)の制作・分析手法
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※2018年9月より「キャンバス」は「インスタントエクスペリエンス」に名称を変更しました。

Facebookのキャンバス広告がローンチされてから1年半が経過しようとしていますが、高いポテンシャルを持っている広告フォーマットであるにも関わらず日本では相変わらずお目にかかる機会が少ないです。従来の広告フォーマットよりも制作コストが多く掛かりがちなため、「提案しにくい」「滑るのが怖い」など、つい腰が重くなってしまうのかもしれません。

そんなあなたに、キャンバス広告に取り組むべきかの判断方法や、もし広告効果がイマイチだったとしても「作って終わり」にならないための制作・分析手法をお伝えします。

キャンバス広告の魅力はその訴求力・表示速度だけでなく、他の広告フォーマットよりも深い分析が可能である点も見逃せません。この記事ではキャンバス広告の「分析」に焦点を当てて、レポートの数値から改善点を探り「運用」するためにどのようなことを意識するべきかお伝えしていきます。

キャンバス広告の特徴や仕様など、基本的なことはこちらの記事もあわせてご確認ください
参考:元Webデザイナーが教える、Facebookキャンバス広告導入のメリットと制作のポイント


キャンバス広告を制作する前に把握しておきたい4つの注意点

キャンバス広告が必要なケースを正しく見極め、キャンバス広告の制作が「手段の目的化」になってしまわないために、どんなことを考えれば良いいのか整理してみましょう。

その課題はキャンバス広告で解決できるのか?

Facebook広告には通常の静止画の他にも動画やカルーセル、最近ではコレクション広告など様々な広告フォーマットが用意されています。それぞれに得意分野があり、現在抱えている課題を解決するにはどの広告フォーマットが適切なのか判断していく必要があります。

ではキャンバス広告はどういった課題の解決に向いているでしょうか?キャンバス広告の特長は大きく別けて「表現力が他の広告フォーマットよりも高い」「表示速度が通常のWebサイトよりも早い」という2点でしたね。キャンバス広告が力を発揮できる例としては、下記のようなケースがわかりやすいでしょう。

  • 従来の広告に表現力に関する課題がある(競合との違いを伝えにくい、商材が複雑、など)
  • 従来のLPに表示速度に関する課題がある(表示速度が遅い)

反対にいえば、これらに該当しない場合は本当にキャンバス広告が最善策なのか?リソースを捻出する価値があるのか?ということを考えるべきです。

例えば「お問い合わせ」の獲得を目的とした広告で「フォームの項目が多過ぎて離脱している」という仮説があるのなら、キャンバス広告で表現力や表示速度を改善することは課題に対して施策がズレているといえます。このような場合はウェブサイト側のフォームの項目数を見直すか、リード獲得キャンペーンを試してみるなど、クリエイティブ以外の方法から試していくべきでしょう。

モバイルのFacebookニュースフィードにしか配信できない

キャンバス広告を配信する広告セットは下記の条件を満たしている必要があります。

  • デバイスはモバイルのみ
  • 配置はFacebookニュースフィードのみ

デスクトップニュースフィード、Instagram、オーディエンスネットワークなどはキャンバス広告の表示に対応していないため、広告セットはこれらを除外した設定にしなくてはなりません。なお、同一のターゲティングでキャンバス広告用とそれ以外の広告セットを作成すると自社の広告同士で入札し合ってしまうためお勧めしません。

そのため、キャンバス広告を導入しなくとも十分コンバージョン率が高いターゲットに対してキャンバス広告を導入しても、かえってリーチを狭めるだけになってしまうかもしれません。従来の広告フォーマットではコンバージョンしなかったターゲットに限定してキャンバス広告による強力な訴求を試し、主力になっているターゲットは最大限リーチを広げるといった住み分けをするのも一つの方法ですね。

広告の目的がキャンバス広告に与える影響を理解する

キャンバス広告は下記を目的としたキャンペーンで利用可能です。

  • トラフィック(ウェブサイトクリックとアプリのエンゲージメント)
  • アプリのインストール
  • ブランドの認知度アップ
  • リーチ
  • エンゲージメント(ページへのいいね!)
  • コンバージョン
  • 動画の再生

紛らわしい点として「トラフィック」を目的としたキャンペーンでは、ニュースフィード上の広告をクリックしてキャンバスが展開されることに最適化されます。キャンバス内のリンクをクリックし、ウェブサイトへのトラフィックを増やすことではない点に注意しましょう。

参考:キャンバス広告に使用できるFacebook広告の目的は何ですか。 | Facebookヘルプセンター

通常の広告で十分なクリエイティブテストをしたか?

キャンバス広告はしっかりしたものを制作すればその分、制作工数も多くなっていきます。そのため、最初からキャンバス広告に着手してキャンバス広告のみでクリエイティブのテストを回すのは制作・分析に必要な工数を考えれば避けたいところです。まずは通常の静止画など比較的クリエイティブテストが容易な広告フォーマットで傾向を把握したうえで、キャンバス広告の制作に着手すると無駄が無くお薦めです。

これらを踏まえ、下記のような場合はキャンバス広告を導入すべきか慎重に判断したほうが良いでしょう。

  • 課題に対してキャンバス広告よりも適切な解決策がある。または課題が明確でない
  • キャンバス広告が配信できないプレースメント(Instagramやオーディエンスネットワークなど)のパフォーマンスが良好である
  • 十分なクリエイティブテストが行えていない

どんな構成・デザインにすれば良いのか

キャンバス広告に取り組む前に注意したいことについて解説しました。これらを考慮したうえでキャンバス広告が効きそうだ!と判断できたとして、次に気になるのがキャンバスの構成です。一体どんなデザインにすれば良いのでしょうか?どんな要素を盛り込むか、についてはクリエイティブのテストである程度判断できていたとしても、ただ単にフルスクリーンに対応させた大きな画像を掲載すれば良いという単純な話でもなさそうです。

ここで思い出してほしいのが、冒頭でも触れた「分析」という要素です。他の広告フォーマットよりも深い分析が可能であるというキャンバス広告の強みを活かすために有効な構成について紹介します。

どんな分析が可能か把握したうえで制作する

キャンバス広告は他の広告フォーマットよりも深い分析が可能ではあるものの、分析できることとそうでないことがあります。事前に把握しておきましょう。

・キャンバスが展開された数
ニュースフィード上の広告がクリックされ、キャンバスが展開された回数です。もしこの数字が想定よりも少ない場合は、キャンバスの内部を変更するよりも、まずは興味を持ってもらうことを重視すると良いでしょう。「リンクのクリック」から確認できます。

・キャンバス内部のリンククリック数
キャンバスに設置したリンクがクリックされた回数で、どの画像やボタンに設置したリンクが何回クリックされたかまで分析可能です。キャンバスは展開されているものの、リンクのクリック数が多くない場合はボタン部分の文言を変更するなど工夫してみましょう。こちらも「リンククリック」の指標から確認可能です。※レポートの内訳でキャンバスコンポーネントを設定することで分析可能です。

・キャンバスが閲覧されている時間(秒単位)
キャンバスが平均で何秒閲覧されているか知ることができます。Google アナリティクスでいう滞在時間にあたるものです。一概に長いほど良いとは限りませんが、伝えたい情報の量に対して閲覧時間が短すぎる場合は要注意です。「キャンバスビュー時間」という指標で確認できます。

・キャンバス内で閲覧されているコンポーネントの内訳
コンポーネントとは画像やテキストなど、キャンバスを構成する要素のことです。この指標では、キャンバス内の画像やテキストなどがそれぞれどのくらい閲覧されているかの内訳を知ることができます。例えば全体の90%以上がキャンバスの最上部に集中しているのであれば、ほとんどスクロールされていないことが分かります。「キャンバスコンポーネント期間の割合」という指標で確認できます。

・キャンバスビューが閲覧されている割合
キャンバスがどのくらいスクロールされているかの平均を知ることができます。例えば50%であれば平均では半分くらいまでキャンバスが閲覧されていることが分かります。「キャンバスビュー率」という指標で確認できます。

キャンバス広告で分析可能な指標について噛み砕いて説明しました。詳細やレポートへの反映手順はヘルプページもあわせて参照してください。

参考:キャンバス広告に関してどのような指標をトラッキングできますか。 | Facebookヘルプセンター
参考:Facebookのキャンバスレポートを理解する | Facebookヘルプセンター

データ分析しやすい構成とは

キャンバス広告では「何がどれくらい見られているか」の分析が可能であることが分かっていただけたと思います。つまり、有用な分析を行うためにはキャンバスのコンポーネントの数をある程度多くしていく必要があるのです。

分析しやすい例と、分析しにくい例

例えば、画像1枚のみで構成されたキャンバスがあったとします。これではオーディエンスがキャンバス内の何に興味を持ち、どこで離脱してしまったのか知ることはできませんし、キャンバスを閲覧する秒数は興味を持ったとしても持たなかったとしてもそれほど長い時間にはならないでしょう。このような構成でも納得できる広告効果が上がっていればまだしも、そうでない場合は一体どこを改善すれば良いのかレポートから導くことはできず「キャンバスやってみたけどダメでした」で終わってしまいます。

コンポーネント(画像やテキストなど、キャンバスを構成する要素のこと)の数を増やし分析しやすい構成にすることで、こういった事態は避けられるでしょう。分析のためにデザインに変更を加えるのは一見すると本末転倒なようですが、そもそもなぜキャンバス広告に取り組んでいるのか振り返ってみましょう。

表現力や表示速度の改善によって課題が解決できる見込みがあったからですよね。伝えたいこと・伝えるべきことが豊富にあるからこそ、キャンバス広告という選択に至るはずです。そうであれば、そもそも画像一枚で完結するようなデザインにはならないでしょう。しっかりと作り込んだキャンバス広告であれば自然とコンポーネントの数も増え、それが分析にも役に立つという好循環が生まれます。

テンプレートを活用する

2017年6月より、キャンバスのテンプレートがFacebookから提供されています。テンプレートはビジネスの目的ごとに3種類用意されており、このテンプレートに合わせて自社の写真やテキストを入れていくだけでキャンバス広告が作成できるようになっています。デザインに自信がなければこちらを活用するのもひとつですね。

参考:Facebookキャンバス広告でビジネス目的ごとのテンプレートを提供開始

分析の仕方

ここまで説明したようにキャンバス広告は広告でありながら、ある程度踏み込んだ分析も可能です。キャンバス以外の広告フォーマットであれば、クリエイティブのどこに問題があるのかは様々なパターンでテストをして導き出すしかありませんが、キャンバス広告であればキャンバス内のどこがボトルネックになっているのか、レポートの数字を根拠に見つけることが可能です。

ボトルネックの見つけ方

キャンバス広告で分析できる指標をヒントに、どこを改善すれば全体に与えるインパクトが大きくなるのか、ボトルネックを見つけましょう。

例えば、キャンバスの上部で多くのオーディエンスが離脱しているのにそれ以降の部分を修正してもあまり意味がないですよね。また、特定のコンポーネントを境に「キャンバスコンポーネント期間の割合」が急落しているようであれば、その部分が原因でそれ以上スクロールする気が失せてしまっているのかもしれません。

キャンバス広告を分析する際は広告全体のレポートだけで安易に判断せずに、コンポーネント毎の内訳まで見て正しい判断をしていくことが大切です。

分析できないもの

カルーセルの内訳や、動画の再生時間は現時点ではレポートで確認することができません。ただし大まかに推定することは可能です。カルーセルであれば「キャンバスコンポーネントの割合」が他のコンポーネントよりも長いようであればしっかりとスライドしてもらえている可能性が高そうです。動画の再生時間は「キャンバスビュー時間」と「キャンバスコンポーネント期間の割合」から推定の再生時間を算出可能ですね。

最後に

キャンバス広告であれば、オーディエンスが広告のどこに興味を持ちどこで興味を失ったのかを可視化することができます。その分析データ自体がブランディング、ダイレクトレスポンス問わず財産になるでしょう。今後のクリエイティブ制作はもちろん、Facebook以外の媒体に出稿する広告やランディングページ、場合によっては商品・サービス自体の改善のヒントにもなるかもしれません。

また、キャンバスを展開した人のカスタムオーディエンスを作成することもできます。ブランド認知の目的でキャンバス広告を配信し、閲覧した人に対して別の広告で訴求するといった展開も効果的です。

多くのクリエイティブテストや、少なくないであろう制作リソースの上に成り立つキャンバス広告。余すことなく活用していきたいですね!

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