
調べ物をしていてイマイチ分からないとき「ひとまず寝かせよう…」と後回しにしてしまう、自分ひとりで実行したタスクで重大な見落としが判明した、なんて経験ありませんか?私は人に頼ることをためらったことが何度もあります。
ためらうということは、「人を頼る」ことには、なにか良くないことがあるのでしょうか?
仕事を進めるうえで発生するモヤモヤやヒヤリとした経験を振り返ると、「あのとき●●に詳しいAさんに聞いていたらすぐに解決したのに」「上司に相談していたらこんな大ごとにはならなかったのに」といった、人に頼ることでもっと良くなっていた仕事や、防げたミスがあることに気がつきました。
人に頼ることで解決する課題はたくさんある。そう考えると、人に頼ることに良くないことはなにも無いように思えますよね。
では、良いことだと分かっているのになぜ、人に頼ることが難しいのでしょうか。


目次
頼りベタな人が頼れない理由
頼りベタさんが周囲を頼れない、頼れていないと感じるのはなぜでしょうか?私自身の経験や周りの人に、頼れない場合にどんなことを考えているのか聞いてみたところ、次のような意見が出てきました。
- 頼ることは、楽をしたりズルをしたりする甘えだと感じる
- 自分ひとりの力で達成したい、身につけたい
- 自分だけで取り組むほうが楽(周囲を巻き込むのが面倒)
- ひとりで出来ない自分がカッコ悪い・恥ずかしい
- 頼まれた人は迷惑なのでは・自分だけでできなければダメだと罪悪感をもってしまう
- 課題を自分ひとりで遂行しない(できない)ことを周囲にどう思われるのかが怖い
わたし自身、とくに新人の頃は「自分で答えに辿り着くべき初歩的なことかもしれない」「忙しいところに質問がきたら迷惑なのでは…」などとぐるぐる考え、結局タスク完了までに必要以上に時間を要し、出来栄えも決して良いと言えないものばかりでした。
実は、仕事ができる人ほど頼り上手
頼りベタな人が人に頼ることをためらう理由として、自分ひとりでやり遂げたい、迷惑をかけたくないといった心理があると述べました。しかし、実は仕事ができる人ほど、周囲の力を上手に活用しています。どうしてでしょうか?
頼り上手さんが人に頼れる理由は、大きく2つあります。1つは目的意識がはっきりしていること、もう1つは人ひとりの力には限界があることを知っているからです。
目的意識をもって行動することで、目標達成のために必要なことを優先的に考えられます。例えば、広告運用に関する知識が不足していたら、専門の広告代理店に任せることで目標に近づけます。目標達成においては、得意・不得意を超えて、効率的に周囲の力を活用することが重要だと理解しているのです。
また、仕事ができる人は、人の力を借りることで新たな視点やアイデアを得られることも知っています。結果として自分の成長が加速し、他者に頼りにされる存在へと変わっていくのです。このように、頼ることは仕事の質を高めるだけでなく、組織全体に良い影響を与える行動でもあります。
アナグラムがグロースハックという取り組みや「1社につき1担当者」でもチーム制を設けているのは、この理由に他なりません。
頼り上手な人が実践している4つのこと
そうはいってもいざ頼るとなると躊躇してしまいますよね。頼り上手になるにはどうすれば良いのでしょうか?ここでは、誰でも実践できる頼り上手なひとが実践している、4つのことを紹介します。
頼るべき範囲を理解する
頼りベタなひとからすると、でも実際にはどこからが頼って良いラインなのか分からないことも少なくありませんよね。
その点、頼り上手な方は次のように頼るべき範囲を理解しているため、迷うこと無く必要なタイミングでひとに頼ることができています。
- 10分調べても分からないとき
- 相手のほうが優れた知見をもっているとき
- 自分の仮説に対して意見やアドバイスが欲しい時
- 自分だけの能力では、業務を進めるうえでボトルネックが生じてしまうとき
「頼ることは、楽をしたりズルをしたりする甘えだと感じる」という方はとくに、このように頼るべき基準を設けておくのがおすすめです。基準を明確にすることで、「頼るべきか迷う」時間を削減し、判断がスムーズになります。
「頼るべき基準」を持つことが大切ですが、ここで重要なのは頼ることと甘えることの違いです。甘えるとは、自己解決できる問題を他者に押し付けたり、責任を放棄することを指します。頼ることは効率的な仕事の進め方であり、甘えとは違うことに注意しましょう。
誰が何に詳しいかを把握しておく
いざ頼ろうと思っても、誰に頼って良いのかわからないと、結局自分で解決するしかなくなり、時間を無駄にしてしまいます。そのため、普段から仕事をするメンバーの業務内容や得意分野を観察し、誰が何に詳しいかを把握しておくことが大切です。定期的なミーティングや日常的な会話を通じて、自然にメンバーのスキルや知識を知る機会を作るのがおすすめです。
さらに、メンバーのスキルを可視化するために、ナレッジシェアの場を設けたり、スキルマトリックス(スキルを分野ごとに表にまとめたもの)を作成することも効果的です。誰に頼れば最適な解決策が得られるかが明確になり、頼る際のハードルが大きく下がります。また、必要に応じて外部の専門家に頼ることも選択肢に含められるとなお良いでしょう。
もし誰に頼るべきか迷った場合には、まずは信頼できる人や上司に相談してみるのが有効です。信頼できる人物は適切なリソースやメンバーを紹介してくれる可能性が高く、結果としてスムーズな問題解決に繋がります。
協力してもらったら結果を伝える
「アドバイスのおかげで大変助かりました。ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えている人は多いと思いますが、結果を伝えているひとは案外少ないのではないでしょうか?
協力してくれた人への結果を報告は、感謝の気持ちを伝える以上に相手にとっても非常に有意義です。結果を通じて、自分の助言がどのように役立ったのかを確認し、今後の業務に活かせるためです。
実際には次のような内容を伝えると、より貢献できると考えています。
結果の報告
いただいたアドバイスやサポートがどのような結果を生んだかを具体的に伝えるのが大切です。たとえば「アドバイス通りに進めた結果、作業効率が向上し、2時間短縮できました」というように、数値や目に見える成果を共有すると、自分の助けが役立ったとより明確にわかります。
どこが役立ったか
「特に○○の方法が効率を上げるのにとても役立ちました」のように、具体的にどの部分が役に立ったのか、どのアドバイスが特に効果的だったかを伝えるとより役に立つでしょう。
改良点や追加の課題
もし一部のアドバイスが思った結果にならなかった場合や、次に取り組むべき課題が出てきたときは、それも率直に伝えましょう。たとえば、「おかげで作業がスムーズになった一方で、次に○○という課題が出てきました」という報告をもらえれば、さらに改善案を考えるきっかけにもなります。
結果を報告することで「協力して良かった」と感じてもらえるため、新たな課題が発生した際にも再びサポートをお願いしやすくなります。「頼まれた人は迷惑なのでは」と考えてしまう方は、結果を伝えることで相手の役にも立っていると考えてみるのがおすすめです。
普段から人間関係を大切にする
人間は感情の生き物なので、普段の人間関係が頼りやすさに影響します。コミュニケーションが希薄だったり、人間関係が悪かったりすると、頼るのはより一層難しくなりますよね。
頼りやすい関係を築くためには、普段から人間関係を大切にすることが重要です。相手に気持ちよく応えてもらうためにも、日常的に感謝の気持ちを示したり、困っている人に自ら手を差し伸べたり、普段の小さな積み重ねをないがしろにしないのが大切です。
ちなみに、テキストでのやりとりが増えた現代では、コミュニケーションにちょっぴり工夫が必要です。
たとえば、次の文章では大きく印象が異なりますよね。
①後半ミスしているので修正してください。
②ここ複雑で少し難しいですよね…!前半はよくできているので、後半はこの資料を読みながらもう一度取り組んでみましょう。
テキストでは自分が思っている以上に冷たい印象を与えかねないことを認識し、受け手の気持ちを想像して感情を乗せて表現することを心がけましょう。
ビジネスチャットの極意についてはこちらの記事でも紹介しています。
まとめ
人に頼ってみると、頼りベタさんの大抵の心配は現実になりません。むしろ思った以上に上手くいき、悪いことは何もないのではないでしょうか。
“一人ですべての物事を完結させなければいけないという勘違い、強迫観念が「自立」です。でも、目指すべきは実は「自律」なんです。”
頼れないというのは、自分でなんでもやらなければと「自立」を目指していると言えるのではないでしょうか。
自分はこんなこともできないのかとネガティブになってしまうかもしれませんが、この記事でご紹介してきたように頼りベタさんの大抵の心配は現実にならず、むしろ上手くいくことが圧倒的に多いはずです。
「『自律』とは、自分で全てを抱え込むのではなく、複数の依存先を持つこと」です。
「人に上手く頼れない…」と悩む責任感の強いあなただからこそ、積極的に人に頼りながら「自律」を目指していきたいですね。
