
広告媒体のコンバージョン計測では、各媒体それぞれに「計測期間」が設けられています。この計測期間は、コンバージョンが発生した際に、どこまで遡って広告の貢献と見なすかを定める期間のことです。
しかし、計測期間は媒体ごとに異なる仕様や設定となっているため、各媒体の計測期間を正しく理解しないと、冒頭のような疑問を持ってしまいます。
この記事では、主要な広告媒体の計測期間の確認方法や設定手順についてまとめました。
※広告配信の初期設定、つまりコンバージョンアクションの設定やコンバージョンタグの設置がすでに完了していることを前提としています。タグの設置から始める方は、以下のGoogleタグマネージャを利用したタグの設置に関する記事などを参考にしてみてください。


目次
計測期間とは?
広告のコンバージョン計測における「計測期間(ルックバック期間)」とは、ユーザーが広告に接触(クリックや表示、動画の視聴)した後、どのくらいの期間までコンバージョンを追跡して計測するかの期間です。
この期間内に発生したコンバージョンは、その広告の成果としてカウントされます。
例えば、計測期間を30日に設定している媒体とします。
ユーザーが広告をクリックし、その30日間以内にコンバージョンが発生した場合、そのコンバージョンは広告の成果として計測されますが、逆に、広告をクリックして31日後に起きたコンバージョンに関しては、広告の成果としてみなされません。
計測期間は成果の適切な評価のために重要
コンバージョンの計測期間は、各広告媒体で共通ではありません。運用型広告の多くの媒体では一定の範囲で日数をカスタマイズできますが、デフォルトの設定期間も異なることが多く、しっかりと把握できていないケースも少なくないのではないでしょうか?
広告の効果を適切に評価するには、まず広告媒体のコンバージョン計測の仕様を把握することが大切です。特に注意するべきは以下の3つです。
- デフォルトの設定
- 計測可能な期間の範囲
- 追跡可能なインタラクション(クリック、表示など)
これらの違いを把握せずに分析を行ってしまうと、次のように誤った判断につながる可能性があります。
- 計測期間が商品の平均検討期間より短く、計測対象から外れたため効果がないと判断してしまった
- 広告経由のサイトアクセスからコンバージョンを効率よく獲得できていると思ったら、クリック以外のインタラクションも対象となっていた
なお他にも、媒体によって管理画面でコンバージョンが計上される対象が異なるという事情もあります。
- クリック(または表示)日が基準
- Google広告
- Yahoo!検索
- Yahoo!ディスプレイ広告
- Microsoft広告
- コンバージョン発生日が基準
- Meta広告
- LINE広告
- ※GA4
コンバージョンに繋がった広告に遡って数値が計上される場合と、コンバージョンが発生した日にそのまま反映されるのとで広告のパフォーマンスの捉え方も変わってきますよね。
計測期間の考え方
ただし、最適な計測期間を定めるのは簡単ではありません。期間を短くすればするほど直接的な効果を把握できますが、間接的な効果を含めた広告の貢献度を可視化しづらくなります。
商品やサービスによっても検討期間が異なりますし、検討の度合いが高めな検索広告と検討段階が浅かったり未検討だったり広いユーザーへアプローチするSNS広告とでも、どこまでを計測範囲とするかは悩ましいですよね。
計測期間 | メリット | デメリット |
---|---|---|
長い場合 | リードタイムが長い商材も効果が追える | 広告の直接的な効果ではない可能性のコンバージョンも計測する |
短い場合 | 広告の直接的な効果に絞って計測できる | リードタイムが長い商材の広告の効果が追えない可能性がある |
計測期間を長く設定した場合と短く設定した場合、それぞれにメリットデメリットがあります。また、対象とするインタラクションも間接的な効果を評価したり、広告運用に反映させたいかだったり、方針によって異なるでしょう。
どこまでを広告の効果と評価するか事前に決めておくことが重要です。
広告代理店であればクライアントと、インハウスの広告運用であれば社内にの関係者と認識の齟齬がないように共有しておくのをおすすめします。
期間の設定について明確な意図がなければ、このあと紹介する媒体ごとの「デフォルトの期間」を用いるのがよいでしょう。
それでは各媒体の詳細を見ていきます。
媒体ごとの計測期間の確認方法と設定手順
コンバージョンを追跡可能なインタラクションは、おもに次の3つです。インタラクションの種類によっても設定できる計測期間に違いがあります。
インタラクション | 説明 |
---|---|
クリック | ユーザーが広告をクリックしていること |
ビュー | ユーザーに広告が表示されていること |
エンゲージ ビュー | ユーザーが動画広告を10秒以上視聴していること |
※各種インタラクションの名称は媒体によって異なるが、全体として説明する場合は便宜上Google広告の名称で記載
また、クリックスルーを除き、ビュースルーやエンゲージメントについては媒体や広告メニューによって対応有無が変わります。
ビュースルーコンバージョン
ビュースルーコンバージョンは、以下の広告媒体で計測できます。
媒体 | 広告の効果と判断される条件(広告をクリックした場合は除く) |
---|---|
Google広告 | ディスプレイ広告:画面内に広告の 50% 以上が 1 秒以上表示された場合 動画広告:ユーザーに広告が表示された場合 |
Yahoo!ディスプレイ広告 | 広告の50%以上の範囲が1秒以上連続して表示された場合 |
Microsoft広告 | オーディエンス広告:広告が表示された場合 |
Meta広告 (Facebook広告) | ユーザーに広告が表示された場合 |
X広告(旧Twitter広告) | ユーザーに広告が表示された場合 |
TikTok広告 | ユーザーが広告を閲覧した場合 |
エンゲージビュー コンバージョン
エンゲージビューコンバージョンがあるのは、Google広告とYahoo!ディスプレイ広告とMeta広告になります。
媒体 | 広告の効果と判断される条件(広告をクリックした場合は除く) |
---|---|
Google広告 | 動画広告において、スキップ可能なインストリーム広告をユーザーが 10 秒以上(10 秒未満の動画の場合は最後まで)視聴するか、インフィードまたは YouTube ショート広告を 5 秒以上視聴した場合 |
Yahoo!ディスプレイ広告 | 動画を10秒以上再生(10秒以下の場合は再生完了)した場合 |
Meta広告 (Facebook広告) | スキップ可能な動画広告を利用者が10秒視聴する、または10秒未満の動画広告の場合はその97%の長さを視聴した場合 |
代表的な広告媒体の計測期間の一覧
代表的な広告媒体の計測期間を表にまとめると以下の通りです。
媒体 | クリックスルーコンバージョンの計測期間 | ビュースルーコンバージョン計測期間 | エンゲージビューコンバージョンの計測期間 | 初期設定後(or 広告公開後)に変更可能か |
---|---|---|---|---|
Google広告 | 1~90日間 (30日間) | 1~30日間 (1日間) | 1~30日間 ※注1 (3日間) | 〇 |
Yahoo!検索広告 | 1~90日間 (30日間) | - | - | 〇 |
Yahoo!ディスプレイ広告 | 7~90日間 (30日間) | 1日間(ビュー発生から24時間) | 1~30日間 (1日間) | 〇 |
Microsoft広告 | 1~90日間 (30日間) | 1分~30日間 (1日間) | - | 〇 |
Meta広告 (Facebook広告) | 1日間 or 7日間 (7日間) | なし、1日間 (1日間) | なし、1日間 (なし) | ✕ |
LINE広告 | 1~90日間※注2 (30日間) | - | - | ✕ |
X広告(旧Twitter広告) | 1,2,3,5,7,14,30日間 (30日間) ポストエンゲージメント ※注3 | オフ,1,2,3,5,7,14,30日間 (30日間) | - | 〇 |
TikTok広告 | 1,7,14,28日間 (7日間) | オフ、1日、7日 | - | ✕ |
※()内は計測期間設定時にデフォルトで設定されている期間
※注1:Google広告の検索広告はビュースルー・エンゲージビューコンバージョンは計測されません
※注2:LINE広告の計測期間の設定は、カスタムコンバージョンのみ設定可能
※注3:X広告は厳密にはポストエンゲージメントなので、クリックスルーではないが便宜上表にまとめているためにクリックスルーで記載
媒体ごとのデフォルトの計測期間の違い
上記の表のとおり、デフォルト計測期間はコンバージョンの種類や媒体によって異なることがあります。
まず、クリックコンバージョンのデフォルト計測期間がビューコンバージョンより長い理由は、クリックはユーザーが広告に対してアクションを起こしているため、広告に興味を持っている可能性が高いと考えられるからです。
そのため、クリックは広告効果をより長期間追跡する価値があるとされ、デフォルトの計測期間は「クリックスルー」の方が長く、「ビュースルー」は短い傾向にあると推測されます。
また、媒体ごとに異なるデフォルト計測期間について明言されている情報が少ないのですが、Meta広告のクリックコンバージョンのデフォルト(そして最大設定可能な)期間が7日間になっていることは、ITPなどのトラッキング規制が影響していると言えます。
Meta広告では、2020年10月にアトリビューション期間のデフォルトが28日から7日に変更されました(28日間のアトリビューション期間は廃止)。
参考:Facebook Ads to Remove 28-Day Attribution Model
今後も、トラッキング規制により、他の媒体でもアトリビューション期間が変更される可能性があります。
ここからは、計測期間の確認方法や設定手順について媒体ごとの説明をします。
Google広告
Google広告の管理画面にアクセスし、左のメニューから「目標」から「コンバージョン」内の「概要」を選択します。
計測期間を確認もしくは変更したい「コンバージョンアクション」をクリック。
(これからコンバージョンの設定をする場合は、「+新しいコンバージョンアクション」をクリック)
「設定」からコンバージョンの計測期間を設定できます。
デフォルトではクリックスルーコンバージョンの計測期間は30日間となっています。変更する場合は、プルダウンから任意の期間を設定後保存をクリックすることで変更ができます。「エンゲージメントビューコンバージョンの計測期間」「ビュースルーコンバージョンの計測期間」も上記のキャプチャ上で変更可能です。
Google広告で、設定できる計測期間をまとめると以下のようになります。
種類 | デフォルトの計測期間 | プルダウンで選択できる期間 | カスタムで設定できる期間 |
---|---|---|---|
クリックスルー | 30日間 | 1週間、2週間、3週間、4週間、30日間、45日間、60日間、90日間 | 1~90日間 |
ビュースルー | 1日間 | 1日間、3日間、1週間、2週間、3週間、4週間、30日間 | 1~30日間 |
エンゲージビュー | 3日間 | 1日間、2日間、4日間、5日間、6日間、1週間、30日間 | 1~30日間 |
計測期間の変更はコンバージョンアクション設定後も可能です。
Yahoo!検索広告
Yahoo!検索広告の管理画面にアクセスし、右上のメニューから「ツール」から「コンバージョン測定」を選択。
計測期間を確認もしくは変更したい任意の「コンバージョン名」をクリックします。
(これからコンバージョンの設定をする場合は、「+新しいコンバージョン設定を作成」をクリック)
設定できる計測期間はクリックスルーコンバージョンのみで、デフォルトで計測期間(クリックスルーコンバージョン)は30日間となっています。変更する場合は、プルダウンから任意の期間を設定後保存をクリックすることで変更が完了します。
種類 | デフォルトの計測期間 | 設定できる計測期間 |
---|---|---|
クリックスルー | 30日間 | 1~90日間 |
Google広告同様、計測期間の変更はコンバージョンアクション設定後も可能です。
Yahoo!ディスプレイ広告
Yahoo!ディスプレイ広告の管理画面にアクセスし、右上のメニューから「ツール」から「コンバージョン測定」を選択。
計測期間を確認もしくは変更したい任意の「コンバージョン名」をクリックします。
デフォルトで計測期間(クリックスルーコンバージョン)は30日間となっていますが、7〜90日間の範囲内で変更が可能です。変更する場合は、プルダウンから任意の期間を設定後保存をクリックすることで変更が完了します。
また、計測期間(動画視聴)に関しても同画面で期間の変更ができます。動画視聴に関しては動画広告を10秒以上視聴した後に発生したコンバージョンが対象となります。動画視聴経由のコンバージョンの計測仕様の詳細は以下の記事をご覧ください。
まとめると、Yahoo!ディスプレイ広告はクリックスルーとエンゲージメントビューの計測期間が設定できますが、一方でビュースルーはデフォルトで1日間となっており変更ができません。
種類 | デフォルトの計測期間 | 設定できる計測期間 |
---|---|---|
クリックスルー | 30日間 | 7~90日間 |
ビュースルー | 1日間(ビュー発生から24時間) | ※変更不可 |
エンゲージビュー (動画視聴) | 1日間 | 1~30日間 |
Google広告・Yahoo!検索広告と同様に、計測期間の変更はコンバージョンアクション設定後も可能です。
Microsoft広告
Microsoft広告の管理画面にアクセスし、左のメニューから「コンバージョン」内の「コンバージョン目標」を選択します。
計測期間を確認もしくは変更したい「コンバージョン目標」をクリック。
(これからコンバージョンの設定をする場合は、「+作成」をクリック)
「コンバージョンの目標の種類」を設定後、コンバージョンの計測期間(ウィンドウ)を設定できます。
デフォルトでは(クリック)コンバージョンの計測期間は30日間となっています。変更する場合は、「コンバージョン ウィンドウ」を選択後に任意の期間を設定後に「次へ」をクリックすることで変更ができます。「ビュースルー コンバージョン ウィンドウ」も上記のキャプチャ上で変更可能です。
Microsoft広告で、設定できる計測期間をまとめると以下のようになります。
種類 | デフォルトの計測期間 | 選択できる計測期間 |
---|---|---|
(クリック)コンバージョン ウィンドウ | 30日間 | 1分~90日間 |
ビュースルー コンバージョン ウィンドウ | 1日間 | 1分~30日間 |
計測期間はコンバージョン目標設定後も変更可能です。
Meta広告(Facebook広告)
Meta広告の管理画面にアクセスし、新しくキャンペーンを作成するか任意のキャンペーンを選択後に、左上の「作成」をクリックします。
広告セットの編集画面から、コンバージョン内にある「もっと見る」を選択するとアトリビューションの設定が可能です。
設定できる計測期間(アトリビューション設定)は以下になります。
種類 | デフォルトの計測期間 | プルダウンで選択できる期間 |
---|---|---|
クリックスルー | 7日間 | 1日間、7日間 |
ビュースルー | 1日間 | なし、1日間 |
エンゲージビュー (エンゲージビュー) | なし | なし、1日間 |
Google広告・Yahoo!広告とは異なり、Meta広告は広告セットの作成の際に計測期間を設定します。注意点としては、広告配信後は計測期間の変更ができません。仮に計測期間を修正する場合は、広告セットを新たに作成し直す必要がありますので注意が必要です。
LINE広告
LINE広告のコンバージョンは、「LINE Tagを用いたコンバージョン計測」と「カスタムコンバージョンによる計測」の2種類があります。「LINE Tagを用いたコンバージョン計測」については計測期間がデフォルトで30日間となっており変更ができません。そのため、カスタムコンバージョンの計測期間の設定方法について以下に説明します。
LINE広告の管理画面にアクセスし、左上の「MENU」をクリック後、「カスタムコンバージョン」を選択。
「カスタムコンバージョンを作成」を選択します。
カスタムコンバージョン作成画面の「有効期間」の入力箇所で任意の計測期間(1〜90)を設定し、ほかの条件項目も設定し「保存」を押すと完了です。なお、一度作成したカスタムコンバージョンの計測期間の変更はできません。
種類 | デフォルトの計測期間 | 設定できる計測期間 |
---|---|---|
クリックスルー | 30日間 | 1~90日間 |
※カスタムコンバージョンのみ計測期間の設定は可能
X広告(旧Twitter広告)
X広告管理画面ログイン後、上部「ツール」から「イベントマネージャー」を選択。
「イベントを追加」もしくは、任意のイベントの「︙」から「イベントを編集」。
イベントの詳細内にある「アトリビューション期間」のプルダウンから任意の期間を設定します。X広告では、ポストエンゲージメントアトリビューション期間とポストビューアトリビューション期間の設定が可能です。
種類 | 内容 | デフォルトの計測期間 | プルダウンで選択できる期間 |
---|---|---|---|
ポストエンゲージメント | 広告へのいいね、リポスト、フォロー、返信、リンクのクリックなどのエンゲージメント後に発生したコンバージョンをX経由とみなす期間 | 30日 | 1日、2日、3日、5日、7日、14日、30日 |
ポストビュー | X広告を見た時はエンゲージメントしなかったものの、その後ウェブサイトにアクセスして発生したコンバージョンをX経由とみなす期間 | オフ | オフ、1日、2日、3日、5日、7日、14日、30日 |
TikTok広告
Meta広告と設定方法が似ていて、広告セット作成の際に計測期間を設定します。
TikTok広告の管理画面から任意のキャンペーンを選択後、「作成」をクリック。
入札と最適化の項目の「アトリビューション設定」の鉛筆マークをクリック。
「アトリビューション設定」で「クリックスルーウィンドウ」と「ビュースルーウィンドウ」をプルダウンから選択。ほかの条件項目も設定し「次のステップ」を押すと完了です。
設定できる計測期間は以下の通りです。
コンバージョン計測期間の種類 | デフォルトの計測期間 | プルダウンで選択できる期間 |
---|---|---|
クリックスルー | - | 1日、7日、14日、28日 |
ビュースルー | - | オフ、1日、7日 |
なお、すでに作成した広告セット上の計測期間の変更はできません。
まとめ
配信する媒体が多くなれば、その分1つ1つの媒体の詳細な設定に注意が行き届きにくくなることがあります。媒体ごとに同じ設定をしているつもりでも、実は計測期間の設定が思ったものと違い、誤った分析や判断につながってしまうかもしれません。
この記事をご参考に改めて、運用している広告媒体はどういった計測期間の設定になっているか、さらにどう設定すればより正確にチャネルを評価できるかを再認識したうえ、広告運用に活かしていきましょう。
