
YouTubeは国内で7,370万人(2024年10月時点)の月間ユーザー数を抱え、企業のマーケティングチャネルとしても活用が進んでいます。
しかし、下記のような悩みを抱えている方も少なくないのではないでしょうか。
- 定期的に動画を投稿しているものの、なかなかチャンネル登録数が伸びない。
- 集客チャネルとしてYouTubeを活用したいが、動画投稿以外特にできていない。
ブランド認知を高め、商品理解を深め、将来の顧客とつながる手段として、YouTubeのチャンネル登録は確かに重要な指標の一つです。
しかし、単に登録者を「数」で追っても、思うような効果は得られません。
登録者がすぐに解除してしまったり、自社のサービスに関心の薄いユーザーばかりを集めてしまっては、広告費もコンテンツ制作も空回りになってしまうでしょう。
本記事では、YouTubeチャンネル登録者を“意味ある形で”増やすために、Google広告の「デマンドジェネレーションキャンペーン」や「動画アクションキャンペーン」を活用した広告配信の具体的な設定手順を解説します。さらに、広告効果を評価する際に注視すべき「登録解除率」や「動画からサイトへの遷移」といった指標についても、実践的にご紹介します。
参考:「好き」と出会える YouTube は、深掘り、行動につながる場所へ


目次
YouTubeのチャンネル登録数を増やすことのメリット
YouTubeチャンネルの登録者数を増やすことは、単なる“数の勝負”ではありません。企業にとっての登録者とは、商品やサービスに対して関心を持ち、継続的に接点を持ってくれる可能性の高いユーザー層――つまり、「将来の顧客候補」として重要な存在です。
特に次の2つの観点から、チャンネル登録者の獲得はマーケティング活動において大きな意味を持ちます。
ブランドとユーザーの継続的な接点をつくれる
チャンネル登録者には、新しい動画が公開された際に通知が届きます。これは、通常の広告やSEOと異なり、“ユーザーの方から関心を示してくれている状態”に近く、プッシュ型とプル型の中間的な接点です。
たとえば、定期的に商品レビューやノウハウ動画をアップしている企業であれば、ユーザーはそのたびに自然と自社ブランドに触れ、好意的な印象を深めていくことになります。
検討フェーズへの貢献ができる
たとえば旅行、不動産、教育サービス、BtoB商材など、購買検討に時間がかかる商材では、ユーザーとの中長期的な関係づくりが重要です。YouTubeでの継続視聴を通じて信頼を醸成し、いざ意思決定のタイミングが来たときに“思い出してもらえる存在”になっているかどうかが成否を分けます。
また、季節的な需要があるアパレルやギフト商品なども、適切なタイミングでコンテンツが届くことで購入や申し込みに直結するケースもあります。
「登録数」だけでなく「登録の質」を意識する
とはいえ、ただ登録者を集めればよいわけではありません。商品と無関係な層に広くリーチしすぎると、登録後すぐに解除されたり、視聴が伸びずチャンネル評価が下がったりと、逆効果になることもあります。
だからこそ重要なのは、「自社の商品・サービスに関心を持つであろう人が、“登録したくなる理由”をきちんと提示できているか」です。
たとえば、次のような要素がそろってはじめて、「登録する価値のあるチャンネル」として認識されるのです。
- 課題解決につながるノウハウが定期的に配信されている
- 更新頻度が安定していてフォローするメリットがある
- コンテンツの質が信頼に足る
安易に登録者の数だけを追うのではなく、ターゲットの課題や関心に応える内容や登録するメリットが伝わるコンテンツを提供し、視聴者が「また観に行きたい」と思ってもらえる情報を発信しましょう。
YouTubeチャンネル登録を促す配信の設定
YouTubeチャンネルの登録者を増やすために有効な手段のひとつが、「Google広告を活用した広告配信」です。特に、オーガニックではなかなかリーチできない潜在層に対して、短期間で接点を持てます。
また、ターゲティング設定を通じて、広告主の商品やサービスに関連するトピックに興味があるユーザーに絞って配信できるため、より見込みの高いユーザーに動画を届けられます。
YouTube登録者獲得に使える2つの広告キャンペーンタイプ
現在、YouTubeチャンネル登録を目的に広告を配信する場合、主に以下の2つのキャンペーンタイプが利用可能です。
配信方式 | 特徴 |
---|---|
デマンドジェネレーションキャンペーン | YouTubeショート、Discover面、Gmail面など多面的な配信が可能。 |
動画アクションキャンペーン(VAC) | YouTube内の検索結果や関連動画に表示。より動画視聴文脈に寄った配信が中心。 |
※2025年7月以降、動画アクションキャンペーンはすべてデマンドジェネレーションキャンペーンにアップグレードされますので、特段理由がない場合は、デマンドジェネレーションキャンペーンでの作成をおすすめします。
参考:動画アクション キャンペーンがデマンド ジェネレーションにアップグレードされます - Google 広告 ヘルプ
Google広告アカウントとYouTubeチャンネルの連携が必須
まず、YouTubeチャンネルの登録を目的とした広告配信を行う場合、事前にGoogle広告アカウントとYouTubeチャンネルのアカウントをリンクしておく必要があります。
この設定をしていない場合、YouTubeに関するコンバージョンが作成されず、広告配信時にも目標を選べない仕様です。
連携がお済みでない場合は、以下の記事を参考にしてみてください。
デマンドジェネレーションキャンペ-ンで配信する方法
ここでは「YouTubeチャンネル登録の増加」を目的としたデマンドジェネレーションキャンペーンの設定手順を紹介していきます。
キャンペーンの設定
①キャンペーン作成画面で、「ブランド認知度と比較検討」の目的を選択します。
②「デマンドジェネレーション」を選択します。
③「続行」をクリックします。
④キャンペーン名を入力します。
⑤キャンペーンの目標として「YouTubeのエンゲージメント」を選択します。
⑥必要に応じて、目標コンバージョン単価を設定します。
⑦予算のタイプと金額を指定します。
⑧「広告グループ1に移動」をクリックします。
広告グループの設定
⑨広告グループ名を入力します。
⑩配信したい地域を選択します。
⑪配信したいユーザーの言語を入力します。
⑫配信対象とするチャネルを選択します。2025年4月時点ではベータ版の機能として、すべてのアカウントで使用できるわけではありません。
参考:デマンド ジェネレーション キャンペーンのチャネル コントロール
⑬広告を配信したいオーディエンスを設定します。
⑭最適化されたターゲティングを使用するかを決めます。
オーディエンスターゲティングと最適化されたターゲティングの詳細については以下の記事を参考にしてください。
広告の作成
⑮「広告1に移動」をクリックすると、広告の作成に入ります。
⑯YouTubeでのエンゲージ目標のため、「動画広告」のみ選択できます。
⑰「広告名」を入力します。
⑱「最終ページURL」を入力します。今回の目的はチャンネル登録数の増加ですので、最終ページURLはYouTubeチャンネルのトップページへの遷移が良いでしょう。
⑲動画のタイトルで検索か、YouTubeのURLを入力して、広告配信したいYouTube動画を選択します。広告に使用できるのは、「公開」もしくは「限定公開」の動画のみです。ステータスが「非公開」の動画は広告利用できませんので、あらかじめ公開範囲の変更を行いましょう。
⑳必要に応じてロゴを追加します。
㉑次は広告見出し、説明文などのテキストを入力します。
㉒「確認ページに移動」をクリックします。
㉓設定内容に問題ないか確認できます。
㉔問題がなければ、キャンペーンを公開をクリックし、設定完了です。
YouTube広告で配信する方法
ここからはYouTube広告を活用した場合の、設定手順を解説します。YouTube広告はデマンドジェネレーション広告と違い、Discover面やGmail面には配信されませんのでご注意ください。
なお、2025年4月時点では、すでにYouTube広告での動画アクションキャンペーン(VAC)の作成は、強制的にデマンドジェネレーションキャンペーンへ移行するアカウントも見受けられます。
①キャンペーン作成画面で、「ブランド認知度と比較検討」、「ガイダンスなしでキャンペーンを作成」のいずれかの目的を選択します。
②「動画」をクリックします。
③「オークション」を選択します。
④「YouTubeのチャンネル登録とエンゲージメント」を選択します。
⑤「続行」をクリックします。
そうすると、強制的にデマンドジェネレーションキャンペーンのキャンペーン作成画面に遷移します。
まだYouTube広告で動画アクションキャンペーン(VAC)の作成ができるアカウントもありますが、特段の理由がない限りデマンドジェネレーションキャンペーンで広告作成することをおすすめします。
広告でチャンネル登録者を増やす際のポイント
YouTube広告を活用すれば、オーガニックではリーチできない層に短期間でチャンネル登録を促すことが可能です。ただし、広告によって得られる登録者の「質」や「定着率」に注意を払わなければ、費用対効果の低いキャンペーンになる恐れもあります。
ここでは、単に「登録者数」や「登録単価」だけを追うのではなく、マーケティング施策としての広告配信を成功させるためのポイントを解説します。
登録単価だけにとらわれない
広告運用では、どうしても「1登録あたりのコスト(登録単価)」に目がいきがちです。もちろん重要な指標ではありますが、それだけで広告の良し悪しを判断するのは早計です。
たとえば、登録単価が低くても以下のようなケースでは意味が薄れてしまいます:
- 登録後すぐに解除されるユーザーが多い
- 商品・サービスへの関心が低く、動画を視聴しない
- サイトへの遷移やコンバージョンに結びつかない
広告の目的が「将来的な顧客との接点づくり」であることを忘れず、“顧客となり得るユーザー”に注目することが重要です。
登録者の動きを分析して改善につなげる
広告経由で得た登録者が、どれだけ定着し、どんな行動を取ったかを分析することで、配信内容の精度を高めることができます。特に以下の2つの指標は必ずチェックしておきたいポイントです。
YouTube広告経由の登録解除数(YouTube Studio)
YouTube Studioでは、チャンネル登録者の増減を流入元別に確認できます。
解除率が高い場合は以下のような原因が考えられます。
- 広告の訴求内容と、チャンネル内のコンテンツの内容にギャップがある
- 「お得そう」「楽しそう」と思わせたが、期待に応える動画がなかった
- 更新頻度が低く、フォローする価値を感じてもらえなかった
広告で登録を促す以上、「登録したくなる理由」と「登録後の満足度」が一致しているかを常に意識しましょう。
チャンネル登録減少数の確認方法は次の通りです。
①YouTube Studio内のアナリティクスをクリック
②詳細をクリック
③チャンネル登録元を選択
④登録者減少数を確認
広告を使って新規ユーザーからチャンネル登録を獲得する場合、YouTube内検索などの自然な流入元からの登録者よりも解除率が高くなるのは、ある程度やむを得ないことです。
しかし、他の流入元と比較して、YouTube広告経由のチャンネル登録者の減少率が極端に高い場合は注意しましょう。
たとえば、「広告で抱いた印象」と「実際のコンテンツとのギャップ」や、「期待していたテーマの更新がない」などといった理由で、ユーザーが登録を解除することもあります。
このような場合は、広告で訴求している内容と、チャンネルで実際に提供しているコンテンツにズレがないかを見直してみるのも良いかもしれません。
GA4でのYouTube経由のサイト流入(Organic Video)
YouTubeは「メディア」であると同時に、「送客チャネル」としての機能も担っています。GA4でYouTube動画から自社サイトへの流入(参照元:YouTube)を確認することで、次のようなマーケティング上の効果を測ることができます。
- 登録者がどれくらいサービスに関心を持っているか
- 動画の内容がWebへの導線として機能しているか
確認方法は、以下の通りです。
①集客をクリックします。
②トラフィック獲得をクリックします。
③Organic Videoの流入数を確認します。
もちろん、より正しく判断するには「流入」だけではなく、キーイベントを設定し流入後のエンゲージメントを計測することも重要ですが、Organic Videoからの流入が継続的に増えると、動画視聴からサイト訪問への導線が機能している可能性があります。
また、流入だけでなく「サイト内での行動(スクロール、クリック、CV)」もイベントで計測しておくとより評価精度が高まります。
将来の顧客に近いユーザーを狙う
YouTubeを通して将来の顧客とつながるには、「誰に届けるか(ターゲティング)」が極めて重要です。以下のような層は、将来的な顧客候補としての可能性が高いと考えられます。
ターゲット例 | 理由 |
---|---|
自社サイトの訪問ユーザー | 興味関心が顕在化している可能性が高い |
顧客リストをもとにした類似オーディエンス | 成約実績のあるユーザーに近い属性で配信可能 |
自社チャンネル登録者を除外したユーザー | 重複や無駄なインプレッションを防げる |
検索語句から高コンバージョン語句を特定 | 購買意欲の高いキーワードに絞った配信が可能 |
ターゲティングの設計は、広告成果の“質”を大きく左右します。必ず「誰に届けるべきか」という仮説と、数値に基づいた検証を行いながら改善を繰り返しましょう。
「広告はきっかけ」、関係構築はコンテンツで
広告によって登録してもらえたとしても、それはあくまで“最初のきっかけ”にすぎません。視聴者との関係構築を深めていくには、登録後も継続的に価値あるコンテンツを届け続ける体制が不可欠です。
- 視聴者の悩みに寄り添った動画テーマ
- タイトルやサムネイルで継続視聴を促す設計
- コミュニティ投稿やコメントへの返信によるエンゲージメント強化
広告とコンテンツは、「入口」と「定着・育成」の役割を分担しています。広告で集め、コンテンツでつなぎとめ、サイトへ送客するという流れを意識することが、最終的な成果につながります。
登録者数だけにとらわれず、「意味のある登録」を増そう
YouTubeチャンネルの登録者を広告で増やすことは、将来的な顧客との関係構築をスタートさせる第一歩です。ただし、単に数を追うのではなく、「誰に」「何を期待してもらい」「どんなアクションにつなげたいか」という視点で設計することが、広告施策としての成否を分けます。
YouTube広告による登録促進は、少額からでも始められる実践的な手法です。大きな成果を求める前に、まずは仮説を立ててテストを繰り返し、小さな成功体験を積み重ねていくことで、より精度の高い施策に磨かれていきます。
「登録して終わり」ではなく、登録後の価値設計まで見据えたマーケティング戦略としてのYouTube活用、ぜひ本記事をヒントに取り組んでみてください。
