
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
誰もが一度は目にしたことがあるであろう夏目漱石の小説「吾輩は猫である」の冒頭です。
小説家にとって書き出しは、読者を物語に引き込むための”一番勝負”で、最もパワーを込めるといわれてます。つまり、読者が続きを読みたくなるように物語にぐっと引き込む「つかみ」が大切です。
Web広告で考えるとどうでしょう。
ウェブ広告の場合、読者/視聴者にあたるユーザーの普段の生活の中に突然、情報が飛び込んできます。ユーザーの周りには情報が山ほど溢れていて、いまもなお増え続けているのも事実です。この中から自分に必要な情報を取捨選択する時間がどんどん短くなってきているので、小説で読者を惹きつける以上に、ウェブ広告ではより「つかみ」が大切とも言えるかもしれません。
さて、ここからが本題です。
今回はX広告(旧:Twitter広告)でユーザーを惹きつけるポスト(旧:ツイート)文を作る上で「まずはなぜポスト文が大切なのか」そして、「どのような工夫が必要なのか」をユーザーの視点に立ちながら考えていきます。


目次
ユーザーが1ポストを目にする時間は◯秒
Xのタイムライン上でユーザーが1分間に目にするポスト数は約60個と言われています。
参考:生活者は1秒当たり、いくつツイートをみるのか?~Twitterの場合~ | 読売広告社 YOMIKO ADVERTISING INC.
1ポストに換算すると約1秒程度になりますね。小説の書き出しや動画広告の冒頭と同様に、Xにおいても最初に目につく画像やテキストでいかにユーザーを惹き込むかが大切といえます。
ポストの中で注目されるのは画像?動画?テキスト?
ここで気になるのがユーザーはXのなかで「どこを見ているか」という点です。
結論、FacebookやInstagram、YouTubeと比較するとXではテキスト、つまりポスト文に注目されやすいと考えられます。
以下は、動画広告をX/Facebook/Instagram/YouTubeの4つの媒体で広告として配信したときの注視度を表しています。
※以下は「X」にリブランディングする前のデータのため表記が「Twitter」になっています

注視度はアイトラッキンググラスを使用してユーザーの視線の動きからどこをどのぐらい、どの順番で見たかを計測、上記は動画広告の特定エリアを見た人の割合を示す“固視割合”が高い部分をヒートマップ状に表しています。
このテストによって、FacebookやInstagramでは主に動画を注視する傾向があるのに対して、Xはテキストと動画の両方が注視されているという結果が出ました。この結果のようにXでテキストがよく見られるのは、タイムライン上の構成の違いによるものだと考えられます。

上記はアイトラッキングテストでユーザーが各エリアをどの順番で見ているかを表しています。InstagramやYouTubeでは画像/動画が最初に見られるのに対してXは最初にテキストが読まれる傾向が強いようです。

“固視割合”をエリア別に見た結果でも、Xではテキストを見ている人の割合が高いという結果になっています。
ユーザーを「惹きつける」ポスト文をつくるコツ
さて、ポスト文の重要性がわかったところで次は何をどのように見せるかについてです。
X広告のポスト文は140文字が上限ですが、先程のユーザーの1ポストあたりの滞在時間から考えると、必ずしも140文字すべてを読んでくれるわけではありません。
ここからはユーザーを惹きつけ、最後まで情報を伝えるためのポイントを3つ、紹介していきます。
「焦点」を絞ろう
まず、読んでもらうための大前提としてユーザーにとってそれが有益な情報であることが必要です。そのためには「誰に向けて」のポストなのか(ターゲット)を決めた上で、発信者が言いたいこととユーザーが言ってほしいことが交わる焦点を定めましょう。
たとえば「りんご」の情報を発信するとき、あなたはなにを言えますか?
- りんごは赤い
- りんごは丸い
- りんごは甘い
- りんごには栄養がある
- りんごにはポリフェノールが含まれている
- りんごは動脈硬化を抑制できる
- りんごは肥満の予防になる
- りんごはおなかの調子を整える
- りんごは肌によい など・・・
この情報すべてを140文字に含めると受け取ったユーザーは何が言いたいのかも、自分に関係するのかもよくわかりません。
ここから、何を言うかを「りんごは肥満の予防になる」に絞ってみるとどうでしょう。ダイエットをしている人や、健康を気にしている人など自ずとターゲット像が浮かんできたと思います。こうして「りんごは肥満の予防になる」に焦点を絞ることで、根拠となる情報も含められそうですね。
「何を言うのか」はユーザーの反応が大きく動く大事なポイントです。1つのポスト文に対して欲張って情報を詰め込むのではなく、ここでは伝えたいことを絞り、どの焦点がユーザーの態度を変容させるのか検証を重ねていくのがよいでしょう。
ユーザーは忙しい、「結論」から伝えよう
焦点を絞ったら、その結論は最初にユーザーに伝えることが大切です。
前段にもあったとおり、ユーザーはタイムラインを流れるように見ています。その中で自分にとって有益で興味のあるポストを瞬時に判断しているのです。ユーザーにとって複雑で伝わりにくい順序で書かれた投稿は、興味があるかどうかの判断ができずスルーされてしまう原因になります。
伝え方の順番としては文章作成術の「PREP法」や「SDS法」を取り入れるのもよいでしょう。
PREP法
1. 結論(Point)
例:「りんごは肥満の予防になります。」
2. 理由(Reason)
例:「りんごに含まれる食物繊維が消化を助け、満腹感を与えるため、過度の食事を抑制するからです。」
3. 具体例(Example)
例:「例えば、1日に1個のりんごを食べる習慣を持つ人は、そうでない人よりもBMIが低い傾向にあるという研究結果があります。」
4. 結論(Point)
例:「肥満予防には1日1個のりんごが効果的です。」
SDS法
1. 全体の概要・要点(Summary)
例:「りんごは肥満予防に有効です。」
2. 詳細の説明(Details)
例:「りんごに含まれる食物繊維は満腹感を感じやすく、過剰な食事を防止します。加えて健康な体に必要な栄養素が豊富で、これらの要素が合わさると肥満予防に役立ちます。」
3. 全体の概要の復唱(Summary)
例:「したがってりんごは過剰な食事を防ぎ、必要な栄養素が取れることで、肥満予防に効果的だと言えます。」
もちろん、がちがちにPREP法・SDS法通りに表現すれば必ずしも注目されるポストが出来上がるわけではないのですが、読みやすさ・分かりやすさの観点から基本的な順序を意識しつつ取り入れるのがオススメです。
適度に「装飾」をしよう
焦点と順番が決まったらあとは「どのように」伝えるかを考えましょう。大切なのは「シンプル」かつ「埋もれない」ポスト文であることです。「シンプル」に見せるためには見出しや箇条書きを、「埋もれない」ためには改行や絵文字をうまく取り入れてみましょう。
見出しをつける
いくら焦点を絞っていてもしっかりと内容を伝えたいとなると文字数が増えてしまうことも多いです。その場合は結論やどんな人に向けた内容なのかなど重要な情報が一目でわかるように簡単な見出しをつける方法があります。
事例:

また、応用系として囲みや吹き出しなどの装飾をつけることで目に留まる工夫を加えることもできます。
事例:
・吹き出し


・三角形


・囲み帯


よりキャッチーなポストにしたい場合にうまく活用してみましょう。
箇条書きを使う
情報を無駄なくコンパクトに詰め込むのにオススメなのが箇条書きです。箇条書きでも同様に見出しをつけるとグッと読みやすくなります。

箇条書きを使う際には情報の粒度を均一にするように心がけましょう。
例として、2つのパターンを見比べてみましょう。
・パターンA
- 動物
- 犬
- シベリアンハスキー
・パターンB
- 犬
- 猫
- 鳥
パターンBの方が見やすいのではないでしょうか?
これはパターンAは「動物」が最も抽象的、「シベリアン・ハスキー」が最も具体的で粒度にバラつきがあるからです。ユーザーがストレスなく情報を得られるように、粒度はそろえることを心がけましょう。
適度に改行する
ポスト文に改行がない場合は全体がテキストで埋まり、文字の塊に見えることで情報が伝わりにくい場合もあります。
Xのマーケティングサービスの「SocialDog」から抽出した、1億2000万以上のポストのデータの分析結果によると投稿内の改行数が増えるとエンゲージメント(ポストに対する反応)が高まるという結果もあります。

上のグラフは改行数ごとの平均いいね数/リポスト(旧:リツイート/RT)数を表しています。
改行数6で僅かに数値は落ちるものの、改行数が増えるといいね/RT数は増える傾向ですね。適度な改行や行間は可読性があがるだけでなく、タイムライン上での画面占有率も上がります。
先述の箇条書きも改行を取り入れた表現の一つになりますが、文章の流れや全体のバランスにあわせて適度に改行や行間を取り入れましょう。
適度に絵文字を使う
絵文字は内容を端的に表したり、目を留めるアクセントとしても効果的です。
・例

ただし、使いすぎはかえって見づらくなるので、適度に取り入れてみましょう。
絵文字の量はブランドのテーマに沿ってオーガニックの投稿とあわせたり、ターゲット層の投稿から雰囲気を掴むのも良さそうです。基本的に絵文字はユーザーの目を留めたり、言葉だけでは伝えきれないちょっとした感情や遊び心を表現したりするための一つの手段です。
伝えたいメッセージが視覚的に伝わるようになっているかを前提に取り入れてみましょう。
ハッシュタグを使う
Xではハッシュタグを使用した場合、本文とは色分けされて表示がされます。
そのため視認性を高め、どんな話題のポストなのかを一目でわかるようにするのに効果的です。
使用するときには次の4つに注意しましょう。
必ず半角で入力:ハッシュタグの記号(#)は、全角入力だとハッシュタグとして認識されません。
◯ #アナグラム ✕ #アナグラム ♯アナグラム
複数つけるときは前後にスペースを
◯ #アナグラム #ブログ ✕ #アナグラム#ブログ
数字・絵文字単体は認識されない
記号を使うとそれより前の部分がハッシュタグ化
(例) #アナグラムブログ公開! →「!」はハッシュタグ化されない
ハッシュタグと認識された場合はリンク表示(青色)になるので配信前に確認しましょう。また、広告でハッシュタグを使用した場合はハッシュタグの検索結果には表示されません。
通常のポストと仕様が異なるのでこちらにも注意しましょう。
ポスト文もクリエイティブ、ユーザー目線で磨き込もう
バナーを使用したウェブ広告でのテストや検証は、バナーのみ進めているケースも多いかもしれません。ですがX広告の場合はとくに、バナーだけでなくユーザーに注目されやすいポスト文も大切なクリエイティブです。
筆者ははじめ、伝えたいことを表現し切るのに、140文字は少ないように感じていました。
しかし、焦点を絞り表現を工夫しながらポスト文を考えるようになったことで、ユーザーが疲れることなく情報を得られる、発信者が情報を端的にしっかり伝えられる十分な文字量だと思えるようになりました。
同じバナーを使っていてもポスト文を変えることでユーザーの反応も大きく変わってきます。コピーやバナーと同様に、ポスト文でも「なにをどう伝えるのか」を考え抜き、磨き込んでいきましょう。
