伸び悩む広告運用者によくある5つのバイアスと思い込み

伸び悩む広告運用者によくある5つのバイアスと思い込み

広告代理店の立場であれ、インハウス運用であれ、ウェブ広告というフィールドは、入札単価の調整や広告作成をはじめ、これからクライアント(または社内)に提案する施策まで、比較的短い期間にさまざまな決断をしなければいけません。なぜなら広告を出稿して間もなく掲載結果がすぐにデータという形で帰っていて、得られた情報に基づいて次はどのような行動をとるべきか速やかに判断できるという、PDCAサイクルはかなり回しやすいためです。

ただし、広告運用者の日頃の判断は、いかに冷静に行ったつもりでいても、バイアスや固定観念に影響され、必ずしも正しくないことは実際によくあります。こういった広告運用の中で出会う確率が高いバイアスと思い込みを5つご紹介してきます。

①確証バイアス

Photo by rawpixel on Unsplash

確証バイアスというのは、簡単に言ってしまえば、自分が打ち立てた仮説を支持するようなエビデンスにしか目を向けない、という心理的現象です。つまり、冷静に検証してみたつもりでも、どことなく自分の仮説が当たって欲しいという心理が働くようで、仮説が正しくないことを示すネガティブなデータや情報を過少評価したり、果ては無視したりしてしまうということです。WEBマーケティングに限らず、科学のフィールドにも意外と良く確認できる現象です。

多少個人差はあっても、人間には自分が気に入ったものを可愛がる癖があります。たとえば広告のA/Bテストの場合、作った広告テキストの中にやっぱり自分で「一番イケている」だろうと思う広告がありますよね。一方、この自慢の広告を実際に他のものと並走させてみたら、意外とターゲット層にそんなに刺さらないという結果に至ることもさほど珍しくありません。優劣がデータで十分に裏付けられても、気に入りの広告の「負け」を認めず、「いや、まだ止めるのは早いかも…」という思考パターンに陥ることは経験が豊富な広告運用者でさえあります。または、統計上の有意性がなくても、お気に入りの訴求が少しでもパフォーマンスが良さそうなときに、他の広告をすぐに止めることも同様に確証バイアスによる行動です。

※A/Bテストの評価基準の考え方については以下をご参照ください。
参考:そのABテストの判断は本当に正しいのか?

A/Bテストのみならず、あらゆる数字の比較や仮説検証の際に起こりやすいため、あらかじめ判断基準(たとえば、許容できるCPAや広告費用など)を定めておいたり、常に「仮説が外れている」と言える要因がないかを検証してみるのがオススメです。

②正常性バイアス

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正常性バイアスとは、たとえ危険がある状況下でも、その都合の悪い情報のことを考えないようとする思考のことです。つまり根拠がなくてもリスクを無視し、常に「大丈夫でしょ」と勘違いするパターンです。

実はこのバイアスを運用型広告で確認できるケースは決して珍しくありません。特に広告のチューニング後、モニタリングを怠っている広告運用者にこのバイアスがよくあるのではないでしょうか。アカウントで大幅に入札単価を変えたものの、その後は数字の変化に見ようとしなかったり、または、数字に異常な動きがあってもそれ以上掘り下げはせず「このまま元に戻るでしょう」などと放置したりする場合に当てはまると言えます。

この思考に陥りやすいのは運用型広告のタスクにちょっとだけ慣れはじめた初心者が多いと思います。ルーチンワークの一部はこなせていても、管理画面の操作による影響力を把握しきれていない場合などは特にそうなのではないでしょうか。なんとなく、車の免許をとったばかりの初心者が一番事故を起こしやすい現象に似ているのかもしれません。

数字に変動があれば、ボトルネックとなっている箇所が必ずあるはずです。ボトルネックをすばやく見つけて改善ができれば問題は最小化できます。優れた広告運用者ほど、問題を見過ごして放置せずすばやく対処できているのではないでしょうか。ボトルネックをすばやく見つけるには、ルールと仕組みを十分に理解し、因数分解で考えると影響要因のイメージがつかみやすくなります。

参考:全てのリスティング広告プレイヤーは因数分解思考を手に入れよう

また、特に翌日が休日などでアカウントが確認できないケースは要注意です。可能であれば、大きな変動となる可能性のある変更は非営業日前には行わないことや、午前中に行った変更は必ず午後にチェックするなど、タスク管理の良い習慣を作っておくこともリスクヘッジになります。

③「新しいものこそ優秀」という思い込み

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Google 広告やFacebook広告をはじめ、頻繁にアップデートがあり常に新しい機能が出続けています。このように、新しい広告フォーマットやキャンペーンタイプが登場するたび、すぐ導入したくなる気持ちが湧いてきますよね。しかし、新しい機能を提案する際に、「新しさ」または「話題性」に踊らされてしまうパターンもあるのではないでしょうか。これも正常性バイアスと同様に、広告運用者の経験が浅いほど起こりやすいように思われます。

新しい挑戦はとても重要なことだと思いますし、むしろ先行者利益があることも少なくありません。ただし、その機能をなぜ使ったほうがよいのか、使うことでどんな問題が解決できるのか、仮説を立てる必要があります。新しさ・流行り・トレンドなどに敏感であり続けることは重要ですが、達成すべき目標を見失っては、ただの「新しさの押し売り」です。つまり、新しい機能の付加価値がどこにありそうかを説明できない限り、その提案をは一旦寝かすことをおすすめします。逆に商材との相性や、ターゲットユーザーの属性などが上手くマッチして、成功する見込みがあれば一刻も早く新しいプロダクトを導入しましょう。

④「昨日の正解は明日も正解」という思い込み

Photo by Daniel Jensen on Unsplash

これは、上述の点の逆パターンですね。今までずっとうまくいった施策だけに注力し、気がついたら担当のアカウントでパフォーマンスが落ちてしまった場合に当てはまる可能性が高いです。しかも、この思い込みは過去の成功体験が豊富な、経験値が比較的高い広告運用者に多くみられます。

「これさえ押さえておけば間違いない」という広告運用に数多く存在する「ベストプラクティス」は実に便利なものなのですが、そればかりにすがりついてしまうと広告を出す状況や技術の変化、そしてユーザーの習慣の移り変わりに鈍感になりがちです。強い妥当性を持っていた「ベストプラクティス」さえ意外と賞味期限が短いことがあります。ただ、状況が徐々に変化しているからこそ、気づきにくいものがあるのです。

たとえば「動画広告」です。商材によって相性の良し悪しがけっこうはっきりしていることはよく言われていて、「ブランディング用なら使える」が、「パフォーマンス重視なら割に合わない」と躊躇している広告運用者が依然として多いのではないでしょうか。なかに「動画広告を昔使ってみたけど、成果が悪かった」と失敗例を挙げる声もあるはずです。しかし、TrueView アクションというユーザーに特定のアクションを促すフォーマットの登場によって、ブランディング以外の用途でも動画広告が成り立ちはじめたことは示唆的です。「動画広告はユーザーに行動を促すのに向かない」という定説を頑なに守っているとこのような変化から取り残され、気がついたときには取れる選択肢がなくなってしまうかもしれません。

これからも次々と新しい技術が生まれるはずですし、技術の進歩が早いなかで、昨日の正解はもはや明日には不正解となっている可能性はさらに高まっていくでしょう。

⑤「AIや機械学習は人間に劣る」という思い込み

Photo by Franck V. on Unsplash

周知のごとく、機械学習とAIによる自動化というのは、年々進化し続けています。そして、集まっているデータの量もそうですが、構造化が進んでいることによってデータの質的向上も著しいです。おかげで、特に運用型広告での機械学習やAIの活用範囲は広く、入札の自動最適化からクリエイティブの自動生成まで導入が進んでいます。

しかしながら、自動化の精度が上がっているにもかかわらず、その技術を絶対に信用しないスタンスを頑なに取る広告運用者も確かにいるのです。挙げられる理由は様々ですが、中でも「運用者が自分なので、入札は必ず手動でやってコントロールする」「AIが裏でどのような仕組みで動いて、何をしているのかが不透明で嫌だ」「自動入札を使ってみたことはあるが、パフォーマンスが別に改善されていないのでもう使わない」とかいう懸念点をよく耳にしたことがあります。

特に広告運用者が確認できないシグナルまで加味しているGoogle 広告の自動入札機能に関しては、入札調整の頻度や精度において機械が人間に劣るケースは、劇的に少なくなってきている傾向にありますし、将来的にその差はさらに広がるでしょう。確かに、手動で大量に入札調整をする作業によって「しっかり運用している」実感は味わえるかもしれませんが、時間が限られている以上、こういった作業に割く時間にそれなりの価値が得られるかを自問しなければならないです。逆に、アルゴリズムに任せられそうな部分は任せて、広告運用者は人間の得意領域(クリエイティブ作成や広告ポートフォリオの構想など)に注力するスタイルの方が良さそうです

そもそも、いきなり無理に全部自動に移行することも別に理想ではなく、例えば最初はコンバージョンが獲りやすいキャンペーンだけに絞って挑戦してみたり、あるいはキャンペーンでの「下書きとテスト」機能を使って手動・自動を一定期間きれいに出し分けたりして、テストすることがおすすめです。

参考:リスティング広告運用者の「自動化」との付き合い方について

見落としがちなバイアスと思い込み

とても悔しいですけど、バイアスや思い込みを全く持たないことは難しいものです。とはいえ、日常の運用タスクの中で意識すれば、このような思考パターンに陥ることを著しく減らすことは可能でしょう。もちろん、バイアスや思い込みは今回ご紹介した5つよりも多く存在しますし、なりやすいパターンに個人差はあると思いますが、「ここはいつもなんとなく判断してしまうな」と心当たりがあれば、その裏に今までなかった発見もあるかも知れませんから、目を向ける価値があります。

Jan Hugendick

Jan Hugendick

アナグラム株式会社 運用型広告エキスパート(海外・国内部門)。 ドイツの出版社で マーケティングやSEOに携わることをきっかけにリスティング広告に興味を持ち、 ドイツの某メディア大企業直属のWeb広告代理店に転職。そこで5年間、多国・多業界 のアカウントを担当することを経て、2016年にアナグラムに参画。広告運用の他、ブログ執筆と編集を行っています。

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