生成AIをマーケティングにどう活かす?アナグラムの取り組みと成果を共有します

生成AIをマーケティングにどう活かす?アナグラムの取り組みと成果を共有します

アナグラムの生成AIに対する取り組み

アナグラムでは、生成AIの運用型広告に与える影響、特にクリエイティブ領域への影響を踏まえ、生成AIの導入にも取り組んでいます。具体的には、フィードフォースグループ内での連携を強化し、アナグラム社内のスタッフと、株式会社リワイアに所属する生成AIの専門家からプロジェクトチームを組成し、AI技術の導入やルール作りを進めてきています。

プロジェクトメンバー

アナグラム株式会社 中島 匠

経営戦略室所属。アナグラムで運用型広告のコンサルタント・チームリーダーを経た後、シッピーノ株式会社のM&Aに伴うPMI活動など、関係会社の経営支援に従事。

株式会社リワイア 八百 俊哉

2020年に新卒で株式会社フィードフォースに入社。 自社プロダクトの成果改善のための分析業務に従事。 その後、生成AIを活用した新規事業開発に携わるようになり 画像生成AIの権利課題解決に向けた 新サービス「Generight」のサービス責任者を務める。

 

現在のアナグラムの生成AIの利用状況について、アナグラムの中島、リワイアの八百さんにそれぞれ話を伺いました。


生成AIに対するこれまでの取り組み

グラムくん
グラムくん

生成AIに関するプロジェクトの進め方の概要と、具体的な施策について教えてください。

業務の削減、あるいは顧客に対する価値の向上が期待できる施策アイデアを出し、インパクトと実現可能性を掛け合わせて優先度をつけて対応しています。

すでに形になっているもののうち、主要なものを挙げると次の3点です。

・画像生成に関する社内ガイドラインの策定
・画像生成・背景生成の実用化
・生成AIを活用したポスト分析

中島
中島

画像生成に関する社内ガイドラインの策定

グラムくん
グラムくん

何から手を付けていったんでしょうか?

まず最初に行ったものは、画像生成に関する社内ガイドラインの策定です。

生成AI、特に画像生成に関する領域は、著作権の絡みからリスクもあります。そのため、従業員が野放図に使ってしまうと、著作権を侵害してしまい、広告主やクリエイターの方々にご迷惑をかけるかもしれません。

逆に「リスクがある」というイメージが先行しすぎてしまうことで、全くAIの利用が進まないという機会損失が起きることも考えられます。

その両方を避けて「適切な利用を促進する」という視点から、AIモデル別のリスク度の評価や、AIモデル別の生成物に対するチェックリスト、クライアントである広告主に対して生成物を提案する際の推奨事項について、取り決めています。

なお、社内ガイドラインは、すでに提起されている文化庁をはじめとした各省庁のガイドラインや、既存の法律、判例を参考にし、最終的には顧問弁護士の監修のもと、策定しています。

中島
中島
グラムくん
グラムくん

リスクに過剰に反応して、なかなか利用が促進されないという話はよく聞きますね。ガイドラインがあると、かなり安心して利用できるようになりそうですね!

画像生成・背景生成の実用化

次に、許諾を得たデータでトレーニングをすることで著作権侵害のリスクを無くした生成AIモデルを選定し、推奨ツールとして社内の希望者に提供しています。

これにより、画像の生成や、商品画像の背景生成をクリエイティブ制作に取り入れ、クライアントに提案することを奨励できるようになりました。

また、アナグラムは2024年の10月よりオフィスを増床し、商品を思いついた時に撮影できるスペースも設けています。

背景の生成と組み合わせて、クライアントから商品を当社のオフィスに送っていただくだけで、様々なシチュエーションの素材を提案することができるようになっています。

AIで生成しにくいシチュエーションもあるので、すべての商材に合うとは限らないですが、すぐに撮って生成できるので低いハードルで試すことができます。

中島
中島
元の画像
生成AIを使って背景を作成した画像
グラムくん
グラムくん

AIツールの導入やオフィスの撮影環境の整備によって、クリエイティブ制作の幅が大きく広がった印象を受けますね。

AIを通じて新たに提案可能になったアイデアや表現の幅が広がったことで、クライアントへの提案内容にも変化が見られるのではないかと思います。こうしたAI活用の成果は実際のところどうでしょうか?

すでに、生成AIによって商品画像を生成することで、既存のクリエイティブよりも良好なデータを示した事例もあります。

画像生成を取り入れることで、ロケの撮影にかけるコストが無い、あるいは適したストックフォトが見つからないといった障壁を取り払うことができました。

担当者であるコンサルタントやデザイナーのアイデアを表現しやすくなったがゆえの結果だと思います。

中島
中島
社内には数十パターンのテンプレートが公開され、誰でも利用できる状態になっている※こちらの画像はサンプルです。実際の販売はございません。

なお、生成AIを手軽に使える環境の整備に付随して、Canvaにデザインテンプレートを複数追加しました。画像生成・背景生成とこれらのテンプレートを組み合わせることで、非デザイナーのコンサルでも案出しに取り組むことができるようになっています。

中島
中島
グラムくん
グラムくん

なるほど、テンプレート化されていれば、デザイナーでなくとも一定のクオリティ以上でクリエイティブまで含めた提案も可能になりますね!

生成AIを活用したポスト分析

グラムくん
グラムくん

クリエイティブの他に、実際に生成AIを活用している取り組みはありますか?

Xから特定のキーワードが含まれるポストをAPIで取得し、ChatGPTに取り込ませて大量のポストから「悩み」や「サービスを検討している背景」などのインサイトを抽出する、という使い方もしています。

いわゆる「ソーシャルリスニング」を大量に、速く行うということですね。これをもとに、商材のターゲットユーザーのお困りごとや背景をリストアップすることや、クリエイティブのプラニングに活かすことができます。

実は、まだ生成AIが今ほどのレベルに達していなかった頃に、LP(ランディングページ)の提案を行うためにX(当時Twitter)やネット掲示板の投稿を取得し、数千件の投稿を目視で確認して分析し、分析に基づいてLPを立案するということを行ったことがあります。

この方法で立案したLPは既存のLPよりも大きく良好なパフォーマンスを示しましたが、プラニングの段階で膨大な時間がかかってしまい効率が良いとは言えませんでした。

現在では生成AIを利用することで、同様の方法を用いたプラニングが、非常に少ない手間で行えます。

中島
中島
グラムくん
グラムくん

実際の投稿や口コミを見に行くことも大切ですが、短時間で多くのデータからインサイトを導ければ精度も上がりそうですよね。

生成AIの「権利侵害」リスクとどう向き合うか

グラムくん
グラムくん

生成AIに関しては、著作権侵害のリスクも指摘されていますよね。本PJでは、権利侵害のリスクにはどのように向き合っていますか。

まずは生成AIによる著作権侵害のリスクについて、簡潔に説明します。

著作権関連法で、研究開発などでは著作物を利用できるということが定められています。これを根拠として、生成AIをトレーニングする段階では、著作物を学習させることが許容されると解釈されています。

ただし、そのようにトレーニングされた生成AIから、著作権で保護された作品を想起させるものが生成され、商用利用をした場合には、AIの利用者が権利侵害に問われる可能性があります。

多種多様なクライアントを持つアナグラムが生成AIを活用するにあたっては、こういった権利保護の観点を重視すべきだと考え、著作権侵害の心配が無い生成AIの利用を提案しました。

八百さん
八百さん

アナグラムという会社の「らしさ」からも、クリエイターの権利に注意しながらAIを活用していくことが望ましいです。

また、生成AIにまつわるリスクをどのレベルで受け入れられるかということは、広告主にとっても大きく変わります

そのため広告主に対しても、メリット・リスクの対策を説明し、理解を得られたうえで施策に取り入れることを推奨しています。

中島
中島
グラムくん
グラムくん

代理業としては、クライアントの事情にあわせて柔軟に取り組んで行く必要があるんですね。生成AIを使うことが目的化しないようにしたいと思います。

「人の仕事」に自信を持って生成AIを業務に取り入れよう

グラムくん
グラムくん

生成AIは広告代理店の業務にどのような影響を与えるでしょうか?中には、自分の仕事が無くなってしまうのではないか、といった心配をする方もいるようです。

私自身は生成AIに期待を持っているためこのような仕事をしていますが、「あくまでも優れたツールである」と考えています。

デザイナーやイラストレーターの方は、自分の制作物を学習させることで、AIをアシスタントのように使うこともできるでしょう。

生成AIは「ペン」が「ペンタブ」に少しずつシフトしたように、創作や制作を効率化するツールであって、構想したりプラニングする仕事や、決断する仕事は、引き続き人の手に委ねられていると思います。

八百さん
八百さん

八百さんのお話の通り、特に生成AIをクリエイティブの現場に導入することで、デザイナーの仕事が無くなるということは無いと断言できます。

むしろ、予算の都合で実現が難しかった訴求を試すことができたり、より創造的な仕事を増やす思いがけない機会となるのではないでしょうか。

ビジネス上のインパクトという観点では、生成AIを活用することで、クリエイティブにかけられる予算が多くない広告主に対しても、代理店側の生産性を毀損せずに提案できる幅が広がっていくのではないかと期待しています。

生成AIをより上手に活用することで、労働生産性を保ちながら踏み込んだ提案ができるようになれば、広告主・従業員・会社の三方よしが実現できると考えています。

中島
中島
グラムくん
グラムくん

生成AIはあくまで道具であって、上手く使えばさらに多くの広告主の助けになり可能性が広げられそうですね!お話いただきありがとうございました!

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