
Webデザイナーの仕事は、制作・企画・関係者とのコミュニケーションなど業務範囲が多岐にわたります。
さらに、以下のような事情が業務をより複雑にしています。
- 「いい感じに仕上げてほしい」など抽象的な依頼が多く、工数の見積もりが難しい
- デザインには正解がない分、どの段階で完成とするか自分で判断する必要がある
- 感性が求められるデザイン制作と、報告書作成や見積もり作成などロジカルな業務を並行して進める必要がある
こうした状況で複数のタスクを並行して進めるには、先の見通しを立て、自分に合った管理の仕組みを持っておくことが欠かせません。
今回は、アナグラムのデザイナーが日々のタスクをどう整理し、どのように進めているかを、具体例を交えてご紹介します。マルチタスクで手一杯になりがちな方や、プロジェクトの進め方に悩んでいる方の参考になれば幸いです。


「重要度×緊急度」を見極めて優先順位をつける
「いい感じに仕上げてください」「なるべく早めで」
こうした曖昧なタスクは、どれくらい時間がかかるのか見積もりづらく、ほかの業務と並行して進める中で優先順位の判断を迷いやすくなります。気づけば、リソースを多く割いてしまったり、本来優先すべき業務が後回しになっていたり……ということも。
だからこそ、目の前の依頼にすぐ反応するのではなく、「重要度」と「緊急度」の2軸で整理することが、冷静な判断の助けになります。
アナグラムのデザイナーは、「成果が見込めるか(=重要度)」「今すぐ対応すべきか(=緊急度)」という観点から、以下のようにタスクを仕分けしています。
- 重要度も緊急度も高いタスク→最優先で着手する
影響範囲が大きく、対応が遅れるほど成果やユーザー体験に悪影響を及ぼすタスクは、他よりも優先して取り組みます。
タスク例:成果が見込める新規顧客向けのバナー制作、誤字やリンク切れなどユーザー体験に直接影響する箇所の修正
- 重要度は高いが緊急度は低いタスク→時間を確保して計画的に進める
アナグラムでは、ブログ執筆などの情報発信を、クライアントワークと同等に重要な業務と位置づけています。こうした業務は「毎朝30分少しずつ進める」など事前に時間を確保しておきます。
タスク例:スキルアップのための情報収集、ブログ執筆などの情報発信
- 重要度は低いが緊急度は高いタスク→自動化・効率化する
定例会資料の作成や広告成果の数値集計などは、それ自体が成果を生むわけではありません。ツールやテンプレートを活用するなど自動化・効率化できないか検討します。
タスク例:定例会資料作成、広告成果の数値集計、関係者への進捗報告やリマインド業務
- 重要度も緊急度も低いタスク→代替案を伝える/やらなくていい選択も
成果が見込めないタスクや、リソース的に実行が難しいタスクは「NO」と言う選択肢も必要です。
闇雲にお断りするのではなく、「この要望を実現するための懸念点」と「その懸念を回避するための代替案」を一緒に伝えるようにしています。
タスク例:成果が見込めない施策
こうした分類を意識するだけで、「とりあえず今できるものからやる」ではなく、目的や成果への影響度に基づいた判断がしやすくなります。
具体的な行動がイメージできるまでタスクを分解する
「バナー制作お願いします!」
一見シンプルに思えるこの依頼も、いざ対応するとなると、構成の検討、初稿の作成、フィードバック対応、最終納品……と、想像以上に多くの工程が含まれています。
デザイン業務は「ここまでがひと仕事」という線引きが曖昧になりがちです。そのままタスクをひとまとめにしてしまうと、「思ったより時間がかかる」「提出日までにフィードバックの時間がなかった」といったトラブルにつながってしまいます。
プロジェクトを円滑に進めるには、具体的な行動がイメージできるレベルまでタスクを分解しておくことが大切です。
上図のように、初稿の提出・フィードバック・修正なども1つのタスクとして洗い出し、工数を見積もりましょう。
<必要なタスクを洗い出すための方法>
過去の類似プロジェクトを振り返る他のメンバーや経験者に相談するプロジェクトに関する外部の記事を参考にする
社内でこれまで扱ったことのないタスクの場合は、外部の記事を参考にするのも有効です。アナグラムでもバナー制作、LP制作、撮影など目的別に手順を紹介した記事があるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
バナー制作
LP制作
動画制作
商品・人物撮影
依頼者任せにせず、自分から納期を提案する
タスクを細分化すると、どの工程にどれくらい時間がかかるかが明確になります。だからこそ、納期は受け身にならず、自分から提案することが大切です。
先にスケジュール案を出すことで、無理な進行を避けられるだけでなく、相手と認識をすり合わせるきっかけにもなります。とくに、バナーやLPのように工程が多い案件では、それぞれどのくらい時間がかかるかを可視化して伝えると、納期に対する合意がとりやすくなります。
以下は、クライアントへ納期を提案する際の文例です。
【LP制作に関するスケジュールのご提案】
LP制作にあたり、現時点での大まかなスケジュールを以下の通りご提案いたします。
最終納品は 「〇月〇日(〇)」頃 を想定しておりますが、各工程でのご確認・ご対応のタイミングによって前後する可能性がございます。状況に応じて、ご相談させていただけますと幸いです。
■制作スケジュール(目安)
構成・テキスト原稿の作成(アナグラム):約7営業日
構成案のご確認・修正のご指示(貴社):約2営業日
ワイヤーフレーム作成(アナグラム):約10営業日
ワイヤーフレームのご確認・修正のご指示(貴社):約2営業日
デザインカンプ作成(アナグラム):約10営業日
デザイン案のご確認・修正のご指示(貴社):約2営業日
コーディング(アナグラム):約10営業日
公開前の最終チェック(貴社):約2営業日
こうしてあらかじめ見通しを共有しておくことで、「どんなタスクが発生するか」が明確になり、関係者間で認識のズレを防ぐことができます。
また、最終納期が確定したら、ガントチャートやカレンダーなどに落とし込み、関係者に共有しましょう。誰が・いつ・何をするのかが見えることで、チーム全体の動きがスムーズになり、納期遅れなどのリスクも減らせます。
タスクをGoogleカレンダーに登録して抜け漏れを防ぐ
プロジェクトごとにタスクを整理しても、日々の業務に追われる中で「今日は何から手をつければいいんだっけ?」と迷ってしまいますよね。こうした事態を防ぐには、「今やるべきこと」がすぐにわかる仕組みを整えておくことが大切です。
私の場合、会社で導入しているGoogleカレンダーをタスクリスト代わりにして、何を・どの時間帯に・どれくらいの時間かけてやるか細かく登録しています。
カレンダー型のツールを使う1番のメリットは、会議や予定に対してどれくらい作業時間が取れるかを把握しやすくなり、タスクの抜け漏れや詰め込みすぎを防げることです。



<Googleカレンダーでタスクを管理するための工夫>
- タスクは「予定なし・非公開」設定で登録し、作業時間を確保する
- 「情報収集」「成果の振り返り」などルーティン業務は繰り返し機能で自動入力する
- カレンダー上部に「納期」や「制作スケジュール」を入れて見通しを立てる
- 迷ったら「まず着手だけでもする」時間を15分ほど確保しておく
タスクを「予定なし」「非公開」の設定で登録しているのは、あくまで自分だけが見えるようにしつつ、作業時間を確保したいからです。ただし、「このタスクは集中したい」「この時間には会議を入れてほしくない」という場合は、「予定あり」で登録し、他のメンバーにも見えるようにしています。
このように、「他の人に見せる・見せない」を使い分けられることも、カレンダー型ツールならではのメリットです。
また、タスク完了後に実際にかかった時間を記録しておくと、次回以降のスケジュール精度も上がっていきます。見積もりと実績の差に気づけるようになると、無理な予定を入れてしまうことも減っていくでしょう。
まとめ
手を動かす前に、先を見据えてここまで準備するのはとても大変ですよね。しかし、それがプロジェクトをスムーズに進め、デザイナーとして「この人なら安心」と思ってもらえる信頼にもつながっていきます。
今回ご紹介したタスク管理術は、アナグラムのデザイナーが実践している方法の一例にすぎません。「これは自分にも合いそう」と思えることがあれば、ぜひ取り入れてみてくださいね。
また、業務を円滑に進めるためには、依頼主とデザイナーがお互いの意見を尊重し、歩み寄ったコミュニケーションを取ることが大切です。抽象的な依頼への向き合い方や、目的に沿ったデザインに仕上げるための工夫については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
