Criteoでは予算やクリエイティブ、データフィードでの設定など、幅広い調整・改善レバーが用意されていますが、中でも特に大きな影響を与えるのが入札エンジンです。エンジンには目的に応じた様々な種類が存在しています。
一方で、多くの選択肢が用意されている分、どのエンジンを選べばいいのか分からない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかも、エンジン変更には推奨の条件が存在しており、闇雲に変えていても十分な成果を発揮できません。
この記事では「入札エンジンの選択方法」にフォーカスしCriteoを始めた際に、どのようにエンジンを選択すべきかを詳しく解説します。
さらに、その結果どう成果が変わったのかも弊社の事例を交えてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
Criteoエンジンの種類
前提として、まずどのようなエンジンが存在しているのかをご説明します。
現在は約8種類が存在しています。
エンジン名 | 目的 | 入札方式 |
COエンジン | CVR最適化 | 手動 |
---|---|---|
ROエンジン | ROAS最適化 | 手動 |
ACOエンジン | 目標CPA自動最適化 | 自動 |
AROエンジン | 目標ROAS自動最適化 | 自動 |
VOエンジン | Value最適化 | 手動 |
VISITOエンジン | クリック最適化 | 手動 |
BCOエンジン | 予算利用&CV最大化 | 自動 |
BVOエンジン | 予算利用&サイト訪問最大化 | 自動 |
大まかな違いは、達成すべき目的が「コンバージョン」「売上」「利益」「その他」で分けられており、更に入札方法が「手動」「自動」で分かれています。
「手動」の場合は運用担当者が入札単価を管理画面上で入力しますが、「自動」の場合は入札単価の入力は不要で、価格はCriteoにより自動で決定されます。代わりに、ターゲットとなるCPA・ROASを設定することで、ターゲットを目指した運用が行われます。
Criteoの入札エンジンに関する詳しい解説はこちら
ECにおけるCriteoの入札エンジンの選び方
ECサイトでは、一つの商品だけを販売する単品通販もあれば、価格帯もジャンルも広い多品目を扱うものまでさまざまです。
とくに多品目の場合では、同じ1件のコンバージョンでも、購入いただいた商品によって掛けられる広告費も変わるため、同じCPA(コンバージョン単価)でもその価値が変わりますよね。
このようなケースでは、広告運用のKPIをCPAではなくROASで管理していることも多いでしょう。
今回は、ROASをKPIとするECサイトでCriteoを利用する場合の、入札エンジンの選び方や変更方法を解説していきます。
※ROASによる広告運用って?という方はまずはこちらをチェック
最初は「COエンジン」からスタート!
サイトに訪れたユーザーに向けて売上拡大を目的とした広告配信を行う場合は、Criteoのリターゲティング配信が有効です。
Criteoのリターゲティング配信を始める際に、一番最適なエンジンはCO(CVR Optimized・CVR最適化・旧CRO)エンジンです。
Criteoに限らず、蓄積したデータによる機械学習によって成果を向上させる種類の広告媒体は、その学習元となるデータを得ることが配信初期における第一の優先事項となります。
機械学習のもとになるデータをより多く、効率的に獲得できるエンジンがCOエンジンです。そのため、学習データが溜まっていない開始初期はデフォルトでCOエンジンが選択されており、最もスタンダードなエンジンと言えます。
注意点としては、効率的なコンバージョン(以下、CV)の獲得を目的とした配信であるため、単価の安い商品のCVが増えてしまいROASが見合わなかったり、開始初期は機械学習似に必要なデータが蓄積されていない状態での配信となるため、獲得単価が理想よりも高くなってしまうケースもあります。
ただそれは成長痛のようなもので、Criteoとしても開始初期はどのようなユーザー、商品、クリエイティブが獲得に繋がるのかが分からず、さまざまなパターンをテストしている時期でもあります。そのため、成果が大きく上振れたり、下振れたりすることは珍しくありません。
何事も、新しい取り組みを始めたときはついすぐに効果が出ることを期待してしまいますが、特にこの時期は日々の成果に一喜一憂せず、落ち着いてCriteoの学習が進むことを見守っていただければと思います。
次はROAS最適化の「ROエンジン」
KPIがROASのECサイトでCriteoを開始し、基本となるCOエンジンで安定的にCVが獲得できるようになったら、次のステップとしてROエンジンへの変更を検討してみましょう。商品価格や広告経由の売上額を学習データに利用し、売上の最大化を目的とするのがRO(ROAS Optimized・ROAS最適化・旧COSO)エンジンです。
COエンジンはより多くのCV獲得を目指すエンジンであるため、広告経由の収益については最適化項目に含まれていません。対してROエンジンは商品の価格や広告経由の売上も学習材料にしていくため、高い売上が見込めるユーザーへの配信や高額商品の露出を強化し、費用対効果が最大化するように配信されます。そのため、KPIにROASや売上の拡大を置くECサイトに適したエンジンとなります。
注意点として、ROエンジンのパフォーマンスを最大限活用するために、変更時には以下の推奨条件が設定されています。KPIがROASだからといってCriteo開始後にすぐROエンジンへ変更するのではなく、COエンジンでの配信実績が溜まってきてから変更を検討しましょう。
- COエンジンもしくはACOエンジンで7日間以上配信
- 過去21日間デイリー平均4件以上のCV数
ROエンジンの設定方法
エンジンは管理画面から設定内容を選んでいくだけで、簡単に変更が可能です。
ただし、分かりやすく「COエンジン」や「ROエンジン」と記載されてはいませんので、その点はご注意ください。
- 管理画面の「キャンペーン」→「広告セット」→変更したいキャンペーンの右端にある3点リーダーをクリック
- 「名前、入札、予算、スケジュール」をクリック
- 「エンジン」→「売り上げを促進」をクリック
- 「最適化指標」→「入札エンジンを管理する方法を選択」→「CPC/CPMによる制御」を選択
- 「入札指標」→CPC/CPMを選択し、入札単価を入力→「変更内容を保存」をクリック
最終的に目指したい自動入札の「AROエンジン」
ROエンジンから更なる成果向上を狙う場合は、AROエンジン(Adaptive ROAS Optimized・目標ROAS自動最適化)への変更が有効です。
どちらもROAS重視のエンジンですが、違いは入札方式です。ROエンジンはCPCを管理画面で設定する手動入札方式で、AROエンジンはCriteoがオークション毎に自動でCPCを調整する自動入札方式になります。CPCの代わりに、目標とするROAS(COS※)を入力し、その目標値の達成を目指してエンジンが自動で学習を進めます。
COSとは
Cost of Sales の略で、収益に対する広告コストが占める割合を指し、広告コスト ÷ 売上 で算出できます。CriteoではROASは使用せず、同じ意味合いであるCOSを管理画面で入力します。
そのためAROエンジンでは上限の入札単価が存在せず、配信の自由度が増す分COやROエンジンでの配信時と比べてCPCが上昇することもあります。ただそれは「期待値の高いユーザーだから高額なCPCでも入札する」とエンジンが判断した結果でもあり、だからこそ配信の機会を得られ、獲得に繋げられたと考えることもできます。
ROASをKPIとするECサイトでの配信においては一度試したいAROエンジンですが、CO → ROへの変更時と同様に、RO → AROへの変更もCV数などの条件があります。
下記をクリアできているようであればぜひトライしてみてはいかがでしょうか。
- ROエンジンもしくはACOエンジンで7日間配信
- 過去21日間デイリー平均3件のCV数
AROエンジンの設定方法
基本的な操作はROエンジン変更時のものと同じです。「エンジン」は「売上の促進」のままで、「最適化指標」の「入札エンジンを管理する方法を選択」で選択する項目が異なります。
- 「最適化指標」→「入札エンジンを管理する方法を選択」→「KPIによる管理」を選択
- 「COSを設定」→目標とするCOS値を入力→「変更方法を保存」をクリック
目標がCPAの場合は「ACOエンジン」を目指そう
求人情報サイトや不動産情報サイトでは、応募や問い合わせをCV地点としたCPAを指標としているケースが多いかと思います。その場合はACO(Adaptive CPO Optimized・目標CPO自動最適化)エンジンへの切り替えを目先の目標にして運用するとよいでしょう。
COからACOへの変更条件は以下となります。
- COエンジンもしくはAROエンジンで7日間以上配信
- 過去21日間デイリー平均3件以上のCV数
ACOエンジンの設定方法
基本的な操作はこれまでと同様です。「エンジン」は「コンバージョンを促進」を選択し、「最適化指標」は「KPIによる管理」で、目標のCPOを入力、「変更内容を保存」で完了です。
- 「エンジン」→「コンバージョンを促進」を選択
- 「最適化指標」→「入札エンジンを管理する方法を選択」→「KPIによる管理」を選択
- 「入札単価(CPO)を指定」→目標とするCOS値を入力→「変更方法を保存」をクリック
成果が安定しなくなったら?AOエンジンがゴールではない
AOエンジン(AROやACO)に変更できたら、もうエンジンを変更する必要はないのでしょうか?いえ、そんなことはありません。もし何らかの要因でコンバージョン数が減少してしまった場合は、COへ戻すといった調整も必要になります。
前述した通り、各エンジンが正しく機能するには、それぞれに定められた一定以上のCV数が必要です。AROの場合は直近21日間のデイリーCVが3件を下回ってしまうと、エンジンの目的に沿って学習を進めることが困難になり、成果が落ちてしまう要因の1つになります。
例えばサイト改修により一時的にタグが外れてしまった場合や、サイトのリニューアルなど、何かのきっかけで成果が大きく落ち込んでしまい、そこからのリカバリーがなかなか進まない時は、AROを再度COに戻すことも検討してみてもいいでしょう。
ECサイトでのエンジン変更による成果改善の事例
ECサイトでの運用事例として、エンジン変更に伴う数値の変化を参考までにご紹介します。COでCriteoの配信を開始し、段階を踏んでRO → AROへと変更いたしました。
どのエンジンも、配信期間やご利用広告費はほぼ変わらずで、COからROへ変更した際はそこまで大きな変化は見受けられなかったのですが、ROからAROへ変更した前後で約2倍までCPCが上昇し、CVRも同程度まで上昇しました。
要因としては、AROにしたことで上限入札単価の制限が無くなり、より売り上げへの期待値が高いユーザーへ強い入札をかけられるようになったことで、CPCとCVRが上昇したと考えられます。
まとめ
今回は、目的や段階に応じてどのようなエンジンを選択すべきか、具体的な変更方法まで含めてご紹介いたしました。
幅広い種類のエンジンが用意されている一方で、どれを選択すべきか悩んでしまう時もあるかと思います。また、一概に「ECだからAROがベスト!」とも言い切れず、弊社の事例でも、段階を踏んでエンジン変更にトライした結果、現在はROやCOに落ち着いているケースもございます。
さらに、特殊な傾向があるサイト(ユーザー毎に購入の傾向(商品カテゴリや金額、個数、購入回数等)が大きく異なる、短期間で配信量の大幅な拡大・縮小を繰り返す、など)も、学習材料とする変数の幅が広すぎるためにAOが合わないこともあります。
大切なのは、エンジンの特性・仕様を理解したうえでさまざまなアプローチを試し、成果を見ながらどの設定が最も適しているのかを探ることだと考えています。場合によっては大きく数字が変化する可能性もございますが、本記事をご参考いただきトライ&エラーを繰り返した先、最適なエンジンが選択できる未来があることを祈っています。