デザインに行き詰る原因は1つではない!手が止まってしまう時に考えられる6つの原因と対策

デザインに行き詰る原因は1つではない!手が止まってしまう時に考えられる6つの原因と対策

「デザイン作業が進まない……」デザイナーなら誰もが一度は経験する問題ですよね。

私もデザイナーになったばかりの頃は、考えすぎて深みにはまり、提出がギリギリになってしまうという経験がありました。

そもそもなぜ行き詰まってしまうのでしょうか?

  • 長時間同じデザインに向き合って視野が狭くなっている
  • 具体的なイメージが湧いてこない
  • ターゲットや目的が深く理解できていない
  • 「すごいものを作らないと……」と自分でハードルを上げている

このように作業中に手が止まってしまう原因は1つではありません。状況に応じて効果的な対策も変わってくるので、まずは何がネックになっているのか原因を知ることが大切です。

本記事では、デザインに行き詰まる原因を6つに分けて、それぞれ対策を紹介していきます。


1.進め方がわからない

新しい課題や未経験のタスクは、次に何をすればいいのか、どれくらいの時間がかかるのかが不明確で予測ができないため、どうしても不安が伴います。

いわゆる「何から手をつけたらいいのかわからない」という状況では、どんな対策をするのが良いでしょうか。

対策|全体像・作業内容を明確にする

デザイン以外の仕事でもそうですが、まずは全体像を把握してタスクを細分化しましょう。

たとえば初めて動画を制作することになった場合、構成・素材集め・編集・提出と4ステップに分けて、それぞれ必要なタスクを洗い出します。

自分だけでタスクの細分化が難しい場合は、上司や経験者にアドバイスを求めるのが良いでしょう。

それでもまだ手が止まってしまうという場合は、まだ具体的な作業イメージが湧いていないのかもしれません。自分がイメージできるまで細分化し、それぞれのタスクに作業時間を設定することで手が進むようになります。

2.ターゲットや目的が不明確

たとえば誰に向けた手紙かわからないままペンを走らせても、時候の挨拶など月並みな文章しか書けませんよね。

デザインもそもそものターゲットや目的が曖昧なままでは、綺麗にまとまって見えるけど誰にも響かない……というクリエイティブになってしまう可能性があります。

クリエイティブを受け取る人のことや何を伝えたいのかを明確にするには、具体的にどうすれば良いのでしょうか。

対策①|自社・顧客・競合について分析する

1つ目は、自社(Company)・顧客(Customer)・競合(Competittor)について深堀りする、いわゆる3C分析です。

たとえば「ヘッドフォン」のバナーを作るとします。同じヘッドフォンというカテゴリでも、機能やカラー展開など商品によって特徴はさまざまです。自社商品のスペックや訴求したいポイントなど、サイトや社内資料を見ながら挙げていきましょう。

競合商品も同じように強み・弱みを分析します。「競合商品の方が価格が安いけど、音質は自社商品の方が良いな」ということであれば、「価格で勝負せず、音質の良さを前面に押し出したクリエイティブにしよう」と方向性が決まります。

また、既存ユーザーが何に惹かれて購入してくれたのかリサーチすることも欠かせません。重低音がよく聞こえるから、見た目の良さを求めていたから……など購入者のニーズを口コミやアンケートから把握することで、何を訴求すべきか考えやすくなります。

具体的な3C分析のやり方については、下記の記事をご参照ください。

 

対策②|クリエイティブの目的を明確にする

2つ目は、「なぜこのクリエイティブを制作するのか?」という理由を明確にすることです。

たとえば「Instagram用のバナーを作ってほしい」という依頼を受けたとして、その制作目的が「すでに成果が出ているクリエイティブの表現を変えてABテストをしたいから」なのか「これまでとは全く違う新しいターゲット層を狙いたいから」なのかで、仮説の立て方や今後のクリエイティブの展開の仕方も変わってくるはずです。

また、認知度向上、資料ダウンロード、お申し込み増加などターゲットにどんな行動をしてほしいのかによっても、目立たせたい要素や訴求がガラリと変わります。

制作に着手する前に、関係者にこれらの情報をヒアリングして整理しておきましょう。

バナー制作を円滑に進めるための情報整理術は、こちらの記事で紹介しています。

3.制作イメージが湧いていない、しっくりこない

具体的な制作のイメージが湧いてこない、作ってみたはいいがどうもしっくりこないときがあります。このケースは、今まで作ったことのないジャンルのデザインをしている際に発生しがちです。

「自分にはセンスがない」と落ち込んでしまう前に、2つの対策を試してみましょう。

対策①|参考となるデザインを集める

1つ目はPinterestや参考サイト、本などを見てインプットを増やすことです。

ただなんとなく眺めるのではなく、「スポーティーなデザインに合うあしらいは?」「女性向けの高級感のあるデザインに使用されるテクスチャは?」など、明確な目的を持って複数のデザインを見るのが効果的です。たくさんサンプルを集めるうちに、「共通の要素」や「どのタイミングでそのデザインが使われてることが多いか」などポイントが見えてくるようになります。

たとえばスポーツ系の商材を扱ったバナーを制作したい場合は、以下のように共通要素を言語化してみましょう。

参考デザインを集めたら、関係者にも「この方向性でデザインしようと思っている」とあらかじめ伝えておくことで、イメージのズレを防ぐこともできます。

インプットの仕方やバナーを見る際に意識するポイントは、こちらの記事で解説しています。

対策②|手書きで構成を考える

2つ目はあえて手書きで構成を考えてみることです。

普段自分が使用しているツール上で考えてしまうと、自分が知っている機能の範囲内で考えてしまうケースがあります。ツールで発想が縛られてしまうのは非常にもったいないですよね。

まっさらな白紙に手書きで描いてみることで、いつもとは違う自由なレイアウトや表現が浮かぶかもしれません。

行き詰まったときは、まず手書きで構成を考えてみてから、それを再現するために必要な素材を探したり、ツールの使い方を調べる……という順番にすることも試してみましょう。 

4.視野が狭くなっている

長時間同じデザインに取り組むと、見慣れてしまって「このデザインで本当に良かったんだっけ?」とゴールを見失ってしまうことがありますよね。

視野を広げるための具体的な対策を、3つご紹介します。

対策①|視点を意識的に切り替える

1つ目の対策は視点を意識的に切り替えることです。具体的には、自分がいま「鳥の目」「虫の目」「魚の目」のどれで見ているかを自覚することです。

このフレームワークは「鳥の目」で全体のバランス感を考慮し、「虫の目」で細部のディテールに注目し、「魚の目」で流行など時間や業界の流れを捉えるといった方法です。

視野が狭くなっているときは「虫の目」の意識が強くなっている傾向があります。「鳥の目」で俯瞰して見るためには、PCで作っていたデザインをスマホで確認したり、モノクロにしてみたり強制的に見方を変える工夫をしてみると良いでしょう。「魚の目」で世の流れを掴むためには、SNSで流行っているものを見たりクリエイティブが掲載される場所を確認して傾向を把握し、必要に応じてデザインに取り入れます。

「いま何の目が足りていないか?」を意識することで、多角的な視点からデザインを検討することが可能になるでしょう。

対策②|周囲の人たちにフィードバックを求める

2つ目は自分一人で考え込むのではなく、周囲の人たちにフィードバックを求めることです。私自身もレイアウトに煮詰まってどうしようもならなくなったときに、人に意見を求めたらあっさり悩んでいた点が解決したということがあります。

他の人からの客観的な意見は、自分自身では気づかなかった新しい切り口や発想を得られる可能性があります。もしかすると今までフィードバックを受けた中で、似たような内容を指摘されることがあるかもしれません。自分がよくフィードバックで指摘される内容をチェックリストにすると、行き詰ったときの解決策を増やすことができます。

対策③|一時的にその仕事から離れる

3つ目はあえて仕事から一時的に離れ、時間を置くことです。

違うタスクに取り組んだり、散歩をしたり、ランチ休憩に行ったり、翌日に改めて内容を見る……など一時的に環境を変えることで思考がリセットされ、新たなアイデアが湧きやすくなります。

とくに散歩など「適度に体を動かす」ことは、血流が良くなって創造性を向上させる効果があるとスタンフォード大学の研究で報告されてます。

参考:動きながら考える人が動かない人より成果出る訳 運動すると創造性が増すことは科学的に立証 | 健康 | 東洋経済オンライン

納期が迫って時間にゆとりがないときは、作業する場所を変えたり音楽をかけたりコーヒーを入れることで、簡易的に環境を変える工夫をしてみましょう。

5.重要な情報が目立ってない、直し方がわからない

デザインを提出したあとに、「どこが重要かわからない」とフィードバックを受けることもあります。

「目立たせているつもりなんだけどな」「でもこっちの要素も重要だし……」と考えて手が止まってしまう場合は、もしかしたら自分の中で要素の優先順位がうまく整理できていないのかもしれません。 

対策|内容を整理し優先順位を決める

どの要素が一番伝えたいポイントなのか、明確にしましょう。

デザインを構成する要素を箇条書きで書き出し、優先したい順に番号をふって、重要なポイントに対してコントラストを効かせることで、ひと目で「ここが重要なんだ」と伝わるようにします。

デザインに慣れていないうちは「どの要素も重要!」と思ってしまうかもしれませんが、すべて同じサイズ感だと単調になり、ゴチャっとした印象を与えてしまいます。

ビジュアルがメインの商材では思い切って写真を大きく配置したり、ターゲットを限定したい場合は「働くママ必見!」と呼びかけるコピーを1番目立たせたり、ターゲットがどんなことに反応するかを分析することが重要です。

文字を目立たせる方法は下記記事で紹介しているので、興味があればご一読ください。

6.「すごいものを作らないと…」とハードルを上げている/フィードバックが怖い

「すごいものを作って認められたい」「指摘を受けないように、完璧なものを出さなければ」といったプレッシャーで、手が止まってしまうことがあります。心理的な安全性が損なわれると思考がうまく働かなくなり、デザインを提出するのに時間がかかってしまいますよね。

しかし、デザイナーである以上この先もフィードバックを受ける機会は何度も訪れます。そのため、この場合は場当たり的な対策ではなく「そもそも完璧な状態で出す必要はないんだ」といった風にマインドを切り替えることが重要です。

デザイナーが常に意識しておきたい2つの考え方を紹介します。

対策①|「Quick & Dirty」の考え方を取り入れる

1つ目は「Quick & Dirty」の考え方を取り入れることです。「粗くてもいいからすばやくアウトプットする」という仕事の進め方を指します。

たとえば彫刻もいきなり細かく削っていくのではなく、大まかな形をとってから、少しずつ詳細をつめて完成度を高めていきますよね。クリエイティブの制作もそれと同じように、まず大まかに全体を作り上げてから提出して、フィードバックを何回か受けることで完成度を高めることができます。

途中経過で小まめに相談ができるので、方向性が間違っていた時の修正も容易です。フィードバックを求めるときは事前に「まだ3割の完成度ですが、方向性がズレていないか確認したいです」のように意図を伝えると、よりスムーズになります。

対策②|フィードバックはより良い成果につなげるための必要な工程だと知る

フィードバックを受けると、「あぁ自分の詰めが甘かった……」「相手にセンスがないと思われただろうな」という風に落ち込んでしまうことがあります。

そんな時に伝えたいのが、フィードバックは批判ではなく、より良い成果につなげるための必要な工程だということです。

指摘する側は決してデザイナー自身を否定しているのではなく、建設的な議論を望んでいる場合がほとんどです。

必要以上にフィードバックを恐れないように、以下3つのことを意識しましょう。

  • フィードバックはより良い成果につなげるために必要な工程である
  • フィードバックは自分自身ではなく制作物に対してのものと理解する
  • 「間違っていた・失敗した」のではなく「より良い別の方法を見つけた」と捉える

こういった考え方は、1回2回試してすぐに切り替えられるものではないと思います。しかし、繰り返し思い出すことでいつしか習慣になるので、「フィードバックは必要な工程」と目につく場所に付箋で貼ってみるのもいいかもしれませんね。

以前、広告運用者向けに「君は君の作った広告アカウントではない」という記事を公開しましたが、この考え方はクリエイティブ制作においても同様のことが言えます。

まずは行き詰る原因を見極めよう

デザイン作業で行き詰る瞬間は誰にでもありますが、その背景にはさまざまな要因が隠れています。

「デザイン 行き詰まり」で検索して出てきた対処法を片っ端から試す前に、まずはなぜ行き詰まっているのか一度原因を考えてみましょう。

行き詰るとつい「もうダメだ……」と思ってしまいがちですが、何度も対策を練って乗り越えるうちに、悩む時間が短くなったり視座を意識的に切り替えることができるようになります。

より良いデザインを生むための過程として、本記事の内容を活用してみてください。

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