
法人の購買プロセスのうち57%までが、営業担当者に会う前の事前調査で終わっている
CEB Marketing leadership Councilより
事前の情報収集を行い、どの企業と取引をするかある程度あたりを付けてからお問い合わせをするのが法人購買のプロセスでは当たり前になっています。
また、事前の情報収集の中でもGoogleが発表している「The Changing Face of B2B Marketing」によるとBtoB企業の意思決定者が情報収集する際に約90%の人々が「検索」という行動を行うと記載されています。
「検索」というアクションを起こしている時点でニーズが顕在化しているため、商談化率や受注率も高い傾向があります。
一方で、BtoBの検索広告は相場(クリック単価)が高いことが多く、コンバージョン単価も高くなりがちです。そのため、コンバージョンの数が頭打ちしやすい施策となっていることが多くあります。
しかしながら、やり方次第ではBtoBビジネスにおける検索広告のコンバージョンが頭打ちという状況を打破できる可能性もあります。
今回は、BtoBの検索広告の成果が頭打ちなときにぜひ検討して欲しい、記事LPを利用した検索広告の広げ方をご紹介します。
目次
なぜBtoB向けの検索広告は成果が頭打ちになりやすい?
ではまず、どうしてBtoB向けの検索広告は成果が頭打ちになりやすいのか、その理由から紐解いていきましょう。
相場が高く、費用対効果の合うキーワードの幅も狭い
BtoB向けの商品やサービスを探す際の検索キーワードはその専門性から種類も回数も少ないことが多くあります。
そのため、競合他社も同じようなキーワードに出稿しているため、BtoBのクリック単価(以降、CPC)の相場はBtoCなどに比べて高い傾向があります。
CPCが高いと、費用対効果の合いやすいコンバージョン率の高いキーワードへの出稿が中心となり、結果として検索広告の成果が頭打ちとなってしまうケースが少なくありません。
上記は「CRM(※)」の例です。CRMツールを提供する企業の例で考えてみましょう。
※Customer Relationship Management、顧客関係管理
「CRM 比較」や「CRM 導入」はおそらくCRMに課題を感じて、ツールの導入を具体的に考えている企業の担当者が検索しているであろうと想像できますよね。ただし検索ボリュームは非常に少なく、検索広告でアプローチできる機会は限られてしまいます。
では検索ボリュームの多い「CRM」というキーワードを狙えばいいかというと「そもそもCRMとはなんぞや?」と定義を知りたいユーザーもいれば、CRMを検討し初期の情報収集を行うユーザーなどもいます。
これらの検索ユーザーはすぐには顧客になり得ない可能性が高く、費用対効果が合わずに出稿を断念していたり、成果に繋げられていなかったりするケースが多いのではないでしょうか。
こうしてBtoBビジネスの検索広告は頭打ちとなっているケースはよく見られます。そこで検討したいのが、記事LPを活用することです。
記事LPとは?LPとの違いは?
多くの場合、検索広告をクリックしてサイトに訪問してくれるユーザーは、探している情報や商品、サービスが比較的はっきりしていることが多いですよね。そのため、商品やサービス自体に関する情報が載っているページをランディングページ(以下、LP)とするケースが多いのではないでしょうか?
一方で記事LPとは、ニュースサイトなどに記載されている記事コンテンツのようなフォーマットのLPを指しています。購入や申込みの判断に必要な、自社の商品・サービスのメリットを伝える通常のLPと違い、記事を読んでいくうちに商品に興味を持つ構成になっていることがほとんどです。
そのため、「まだ広告主の商品やサービスを知らないユーザー」へのアプローチを目的としたSNSやディスプレイ広告で活用される施策のひとつです。コスメや健康食品、定期購買などのBtoCの商材でよく用いられていますが、実はBtoB向けの検索広告との相性も良いと考えています。
一般的な構成のイメージは下記の通りです。
①課題定義や共感パート
・こんな悩みありませんか?
②課題の原因パート
・課題の原因はここにあります
③課題の解決方法
・このようなやり方だと解決できます
・でもちょっと大変です
④解決方法を簡単に行う方法で商品紹介
・解決方法を簡単にするにはこの商品を使うのがおすすめです
⑤CTA
・LPへの遷移
読み進めていくとサービスに興味を持ってもらえる構成になっているので、課題にまだ気がついていない人や課題はあるがまだ対策の必要性を感じていない人が記事LPに訪れても離脱しにくく、コンバージョンにもつながりやすくなります。
つまり、記事LPを使うことで提供している商品を知らない人やニーズがまだ顕在化していない人に商品に興味を持ってもらった状態でLPに訪れてもらいやすくなります。
記事LPは検索広告でも活用でき、BtoB商材とも相性が良い
では、BtoB向けの検索連動型広告での記事LPの活用方法とメリットについて以下で説明していきます。
アプローチできる検索語句の幅が広がる
BtoBでは獲得できる検索キーワードの幅が限られることが多いと前半で記載しましたが、以前コンバージョン獲得が困難だった検索キーワードに記事LPを上手く活用すると、全体として獲得できるクエリの幅が広がることが見込めます。
たとえば「CRM比較」という検索ワードを見ていきましょう。
「CRM比較」と検索している人は、CRM自体はある程度知っているが「どこの会社が提供しているものが良いかな?」と迷っている状態で検索しているのではないでしょうか?
そのような検索意図に対して、通常のLPでは求めている情報が異なるケースも多く、離脱する方も比較的増えてしまいます。
そこで記事LPの出番です。たとえば「比較する前に知りたい!失敗しないCRMの選び方」といった記事を作り、記事の内容を以下のような構成にします。
①課題定義や共感パート
CRMってたくさんあって選ぶのに迷いますよね?
②課題の原因パート
自社に合った選び方や剪定方法がわからないから迷う。迷った結果、自社に合わないCRMを選び失敗してしまうことがほとんどです。
③課題の解決方法
これまで数多くのCRM導入支援を行った私が失敗しないCRMの選び方を紹介します。
④解決方法を簡単に行う方法で商品紹介
選び方を伝えた上で、自社の商品を紹介する。選び方と提供しているCRMがリンクするコンテンツだとさらに良いが、客観的に記載する必要がある。
あくまでもイメージになりますが、このような検索意図に合ったようなコンテンツを作ることで、訪れた人の離脱を防ぎ、記事を読み進めていくうちに商品を紹介し興味を持ってもらうことができます。一定数の人は資料請求などのコンバージョンに至ることもあると期待できそうです。
さらに「CRM 導入」などと比べると「CRM おすすめ」や「CRM 比較」などの方が検索数は多くなります。記事LPによってこのような検索ワードでLPに直接遷移された時は獲得できなかったユーザーも拾うことができるようになり、機会損失を防ぐことができそうです。
検討段階の浅い検索キーワードからでも成果が見込める
BtoB向けの検索広告だとCPCが高くなりやすく結果、コンバージョン単価が高騰しやすいと記載しましたが、記事LPを活用することで検討段階の浅いユーザーが検索しているであろう検索キーワードからでも成果が見込みやすくなります。
また、検討段階の浅い検索キーワードは費用対効果が低くなりやすいため、競合他社も対策できていないことが多く、比較的CPCも安価なケースが多く結果的にコンバージョン単価が改善されることが少なくありません。
たとえば「CRM導入」など検討段階が進んでいるキーワードになればなるほど成果につながる確率が高く、多くの企業の入札が混み合うためCPCも高くなります。
一方で「CRM」単体ワードのように初期の情報収集段階のキーワードになればなるほど、成果に繋げるのが難しいため各社積極的な入札は難しくCPCは安い傾向です。
これらのキーワードに対して「比較する前に知りたい!失敗しないCRMの選び方」というような記事を作成し「【最新版】CRMの選び方|おすすめのCRMも紹介」のような見出しの検索広告で配信すれば、これまで検索広告ではアプローチが難しかった検討段階の浅いユーザーにも興味を持ってもらいやすく、無理のない集客につながります。
検索広告に記事LPを活用する場合の注意点
ここまでは記事LP活用のメリットを紹介してきましたが、ただ記事LPをリンク先にすれば成果が上がる訳ではありません。ここでは実施する上での注意点をご紹介します。
通常LPの改善が最優先
記事LPから通常のLPに来てもらっても、商品やサービスの魅力が伝わらずに離脱となってしまっては元も子もありません。
たとえばCRMを提供している会社であれば「CRM導入」や自社の指名キーワードなど、コンバージョン率(CVR)が高いと予想されるキーワードでコンバージョンが生まれやすいLPを作りましょう。狙ったキーワードでコンバージョンが発生しにくい場合は、商品の強みが伝わってない可能性があります。
強みが伝わってない場合はLPを作り直す必要があり、スペックが劣っているようでは検索広告でコンバージョンを狙うのは難しくなります。
検索広告×記事LP施策は、既に商品の強みが伝わるLPがあり、狙ったキーワードから一定数のコンバージョンが発生した上で、もっとコンバージョンの数を狙う際に行う施策として位置づけましょう。
記事作成の難易度がある
「CRM」単体検索だと月間49,500件の検索ボリュームがあり、もしこのキーワードからコンバージョンが発生する記事を作成できれば、コンバージョン数の増加が期待できるのではないでしょうか?
ただ「CRM」のような単体ワードになればなるほど、検索意図の把握が難しくなったり、そもそも検討の初期段階過ぎてコンバージョンに至らないケースがあり、難易度が上がります。
実際に「CRM」と検索してみると以下のような検索結果になります。
CRMとは?だったり必要性、メリットや選定方法など様々な検索意図があると思いますが「CRMってそもそもどんなものなんだろう?」という概念を知りたいだけの人も多い検索意図だと見て取れます。
それに比べて「CRM比較」であればCRMを探している検索意図だとある程度はっきりと見て取れるでしょう。
「CRM比較」くらい検索意図がハッキリしていれば記事コンテンツと商品紹介を関連しやすくなりますが「CRM」単体検索まで広げると、どこまで記事コンテンツに検索意図を拾うようなものを準備すればいいのか選定が難しくなります。
記事作成に慣れてない場合は「CRM比較」のような検索意図がハッキリしている語句に合わせるような記事から試してみることをおすすめしています。
ただ、ビッグキーワードからコンバージョンが生まれるような記事が作れればコンバージョン数は増やすことができますし、wacul社の調査によれば、もともと認知していた商品に問い合わせる確率は48%とあり、検討の初期段階でアプローチできればより、お問い合わせや商談を獲得できる可能性が上がると考えられます。
また、自社のSEOの状況も加味することをおすすめします。コンテンツマーケティングに取り組まれており、比較検討クエリや「CRMとは?」のような検索キーワードで既に上位を取れているのであれば、既に上位を取れている記事の中に、問い合わせの導線を設ければ成果につながる可能性が高まるため、無理に広告で獲得を狙いにいかなくても良い場合もあります。
検索広告でも記事LPを活用してみよう
検索広告はBtoBでは重要なチャネルの一つです。一方でコンバージョン数やコンバージョン単価の高騰で成果が頭打ちしやすい媒体の一つでもあります。今回紹介した記事LPを活用しユーザーの状況に合った情報を提供することで、これまでアプローチが難しかった検討段階の浅いユーザーへもリーチを広げられ、成果に繋げられる可能性もありますので、ぜひチャレンジしてみてください。
