ブランドキーワード(指名検索)には自動入札を設定するべきか?

ブランドキーワード(指名検索)には自動入札を設定するべきか?

いまや自動入札(※)は運用型広告には欠かせない機能のひとつで、利用している方も多いですよね。しかしながら自動入札を用いることで、かえってパフォーマンスを下げてしまっているケースもいくつかあります。

その代表といえるのがいわゆる「指名検索」と呼ばれる社名やブランドキーワード(指名キーワード)への検索広告のキャンペーンです。

「指名キーワードのキャンペーンも自動入札を利用したほうがいいの?」と悩んだことのある方も多いのではないでしょうか。はたまた「自動入札を利用しているけどCPA(コンバージョン単価)が抑えられているから気にしたことがない」という方も少なくないと思いますが、指名検索数が多い場合にはぜひ一度考えてみて欲しいテーマです。

この記事では、指名検索の広告キャンペーンで自動入札を用いるべきか?について自動入札の仕組みや指名検索の特性から考えていきます。

※自動入札はさまざまな指標を目標にできますが、本記事ではコンバージョンを目標とした入札戦略としています
※よく言われる「オーガニック検索で1位のキーワードには広告を掲載するべきか?」という疑問にはこちらの記事が参考になります

自動入札の仕組みを再確認

自動入札を利用することで、目標とするCPAや予算のなかで成果が最大となるように自動的に入札価格(設定する上限CPC)が調整されます。

CPAは「CPC÷CVR」として計算できることからも分かる通り、いくらまで入札するか(CPCを上げるか)は実績から機械学習によって予測されるCVRをもとに算出されます。

実際にはオークションの状況によって変わりますが、予測CVRが高ければ高いほど、それだけCPCも引き上がりやすくなる、というような動きになります。

CVRの高いブランドキーワードはCPCも上がりやすい

自動入札の仕組みを考えれば、基本的にCVRが高い傾向にあるブランドキーワードのCPCは当然上がりやすいと考えられます。

本来は関連性やクリック率の高さゆえに広告の品質が高いブランドキーワードは、オークションで優位になるためCPCが抑えられるはずですが、自動入札を用いることで結果的にCPCが高騰しているケースが少なくありません。

ブランドキーワードは多少CPCが高くとも他のキーワードに比べて相対的にCPAが抑えられているこのとの多いため、問題視されないことがほとんどです。

しかしながらブランドの知名度が高く検索回数が多ければ多いほど、知らない間に費用が増大していたということは珍しくありません

実際に、指名検索のキャンペーンを手動入札(拡張クリック単価※)に切り替えただけでCPCが1/3となり、コンバージョン数は変わらずCPAが改善、費用が大幅に削減できたというケースは筆者が知りうるだけでも多くあります。

※拡張クリック単価も自動入札のひとつで、CVRによってその価格は変動しますが、平均クリック単価が、設定した上限クリック単価を超えないように調整されるため一定のコントロールが可能です

参考:拡張クリック単価(eCPC)について - Google 広告 ヘルプ 

指名検索キャンペーンで手動入札を検討するべき理由

でも自動入札を利用すれば、多少CPCが高くなっても機械学習によってCVRが上がれば結果的にCPAは下がるのでは?とお考えの方も少なくないでしょう。

しかしながら指名検索においては、ほぼすべての状況で手動入札を検討するべきであると考えています。ここではその理由をみていきましょう。

①検索語句はもっとも強いシグナル

自動入札では「シグナル」と呼ばれる個々のユーザーのオークション時のコンテキスト(背景、状況、場面といった意味)を特定できる属性情報を使用した調整がなされます。

上図からも分かる通り、シグナルには広告管理画面での入札単価の調整ができないもの(右)が含まれるため、人間にはできない粒度の入札単価調整ができる可能性があります。たしかに一般キーワードでは検索ユーザーのコンテキストは多種多様であるため、シグナルによる調整の恩恵を受けられるケースも多いと思いますが、ブランドキーワードではどうでしょうか。

ブランドキーワードで検索している方は、何らかの形でブランドを認知しており能動的に検索までしてくれています。そのため、すでに検索語句が入札における最大のシグナルです。

特定のOSのみで利用できるアプリなどを除き、検索語句以外のシグナルは入札単価を調整する要素としてはいずれも優先度は高くないはずです。

自動入札によるインテントマッチ(旧:部分一致)のメリットを教授できるか?

また、同じく自動入札によるシグナルの恩恵を受けるという理由で指名検索キャンペーンでもインテントマッチにこだわっている方もいるかもしれません。

しかしながら、ブランドキーワードであれば検索語句の幅は限られるので、自動入札で「指名検索」から遠ざかった語句にまで拡張しCPCが引き上がることでCPAが高騰してしまうリスクを抱えるよりは、拡張クリック単価でフレーズ一致や完全一致のキーワードに入札した方がリスクが抑えやすいと考えられます。

②CPCが上がっても単純にコンバージョン数は増えない

ブランドキーワードは、基本的には広告の品質が高く仮に競合企業による入札があったとしても簡単には検索順位が下落したりシェアを奪われるリスクも比較的低いですよね。

また、インプレッションのシェアも限りなく100%に近いケースが多いため、入札価格を上げても表示機会が増えたり、掲載順位が上がってクリック数が大幅に増えたりは期待ができません。そのためCPCが上がることは成果の向上には繋がらず、単純に広告費用だけが増加する結果となりやすくなっています。

自動入札の導入により、指名検索キャンペーンからのコンバージョンは増えていないのに、費用だけが増えている、といった場合は必要以上のCPC高騰の要因となっている可能性が高いでしょう。

なお、目標コンバージョン単価を低く設定することでCPCの上昇を抑えることはできるかもしれませんが、自動入札の仕組みを考えれば十分な入札が行えずに掲載できない状況が生まれるほうがデメリットとなるため、おすすめはしません。

また、ポートフォリオ入札戦略であれば上限入札単価(あるいは下限入札単価)の設定も可能ですが、CPCの高騰はある程度防げるかもしれませんが、意図しない掲載状況を生じさせてしまう可能性があるでしょう。

③指名検索は他の企業活動の影響を含んでいる

CPAが許容できるから問題ない、という場合も要注意です

指名検索キャンペーンは、多くの場合純粋な新規獲得の役割は果たしておらず、予算は掛けてよいのですが許容CPAギリギリまでCPCを許容できるものではありません。

そもそも指名キーワードの検索ボリュームは、自社の他施策、例えば広報/PR、インフルエンサー、SNS運用などを通して生まれることが多いと考えられます。そうして生まれた指名検索に対して、他社から掲載枠を守り確実にサービスに誘導するために出稿する、という位置づけが一般的ではないでしょうか。

そのため、指名検索のCPAは比較的安価であることが多く、広告施策全体の費用対効果には数字上の好影響を与えますが、広告だけの効果ではないことはあらかじめ認識しておくのがよいでしょう。指名検索とそれ以外の数字を分けてKPIを管理する、というのも有効です。

ブランドキーワードに手動入札を用いる際の注意点

さて、ここまで指名検索キャンペーンで手動入札をおすすめする理由を考えてきましたが、一方でただ手動入札にすれば上手くいくわけではなく、注意するべき点もあります。

まずここで気になるのは、CPCを下げると言っても実際にいくらに設定すればいいのかという問題があります。

適切な入札価格の設定

適切な入札単価は状況によって異なりますが、目安としては現状の平均クリック単価と同じ程度に設定してみることをおすすめします。

広告管理画面では1位に掲載するための推奨入札単価も提示されますが、こちらは現在の平均CPCとくらべてかなり低い場合もあります。必要な入札価格よりも下げてしまうと、表示機会を失ってしまうケースも出てきます。

プレビューツールや実際の検索結果で1位掲載ができているか確認し、表示回数やクリック率の減少がないよう、徐々に入札単価を下げていくのがよいでしょう。

オークション分析レポートも確認しよう

また、検索結果はユーザーによって異なる可能性があります。そのため自身で検索結果を確認するほかに、Google広告管理画面から「オークション分析レポート」を使い、同じオークションに参加している他の広告主と比較した広告の掲載状況を客観的に把握しておくことも大切です。

※ドメインや数字はサンプルです。上図のように、表示URLのドメイン単位で自分と他の広告主のデータを比較することが可能

定量的にデータを確認することで、指名検索のキーワードに対する他社の入札状況に合わせて、クリック単価の引き下げ幅をより具体的に検討することができます。

例えば、他社がほとんどオークションに参加していない場合は1位掲載を取られてしまうリスクは低そうですが、逆の場合はそれに比べリスクが高いため、慎重にクリック単価を引き下げた方が良さそう、という判断ができます。

「オークション分析レポート」の詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。

 

数日配信してみて問題がなさそうなら、さらに入札を下げられないか挑戦してみると良いでしょう。

なお、指名検索に他社の広告が掲載されている場合には、その企業にとっても意図しない掲載である場合も少なくありません。直接その企業へコンタクトを行い、紳士協定を結ぶかたちでブランドキーワードへの出稿を除外していただくのもひとつです。

同一ブランドで複数サービス展開時には足並みを揃えよう

たとえば、転職サービスなどで「掲載企業向け」と「求職者向け」の広告を広告アカウントを分けて掲載している場合、連携が上手く取れていないとお互いに必要以上に入札価格を高めてしまうケースも少なくありません(※)。

このような場合は、サービス間や部門間で足並みを揃えて必要以上の入札を行わないよう、キーワードの棲み分けや入札戦略の方針について取り決めを行うのがよいでしょう。

※ドメインが同じであればオークションによる入札の競合はしませんので、あくまで設定価格がCPC高騰の要因となり得ます

仕組みを理解して状況に合った方法を採用しよう

広告においてクリエイティブを磨き出稿単価を引き上げ新規獲得を追い求めることは重要です。しかし指名検索に関しては表示回数に限界があるため、コスト削減に最適化の比重が置かれる点は知っておくとよいでしょう。

特に知名度が高くブランドキーワードでの指名検索数が大きく、指名検索からのコンバージョン獲得の割合が高い場合は、積み重なって年間数億円のコスト削減につながるケースもあります。指名検索にかける費用は必要以上に増やさないに越したことはないはずです。

自動入札がデフォルトの入札方法であったり、広告運用において「推奨設定」となっていたりと「使ったほうがいいのかな」と不安になるケースも多いと思いますが、仕組みを正しく理解した上で状況にあった方法を採用できるよう検討してみてくださいね。

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