ブランド名や商品名など、いわゆる「指名キーワード」で検索するときは、行き先のサイトが既に決まっていたり、購入など行動の意欲が高い状態です。
指名キーワードで検索広告が出ていれば、ユーザーがよりスムーズに目的のサイトへ誘導できますし、キャンペーンやセールなど、いまユーザーに知ってほしい情報を柔軟に掲載することができます。
よくある指名キーワードに入札するべきか、という議論についてはこちらの記事もご参照ください。
目次
意外と大きい、指名キーワードの改善幅
指名キーワードは、一般キーワード(ブランドや商品名ではない一般名詞やお悩みごとなど)と比較するとクリック率やコンバージョン率が高く、細かい調整をせずとも、掲載されてさえいれば高いパフォーマンスが出ます。そのため、それほど手をかける必要がないと認識されている方も少なくないのではないでしょうか。
しかしながら、弊社でアカウント分析を行う際、社内外を問わず指名キーワードに改善の余地があることが少なくありません。指名検索の回数が多い商品やブランドであればあるほど、この改善幅が大きい傾向です。
指名キーワードの費用対効果を改善できれば、浮いた広告費を別の施策に投資してさらに指名検索を増やすなど、ビジネスを良いサイクルにもっていける可能性もあります。問題ないと考えている場合でも、定期的に見直したいところですね。
今回は指名キーワードの配信で最低限意識するべき項目を4つ紹介します。
1. 除外するべきキーワードもある
指名キーワードなのに除外するのは勿体ないと感じるかもしれませんが、指名キーワードのすべてがコンバージョンに結びつくものとは限りません。以下のようなキーワードは予め除外しておくと良いでしょう。
広告配信の目的に合わないもの
例えば、アナグラム株式会社が広告運用の案件受注のリードを獲得する目的で検索広告を配信していたとします。その場合、社名を含むキーワードでも「採用」「株価」「ブログ」などの掛け合わせがあればお問い合わせとは目的が異なる検索のため、広告運用サービス紹介のページに誘導してもお互いにとって良い結果になりません。
配信後の検索語句レポートを確認せずとも、検索結果に掲載される「関連する検索キーワード」やサジェストから最低限の除外候補を見つけることができるでしょう。
一般名詞や他企業に関連するもの
引き続きアナグラム株式会社を例にして説明します。「アナグラム」は単語や文の文字を入れ替えることで別の意味にさせる遊びでもあり「アナグラム 例」「アナグラム 解き方」といった検索も多くされています。
また、「株式会社アナグラム」「アナグラム○○」「○○アナグラム」など同業ではなかったとしても社名が似ていたり含まれている企業が存在していることもあるでしょう。
あなたの指名キーワードにもそのような例がないか、検索して確認してみてください。
法人格(サービス名=社名である場合)
サービス名と社名が同一のケースでは、「株式会社」などの法人格を表すフレーズを除外しておくことをお勧めします。法人格を含む検索語句の場合は、サービスではなく企業情報を求めているため、広告を掲載してもサービスの利用に繋がるとは考えにくいためです。
例えばAmazonにアクセスしたいとき、Amazonと検索することはあってもアマゾンジャパン合同会社とは検索しませんよね。
2.インプレッションシェアは100%でなくともよい
指名キーワードのインプレッションシェアは常に100%を目指すべきなのでしょうか?指名キーワードを含んでいても除外するべきキーワードがあるように、インプレッションシェアも高いほど良いとは限らないのです。
さきほど例で紹介したとおり「アナグラム」には一般名詞としての意味がありますし、広告目的とは違う意図での検索もあります。にも関わらずキーワード「+アナグラム」のようなキーワードの入札を引き上げてしまうと、本来除外するべきキーワードにも積極的に広告を表示させることになり、無駄な費用が掛かってしまいます。
予め除外キーワードを設定しておけば問題ないと考えるかもしれませんが、除外するべき全ての掛け合わせキーワードを除外することは現実的ではありませんし、運用者が想像していないようなキーワードからコンバージョンに至ることもあるでしょう。
もちろん「+アナグラム +リスティング」「[アナグラム株式会社]」のようなキーワードはコンバージョンが見込めるため、なるべくインプレッションシェアの損失が出ないようにすることも大切です。
コンバージョン単価に余裕があるのにインプレッションシェアが低い場合も、入札を引き上げる前に検索語句をチェックしてキーワードの細分化の余地や追加するべき除外キーワードがないかは確認しておきましょう。
3. 必要以上に入札単価を引き上げてはいけない
冒頭でも触れたとおり、指名キーワードで検索しているユーザーは購入など行動の意欲が高く、せっかく検索してもらえたからには広告を表示できるようにしておきたいですよね。だからといって、必要以上に入札単価を高くしてしまうと、余計な費用が発生する原因になってしまいます。
指名キーワードとはいえ、許容できるクリック単価の上限はありますし、検索語句によっては広告を表示しなくて良い場合もあります。掲載位置や実際のパフォーマンスを見ながら入札単価を調整するべきなのは、一般キーワードと何ら変わりないのです。
どうして指名キーワードのクリック単価が引き上がってしまうのか
自社の指名キーワードであれば、自分たちの広告の品質スコアが最も高く、クリック単価も安く済むはずなのに……と考えるかもしれません。しかし、実際のクリック単価は入札単価そのものではなく、自社よりも1つ下の順位に位置しているサイトの広告ランクにより決定します。
オークションで競合する相手が全く居ない場合は、いくら入札単価を高くしていてもクリック単価は数円で収まることもあります。しかしオークションで競合するサイトが1つでもあれば、そのサイトの入札単価・広告ランク次第で自社のクリック単価も変動していきます。
オークションの競合は、意図してこちらの指名キーワードに入札していなくても起こりえます。たとえば部分一致キーワード「リスティング広告」に入札していれば「アナグラム株式会社」の検索語句が入札対象に含まれている可能性は大いにあります。このような場合に自社の指名キーワードの入札単価をむやみに高くしていると、他社の入札に引っ張られてクリック単価が引き上がってしまう場合があるのです。
費用対効果が合っているからといって、過度に入札金額を引き上げないことをおすすめします。
適切な入札単価を確認する
配信開始直後などで適切な入札単価を把握できず、機会損失を防ぐ目的で高めの入札単価を設定することもあるでしょう。そのまま放っておくのではなく、適切な入札単価が分かり次第調整しましょう。
適切な入札単価の判断には、以下の指標が役立ちます。
Google 広告 | 推定入札単価(1 ページ目) |
---|---|
推定入札単価(ページ上部) | |
推定入札単価(ページ最上位) | |
Yahoo!検索広告 | 1ページ目掲載に必要な入札価格 |
1ページ目上部掲載に必要な入札価格 |
確認のためには一定量のデータが必要ですが、これらの値と比較して現在の入札単価・平均クリック単価が大幅に高いようであれば、改善の余地があると考えられます。
なお、推定入札単価の指標は、キーワードと検索語句が完全に一致している場合の値となります。たとえば「+アナグラム」のキーワードの場合、入札対象になる検索語句には「アナグラム リスティング」なども含まれますが、推定入札単価に表示される値は検索語句が「アナグラム」だった場合の金額です。できる限り入札単価をコントロールしたい検索語句についてはキーワードとして設定していくことをおすすめします。
加えて、表示されている値はあくまで推定値であり、広告掲載が保証されているわけではありません。絶対的なものではなく参考に留めておきましょう。
また、Google 広告で十分なデータが貯まっていれば、入札単価シミュレーションも利用できます。
入札単価シミュレーションは管理画面の検索キーワード画面より、下図赤枠のアイコンをクリックすると確認できます。
入札戦略は個別クリック単価がおすすめ
現在は目標コンバージョン単価やコンバージョン数の最大化など、いわゆる自動入札が主流です。
しかしながら自動入札によって、意図している以上の入札調整が行われてしまうケースもあります。指名キーワードを含め、キーワードごとの細やかな入札調整が鍵になるキャンペーンでは、キーワードごとに入札単価の調整がある程度可能な個別クリック単価(拡張)を選択することをおすすめします。
ただし多数の品番を取り扱うサイトなど、指名キーワード(商品名や型番など)だけでも膨大な数になる場合は、運用工数を考慮すると個別クリック単価以外の入札戦略を選択するのも手です。
その場合でも、もしクリック単価の高騰が生じるのであればポートフォリオ入札戦略の設定で入札単価の上限を設定する方法を検討できます。
状況に合わせて適切なものを選択するのが理想です。
4.他社の広告表示には冷静に対処を
自社指名キーワードに対する他社の入札は、自社が獲得した認知にタダ乗りされる上にクリック単価も高騰してしまうため、目の上のたんこぶのように扱われます。出来ること・出来ないことをしっかり区別して、不可能なことには時間を割かないようにすることも大切です。
なぜ他社の広告が表示されるの?
そもそも広告主の商品やサービスの名称に対して、なぜ他社の広告が表示されるのでしょうか?
GoogleでもYahoo!でも、他社による広告主の指名キーワードへの入札は、たとえそれが商標を取得済みだったとしても入札することが仕様上可能です。
キーワードとしての商標の使用については、Google の調査や制限の対象となりません。
本申請で制限されるのは、検索広告の広告文での使用です。キーワードは、本申請による制限の対象外です。
キーワードに対して、広告主の競合企業の広告もユーザーが欲しい情報の1つであると考えればこのポリシーは自然なことと考えられます。
とはいえ、費用対効果の面からもどうにか停止してもらいたいところですよね。指名キーワードに広告が出てしまっている他社においても、部分一致の拡張など意図しない掲載である可能性もあります。ユーザーにとっても広告をクリックしたら思っていたサイトではなかったという体験は決してプラスではないでしょう。
では、どんな対応が現実的にとれるのか見ていきます。
キーワード除外の依頼が最も現実的な対策
自社の指名キーワードへの入札を止めてもらう唯一の手段は、直接依頼することです。
入札が意図的な場合もあれば、意図的でない場合もあります。たとえば部分一致キーワード「リスティング広告」に入札していれば「アナグラム株式会社」の検索語句が入札対象に含まれている可能性は大いにあります。また、広告主の意思ではなく広告代理店の判断で入札されていることもあれば、相手方にとっても費用対効果が合っておらず停止が合理的な場面もあるでしょう。
そのため、除外の依頼をする際に喧嘩腰な口調で連絡したりSNSで晒し上げるのではなくて、まずは除外を希望するキーワードとマッチタイプを冷静に伝えてみてください。
マッチタイプは基本的に「部分一致」、決まった語順の場合のみ指名キーワードとして成り立つケースであれば「フレーズ一致」が適しています。完全一致だと、掛け合わせキーワードがあるパターンを除外できないため、他社に依頼する場面では適さないでしょう。
よく誤解されていることですが、除外キーワードにおける部分一致は、入札キーワードとは違い関連語・類語への拡張がありません。
除外の依頼を行う際は、予め自分たちは相手先のサービス名を除外するか、もしくは応じていただける場合に同じ対応する意思があることを伝えましょう。また、指名キーワードの域を越えた一般名詞を含むような不誠実な依頼になっていないことを確認してください。出来る限り誠実に依頼することで、応じてもらいやすくなるかもしれません。
受け入れられる保証はありませんが、検索結果ページや管理画面のオークション分析から見つけ次第地道に連絡していくしかないでしょう。
除外に応じてもらえない場合
自社の指名キーワードの除外に応じてもらえない場合は、その状況下で入札や広告文を調整していくことになります。
こちらの指名キーワードへの入札は、相手側からすると費用対効果が合うとも限りません。こちらの入札単価を少し引き上げるだけでも相手側の負担が大きく増え、費用対効果が合わなくなり停止する場合もあるでしょう。しばらく我慢は必要ですが、入札単価を引き上げたうえで競合分析レポートを追っていき、入札が下がったのを確認のうえ自社の入札単価も戻していくのが堅実です。
広告文に関しては、他社の広告が自社より魅力的に見える場合は広告訴求を変更するなど、見込み客をしっかりと引き寄せるための対応が求められるでしょう。
自社同士で入札競合しないように
自社の指名キーワードに入札してくるのは他社だけに限りません。例えば求人のポータルサイトなどは、サービス名の検索で掲載企業向けと求職者向けで意図が混在します。部門が異なり広告アカウントが分かれているケースも珍しくありません。
そんな中、お互いに張り合って入札を引き上げ合ってしまうと、クリック単価はどんどん高騰してしまい、その他の施策に回せる広告費が削られてしまうこともあるでしょう。
このような状況では、指名キーワードの取り扱いについて誰かがまとめ役となって方針を決め、実行する必要があります。もはや社内政治の問題ともいえ、広告運用の域を越えてしまいますが、ボトルネックは広告アカウントの中にあるとは限らないのです。
まとめ
振り返ってみると、指名検索に限らず検索広告の運用全般にいえることも多かったと感じます。指名キーワードのパフォーマンス改善というと、検索ボリュームの増加に焦点があたりがちです。しかしまずは今検索してくれている人の意図に応えられているか、無駄な費用を発生させていないかなど、当たり前のことをきちんと出来ているかチェックしていきたいですね。
指名キーワードの設定はしばらく変更していないという方は、この機会に一度見直してみてはいかがでしょうか。