「広告にもコンテンツとしての魅力が不可欠に」TikTok for Businessに聞く、成果を生むクリエイティブの考え方

「広告にもコンテンツとしての魅力が不可欠に」TikTok for Businessに聞く、成果を生むクリエイティブの考え方

日本でも年々ユーザー数を増やすTikTok。最近ではTikTok発の流行がマスメディアに取り上げられることも増えてきており、その存在感は高まりを見せています。

また、2025年の夏からは、TikTok上で商品の購入までも可能にする「TikTok Shop」の国内展開が始まり、TikTokは縦型動画を軸にしたエンターテインメントとコマースなどが融合した総合プラットフォームへと変貌を遂げつつあります。

ところで、筆者は縦型動画のクリエイターと広告主をマッチングし、ユーザーライクな広告動画を制作する「タテプロ」事業の責任者を務めています。その立場から見ても、やはりTikTokの注目度は高まっていると感じておりますし、それに比例する形でTikTok広告の注目度も高まっていると実感しています。

その一方で、注目度が高まるからこそ「どうすればTikTok広告で成果を出せるのか」「クリエイティブの作り方がわからない」といった声をお聞きする機会も増えてきています。

こうしたTikTok広告のお悩みに応えるべく、TikTok for Businessの吉岡さまに、TikTok広告で成果を挙げるために必要なことを伺ってきました!

話し手:
TikTok for Business
Partnership Manager
吉岡 大輝さま

聞き手:
アナグラム株式会社
縦型ショート動画事業 TATE-PRO(タテプロ) 事業責任者
西村 祐輔

※このインタビューは2025年7月に行われました。


TikTokの現在地

西村: 本日はよろしくお願いいたします。最近もTikTok発の様々な「ミーム」が他のSNSやマスメディアでも取り上げられ、TikTokがいよいよ文化の中心になってきているように思います。2025年現在、ユーザー数はどれくらいの規模になっていますか?

吉岡: よろしくお願いいたします。おかげさまでプラットフォーム全体の成長は著しく、日本では、TikTokとTikTok Lite合わせて毎月3,300万人以上*の方々が訪れています。これは2025年に総務省が発表した日本の総人口(約1億2000万人)の約27.5%に相当する規模です。(* TikTok for Business 公式ウェビナーより-2024年11月時点/)

西村: ユーザー層も変わってきていますよね。かつては「若者向けのプラットフォーム」というイメージでしたが、最近は幅広い年齢の方に向けた動画も目にする機会が増えてきました。

吉岡: 2023年10月のTikTok追跡調査(委託先:マクロミル)の調査によると、TikTokにおいては40歳以上のユーザーが63.5%を占めております。さらに博報堂の調査によると2023年時点での平均年齢は36歳です。男女比も女性が51%、男性が49%と偏りがなく、老若男女を問わず親しまれるプラットフォームになっています。

ユーザー層が拡大した背景には、コンテンツの多様化があります。かつてのイメージのようなダンスやエンタメ動画だけでなく、美容・コスメ、日用品などのおすすめアイテムの紹介、グルメやお出かけスポットの紹介、料理レシピやライフハックなど、あらゆる興味関心を持つユーザーに応える動画が届けられています。

こうしたTikTokの拡大は、広告プラットフォームとしての成長にもつながっています。以前は若年層にリーチしたい広告主様が中心でしたが、今では業種を問わず、様々な広告主様から広告配信のニーズがあり、取引額も右肩上がりで伸びています。

西村: なるほど!ユーザー層が広がった結果、広告主の業種も広がっているのですね。成果が出やすい広告のジャンルにも変化はありますか?

吉岡: 以前から引き続き、美容・コスメ、食品、店舗誘導型のジムやクリニック、人材採用系などは良い成果が出ています。それに加えて、これまで難しいとされてきたBtoB商材や、自治体・官公庁によるプロモーション事例が増加し、成果を上げています。例えば、法人向けのAI活用のセミナーや経営者向けのクレジットカードなど、かつてはあまりTikTokでは一般的ではなかった業種や商材の広告も、成功事例が出てくるようになりました。

TikTok for Businessの吉岡氏

成功例が広がった背景に「クリエイティブによるターゲティング」?

西村: BtoBサービスや経営者向けのクレジットカードは、ターゲティングが重要な商材ですよね。一方で、TikTok広告はユーザーの属性に紐づくターゲティングはあまり得意ではないイメージがあります。このような商材で、TikTok広告の成果が出せるのはなぜでしょうか?

吉岡: 広告コンテンツを対象ユーザーが観たくなるコンテンツにできている、というのが一つの鍵になると思います。

TikTok広告にとっては、ユーザーの視聴傾向が重要なシグナルです。すなわち、ある広告を配信した際に、普段ビジネス系の動画に反応するユーザー群からの反応が良ければ、そのユーザー群に多く配信されるようになる……というイメージです。

そのためターゲティングは特に設定せず、広告のコンテンツとユーザーの興味関心をマッチさせるという考え方で配信することを推奨しています。

西村: 確かに、ターゲティングは管理画面で設定するのではなく、クリエイティブでターゲティングする方が狙ったユーザーに届いていると感じます。

吉岡: なお、TikTok広告のオークションは、単純化すると「入札額 × 想定クリック率 × 想定コンバージョン率」です。TikTok広告はLPの情報を読み込めないため、想定クリック率とコンバージョンはクリエイティブをもとに評価されます。

そして、クリエイティブの評価では、動画の視聴時間、いいね率、シェア、コメントといったエンゲージメントの要素も大きく加味されます。私たちは広告入稿時にコメントをオンにすることを推奨していますが、それは広告にエンゲージメントが集まりやすくなると、オークションでの広告の評価が上がりますし、なおかつ視聴傾向のデータをより多く集められるという2つのメリットがあるからです。

クリエイティブ起点のターゲティングを促進する Smart+キャンペーン

西村: クリエイティブ起点のターゲティングを語るうえで、御社が推進している Smart+キャンペーンについてもお話を伺えますか?

吉岡: はい。Smart+キャンペーンは、ユーザーの興味関心が広がり、従来のターゲティングではカバーしきれないという課題から生まれました。これまで人が行っていたターゲティング設定、入札調整、クリエイティブのオンオフといった運用を、予測AIを活用して自動で行う点が最大の特徴です。例えば、クリエイティブの鮮度が落ちたことをシステムが感知して他のクリエイティブの配信を強めるといったことができます。

西村: Smart+キャンペーンのパフォーマンスはやはり良いのでしょうか?

吉岡: テスト段階のデータでは、Webキャンペーン利用者の71%、リード広告利用者の70%、アプリインストール広告利用者の80%が、通常キャンペーンと比較してパフォーマンスの向上を確認しました。「TikTok広告のパフォーマンスを上げたい」というご相談には、まずSmart+キャンペーンの活用をおすすめしています。

Smart+キャンペーンを活用して運用の工数を抑え、その分クリエイティブにリソースを割くことも、成功の鍵の一つになるかなと思います。

広告のライバルはオーガニック投稿?

西村: ここまで、対象のユーザーが反応するクリエイティブを作ることの重要性についてお話をしてきました。そのためには、広告のクリエイティブにおいてもオーガニックの投稿と同様、コンテンツとしての魅力がないとスキップされてしまうのかなと考えています。

吉岡: まさにその通りです。大前提として、ユーザーは広告を見るためにTikTokを開いているわけではありません。面白いコンテンツを探しに来ていたり、自分の欲しい情報を見つけることが目的です。したがって、広告の競合は他の広告だけではなく、オーガニックコンテンツもそうであると言えると思います。そのため広告クリエイティブにもオーガニック投稿と同様に、ユーザーにとって有益な情報や、楽しめるエンターテインメント性が不可欠なのです。

西村: 運用の現場でも、フリー素材を切り貼りしただけのような、いわゆる「広告っぽい」クリエイティブは成果が伸びづらいと感じます。ユーザー目線のリアルな素材を活用していくことが重要になりますね。

吉岡: いかにリアルで、生きたコンテンツをクリエイティブで作れるかは非常に重要です。

TikTokは、元々どんな人でも投稿を楽しめるプラットフォームとして始まりました。その世界観を見に来ているユーザーは常に一定数いるため、UGC(ユーザー生成コンテンツ)のようなリアルな広告クリエイティブは今後もTikTokにおいてメインのコンテンツであり続けると思います。

広告体験を高める最強の手段「Spark Ads」

西村: そうしたリアルさやエンゲージメントを生む上で、オーガニックコンテンツを広告で活用する Spark Ads (自社のオーガニック投稿や第三者のクリエイターの投稿を広告クリエイティブとして配信する方法)の活用は非常に有効だと感じています。当社の案件では、クリエイターのPR投稿をSpark Adsで配信したことで獲得数が大幅に伸び、コンバージョン数が導入前の約2倍に増加した事例もありました。

吉岡: Spark Adsで高い成果を上げている事例は非常に多いです。最大のメリットは、クリエイター自身のアカウント名義で配信されるため、よりネイティブな広告体験をユーザーに提供できる点です。ユーザーから見ると、自然にコンテンツとして受け入れられやすいのです。

西村: クリエイターさんの世界観をそのまま活かせるのが強みですね。

吉岡: TikTokはユーザー体験を損ねない広告を目指していますので、Spark Adsは今後も推奨度が高い施策です。

クリエイティブが命だからこそ、AIの活用が重要に

西村: クリエイティブが重要だからこそ、制作の工数やコストがネックになってしまう広告主もまだ多いかと思います。ここに対しては、TikTokとして何か取り組んでいることはありますか?

吉岡: おっしゃる通り、クリエイティブの量をたくさん作るというのが1つの勝ちパターンとして推奨している方法ですが、人的リソースに限界が出てくるのは間違いないです。その打開策として、我々が今力を入れているのは、AIを活用したクリエイティブ生成ツールの推進です。

TikTok Symphony(TikTok シンフォニー)」というAI生成ツールをローンチしており、無料で利用できます。例えば、既存の動画クリエイティブをアップロードすることで、動画の情報を読み取って冒頭3秒を変えた別パターンが生成できる機能や、テキストを入力するだけで、自然な動きで話すデジタルアバターを生成できる機能もあります。複数パターンのアバターがあり、背景も選択することができます。

機能はまだまだアップデートされて良くなっていくと思います。

西村: AIと言えば、Smart+キャンペーンもAI活用の文脈において今後より重要になっていくのでしょうか?

吉岡: おっしゃるとおりです。先ほどご説明したターゲティングやパフォーマンス改善のための機能以外にも、今後目指している機能として、クリエイティブの鮮度が落ちたら、冒頭違いなどの別パターンのクリエイティブをAIが自動で入稿してくれる、といったものもSmart+キャンペーンで実装予定です。

西村: すごい……!そこまで自動化する展望があるんですね。こうした広告プラットフォームの進化によって運用業務がAIに代替されていく中で、我々アナグラムのような代理店や、運用者の役割も変わっていきそうです。

吉岡: はい。おっしゃる通り、今後運用面のみではなく、「クリエイティブ力」やお客様の「インサイト抽出」といったプラットフォーム側では対応しきれない部分がキーになっていく可能性もありますね。

TikTok Shopと広告の活用も今後の鍵に

西村: 最後に、2025年6月30日から日本でもローンチされた「TikTok Shop」について、詳しくお聞かせください。

吉岡: TikTok Shopは、発見から購買までをアプリ内でシームレスに繋ぐもので、今後のTikTokを大きく変える存在です。海外の一部市場ではすでに、TikTok広告の多くがTikTok Shopへの誘導になっています。

西村: TikTok Shopの販売手法は、ショッピング動画、LIVEコマース、ショップタブ、ショーケースなど様々な選択肢がありますよね。また自社ブランド起点の発信だけではなく、クリエイターが自社ブランドの商品を紹介するアフィリエイト投稿からも販売に繋げられるため、ここの活用も重要になるのではないかと考えていますがいかがでしょうか? 

吉岡: おっしゃるとおりです。グローバルではTikTok ShopのGMVのうち、一定の割合をクリエイターのアフィリエイト投稿が占めています。そのためブランドがTikTok Shopで売上を伸ばしていくためには、クリエイターとのコラボレーションは必須になると言えます。

西村: クリエイターのアフィリエイト投稿を、広告クリエイティブとして配信するようなことは可能になるのでしょうか。

吉岡: はい、可能です。TikTok Shop向けに「GMV Max」という新しい広告メニューが利用可能になりました。これは、広告用の動画に加えて、自社のオーガニック投稿やクリエイターのアフィリエイト投稿もクリエイティブの素材として配信し、ROI(投資収益率)を最大化するように配信していくというプロダクトです。

GMV maxの広告経由で商品が購入された場合でも、クリエイターにはアフィリエイト報酬が入る仕組みです。そのため、クリエイターにとっても広告を配信してもらうことはプラスになります。アフィリエイトでオーガニックの初速を見て、良いコンテンツを広告でさらに拡散することで、売上を伸ばしやすくなりそうです。

まとめ

今回の対談を通じて、TikTok広告を成功させる鍵は「ユーザーにとって魅力的なコンテンツを作る」ことにあると、改めて感じました。対談の中で語られた「広告の競合はオーガニック投稿」という言葉が、TikTok広告の本質を表していると言えます。そのため、広告運用者が縦型ショート動画のクリエイティブを考える際は、まずTikTokで人気のコンテンツを研究し、なぜそれらが支持されているのかを理解することが重要になります。

加えて重要な点は、TikTok広告におけるターゲティングの考え方です。従来のデジタル広告では「誰に配信するか」をユーザー属性や興味関心などのデータを元に細かく設定することが重視されてきました。しかしTikTok広告では、「何を見せるか」つまりクリエイティブそのものがターゲティングの役割を果たします。優れたクリエイティブを作れば、それに反応するユーザーの視聴傾向やエンゲージメントデータをもとに、適切なユーザーに配信されるよう最適化されます。つまり、ターゲティングの主体が管理画面上の設定から、コンテンツそのものへと変わっていると言えます。

さらに、AIを活用したクリエイティブ制作機能やTikTok Shopの登場など、TikTok広告の活用を支援する新しい機能も増えています。AIツールで運用作業や制作を効率化することによって、コンテンツの企画やクリエイターとの協業といった、より価値の高い仕事にリソースを集中できるようになります。こうした新しい機能を使いこなすことも、TikTok広告を成功させる上で重要なポイントになるでしょう。

本記事が、これまで動画制作のリソースや費用対効果で悩んでいた広告主の皆さまにとって、TikTok広告の可能性を再発見し、実践に移すきっかけとなれば幸いです。

TikTok for Business 公式サイトはこちら

関連記事

TikTok広告でエンゲージメントを高める「インタラクティブアドオン」とは?種類や活用方法を紹介
TikTok広告でエンゲージメントを高める「インタラクティブアドオン」とは?種類や活用方法を紹介
続きを見る
クリエイティブ作成に便利なTikTok Creative Centerとは?
クリエイティブ作成に便利なTikTok Creative Centerとは?
続きを見る
TikTok広告、第三者配信も可能なSpark Adsの概要と活用方法
TikTok広告、第三者配信も可能なSpark Adsの概要と活用方法
続きを見る