CriteoのAIエンジンから考える、広告運用の自動化やアルゴリズムに寄り添う方法

CriteoのAIエンジンから考える、広告運用の自動化やアルゴリズムに寄り添う方法

広告配信の最適化や入札の自動化が加速しています。広告運用の自動化が進む一方で、なぜこの結果になったのか、分析や改善に行き詰まることも多くありませんか?
そんなとき、「自動化だから……」と思考停止してしまい、「自動入札に変えたので改善しました」というような報告をしてしまいがちです。

今回は陥りがちな広告運用の自動化による思考停止を防止すべく、Criteoをベースに広告運用者の自動化との寄り添い方をご紹介します。


なぜ自動化の仕組みやアルゴリズムへの理解が必要なのか

Web広告において入札やクリエイティブ調整の自動化が進んでいることから、以前よりも運用者が直接調整を行う要素が減ってきました。

そしてその自動化されている部分については、いわゆる媒体社のみが詳細を知っている仕様のため、詳細なアルゴリズムについて明かされていません。

しかし、まったく中身が分からない状態ではなく、自動化で重視している要素や、学習に必要な情報は開示されていることがほとんどです。

そのわずかな情報を手掛かりに自動化を読み解くことができれば、分析を行う上で「ここからは自動化されているので分かりません」と思考停止していた部分が、仮説という形で説明が可能になってきます。

また、施策実施時のインパクトの予測精度が上がるため、改善に向けた最短ルートを見極めることが可能になります。

CriteoのAIエンジンを理解するための4ステップ

CriteoのAIエンジンは、Criteoの入札調整やクリエイティブの生成に使用されており、Criteoを配信する上で非常に重要な役割を担っています。
ここからは、CriteoのAIエンジンに関して理解するプロセスを4ステップに分けてご紹介します。

①媒体の思想を理解する
②AIエンジンの特徴や役割を理解する
③AIエンジンに変化を与える変数が何か理解する
④磨き上げ

まずは媒体の思想を理解した後に、AIエンジンの役割を順を追って理解していきます。

ぜひ実際に①~④に沿って進めてみてください。

①媒体の思想を理解する

AIエンジンは媒体の思想をベースにしていることが多いため、各媒体が何を重要視しているかを知っておくことが重要です。
また、媒体の思想は公にアナウンスされているもの以外にも、製品の特徴からも読み取ることができます。

CriteoではAIエンジンのR&D(研究開発)に非常に力を入れています。
また製品においては、パフォーマンスの要であるエンジンが動作し易いよう、リターゲティング配信ではオーディエンス作成という概念がなかったり、入札調整も前後比20%以内の調整が推奨されています。

他媒体だとタグをベースにオーディエンスを自由に作成して、より見込みの高いユーザーのみへリターゲティング広告を配信することも少なくないと思います。
Criteoは他媒体で当たり前にできるオーディエンスを調整することが出来ないという点からも、細かな調整よりもAIエンジンが効果を最大化できるよう媒体仕様で制限してしまう姿勢から、並々ならぬこだわりを感じます。(数年前までは日予算も設定出来ない徹底ぶりでした。)

つまり、CriteoはAIエンジンがより動きやすいよう媒体推奨に沿いながら、クライアントのゴールに寄り添う調整が最も効果を出しやすい設計と言えます。

媒体の思想がアップデートされることもありますので、最新情報をチェックしておきましょう。

②AIエンジンの特徴や役割を理解する

AIエンジンについて概要までであれば開示されていることが多くあります。

Criteoでも公式にAIエンジンについて公開されている情報があるので、AIエンジンが重視しているものや調整を行っている内容を知ることができます。

画像引用元:Criteo媒体資料

CriteoのAIエンジンと一口で言っても、機能としては大きく3つに分かれます。
入札エンジン・レコメンドエンジン・クリエイティブエンジンに分かれていることを知るだけで、これまで抽象度の高かったエンジンというものの解像度がぐっと上がりますよね。

1つ注意したいのはそれぞれ別にも見えますが、どのエンジンもこれまでどの商品を閲覧したかといった閲覧情報を利用していたり、フィードデータを活用していたり共通点もあるので、それぞれのエンジンの役割と関連性を考えながら理解することです。各エンジンの詳細については次の「③AIエンジンに変化を与える変数が何か理解する」で、利用しているデータも交えながら説明します。

③AIエンジンに変化を与える変数が何か理解する

CriteoのAIエンジンには「予測入札エンジン」「レコメンドエンジン」「クリエイティブエンジン」の3つの役割があり、それぞれエンジンに変化を与える変数が異なります。

■予測入札エンジン

予測入札:https://www.criteo.com/jp/technology/ai-engine/predictive-bidding/

予測入札エンジンは過去のサイト上でのユーザー行動から、キャンペーンの目標に応じたユーザーの価値を判断して入札に反映します。
そのため最も重要となるデータはサイト上のタグ経由で送られるユーザー行動データとなります。
もしサイト上にタグ実装されていないページがあれば、そのページはユーザーの行動を追うことができていないため、追加で実装することで予測入札エンジンの改善が期待できます。勿論サイト上すべてのページに実装するのが理想ですが、もし改修に時間を要する場合は、よりコンバージョンに近いページや来訪数の多いページを優先してタグ実装すると予測入札エンジンへのインパクトが期待できます。

■レコメンドエンジン

商品レコメンド:https://www.criteo.com/jp/technology/ai-engine/product-recommendations/

「閲覧履歴に基づくおすすめ商品」や「この商品を購入したユーザーがチェックしている商品」を優先度高く表示し、ユーザーがまだ閲覧していない商品を提示し購入に繋げるのがレコメンドエンジンの役割です。

一見行動履歴に基づくのでタグが重要と見られがちですが、同一カテゴリの商品をレコメンドすることもあるのでフィードのカテゴリ構成も重要になってきます。カテゴリ構成が分割されていないと、ユーザーが興味を持っている商品カテゴリを特定できないため、関連度の高いレコメンドをバナーに表示することが出来ません。

また、小売りの場合商品グループID単位だけでなくSKUID単位でタグ・フィードのデータを整理することで、よりユーザーの興味関心の高いアイテムをレコメンド可能となります。

■クリエイティブエンジン

DCO+:https://www.criteo.com/jp/technology/ai-engine/dco/

クリエイティブエンジンはユーザーの購入意欲に関する120以上のシグナルに基づきデザイン要素や商品がリアルタイムに選定され、ユーザー1人ひとりに最適な広告を瞬時に作成します。

ユーザー毎に広告が最適化されることから、効率が低いものを除外して改善する通常のバナー広告と異なり、より多くの種類のバナーデザインを設定することでクリエイティブエンジンがより働きます。

そのため、クリエイティブサイズやレイアウトはより多くの種類の設定が重要となります。

④磨き上げ

ここまで情報を揃えられれば、ついにAIエンジンがどのように働いているのかを仮説立てできるようになってきます。しかし、開示されている情報以上の仮説は、正しいか判断することが非常に難しいことが難点です。

そのためAIエンジンの理解や仮説については絶えず磨き上げを繰り返していくことが重要です。

より力を伸ばすための磨き上げ方

日々の運用の中で思考を巡らす

入札変更、日予算変更、タグの変更など、運用者は日々の調整を行う中で、その変更がどのようにAIエンジンに影響し、どのような結果をもたらすのかを考えるトレーニングをしてみてください。

管理画面から見えるのは変更箇所と、それによるCTRの変化といった結果のみとなります。

その間で何が起っているのかを仮説立てることで、自分自身がまだ理解し切れていない部分が見えてきます。ぜひその部分については下記の2手法で解決してみてください。

媒体社へ質問

AIエンジンの働きの答えは媒体社のみ知る情報になります。また、媒体社は公に開示されていないAIエンジンの特性を把握していることが多いです。

そのため角度を変えて繰り返し質問すると回答してくれますし、代理店側で考えた仮説に対するフィードバックをしっかりしてくれる傾向があります。

媒体社への質問で、自分の仮説の誤っている点に気づくことができ、PDCAを回すことができます。

また上記のような場面で媒体社から伺えるAIエンジンに関する内容は、仕様書には明記されていないことも多いです。

このような公にはなっていない情報も含めて仮説検証を行えるかは運用者や広告代理店としての差別化にも繋がっていきます。

社内の広告運用者とのディスカッション

自分だけでは凝り固まった考えになることもしばしば。

広告代理店であれば複数の広告運用者が在籍していると思います。

AIエンジンをテーマに運用者同士でディスカッションをしてみると、他者の考えをヒントに新たな発見を得られることも。

ディスカッションする際は、自身と異なる意見でもまずは耳を傾けてみて、そんな捉え方もあるかもしれないと受け入れることから始めてみてください。

最後に

この記事を通してAIエンジン導入後の報告の際、「自動化したため」以上の考察を自信を持ってしていただけるようになっていると思います。

自動化は効果改善においては切っても切り離せない存在になってきています。今後も自動化は更に進んでいくことが予測されますので、しっかり活用し上手く付き合いながら更なる広告効果改善に繋げていきましょう。

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