運用型広告を使ったテストマーケティングのメリットや事例、活用のポイント

運用型広告を使ったテストマーケティングのメリットや事例、活用のポイント
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「人の欲しがるものを作れ」

シリコンバレーの有名なスタートアップアクセラレーター、Y Combinatorの創業者、ポール・グレアム氏の言葉です。人が欲しがるものを作ることができれば、新規事業の成功率もグッと上がると思いますが、なかなか難しいことです。

「これだ!」と思い新しいサービスをローンチし、全く売れなかった事例なども数多く存在します。そこで新規事業の成功率を上げるためにテストマーケティングを実施する企業も多いのではないでしょうか?

さまざまなテストマーケティング手法がありますが、運用型広告でもテストマーケティングをすることができます。今回は運用型広告を活用したテストマーケティングの事例や方法について触れていきたいと思います。


運用型広告を使ったテストマーケティングのメリット

数あるテストマーケティング手法の中で運用型広告を使うメリットとは、いったい何なのでしょうか?以下にてメリットを紹介します。

即効性がある

一人ひとりとの商談や、人を集めて商品を説明するテストマーケティングの方法だと、前後の準備などを踏まえると数週間ほど時間がかかるのではないでしょうか?

しかし、運用型広告であれば、広告費を投下すればスグにアプローチできるため、即効性があります。場合によっては広告配信から間もないうちに何かしらの傾向がつかめることも少なくありません。

バイアスが掛かりにくい

自社SNSのフォロワーや知り合い、既存の顧客を対象にテストマーケティングを実施すると、テスト結果にバイアスが掛かりやすい可能性があります。一度、接点を持っているユーザーだと、評価が甘くなってしまいますからね。

一方、運用型広告を活用したテストマーケティングでは、さまざまなターゲティングができますので、これまで接点を持っていなかった商品に興味のありそうな人にアプローチが可能です。これまでかかわりのない新規ユーザーに対してテストを実施することでバイアスの影響を受けづらくなります

少額から取り組める

少額からでも始められるのが運用型広告を活用したテストマーケティングのメリットです。

Webメディアとのタイアップ広告なら最低でも10万以上、交通系広告などだと数十万以上と広告は費用がかかるのもです。Facebook広告やGoogle広告であれば、1日数千円程度から広告出稿が可能。数万円程度で十分なテスト結果を得られることも少なくありません。

ターゲットを柔軟に選定できる

新規事業に取組む際に、ターゲットを決めて始めると思います。そのターゲットは本当に正しいのでしょうか?消費者行動は表面的には把握できないことも多々あり、ターゲットと思っていた人がターゲットではない可能性も十分にあります。

一方、ターゲットと考えていなかった人たちが顧客になる可能性も十分にあります。テストマーケティングをすることで実際にどのようなターゲット層が反応するのかを確認することができます。

さらに運用型広告であれば、男女年齢、趣味嗜好、特定の商品購入を検討しているなど様々なターゲティングが選択できます。従来までのテストマーケティング手法より柔軟にターゲティングができるため、ターゲット選定の精度も上がるでしょう。

訴求のテストが容易

たとえばWebメディアに取材してもらい、広告を出したとしても、広告の反応を見て、その広告の訴求をスグに変えて広告を作り直すことは難しいのではないでしょうか。交通系広告なども同じく、一度出したら新しい広告を作り変えるまである程度の時間が必要です。

運用型広告であれば、広告文や画像、バナーを差し替えるだけで、すぐに新しい広告を投下することができユーザーの反応を見ながら訴求のテストが簡単にできます。広告費用を投下すればデータもすぐに溜まるのでスピーディーに検証可能です。

どの媒体でテストマーケティングすればいいのか?

検索連動型広告やディスプレイ広告、SNS広告など運用型広告にも数多くの種類があります。実際にどの媒体を使ってテストマーケティングをすればいいのでしょうか?テストマーケティングを実施する際の媒体を選ぶ基準があります。

「運用のハードルが低く、初心者でも成果を出しやすい媒体か?」というものです。あくまでもテストマーケティングなので、ある一定の効果が見込めるかを把握することが目的で、すぐに試せる必要があります。

広告運用するのにハードルが高い媒体だと、情報をキャッチアップするのに時間がかかり、簡単に試すことができません。あとは、複雑な設定をしなくても成果を出しやすい媒体の方がいいですね。

たとえばFacebook広告から始めてみよう

運用のハードルが低く、初心者でも成果を出しやすい媒体。という基準で見ていくとFacebook広告が当てはまり、テストマーケティングにはおススメの媒体です。その理由を紹介します。

ターゲティングの精度が高い

Facebookは実名制を基本としているためターゲティング精度が高い傾向にあります。性別や年齢などのユーザー自らの登録情報、趣味・関心(いいね、などのアクティビティ)などをもとに詳細なターゲティングまで精度高く指定することが可能です。

広告運用初心者でも成果が出しやすい

予算を決め、ターゲティングを設定し、クリエイティブをセットすれば細かな調整は不要です。

Facebook広告は実名制による精度の高いデータベースがあり、さらに自動入札が優れているため、広告初心者でも比較的成果が出しやすい設計になっています。

以上のことからFacebook広告を使ったテストマーケティングをおススメしているのですが、実際にFacebook広告を使ってテストマーケティングに取組んだ事例をいくつか紹介します。
 

運用型広告を使ったテストマーケティング事例

ほんとうに運用型広告で効果的なテストマーケティングができるの?という方もいらっしゃることかと思います。ここでは実際に運用型広告を使ったテストマーケティングの事例を2つご紹介します。

SmartHR

クラウドの労務管理ツールとして有名な「SmartHR」。実はこのサービスも立ち上げ当初、運用型広告を使ってテストマーケティングを行っていたそうです。

例えば、先ほど話したSaaSの比較サイトは、自分たちが机上の空論で設定したユーザー課題を基に開発していたので、ユーザーのニーズに関して聞かれても、「こういうニーズがあると思います」という想定でしか話せませんでした。そこで、いざユーザーヒアリングを行ってみたところ、課題そのものが存在していないことがわかったといいます。

その反省を活かして『SmartHR』を企画した際は、Facebookで人事・労務の担当者にターゲティングした事前登録用の広告を出しました。予算2万円で。まだプロトタイプすらできていないときだったんですが、広告を止めてからもクチコミで登録が増え続け、1ヶ月で200名くらい集まりました。チャットツール経由でのアクセスが多いことから情報がシェアされていることがわかり、「それだけ世の中に求められているサービスなんだ」と、ユーザーニーズがあることを確信しました。

引用元:「現場が語る、BtoBマーケの最前線~人が欲しいと思うものを、まずつくる~株式会社SmartHR 宮田社長の視点」

プロトタイプすらできてない段階でも、机上の空論ではない確かなユーザーニーズが実際にあることが検証でき、初期ユーザーの獲得にまで成功しています。

こちらはBtoBの事例でしたが、もちろんBtoCでも有効なテストマーケティングの手段となりえます。

snaq.me(スナックミー)

お菓子のサブスクリプションサービス「スナックミー」。このサービスも立ち上げ当初はFacebook広告を活用し市場の反応を調査していました。

最初のボックスをつくった後、シンプルな写真を使ってFacebook広告を出稿。どのようなリアクションが来るかをチェックした。Facebook広告を通じて100人ほどのユーザーを獲得した後、広告を止めてもユーザーは自然と増えていったという。

「こんなお粗末なクリエイティブにもかかわらず、利用したいと思ってくれる人がいる」と、服部氏はニーズを確信した。ニーズを確信した後は、サービスのブラッシュアップを重ねていった。

引用元:「お菓子ではなく、「おやつ」という体験を提供する。リーンに成長するスナックミーに勝ち筋を聞く」

この他にも、商品仕入れる前にランディングページを作ってテストマーケティングした結果、需要があったのでサービス化を行った、という話は枚挙にいとまがありません。

テストマーケティングをする前に準備するべきこと

運用型広告を使ってテストマーケティングを実施する前に準備することがいくつかありますので順番に紹介します。

簡単なランディングページを準備する

商品の魅力を伝えるべく、ランディングページを準備する必要があります。ただ、テストマーケティング段階ですので、必ずしもランディングページ作成に費用をかける必要はありません。

ペライチなどのように無料で簡単にWebページが作成できるサービスを使ってみるのもひとつです。

コンバージョンポイントを決めておく

運用型広告はコンバージョンポイントを目指して、広告が最適化されますのでコンバージョンポイントを決めましょう。

SmartHRのようなクラウドサービスであれば、資料請求や事前登録、サービスのトライアル。物販であれば購入といった所がコンバージョンポイントになりますね。

広告費の用意

広告費が必要になります。とはいえ、予算の自由度が運用型広告の特徴ですから、Facebook広告やGoogle広告であれば数万円からテストできます。

商材やターゲティングにより、CPCは変わるので一概に言えませんが、Facebook広告にてCPC100円で10万円投下した場合であれば、1,000クリックの流入が見込めるのである程度、検証ができるのではないでしょうか。

運用型広告によるテストマーケティングのポイント

テストマーケティングで運用型広告を用いる場合には次のようなポイントに注意することで、より意味のあるテストが可能になります。

ランディングページには検証したい特徴や強みをシンプルに表現

簡易的なランディングページを作る際はサービスの特徴や強みをシンプルに表現しましょう。サービスを開発した際に必ず、仮説を持って取り組んでいるはずです。

「このサービスのこの機能は、ユーザーに喜ばれるはずだ」
「このコンセプトは他には無いから強みになるはずだ」

このような検証したい部分が伝わるような形でランディングページを作ることが好ましいです。それ以外の要素を多く入れ込んでしまうと検証するポイントがブレる可能性もあるため、サービスの概要と強みが伝わるようなシンプルな構成にしましょう。

訴求のテストをする場合は大胆に変える

あなたは今日、見かけた広告の内容をハッキリ覚えていますか?CM総合研究所の調査によれば1日あたりのCM接触回数は約194回と言われています。さらにインターネット広告や街頭広告などを合わせると数えきれないほどの広告に触れています。

数多くの広告に触れていますが、その一つひとつを細部まで見ることはほとんどないと思います。だからこそ、訴求をテストする場合は、ほんの少しの変更よりも大胆に変えることが重要です。

ほんの少しの変更とは、テキスト広告であれば「安い」や「安価」といった細部の文言を変えることですね。

消費者はそこまで、広告をじっくりと見ていません。だからこそ、訴求のテストをする内容はハッキリと違いが分かるようなものにしましょう。

まとめ

市場のフィードバックというものは、時に残酷です。自分では顧客のためになると思っていても、実際には受け入れられなかったり、けなされたりと様々なことがあるかもしれません。

私自身も前職は自社サービスの会社にいて、時には厳しいフィードバックを沢山いただきました。

それでも、「こんなサービスを待っていたんだ!」「このサービスのおかげで事業がうまくいった」そのような言葉をもらいたく、皆さんも辛い思いをしながら新しい事業に取組んでいるのではないでしょうか。

少しでも新規事業の成功率を上げることに、この記事がお役に立てれば幸いです。

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