
「成果は順調だが、次の一手が思い浮かばない」
「パフォーマンスが悪いのに、どこから手をつければいいのか分からない」
これらは、Google 広告のP-MAXキャンペーンについて、ここ数年で筆者がよく聞くようになった声です。
たしかに、従来のP-MAXキャンペーンは「何がどこに配信され、どんな人に刺さっているのか」が見えにくく、成果の良し悪しに振り回されてしまうことも少なくありませんでした。しかし、近年のアップデートで分析レポートが拡充され、P-MAXの見える範囲は大きく広がっています。
とはいえ、やみくもに数字を眺めていても、成果につながる打ち手は見えてきません。大切なのは、課題に応じて「見るべき場所」を見極め、そこから具体的な次の一手を導き出す視点です。
本記事では、P-MAX運用で直面しがちな課題を切り口に、活用すべきレポートとその分析方法、そして改善アクションの考え方まで解説します。


目次
成果が落ちているけど、どこから改善すればいいか分からない(チャネルパフォーマンスレポート)
「P-MAX全体の成果が悪化しているものの、どこから手をつければいいか分からない」
そんな時は、まず「チャネルパフォーマンスレポート」で、キャンペーン全体の状況を俯瞰することから始めましょう。
「チャネルパフォーマンスレポート」では、「検索ネットワーク」「ディスプレイ」「YouTube」「Gmail」「Discover」「マップ」といった、P-MAXが自動で配信している各チャネルの成果を確認できます。
確認方法

1.管理画面の左メニューで「キャンペーン」をクリック
2.「分析情報とレポート」>「チャネルパフォーマンス」を選択
3.表示された「チャネル分布」で成果を確認
分類機能を利用すると、「商品データ活用有無」や「動画の使用有無」別でも成果を確認できます。

ECなどで商品データも活用している場合、ショッピングやディスプレイ面が全体の成果に影響を与えることが多いため、分類から「商品データを使用する広告」を選択し、確認することをおすすめします。
活用方法
全体の成果が悪化している場合、まずは最もコンバージョン率が悪化しているチャネルや、広告費を大きく使っているにも関わらず成果が伴っていないチャネルを特定し、そこから分析を深めていくのが効率的です。
例えば、「ショッピング面の効率が悪化している」と分かれば、商品別の配信状況を確認する、「YouTubeやDiscover面の成果が伸びている」と分かれば、どの動画アセットが好調なのかを分析するといった形で、次の対策を決める材料になります。
検索ネットワーク面でクリックはされるのに、購入につながらない(検索語句レポート)
「検索ネットワーク経由のクリックは多いのに、コンバージョン率が低い」
このような場合、広告を届けたいユーザーと、実際にクリックしているユーザーの間に「ズレ」が生じている可能性が高いです。「検索語句レポート」を使い、どのような検索語句で広告が表示されているかを確認し、そのズレの原因を特定しましょう。
確認方法

1.管理画面左メニューの「キャンペーン」をクリック
2.該当P-MAXキャンペーンを選択
3.上部メニューの「分析情報とレポート」をクリック
4.「検索語句」を選択
活用方法
P-MAXでは検索キーワードを直接指定できないため、「意図しない検索語句に広告費を使っていないか」を検索語句レポートで定期的に確認することが重要です。
特に、以下のようなケースに注意し、対策を打ちましょう。
ケース1:購入対象外と思われる検索語句でクリックされている
- 状況例
- 大人向けの商品を扱っているが、子ども用の商品を求めている検索語句でクリックされている
- 対策
- 「子ども」「小学生」といったコンバージョン見込みの低い語句を「除外キーワード」に設定
- 商品データやアセットを見直して、狙ったユーザーに魅力が伝わる訴求にする
ケース2:ブランド名が意図しない検索にも表示されてしまっている
- 状況例
- 自社のブランド名が一般的な単語と同じため、無関係な検索で広告が表示され、コンバージョン率が低い
- 対策
- 「ブランドの除外」機能を活用し、無関係な検索意図での広告表示を抑制する
商品データを使用する広告の成果が下がっているが、原因がわからない(商品レポート)
「ショッピング広告や動的ディスプレイ広告など、商品データを使用する広告の成果が落ちているけど、他のレポートを見ても原因がわからない」
このような場合は、「商品レポート」で商品や商品カテゴリごとのパフォーマンスを確認しましょう。
確認方法

1.左メニュー「キャンペーン」をクリック
2.該当P-MAXキャンペーンを選択
3.左メニュー「商品」をクリック
4.「商品」タブで商品単位の各指標を確認
商品単位だけではなく、フィードに登録しているデータをもとに、商品別/カテゴリ別/ブランド別/商品タイプ別/カスタムラベル別で数値比較が可能です。

メンズ/レディース、価格帯など任意の切り分けで成果を比較したい場合は、カスタムラベルを活用して事前にフィード内へデータ登録しましょう。
活用方法
商品レポートを見ることで、「どの商品が全体の成果を押し下げているのか」「特定の商品に配信が偏りすぎていないか」を確認できます。
特に注目すべきは、以下のような商品です。
- コンバージョンが少ない商品: 広告費は多く使っているのに、コンバージョンがほとんど発生していない。
- ROASが極端に低い商品: 売上に対して広告費用が見合っておらず、全体の効率を悪化させている。
- 配信が偏りすぎている商品: 特定の商品にばかり配信が集中し、他の有力な商品の表示機会を奪っている。
これらのパフォーマンスが悪い商品を特定することが、成果改善の第一歩です。
原因がわかれば、その商品の配信を一時的に停止したり、データフィードの商品タイトルや画像の改善を改善したりといった、具体的な次の一手を打つことができます。
どんなクリエイティブを作れば成果が改善するか分からない(アセットレポート)
P-MAXは登録されたアセットをAIが自動で組み合わせ、検索、YouTube、ディスプレイなど、あらゆる広告枠に対して最適な広告を生成・配信する仕組みです。そのため、P-MAXの成果は、登録されたアセット(画像、動画、見出し、説明文)の質に大きく左右されます。
「どんなクリエイティブを作れば成果が改善するかわからない」と悩んだ時は、アセットレポートで成果を確認し、クリエイティブ制作のヒントを探しましょう。
確認方法

1.左メニュー「キャンペーン」をクリック
2.該当P-MAXキャンペーンの「アセットグループ」を選択
3.「アセットの詳細を確認」をクリック
4.「アセット」タブで画像・動画・見出し・説明文ごとの表示回数・コンバージョン数を確認
「組み合わせ」タブでは実際に表示されている組み合わせの上位が確認できます。

活用方法
アセットレポートで成果の良いアセットを見つけ、その共通点を分析しましょう。
例えば、「人物が笑顔で写っている」「特定の利便性を訴求している」といった共通点が見つかれば、新たなクリエイティブの企画や、検索広告での訴求の参考になります。
また、特定のアセットに配信が偏る場合は、そのクリエイティブを別のアセットグループに分けるのも有効な手段の一つです。これにより、他のアセットの配信機会が生まれ、これまで埋もれていた新たな「勝ちパターン」が発見できる可能性があります。
ポテンシャルのある新規ユーザー層にアプローチしたい(オーディエンスの分析)
「今のターゲット層へのアプローチは順調だが、さらに成果を伸ばすため、ポテンシャルのある新規ユーザー層にアプローチしたい」
このような拡大フェーズでは、「オーディエンスの分析」が参考になります。実際にコンバージョンに至ったユーザーの傾向をデータで把握し、次にアプローチすべき有望な新規ユーザー層を特定しましょう。
確認方法

1.管理画面左メニューの「分析情報とレポート」をクリック
2.「分析情報」>「オーディエンスの分析」を選択
3.コンバージョン数のシェア、インデックスの数値が高いユーザー属性を確認
活用方法
オーディエンスの分析で「どんなユーザー層が特に成果を上げているか」を把握することは、新規顧客へのアプローチを考える上で有効なヒントになります。特に注目すべきは、「購買意向の強いオーディエンス」に分類されるような、コンバージョン見込みの高いセグメントです。
例えば、収納家具の広告を配信していて、「おもちゃ」の購買意向の強いオーディエンスのインデックスが高かった場合、「子供のおもちゃの収納に困っており、解決策として家具を探している親」という新しい見込みユーザー像が浮かびます。
この情報をもとに、以下のような具体的な施策につなげることが可能です。
- ペルソナに特化したアセットの追加
- まず、既存のP-MAXキャンペーンに、新たに見つかったペルソナの悩みに応えるクリエイティブを追加します。例えば、「散らかった部屋がスッキリ片付く」といったビフォーアフター形式の画像や動画アセットを投入し、この新しい訴求軸が有効かどうかの仮説を検証します。
- ペルソナに特化した新規キャンペーンの展開
- アセットの追加によって成果が伸びた場合、次の一手として、このペルソナに特化したP-MAXキャンペーンを別立てします。分析で明らかになった新しい見込みユーザーが検索しそうな「おもちゃ 収納」といった具体的なキーワードを「検索テーマ」として指定しつつ、成果の良かったアセットに予算を集中させることで、コンバージョン数の増加が見込めます。
まとめ
P-MAXは、AIによる自動化で便利な反面、「何をすれば改善できるのか分からない」と悩む声が多いキャンペーンです。
しかし、今回ご紹介したように、
- 配信面(チャネル)
- 検索語句
- 商品
- アセット(クリエイティブ)
- オーディエンスの分析(ユーザー属性)
といった“見える部分”を分析すれば、解決の糸口が見つかるはずです。まずは影響の大きい領域から分析し、仮説を立てて改善を進めてみてください。
