商品データを活用したダイナミック広告において、データフィードが広告の成果を左右する大事な要素の1つであることは既に広く浸透しているかと思いますが、その元となるマスタデータについてはあまり気に留めたことが無い方が多いのではないでしょうか。
商品データベースから直接データフィードを作成されている方にとっては「マスタデータってなに?」という状態だと思われますし、広告代理店からの指示でマスタデータを用意した方も「よく分からないけど、とりあえず有り物のデータを渡した」といったケースも多いです。
データフィードの役割や重要性については過去の記事でも詳しく解説していますが、実は、そのデータフィードの大元となるマスタデータが、ダイナミック広告の運用においては成果を左右する最も大切なデータと言っても過言ではありません。
今回は、今まであまりフォーカスされることのなかった、その実とても大切なマスタデータについて解説します。
マスタデータとは?
一般的にデータフィードは、企業が保有する商品データを、各広告媒体用に中身を作り変えたデータのことを指します。一方、マスタデータとは、そのデータフィードを作成する際に使用される、大元の商品データのことを指します。本記事では、企業が保有する商品データ=マスタデータと定義しています。
扱っている商材や企業によってデータの中身や持ち方、作り方は様々で、マスタデータを見ればその企業の性格のようなものまでなんとなく分かってしまう、そんなデータです。
詳しくは次の項目で解説していきます。
TIPS
そもそも「マスタ」の意味とは何でしょうか?ウィキペディアではこのように解説されています。
データ処理の基本となる(ファイルやデータベース中の)データのこと。例として、商品マスタ(商品の基本情報)、給与マスタ(給与計算のための基本情報)など。
引用元:マスター - Wikipedia
用途によって様々な種類が存在しますが、本記事では、ダイナミック広告配信に必要なデータフィードを作成する際の元となるデータ(ECなら商品データ、人材なら求人データ、不動産なら物件データ)を指しています。また、「マスタ」はマスタデータの略称です。
なぜマスタデータは超重要なのか
結論を先に述べますと、データフィード広告の質を左右し、かつ改善施策の手数も変わってくるから、となります。
まず、データフィードの作り方を大別すると、以下の2パターンに分かれます。
パターン1:商品データベースから情報を抽出して直接データフィードを作成している
パターン2:商品データベースから情報を抽出してマスタデータを作成し、そのマスタデータを変換してデータフィードを作成している
パターン1は、マスタデータの概念が存在しないデータフィードの作成方法です。この方法で対応されている企業は非常に多く、工数も少ないため一見手軽に思えるものの、広告成果の最大化という観点で考えた場合にどちらが適切かというと、圧倒的にパターン2であると筆者は考えています。
そもそも、ダイナミック広告の効果を高めるには、どれだけ多くの商品情報をデータフィード内に詰め込むことができるか、また、一度作成したデータフィードの構成を変更し、改善PDCA(広告で表示する情報の変更やデータ項目の追加など)を継続的に行えるかが肝になります。
パターン1の場合、システムの担当者へイレギュラーな開発案件として依頼しデータフィードを作成してもらうケースが多いため、完成後にデータフィードの変更を手軽に行えず、ダイナミック広告の改善スピードが鈍くなりがちです。(と言うよりも、ほぼ放置されているケースが多いかと思います)
また、パターン1で作成したデータを、パターン2でいうマスタデータとして活用しているケースもあります。しかしながら、1で作られたデータは必要最低限の情報で構成されている場合が多く、そこからデータフィードを作成しても、同じく情報が乏しいデータフィードしか作成できないため、結果として広告改善のための手札が少なくなってしまいます。
マスタデータに含まれている情報が多いほど、データフィード、ひいてはダイナミック広告の改善幅を広くとれることに繋がります。
「この情報をクリエイティブで表示したらクリック率が上がるかもしれない、でも肝心の情報がマスタデータに無い…」といった具合に、改善しようにもマスタデータに存在しない情報はデータフィードで使うことはできませんよね。逆に、情報が入っていさえすれば、改善施策の選択肢が増えます。つまり、データフィードのベースとなるマスタデータの情報量が、元を辿ると実は一番重要なのです。
まとめると、やり方としては2のパターンで、かつ、より多くの情報が入ったマスタデータを元に、データフィードの改善PDCAを継続的に回していくことが、ダイナミック広告の成功の秘訣となるのです。
では、マスタデータにとにかく情報が沢山入っていればいいのでしょうか?間違いではないのですが、情報量と共に重要なポイントがもう1つあります。
それは、「データの適切な持ち方」です。次項でご説明いたします。
適切なデータの持ち方とは?作り方のポイントも解説
適切なマスタデータを一言で表現するなら「全ての情報を含めたデータ」となりますが、もう1点重要なのが「情報の種類ごとに項目を分ける」ことが、後々のフィード作成・改修時に大きな差となって現れてきます。
「全ての情報」とは文字通りではあるのですが、アパレル商材で例えるなら以下が代表的なデータ項目として挙げられます。
業界によってデータ項目は異なりますが、サイトで表示している商品に関する全ての情報が含まれている状態を、最低限のデータ項目が揃っている望ましい形と考えています。
それらに追加して、サイトでは表示していないものの、広告運用に生かせそうな情報(例えば獲得を強化したい、高利益率商品のフラグなど)があると更に良いマスタデータと言えます。
商品データをデータベースに登録する際はルールを統一
ただし、よくあるNG事例として、商品名に宣伝文や記号などの不必要な情報が入ってしまっているケースがあります。そうなると、配信されたクリエイティブで意図しない情報が表示されてしまうことにも繋がります。また、例えば「赤」「レッド」「RED」であったり、「Anagrams」「ANAGRAMS」「アナグラム」など、同じ説明でも表現方法や記述方法が統一されていない場合も、自社でデータフィードを作成する際に余計な手間が増えてしまう要因にもなります。
そのため、商品データをデータベースに登録する際はルールを統一させ、表記揺れの無い情報管理が非常に大切になってきます。
商品名には商品名だけを入れる、宣伝文句は専用のカラムに入力するかフラグで管理する、表記ゆれが想定される場合は「1 = 白」「2 = 黒」といった表引きのルールを別で設定しておく、など、データ登録時のルール整備しておくことで、情報が整理されたデータベースを構築できます。
データフィードには、広告媒体ごとに特性やお作法が存在します。情報が整理されたマスタデータがあれば、データフィード作成の自由度が高まり、媒体の特性を加味しそれぞれに最適化させたデータフィードを作成できます。また、広告クリエイティブで表示させる情報のカスタマイズなど、データフィードチューニングの幅も広がり、結果として広告成果に好影響を与えることに繋がるのです。
こちらは、「悪いマスタデータ」と「良いマスタデータ」のイメージです。
どちらも情報量はほぼ同じではありますが、データの持ち方を変える(整える)だけで使い易さやフィード変換の自由度が大きく異なってくる、という事例になります。
整ったマスタデータはあらゆる施策の土台となる
マスタデータの管理は関係部署も多く、改修しようにも影響範囲の大きさを考えると簡単に対応できるような内容ではないかと思います。
そのため、例えばEC事業者様であればショッピングカートASP(EC構築システム)の選定や変更の機会がもしあれば、データの持ち方から登録方法といった部分をマーケティング部署の主導で改善を進められると良いのではないでしょうか。
そういったタイミングは滅多にありませんが、一度適切なルール下でデータを作ってしまえば、複数のダイナミック広告媒体への展開・改善も容易になるだけでなく、広告施策以外の商品データを使ったあらゆる施策の土台となる重要なデータに育つ可能性もあります。
改修には労力を要しますがテコ作用が非常に大きな領域ですので、本記事が、マスタデータに目を向けていただくきっかけとなりましたら幸いです。