
採用企業に広く利用されている求人検索エンジンのIndeed。これまでは、各企業のサイトを自動的に読み込む「サイトクローリング」による求人掲載が可能でした。しかし、2025年7月以降もIndeedで求人を掲載し続けるには、求人応募までをIndeed内で完結できるようにする機能「Indeedエントリー」の導入が必須化されたのをご存じでしょうか?
Indeedエントリー機能(旧:Indeed Apply)は以前から提供されていましたが、導入が必須ではなかったため未導入の企業も少なくありません。しかし、今回の必須化を受けて広告利用の有無を問わずIndeedを活用してきた企業は、Indeedエントリーへの対応を迫られています。
今後は、求人データの整備を進めてIndeedエントリーを導入するか、他の求人手法を検討するか、各企業で対応方針を決める必要があるでしょう。
この記事ではIndeedエントリーの基本的な仕組みや具体的な導入方法を説明し、導入必須化によって人材業界にどのような変化が起きるのかを考えていきます。


目次
Indeedエントリーとは?
Indeedエントリーとは、求人検索エンジンのIndeed上で、求職者が求人の検索から応募完了までのすべてのプロセスを一気通貫で行える機能です。
これまでIndeedから求人に応募する際は、各企業の採用ページへ移動して個別にユーザー登録や履歴書を入力する手間がかかっていました。そのため、応募途中で離脱する求職者も少なくありませんでした。
しかし、Indeedエントリーを導入すれば、求職者がIndeedに登録済みの情報を活用して、簡単に応募を完結できるようになります。応募プロセスが簡単になれば離脱率も低下し、求人への応募意欲を高めることにもつながるでしょう。
Indeedエントリーはなぜ「必須化」される?
2025年7月からIndeedエントリーの導入が必須化され、対応していない求人は無料・有料を問わず掲載できなくなります。対象は新規掲載求人だけではなく、現在サイトクローリングによって掲載中の求人も含まれるため、各求人がIndeedエントリーの仕様に対応していない場合は必ず対応が必要です。
参考:【お知らせ】Indeedに掲載される求人情報の「Indeedエントリー」標準化について
Indeedエントリーの導入方法は様々ですが、求人情報の用意やデータの整備など場合によっては実装工数が多く発生するため、特にIndeed経由の応募が多い企業は、優先的に準備することをおすすめします。
※導入方法について、次の章で詳しく説明します。
Indeedエントリーの必須化によってどのような変化が起きるのか、求職者、求人掲載企業、Indeedのそれぞれの目線で考えてみましょう。
求人掲載企業の応募数が増加するもサイト訪問者が減少
Indeedエントリーの導入で、応募プロセスがより簡単になり、ユーザーの行動が活発になる可能性があります。こうなると各社においてもIndeed経由の応募数が増加すると考えられます。
一方、応募自体がすべてIndeed上で完結することで、これまでIndeedから求人企業のサイトを訪れていたユーザーからのトラフィックが減ることが予測されます。リターゲティング広告などを配信している場合は、サイト訪問者数と相関して成果が変動する可能性もあるので、考慮しておきましょう。
Indeed上の利便性と精度が上がる
まず、Indeedエントリーによってサービスの利便性が向上することで、利用者数の増加が期待されます。
また、これまで各企業サイトで行われていた求人応募がIndeed上で行われることで、Indeed内に応募データが蓄積されていきます。誰がどのような求人に応募したのかというユーザーデータが蓄積されることで、データ学習などターゲティング精度の改善や、スカウティング事業などの他事業へのデータ活用が予測されます。
Indeedエントリーを導入する3つの方法
Indeedエントリーの必須化に対応する方法は下記の3つがあります。
- 直接投稿
- 対応しているATSとの連携
- 自社開発
それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく説明します。
価格面で最も手軽に実施できる「直接投稿」
直接投稿は、Indeedの管理画面上で各求人を投稿する方法です。
導入費用、管理費用どちらもかからずに利用でき、入稿さえ完了すればIndeedエントリー対応となるためスピード感も早く対応できる点が魅力です。
一方で、求人票の登録・更新を手動で行う必要があるので、求人数が増えるほど工数が増える懸念があります。そのため、求人数が多い場合や求人の入れ替えが多く発生する場合には他手段の方が運営の工数を抑えられる可能性が高いです。
求人数が多くても工数を抑えられる「ATSとの連携」
ATSとは、Applicant Tracking System(応募者追跡システム)の略称で、一般的に採用管理システムのことを意味します。Indeedと連携できるATSに求人データを登録し、ATS経由でIndeedへ掲載を行うことでIndeedエントリーの導入が可能になります。
ATSを介してIndeedと接続するため、導入時や運用時の負担を軽減できるのが大きなメリットです。また、ATSは採用管理システムとして、採用ホームページの作成から応募者との連絡などまで、多機能なツールが多いため、自社の課題に合ったATSを選べば、採用業務の効率化に繋がります。
ただし、2025年2月時点でIndeedエントリーに対応しているATSは44種類ありますが、多くは企業の採用担当者向けに設計されており、更新頻度や課金形態が人材紹介/派遣事業とマッチしないケースもあります。
そのため、既存の採用管理方法との相性や導入・運用費用も含めて慎重にツール選定を行いましょう。
柔軟性に優れた「自社開発」
自社開発は、Indeedエントリーに対応できる環境を自社サーバー上に構築する方法です。
具体的には、データフィードを活用して応募時に必要なデータをIndeed側に送信し、API経由で応募データを受け取るシステムを構築する必要があります。
データフィードを使った求人掲載を引き続き利用したい場合には、自社開発の一択となります。また、既存の自社システムと柔軟に連携できるため、カスタマイズ性が高い点が大きなメリットです。
ただ、自社ですべてを開発する必要があるため、開発工数やコストも念頭におく必要があります。
このようなデメリットの解消には外部のサービスを入れるのもひとつです。
アナグラムのグループ企業であるフィードフォースが、データフィードを使ったIndeedエントリー対応を支援するサービス「Micro ATS」を提供しています。利用することで開発工数を大幅に抑えることができ、サブスク(SaaS)型なので費用のコントロールも比較的しやすいといえます。
フィードでの求人掲載を検討している場合は、選択肢の一つとして知っておくとよいかもしれません。
導入方法をまとめると次のようになります。
直接投稿 | 連携ATSの導入 | 独自開発 | |
---|---|---|---|
こんな方へおすすめ | ・求人数が少ない ・求人更新頻度が低い | ・すでにATSを使って採用管理をしている ・開発リソースがない | ・自社データベースとIndeedの応募データを紐づけたい ・フィードでの求人掲載を引き続き利用したい |
概要 | Indeedの企業アカウントを開設し、管理画面から直接求人を投稿する方法 | Indeedと連携しているATSを契約し、ATS経由で求人を掲載する方法 | XMLフィードとAPIを利用してIndeedエントリー機能を開発する方法 |
導入費用 | ◎ 無料で利用可能 | 〇 各ATSの定める導入費用が必要 (導入費無料のツールもある) | △ 外部ベンダーに依頼する場合、開発コストが発生 |
管理費用 | ◎ 無料で利用可能 | △ 各ATSの定める利用料が必要 求人数などによって変動する | 〇 一度開発をすれば、管理費用は大きくない場合が多い |
カスタマイズ性 | △ Indeedの提供範囲内で応募フォームの項目が指定可能 他経路の応募データとの統合は手動で行う必要がある | 〇 ATSの提供範囲内で応募フォームの項目が指定可能 ATSによっては他経路の応募データもATSに集約可能 | ◎ 求人票の内容や応募フォームの項目を指定可能 開発方法によっては自社データとIndeed応募者データの突合も可能 |
導入工数 | △ 手動で入稿が必要 | ◎ ATS側でのサポートあり | △ 開発要件の整理から自社で行う必要あり |
求人管理 | △手動で求人の更新が必要 | 〇 各ATSによって方法が異なる 求人の更新頻度が決まっている場合がある | ◎ フィードの更新によって、求人票の更新も可能 |
Indeed PLUS対応 | 〇 Indeed PLUSが自動で適用される | △ 対応状況はATSごとに異なるため、事前確認が必要 | ✕ XMLフィードはIndeed PLUSが適用されない |
<Indeed PLUSとは>
2024年1月30日にローンチされたIndeedから複数の求人サイトへ配信の拡張が可能な機能です。Indeed PLUSに対応した求人は、IndeedだけでなくタウンワークやリクナビNEXTなどの連携サイトへも配信されます。Indeed PLUSの審査に通ると自動で適用されるため、運用や管理の工数は変わらずより多くの求職者へのアプローチが可能です。
参考:【公式】Indeed PLUSとは?メリットや料金、利用方法について
Indeedは求人の検索エンジンから採用のプラットフォームへ
ここ数年のIndeedの親会社であるリクルートホールディングスの動きを見てみると、連携サイトへ配信が拡張される「IndeedPLUS」の登場、Indeedエントリー必須化と大きなアップデートが立て続けに発表されています。
これらのアップデートは、求職者・採用企業の双方にとって「Indeedを軸とした採用活動」ができるプラットフォームとしての進化を意図したアップデートであると考えられます。
実際に、2023年に行われたリクルートホールディングスの経営戦略を説明する「Investor Update」でも、Indeedが「求人を検索する場」(Search)から、求職者と企業が採用(Hire=就業)まで到達できるプラットフォームを目指すと話されていました。
以前からIndeed Apply(現在:Indeedエントリー)の提供を通じて、プラットフォーム化は進められていましたが、今回のIndeedエントリーの「必須化」はこれまでのアップデートと比較しても業界に大きな影響を及ぼす変更となっています。
採用活動への影響
Indeed上に応募データが集約されることで、リクルートホールディングス全体として膨大な応募データを蓄積できるようになり、より精度の高いユーザー分析やアプローチが可能になります。
一方で、求人市場における競争の激化や、企業の採用活動への影響も避けられません。以下では、Indeedエントリーの必須化によって起こりうる求人業界や採用活動への変化について詳しく見ていきましょう。
募集手法の変化
応募プロセスがIndeed内で完結するようになることで、これまで企業のサイトを経由して得られた訪問データやユーザー登録情報が減少し、その結果リターゲティング広告やメール・電話によるアプローチの手法にも変化が求められるでしょう。
また、Indeedエントリー上の応募社データは、自社の採用管理に活用されることなく、Indeed側、つまりリクルート社に求職者データとして蓄積されます。
さらに、リクルートホールディングスは、これまでHRテクノロジーとマッチング&ソリューションに分かれていた人材関連の領域を2025年4月をめどに統合し、まとめて運営していく方針です。こうした体制強化により、求人から採用までのプロセスをより効率的に支援する基盤が整いつつあります。
推測ではありますが、将来的には「リクナビNEXT」や「リクルートエージェント」で使わているリクルートIDがIndeedにも導入され、ユーザーの行動履歴を複数サービス間で横断的に把握できるようになる可能性もあります。そのため、これまでIndeed中心にマーケティング戦略を構築していた企業も自社が応募者に直接アプローチできる範囲が狭まらないように、Indeed以外の経路でもユーザーとの繋がりを作れるように戦略の方針転換が必要になるかもしれません。
求人の競争激化
Indeed上で応募者以外のデータが手に入らないとなると、Indeedでの募集においてはIndeed内でどのように応募を決断してもらうかが重要になってきます。ユーザーの検索内容にマッチするような情報を盛り込めているか、検索結果に並んで表示された際に、求人内容の魅力をはじめ、タイトルや文章表現、写真や動画の見せ方が魅力的かなど求人データの改善が鍵を握ります。
社内でのデータ管理の変化
また、各企業の既存の応募フローにも影響が及ぶ可能性があります。Indeedの直接投稿や連携ATSで掲載求人の管理をする場合、他の経路からの応募データと別々に管理する必要が出てきます。同じユーザーがIndeedと他の経路で重複応募するケースへの対応や、新たな管理フローの準備を検討する場合もあるでしょう。
まとめ
今回紹介したIndeedエントリーの必須化は単なるアップデートではなく、求職者、採用企業双方に大きな変化を生んでいくと考えられます。
特に人材紹介、人材派遣会社にとっては、採用市場の主要プラットフォームを他社が握る状況は、戦略の大きな転換点を意味するのではないでしょうか。
Indeedを活用しつつも、他チャネルの開拓や、自社サイトで求人を探してもらう理由付けなどIndeedに依存しすぎない範囲で独自のユーザー獲得方法も重要なポイントになりそうです。実際にリクルートホールディングスがどのような動きをするかはまだ分かりませんが、Indeedエントリーが必須化となる2025年7月からユーザーの動きが大きく変わることは事実です。
この市場の変化を見据え、Indeedや人材企業の動向に注目しながら求職者へのアプローチ方法を柔軟に考えていく必要があるでしょう。
