リスティング広告には日々の運用調整が必要不可欠ですが、アカウントに変更を加える前に、試そうとしている施策が本当に効果的なのかを確かめたいと思ったことはないでしょうか?
アカウントに変更を加えた場合、その前後のパフォーマンス分析は、アカウント内で経過を確認したり、レポートを発行して分析したりすることで行うケースが多いと思います。ただしこの流れだと、各テストを実行する時期が異なるため、同一条件での平等な比較がしにくいというデメリットが出てきてしまいます。
そのような時に便利なのが、Google 広告のキャンペーンのカスタムテストという機能です。
カスタムテストとは?
カスタムテストは、Google 広告の検索キャンペーンとディスプレイキャンペーンで使えるテスト機能です。
以前は「下書きとテスト」という機能でしたが、2022年1月19日のアップデートにより「カスタムテスト」という形式にリニューアルされました。
カスタムテストを使うと、例えば、入札戦略を手動から自動へ変更することや目標コンバージョン単価の変更などの効果を検証したい場合に、現在配信を行っているキャンペーンを複製してテスト用のキャンペーンを作成することで元のキャンペーンに影響を与えることなく、良し悪しをテストできます。
また、こうして元のキャンペーンとテストキャンペーンを並行に配信することによって、パフォーマンスをより平等に比較できるため、テストしたい新しい施策を実行すべきか否か判断しやすくなることが期待できそうです。
応用できるシチュエーションは沢山ありますが、例えば、次のようなテストシナリオを考えられます。
- デバイスの入札単価を変更(例:スマートフォンの入札単価調整比を+50%→+100%にした場合)
- 入札戦略を適応した場合(例:目標コンバージョン単価制の設定、手動から自動に変更した場合)
- 配信時間の調整
- マッチタイプの変更
- キーワードの追加・除外
- クリエイティブのABテスト
- リンク先のABテスト
- プレースメントの追加・除外
テストしたい施策に合わせて試してみるとよいでしょう。
カスタムテストの始め方
それではさっそく、広告管理画面での設定方法を説明していきます。
カスタムテストの実施には元となる作成済みのキャンペーンが必要です。まずはテストを行いたい任意のキャンペーンを選択しておきます。
カスタムテストの設定方法
①「テスト」をクリックし「カスタムテスト」を選択します。
②「+ボタン」から新しいカスタムテストを作成します。
➂「カスタムテスト」を選択します。
④テストをしたい「キャンペーンタイプ」を選択します。
⑤「テスト名」を入力します。どのような内容かが分かる名称がおすすめです。こうして、複数のテストを同時進行している場合でも、すぐに見分けがつくため管理が楽になります。
⑥テストしたいキャンペーンを選択します。
⑦作成するテストキャンペーンのキャンペーン名は、元のキャンペーンの名前とサフィックス(末尾につける文字列)で構成されます。ここでサフィックスを指定します。デフォルトとしては、⑤で入力したテスト名がそのまま末尾に記載されますが、代わりに任意の文字列を入力することも可能です。
⑧作成したテストキャンペーンを選択し、テストしたい箇所を変更します。変更が終わったら次に「SCHEDULE」をクリックします。
⑨「テストの目標」では、テストで検証したい効果を指定します。例えば、コンバージョン単価を下げられるかどうかをテストしたい場合は「コンバージョン単価」と「引き下げ」を選択します。ここで選んだ指標はキャンペーンレポートで強調して表示されます。※指標は最大2つまで設定可能です。
⑩予算の分配の割合を設定します。また、検索広告の場合は「詳細設定」から分配比率のオプションを選択します。
詳細は以下の通りです。
項目 | 説明 |
---|---|
検索ベースのテスト用の分割データ | 検索が行われるたびに、テストのキャンペーンと元のキャンペーンのいずれかにユーザーをランダムに割り当てることができる機能 |
Cookie ベースのテスト用の分割データ | 検索した回数に関わりなくユーザーにテストのキャンペーンと元のキャンペーンのいずれか 1 つのみを表示する機能 |
基本的には、Cookieベースの設定をお勧めします。理由としては、ユーザーごとにテストと既存のキャンペーンを分けて配信することによって、どちらのキャンペーンが高い成果を上げられるかの精度をより高く判別することが可能だからです。
参考:Google 広告、キャンペーンのテストの対象をCookieベースで分割可能に
Cookie ベースのテスト用のキャンペーンと元のキャンペーンの分割データを利用時の注意点
Cookieベースのテスト用の分割データを選択し、オーディエンスリストを使う場合は、対象リストのサイズが 10,000人を下回ると結果の精度が落ちてしまう可能性があるため、注意が必要です。
参考:カスタムテストを設定する - Google 広告 ヘルプ
⑪テストの期間を選択します。
⑫同期のオン・オフを設定します。同期機能はデフォルトでオンになっていますが、もし同期機能を使いたくない場合は、テスト作成中の段階でしか外せないため、利用時に注意点が必要です。
テストの同期機能について
テストの同期機能とは、テストを実施中に元のキャンペーンで行った変更や修正を、自動的にテストキャンペーンへ反映してくれる機能です。例えば、テスト期間中に元のキャンペーンに除外キーワードを新しく登録するとテストキャンペーンにも追加されます。
特に複数のキャンペーンで同時にテストを実施している場合、元のキャンペーンの変更を手動でテストキャンペーンにそれぞれコピーする工数を減らしたり、手作業によるミスも抑えたりすることが期待できそうです。
※元のキャンペーンからテストキャンペーンへの同期のみが可能で、テストキャンペーンに加えた変更は元のキャンペーンに反映されることはありません。
⑬最後に「テストを作成」をクリックします。
作成完了後に、設定したテスト期間どおりに元のキャンペーンとテストキャンペーンが、ランダムにオークションに振り分けられるようになります。
キャンペーンのテスト結果を確認する
テストを実施したら、その掲載結果を確認しましょう。「キャンペーン」から結果を確認したいテストを選択できますが、以下の確認方法でも可能です。
①Google 広告にログインし、「カスタムテスト」をクリックします。
②進捗を確認したいテストを選択します。
元のキャンペーン(Base)とテストキャンペーン(Trial)の各指標を比較することができます。ベースとして選択したキャンペーンと比較して、進捗を確認できます。
また、画面の上部にカスタムテストの初期設定で選んだ「テストの目標」を基にテストキャンペーンと元のキャンペーンを比較できるスコアカードが表示されます。これを参考にテストを終了するか、テストを元のキャンペーンに適用するか、テストを新しいキャンペーンに変換するかの判断を行います。
また、テストキャンペーンと元のキャンペーンの掲載結果の差異も確認できます。
主に2つの値で構成されていて、それぞれの説明は以下になります。
項目 | 説明 |
---|---|
テストと元のキャンペーン との比較データ |
その指標で見られた掲載結果の差異を示しています。 |
95% の信頼区間 | テストと元のキャンペーンとの間に発生する掲載結果の差異の可能性範囲です。 |
統計的有意性に関する管理画面での表記は、以下のようになります。
※横へスクロールしてご覧ください
項目 | 説明 | |
---|---|---|
統計的有意性 | 統計的に有意です | データの精度は高く、キャンペーンに変換した後も 引き続き同様の掲載結果を得る可能性が高い |
統計的に有意ではありません | データが統計的に有意ではない理由として以下が考えられます。
|
|
信頼区間 | 掲載結果差異の信頼区間の詳細 | |
また、それぞれの項目についてはGoogle 広告ヘルプも合わせてご確認ください。
参考:テストの結果を確認する - Google 広告 ヘルプ
ここのような表示がされることで、テストキャンペーンの結果を元のキャンペーンと比べて優劣を判断するのに十分なデータがとれたか確認できるので、とても効果的です。その結果を元に、テスト内容の方が成果がよいと判断し、取り入れる場合は下記二つの設定方法があります。
テスト内容を適用させる2つの方法
テスト結果からテスト内容を元のキャンペーンの配信に取り入れようと判断した場合は、以下の手順でかんたんに反映させることができます。
テストのキャンペーンを選択し「テストを適用」ボタンをクリックします。
クリックすると、「元のキャンペーンを更新する」または「新しいキャンペーンに切り替える」の2つの方法がでてきます。いずれかを選択し「適用」をクリックします。
それぞれの設定の詳細は以下となります。
適用方法 | 説明 |
---|---|
元のキャンペーンを 更新する |
元のキャンペーンに下書きで変更した内容がそのまま 適用されます。 |
新しいキャンペーンに切り替える | 元のキャンペーンが一時停止され、元のキャンペーンと 同じ予算と日付が設定された新しいキャンペーンの追加ができます |
また元のキャンペーンの成果が良い場合、そのままテストを終了すれば、テストで行った変更の影響は受けません。いずれかの判断を下した後のテストキャンペーンは役目を終えるため、「完了」ステータスとなり停止されますが、掲載結果は終了後でも確認できます。
注意事項
ここまでキャンペーンのカスタムテストの作成方法から結果の確認方法までを説明してきました。ただし、上記の設定や操作を行う上で注意しなければならない点もありますので、ご紹介します。
1. テストできるキャンペーンは検索広告とディスプレイ広告のみ
テストは検索とディスプレイのキャンペーンタイプでのみご利用いただけます。動画、アプリ、ショッピングなどのキャンペーンタイプではテストを作成できませんので、ご注意ください。
今回ご紹介しているキャンペーンのテストとは仕様が異なりますが、動画キャンペーンでは動画テストという項目を選択できます。動画テストとは、動画広告の YouTube でのパフォーマンスを相互に比較できる機能です。できることとしては、複数の動画広告を同じオーディエンスに向けて表示し、その結果をもとに、オーディエンスと相性のいい広告を割り出すことです。
テストキャンペーンの結果を元のキャンペーンと比べて優劣を判断するのに十分なデータがとれたか確認できるので、とても効果的です。
2. 一度に実施できるテストは一つのみ
1 つのキャンペーンに 5 つのテストのスケジュールを設定できますが、一度に実施できるテストは 1 つだけです。そのため、実施したいテストが複数ある場合は、実施する順番を含め余裕をもってスケジュールを設計していくことをおすすめします。
3. テストの開始日は数日の余裕を持たせて設定
テストの広告の審査手続きが完了して広告が実際に配信されるには、多少時間がかかることがあります。かかる時間は元のキャンペーンの大きさによります。広告の審査が完了する前にテストが始まらないよう、テストの開始日を数日後に設定することをおすすめします。
4. カスタムテストで行えない設定がある
テストは一般的にキャンペーンと同じ機能をサポートしていますが、以下は例外として行うことができないので、ご注意ください。
- 「ターゲット キャンペーン」や「ターゲット広告グループ」を使った広告カスタマイザ
※ただし、テストを作成してから、ターゲットのキャンペーンまたは広告グループのフィードを割り当てることは可能です。 - 共有予算
- 入札単価状況
まとめ
Google 広告のテスト機能を活用することで、アカウントに対して実際の変更を加えることなく仮説検証を行うことができるようになりました。これまで時間のかかっていたアカウント変更後の結果概要もスコアカードという形で表示されるので、スピーディーに効果の判断を下すことができるようになります。
なかなか目立たないツールではありますが、利用しないと公平なテスト自体が難しい設定も多数あります。ぜひ積極的に活用してみてくださいね。