もしかしてこれが原因?Facebook広告の成果を落とす8つの誤り

もしかしてこれが原因?Facebook広告の成果を落とす8つの誤り

「Facebook広告は前に配信してみたけど成果が出なくてやめてしまいました……」という話を耳にする機会が増えてきました。しかし当時の運用について詳しくお伺いすると、より良い方法を提案できることの方が多いです。

この記事では、筆者が社内外でFacebook広告の相談を受けてきた中でよく見る失敗を紹介していきます。

効果計測とアカウント設計の誤り

ターゲティングやクリエイティブはもちろん重要ですが、それらが効果を発揮するためには広告アカウントの設計と効果測定が適切であることが大前提です。

1. 広告セットを必要以上に分割している

Facebook広告のコンバージョン最適化を活かすためには、各広告セットごとに1週間あたり50件以上のコンバージョンデータが必要とされています。コンバージョンデータは広告セットが細かくなるほど分散してしまいます。必要以上に広告セットを分割してしまうと、十分なデータが貯まらず最適化の恩恵に預かれないため、「Facebook広告は成果が出ませんでした」となりやすいのです。

下図はよくある「成果が出にくい広告アカウントの構成」です。

性別や年齢、サイト訪問からの期間で細かく広告セットを分割していますが、入札やクリエイティブなど設定上の意図がなくデータが無駄に分散しているだけの状況といえます。広告セットの設定やクリエイティブが同じであれば、広告セットを統合して効率的にデータを集約させると最適化機能を活かせるでしょう。

参考:上級者向けガイド: ピクセルを使用してウェブサイトの売上を促進する

2. コンバージョンポイントが適切でない

Facebook広告では広告セットごとにコンバージョンポイント(広告で最大化させたい成果地点)を設定することができます。ここでは成果につながらない、コンバージョンポイントの誤った設定について解説します。

コンバージョンのハードルが高すぎる

Facebookの調査によると、Instagramは一度に長時間利用されるのではなく短時間かつ複数回利用されています。

参考:国内利用者のInstagram活用の現状

スキマ時間に即決するのが難しかったりフォームの入力項目が多すぎたりするような、実行ハードルの高いコンバージョンとFacebook・Instagram広告の相性は良いとはいえません。

ビジネスによっては購入やお問い合わせのハードルが高く、中間地点になるコンバージョンポイントを設けることが重要です。たとえば多くの企業向けサービスの広告がいきなりお問い合わせを促すのではなく、実行ハードルが低くビジネスのリードにもなるホワイトペーパーという中間地点を用いるのはそのためだといえます。

コンバージョンとビジネス成果の関連が低い

先に、コンバージョンにはデータの「量」が必要なのは述べましたが、「量」を意識するあまり、最終的なビジネスの目的とかけ離れたコンバージョンポイントを設定するのは本末転倒ですよね。たとえば、商品を購入してもらうのが目的にも関わらず、ランディングページのページビューを増やしてもしょうがありません。コンバージョンまでのハードルが低ければ低いほどデータにノイズが紛れ込む可能性も高いのです。

コンバージョン数は増えてもビジネスの成果につながらない、とならないためにも、「そのコンバージョン数を増やすことがビジネスの成果に繋がるか」両者の関連性も十分に検討して最適化するコンバージョンポイントを定めましょう。

3. アトリビューションウィンドウを理解できていない

ユーザーがFacebook広告に接してからコンバージョンが発生するまでには、商品やサービスによっては1日や1週間などタイムラグが発生することも少なくありません。

Facebook広告では、広告の貢献があったとする広告への行動(表示かクリックか)およびその行動からコンバージョンまでの期間をカスタマイズして確認することのできる「アトリビューションウィンドウ」が提供されています。

下図はあるキャンペーンの実際のコンバージョン数ですが、アトリビューションウィンドウによってコンバージョン数に大きな差があることが分かります。


広告レポートの初期設定はアトリビューションウィンドウは「広告を見てから1日間、または広告のクリックから28日間」になっていて、上図でいえば19+48=67件です。

ビューアトリビューションは広告を見ただけでクリックしていない場合でもコンバージョンを計測するため、偶発的なコンバージョンも含んでいる可能性があります。間接効果を重視していない場合はアトリビューションウィンドウからビューアトリビューションを外してください。

また、クリックアトリビューションは期間を短くするほどラストクリックに近く、長くするほど間接効果を評価した効果計測となります。広告をクリックしてからコンバージョンまでの検討期間が長い商品・サービスであれば28日間まで計測することで広告効果が過小評価されにくくなります。反対に、中間となるコンバージョンポイントを設定している場合や気軽に実行できるコンバージョンに最適化している場合であれば広告をクリックしてからコンバージョンまでの期間は短いはずですから、7日間や1日間での計測も候補にあがるでしょう。

アトリビューションウィンドウはどれか一つの組み合わせしか選択できないということはなく、上図のレポートのようにビューアトリビューションとクリックスルーアトリビューションの期間ごとの結果をいつでも確認することができます。もし普段確認している「コンバージョン数」のアトリビューションウィンドウは何になっているのか把握していないのであれば、これまで参照していたアトリビューションウィンドウを確認のうえ広告が過大、過小に評価されていないか確認すると良いでしょう。

参考:広告マネージャで広告の結果のアトリビューションウィンドウを変更する

ターゲティングの誤り

Facebook広告では様々なターゲティング方法が提供されていますが、その中でもやってしまいがちな効果的でないターゲティングや、同じターゲットに広告を配信し続けることによる広告効果の低下を紹介します。

4. ターゲットを絞り込みすぎている

高精度なターゲティングが特長のFacebook広告ですが、ターゲティング精度が高いからといって絞り込み条件を増やすのが得策でないケースもあります。

細かすぎるターゲティング

Facebook広告のターゲティング設定は性別や年齢はもちろん、地域や興味関心、役職などをかけ合わせて絞り込むことも可能ですので、想定しているペルソナにかなり近いターゲティング設定をすることも可能でしょう。

しかしそのような細かい絞り込みを行うと多くの場合は「潜在リーチ」(広告表示の対象となるユーザー数の推定値)が少なくなり広告の集客効果は小さくなってしまいます。

仮に潜在リーチが1,000人で、クリック率が5%、コンバージョン率が1%だとすると1件のコンバージョンを獲得できるかさえ不安な配信ボリュームです。継続的に獲得したいコンバージョン数が多いほど相応の潜在リーチも必要になりますので、目標のコンバージョン数や想定のクリック率、コンバージョン率からどの程度の潜在リーチが必要か逆算し、必要な潜在リーチが確保できる範囲でターゲットの絞り込みを行うと良いでしょう。

先入観による絞り込み

また「男性向けの広告を女性中心のInstagramに配信しても効果は薄いだろう」のような先入観による絞り込みも要注意です。2019年6月時点の国内情報ではInstagramの月間アクティブアカウント3,300万のうち43%が男性ユーザーです。Instagramは女性のものという古い情報をアップデートしていないと、気が付かないうちに機会損失を招いてしまうかもしれません。

参考:Instagramで新しいターゲット層を開拓するには

安易な除外による先細り

レポートの内訳を見てコンバージョン単価が高い要素(性別、地域、デバイスなど)を安易に除外していると、短期的にコンバージョン単価を下げられたとしても中長期的には先細りのリスクがあるでしょう。たとえば男性のコンバージョン単価が高いのであれば、除外する前に男性からの反応が得られそうなクリエイティブを追加するなどして改善していきたいものです。

5. 広告がターゲットにリーチし尽くしている

同じターゲットに継続的に広告を配信していれば、いずれリーチし尽くす段階が訪れます。広告が一巡してしまうと「この広告何度も見たな……」と思われるようになり、広告のパフォーマンス低下が予想されます。

リーチの飽和状況の確認には「配信インサイト」という機能が便利です。

配信インサイトは過去7日間(今日を除く)で500インプレッション以上配信されている広告セットの「配信」列にマウスをあわせるとリンクが表示されます。

参考:配信インサイトについて: ターゲット飽和の解釈

以下の指標が役立ちます。

指標

内容

リーチ(通算)

全期間で対象の広告セットの広告を一回以上見た人の数

ターゲットリーチ率

対象の広告セットの潜在リーチと通算リーチ(通算)から割り出した累計のリーチ率

初回インプレッション率

対象の広告セットの広告を初めて見た人の割合。低いほどリーチが飽和していることがわかる。

6. 類似オーディエンスのソースが適切でない

類似オーディエンスはFacebook広告の強力なターゲティング機能ですが、使えば何でも成果が出るというようなものではなく、類似オーディエンスの元となる「ソース」が非常に重要です。

ソースと広告の目的が合っていない

たとえば野球やサッカーなどのスポーツ用品を扱うECサイトで新たにテニス用品を取り扱うことになった場合、既存顧客(テニス以外のスポーツ用品の購入者)をソースに作成した類似オーディエンスはテニス用品の販売に適しているでしょうか?

購入者を元にした類似オーディエンスといわれると効果的に聞こえますが、「購入者」とひと括りにするのではなく、購入している商品やリピート回数なども考慮のうえ、広告目的に合ったソースを選択することが大切です。

ソースの人数が十分な関連性がない

類似オーディエンスはソースが100人いれば作成可能ではありますが、ソースは1,000人~50,000人が推奨されています。

参考:類似オーディエンスについて

推奨人数よりも少なすぎたり多すぎたりするとオーディエンスの共通点の特定が困難になり、類似度の精度も低下してしまいます。ソースが少ない場合は、まずは類似オーディエンス以外のターゲティングやFacebook広告以外の集客経路でソースを増やす必要があります。反対に多すぎてしまう場合はLTVが高い顧客に絞り込むなどして広告効果がより高くなるよう調整すると良いでしょう。

運用方法の誤り

Facebook広告の運用において多くの場合に成果を悪化させてしまう例を紹介します。

7. 大幅な変更を短期間に繰り返している

広告配信のデータが集まるほどパフォーマンスは安定していきます。このデータ収集期間のことをFacebook広告では情報収集期間と呼び、50件ほどのコンバージョンを獲得することで情報収集期間は完了します。

しかしFacebook広告では「大幅な変更」と呼んでいる、入札戦略やターゲットなど自動入札の前提条件となる要素を変更するたびに新たな情報収集期間が必要になり、変更を短期間に繰り返してしまうといつまで経っても成果が安定してくれません。大幅な変更は下記のように定義されています。

大幅な変更

  • ターゲット設定の変更
  • クリエイティブの変更
  • 最適化イベントの変更
  • 広告セットに新しい広告を追加
  • 広告セットの7日以上の停止(広告セットの停止を解除した時点で、情報収集期間がリセットされます)

次の項目については変更の度合いに応じて、大幅な変更であるかどうかが判断されます。

  • 入札価格上限またはターゲット単価
  • 予算額(ターゲット単価の入札戦略を使用している場合、予算の変更は大幅な編集とはみなされません)

情報収集期間中は広告のパフォーマンスが安定しにくいため、パフォーマンスが悪いからといって毎日のように大幅な変更をしてしまうといつまでも情報の収集が完了せず逆効果になってしまうことが多いのです。

参考:情報収集期間を編集する

8. 媒体に合わせたクリエイティブ運用ができていない

Facebook広告でコンバージョン最適化の配信を行う場合はクリックではなくインプレッションに対して費用が発生するので、関心を持たれない広告のインプレッションが増えるとコンバージョン単価の高騰に直結します。ではFacebookやInstagramという場に合わせ、ユーザーに関心を持ってもらうためのクリエイティブをどのように考えれば良いのでしょうか。

他媒体のクリエイティブ素材を使いまわしている

ユーザー同士の交流の場に掲載するSNS広告では、いかにも広告というような作り込まれた画像ではなく、フォローしている友達やブランドの投稿と比較して違和感のない自然な画像の方が広告が受け入れられやすい傾向があります。他の媒体のために作成したバナー画像などが必ずしも良い結果につながらないことを知り、Facebook・Instagramではどのような訴求と見せ方が効果的なのか配信結果をもとに改善を繰り返していきましょう。

野菜ジュースの販売を手掛けるカゴメ株式会社では広告にユーザーが投稿した自然な写真を広告に活用したことで顧客獲得単価が23%改善されたという事例もあります。

参考:カゴメがFacebook広告にUGCを使ったのは何故? 通販限定商品「つぶより野菜」の広告戦略

すべての配置で同じクリエイティブ素材を使っている

Facebook広告では、FacebookとInstagramのようにユーザーが利用する目的の異なるサービスへの広告配信を一括して管理できますが、配置によって効果的なクリエイティブの見せ方が異なる場合が少なくありません。

同じ広告でも配置ごとに使用する画像や動画を変更することができますので、たとえばFacebookニュースフィードでは広告の本文のテキスト量を多めにして論理的に訴求し、Instagramストーリーズでは縦長の画像や動画素材の中に短いテキストを盛り込むことで直感に訴えるなど異なる見せ方が可能です。

商品やサービスの魅力を伝えるためにFacebookやInstagramという場に合わせた伝え方ができているでしょうか?これまですべての配置で同一の素材を使用していたのなら、まずは配置ごとのクリエイティブの要件を確認し、画像の切り取りサイズを配置に合わせることから始めてみてはいかがでしょうか。

参考:配置に合わせたアセットのカスタマイズについて
参考:配置に合わせてクリエイティブをカスタマイズする

さまざまな広告フォーマットを活用していない

どのような訴求が効果的か探っている段階であれば検証のサイクルを回しやすい静止画のクリエイティブも良いですが、静止画だけでは魅力を伝えきれない場合や、ある程度訴求の方向性が固まってきたら動画、カルーセル、コレクションなどのフォーマットにチャレンジしてみてください。

名前だけではピンとこない場合は、下記の「クリエイティブハブ」でフォーマットごとのギャラリーが公開されていますので一度確認し、どのような手段があるのか把握しておくと良いでしょう。

参考:クリエイティブハブ

クリエイティブの更新頻度にとらわれている

Facebook広告はクリエイティブがすぐ飽きられるため毎週更新するべきだという話を聞いたことはないでしょうか。それ自体は間違いではありませんが、配信実績の数字で判断することなく、更新することが目的となってしまっている場合は注意が必要です。

一般的に、フリークエンシーは2~3回程度が目安と言われますが、必ずしも、「フリークエンシーが多い=悪い」というこではありません。他の指標と組み合わせて評価することが重要です。

以前は効果的だったクリエイティブが不調になってきたらまず、フリークエンシーの高まりとクリック率の低下やインプレッション単価の上昇と相関がないかチェックしてみるのがおすすめです。該当する場合は、クリエイティブが飽きられている可能性が高いでしょう。

まとめ

Facebook広告は、うまく活用できれば認知から購入まで対応できて自動入札の精度も高い優秀な広告媒体でもあります。以前失敗してしまったという方もこの記事の中に思い当たるものがあれば再開を検討してみてください。

この記事では主にFacebook広告アカウントの運用について基本的な考え方を解説しましたが、広告アカウントの細かな設定の考え方については以下の記事にかなり具体的な設定内容や考え方をまとめています。この記事とあわせてFacebook広告アカウントの設計から運用までの参考になれば幸いです。

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