広告にはテキストや画像、動画などさまざまな表現があり、これらを駆使していかに商品を魅力的に感じてもらうかが重要です。
しかしながらテキストや画像、動画ではなかなか理解をしてもらいづらい商品やサービスもありますよね。たとえば、以下のようなケースです。
- その商品やサービスの必要性に、ユーザーがまだ気づいていない
- 新しいジャンルの商品で何に役立つか想像が難しい
- 実際に試さないと商品やサービスの利用イメージが湧きづらい
このような場合、伝え方を工夫しないと「なんだかよくわからない」「自分には関係ない」と興味を持ってもらいづらく、広告がスルーされてしまう可能性が高まります。
そんなときに検討したい手法のひとつが「漫画広告」です。
今回は、漫画広告のメリット・デメリットから商材による向き不向き、、制作の流れや成果を高めるために意識したいポイントまで詳しく解説します。
目次
漫画広告とは?
SNSやYouTubeで、商品を漫画形式で紹介する広告を見たことがある方も多いのではないでしょうか。本記事での漫画広告は、「商品やサービスの特徴を、イラストやセリフを使って漫画形式で紹介する広告」と定義します。
(※漫画の宣伝で、一部のコマを切り出し「続きを読むならアプリへ」と誘導するような、漫画を読むこと自体が目的の広告は、今回は範囲外です。)
漫画広告は、たとえば静止画バナーやカルーセル、動画、LPなど……オンラインだけでも多数の見せ方があります。一度漫画のデザインデータを作れば、それぞれのコマを繋げて動画にしたりオフラインの紙媒体に転用したり、あらゆるフォーマットに展開できるのが特徴です。
漫画広告のメリット・デメリット
漫画広告のメリットは、以下のようなものが挙げられます。
- イラスト・写真・セリフが合わさって具体的にイメージしやすい
- ストーリーを通じて説明を行えるため共感・納得感を生みやすく記憶に残りやすい
- 飽きずに最後まで見てもらいやすい
- 商品やサービス利用の疑似体験ができる
- ユーザーに受け入れられやすい広告フォーマット(※)
※漫画はSNSでもっとも見たいとされる広告の形態の1つとされています。
参考:最も見たいSNS広告の形態/Top3は「動画」「マンガ」「画像」に【トレンド・プロ調査】
学習ゼミの漫画広告やビジネス書の漫画化など、ストーリーがあることで活字の情報よりも記憶に残っていることはありませんか?
とある実験で、ビジネス書を活字で読んだ人と漫画版で読んだ人それぞれの記憶度に差があるかテストをしたところ、「活字よりも漫画で読む方が記憶に優位な影響を与える」という結果が出ました。
参考:【We Love コミック総研 実証実験レポート】明治大学教授 堀田秀吾氏 監修新生活で活かしたい、マンガが秘めた3大効果
これはストーリーを通じて情報を伝えることで、より深く長く記憶に留めやすくなるためです。
また、下記の漫画に関するアンケート調査によると、「漫画を全く読まない」と答えたのはいずれの年代でも3割程度であり、幅広い年齢層に漫画という手法が受け入れられやすいことがわかりました。
こうのように多くのメリットのある漫画広告ですが、すべての商材に適した手法ではなく向いている商材、逆に向かない商材があります。本当に漫画広告の実施を検討した方が良いのか、商材ごとに見ていきましょう。
漫画広告に向いている商材・向かない商材
漫画広告が向いている商材は幅広く、「ストーリー性が重要な商材」「疑似体験が効果的な商材」などに向いています。
- 化粧品、食品、消耗品
- 使用感や感情・ビジュアルを示すのに効果的
- サービス(ジム、学習、宅食、ITなど)
- サービスのプロセスや利便性、使用した後の良い未来までのストーリーを示すのに効果的
- アプリ
- 使い方や利点をわかりやすくするのに効果的
逆に相性の悪く漫画広告が向かない商材はブランドや製品、サービスのイメージに合わないものになります。
- 高級品を扱うラグジュアリーブランド
- 漫画のカジュアルな雰囲気が上品さ/高級さに合わない場合がある
- 化学的・医学的な製品
- 正確性や詳細なデータが重要な場合、漫画で表現するのが難しい場合がある
ただし、例として挙げた高級ブランドや科学的・医学的な製品でも、「今までのイメージを変えたい」「漫画広告は入口として作り、詳細はランディングページ(LP)で紹介する」などの目的があれば、必ずしも相性が悪いとは言い切れません。
広告主のブランドイメージに漫画という手段が合っているかを考えた上で、実施を検討しましょう。
漫画広告の制作の流れ
漫画広告の制作の流れを、下記2パターンに分けて紹介します。
- 制作会社や漫画家に依頼して漫画広告を作る場合
- フリー素材などを活用して自分で漫画広告を作る場合
制作会社や漫画家に依頼して漫画広告を作る場合
STEP1:漫画広告の目的を設定する
「今までになかった新しい商材がどんなものかを紹介する」、「申し込む人数を増やす」など漫画広告を作る目的を設定しましょう。目的を決めておくと、漫画の流れや登場人物のコンセプトの決定がしやすくなります。
STEP2:テキストのみで漫画の流れ・登場人物のコンセプトを決める
構成を自社で考える場合は、まずテキストのみで漫画の流れ(シナリオ)を考えておくと、スムーズです。
言わせたいセリフや確実に入れたい要素(写真や説明)、登場人物のコンセプトを決めます。このときターゲットが自分事化しやすく感情移入しやすい人物像や流れを意識するのがポイントです。
一通り制作したらセリフや流れに問題・違和感がないか確認しましょう。商材を説明しようとなると説明口調になる傾向があるので、不自然な会話になってないか声に出して確認すると、違和感に気づきやすいです。
制作会社やSNSで活動している漫画家に構成からお願いする場合は、「必ず入れてほしい要素」や「守ってほしいレギュレーション」を伝えるにとどめるのが良いでしょう
STEP3:依頼したい制作会社や漫画家を探す
上記で決めたコンセプトに合う雰囲気の漫画を描いてくれる制作会社・漫画家を探します。
探し方は主に以下のような方法があります。
- 検索エンジンで「漫画広告 制作会社」と検索する
- イラストレーター検索サイトで探す
- SNSで気になったイラストレーターさんに直接声をかける
- フリーランスが集まるサイトでクラウドソーシングする
制作会社の場合はとにかく漫画広告の制作実績が多いので、依頼から納品までやりとりがスムーズに進められるでしょう。
一方、SNSで活動している漫画家は、固定のファンが多いため新たな見込み顧客との接点拡大が期待できます。「この漫画家さんとコラボしたい」と強い希望がある場合は、直接声をかける方法をお勧めします。
STEP4:ラフを作成
ラフができたら、この時点でセリフや流れに問題がないか、細かく確認しておきます。
線画・着色してからだと変更に時間がかかるため、ラフ時点で流れを確定させて、これ以降の修正がなるべく発生しないようにすると進行がスムーズです。
「伝えたい内容が目立っているか」「内容がわかりやすいか」「意図した形でターゲットに伝わるか」を確認しましょう。
STEP5:完成
フリー素材などを活用して自分で漫画広告を作る場合
イラストレーターさんを探す余裕がない、納期が迫っており今すぐ自分で作成したいという場合は、以下のような手順で進めることも可能です。
- STEP1:漫画広告の目的を設定する
- STEP2:テキストベースで漫画の流れ・コンセプトを決める
- STEP3:自分で必要な素材を組み合わせ、漫画を作成する
STEP2までは「制作会社や漫画家に依頼して漫画広告を作る場合」と同じ流れです。
自分で漫画広告を作るやり方として、下記の3パターンを紹介します。
- イラスト素材とフキダシ素材を組み合わせる
- 漫画テンプレートを提供しているサービスを活用する
- 二次利用OKな既存の漫画のコマを活用する
イラスト素材とフキダシ素材を組み合わせる
※いらすとやでは素材を21点以上使った商用デザインは料金がかかるのでご注意ください
自分でフリー素材をダウンロードして、組み合わせて漫画にする方法です。とにかく制作費がかからないようにしたいという場合におすすめです。
フキダシや集中線など、漫画に使える素材があつまったサイトはいくつかありますが、利用規約がサイトごとに異なっているので必ず確認してから使用しましょう。
漫画テンプレートを提供しているサービスを活用する
「自分で素材を組み合わせて作るのは大変……」という場合は、セリフを打ち込むだけの漫画テンプレートを提供しているサービスを活用するのも一手です。
絵柄もさまざまなものがあり、フリー素材を組み合わせるよりも自然な流れの漫画になるでしょう。
二次利用OKな既存の漫画のコマを活用する
上記の「ブラックジャックによろしく」の他、「ドラゴン桜」や「インベスターZ」など二次利用を許可している有名な漫画のコマに、セリフを当てはめる方法です。
既存漫画のファンが絵柄を見て広告に反応してくれる可能性も高いので、ターゲットユーザーや商材とのシナジーが高い場合は検討すると良いでしょう。
下記は商用OKの既存漫画ですが、有料の場合もあるので規約を必ずチェックしてください。
三田紀房氏によるイラスト・マンガ制作|インベスターZやドラゴン桜など
成果を高めるために制作時に意識したいポイント
ふだん私たちが読んでいる漫画は、スムーズに読めるようにさまざまな工夫がなされています。せっかく漫画広告を作っても、読む順番がわかりづらかったり、セリフが長すぎて読む気が起きない……とターゲットに思わせてしまっては意味がありませんよね。
成果を高めるために、漫画広告の制作時に意識しておきたいポイントを紹介します。
最初の1コマ目で興味を引き付ける要素を入れる
内容を読むか読まないかは3秒以内に判断されます。ユーザーにとって「自分の身近で起こりそうな内容」のセリフや状況で興味を引いたり、キャラクターの表情などで工夫をすると良いでしょう。
視線誘導を意識する
コマ割りを行う場合は、キャラの視線、吹き出しの位置を組み合わせて自然な流れを作りましょう。テキストは上から下・右から左に読む流れを、コマは一般的に横の間隔が狭く縦の感覚が広いことが多いです。読む順番が混乱しないようなページ作りを意識しましょう。
▼読み方に迷う例
▼読み方に迷いにくい例
カルーセル形式にして、1コマずつスワイプして表示できるようにするのも良いでしょう。
吹き出しのセリフは1行あたり6~10文字、最大3行以内に収める
通常の広告見出しを考えるときと同様のイメージです。どうしても長くなりそうな場合は吹き出しを分割する、イラストや写真を組み合わせる、などの方法で説明が短くなるような見せ方を工夫しましょう
フォントでメリハリを付ける
声の印象を思い浮かべながらフォントを選びましょう。基本的なセリフは下記のような漫画向けのフォントがオススメです。漫画で基本的に使用されているフォントは、ひらがなは明朝体・漢字カタカナはゴシック体になってるモノが多いです。
▼例(下記では「え?」「お腹すいてたんだな」で源暎アンチックを使用)
漫画の活用で広告クリエイティブの幅を広げよう
漫画広告は制作するハードルこそ高いものの、テキスト広告と比べ、複雑な内容や新しい概念も視覚的に表現することで、分かりやすく伝えられます。
漫画広告で効果が出た場合は、それをつなぎ合わせて動画にすればTikTokやYouTubeといった動画媒体にも展開できます。
商材理解の手助けとなり、ユーザーの印象に残る手段としてぜひ取り入れてみてください。