広告運用とランディングページ制作は切り離せない関係です。しかし広告運用にしか携わっていなければ、求められるスキルセットの違いからランディングページの話題には壁を感じてしまうかもしれません。
たしかに、ページの配色やフォント、レイアウトなど表現に関することはデザイン分野のプロにお任せするべきですし、広告の成果が上がらない原因をランディングページだと早々に決めつけたり、ロジックや解決策を伴わない提案をするべきではありません。
しかし、広告運用者の持つデータやマーケティングの知識は、デザイン制作の専門知識がなかったとしてもランディングページの改善に役立つものです。ランディングページではデザインの見た目を整えるだけでなく、どんなことを、どんな言葉で伝えるのかも成果に大きく影響します。それを追求するのに必要なのはデザインの専門知識よりも、顧客の理解や今より成果を良くするための探究心ではないでしょうか。この記事では、ランディングページ制作の知識や経験がない広告運用者を想定して、ランディングページに関する提案で押さえておきたいポイントを紹介していきます。
※なお本記事ではランディングページを「運用型広告のリンク先として制作された、購入やお問い合わせなどの行動を促すことに特化したページ」として取り扱います。正確にはサイトに訪れたときの最初のページを指しますが、記事のテーマに合わせて簡略化していることをご了承ください。
目次
1.初めてページを見た直後の感覚を大事にする
広告運用を主業務にしている方であれば、ランディングページは既に出来上がったものを指定されるケースが多いと思います。そんな中で、ランディングページを最初に見た時こんなふうに感じた経験はありませんか?
- 見た目は綺麗だけど商品の特徴が分からなかった
- このボタンはクリックできるように見えなかった
- 料金プランが複雑で分かりにくかった
これらは初めてページに訪れたユーザーも感じていると思ったほうが自然です。しかし長く同じページを見ているうちに、どうしても慣れてしまうでしょう。一度理解してしまったことを、分からなかった頃の視点で見るのは想像以上に難しいものです。ページを流し読みして商品の良さが理解できるかや、利用していてストレスを感じないか第三者による客観的なフィードバックを得るためのユーザーテストという手法があるくらいです。
客観的に見られる存在であるために、ページを初めて見たときの感想をメモに残しておくとランディングページ改善の必要が出てきたタイミングで役に立つでしょう。広告運用者自身がページを初めて見るタイミングはページ改善のアイデアを得るまたとないチャンスです。
2.好みではなくビジネスの課題に基づいて提案する
初めてページを見た直後の感覚を大事にすると言っても、「私はこの色が好き」のようにあなた自身の好き嫌いを基準にして考えていませんか?ページの制作や変更には当然ながら工数や制作費が掛かりますし、そのページを使用したテストにも広告費や時間が必要です。せっかく貴重なリソースを支払うのですから、配信データをはじめたとした客観的な事実・傾向に基づいて提案していきたいところです。もちろん、課題解決のための最も良い方法がランディングページの制作・変更であることも重要です。
たとえば以下であれば、ランディングページで解決するべきビジネス課題に基づいた提案といえるでしょう。
3.対応リソースやビジネスへの影響に気を配る
自身の専門外の業務にかかるリソースを正確に見積もるのは難しく、良かれと思って提案したことが想像以上の負担を与えてしまうかもしれません。例えばキーワードや訴求ごとにマッチしたランディングページを制作すればコンバージョン率は上がるかもしれませんが、その制作費を差し引いたうえでもプラスになる提案でなければ意味がありません。
お互いのリソースを有効に使うためにも、時間をかけて提案内容を練り上げる前にそもそも実現が可能であるかは確認しておくと良いでしょう。特にフォームに関しては見た目の変化以上に大掛かりな改修が裏側で必要になったり、カートのASPなど利用しているシステムによっては不可能なこともあるため注意が必要です。
4.流行りの手法は鵜呑みにせず参考に留める
ランディングページについて調べていると、購入ボタンの色やファーストビューに盛り込むべき要素に関する正解のような情報を見かけることもあります。一般論として知っておくことは大事ですが、その手法が自社にとっても有効であるかを考慮せずに提案してしまっては、広告運用者としてランディングページの改修に関わる意味がありません。
たとえばランディングページのフォームでは入力項目数を減らすことで入力のハードルが下がり、コンバージョン率も上がるのが一般的な考えだと思います。しかし、今抱えている課題が商談からの成約率だとしたらどうでしょうか?フォームの入力項目を削って自社のサービスに合わない可能性のあるリードを増やすのではなく、仮に管理画面上のコンバージョン単価が上がってでも顧客獲得単価の改善するためにフォームの項目を増やすべき場面かもしれません。
広告アカウントの構築・運用にもいえることですが、自分たちに向けて発信されているわけではない情報がそのまま自社にとっての最善策とは限りません。一般論はあくまでたたき台として取り扱い「もっと良い方法があるはずだ」の声に向き合い続けましょう。
5.表現に関する指示よりも課題や意図を伝える
デザイナーへの依頼では、そのランディングページで解決したい課題や依頼の背景を伝えると良いでしょう。以下のような、表現に関する指示は避けた方が無難です。
- 商品の写真を中央に
- ゴージャスな雰囲気に
- Appleのようなブランド感を
こういった依頼の出し方では意図を伝えられていないうえ、抽象的すぎて解釈の幅が広すぎたり、具体的すぎて制作の足かせにもなってしまいます。課題の共有ができていないため、依頼した内容を満たしていても求めていたデザインとギャップがある仕上がりになってしまいそうですね。
広告運用者の中にデザイン制作の知識や経験を持つ人が多くないように、デザイナーの方がマーケターの視点を持っているとは限らないので、ビジネスの課題から抽出された制作の目的は共有するべきです。しかしパートナーの役割にまでむやみに介入しないようにしましょう。共通のゴールに向けてお互いの専門領域で力を発揮していける取り組み方が理想です。
広告運用者だからこそできるデザインの提案もある
デザイナーは特別な才能や深い専門知識がないと就けない職種で、素人の自分が口を挟むのは気が引ける……と考えて距離をとってしまう人は広告運用者に限らず多いと感じます。しかし、デザイナーが作るページや広告運用者が配信する広告はお客様のためであってその道の専門家に認めてもらうためのものではありません。
自分自身が一人の消費者として様々なサービスに触れている中で、マーケターとしての視点を常に持っている人もいるでしょう。その積み重ねも立派な知識であり、そこに広告のデータを掛け合わせたうえでの提案には、デザインに活かされるべき価値があります。
また、デザイナーも自分の作ったページがどのような結果を生んでいるかのフィードバックを欲しているかもしれません。冒頭で述べたように広告運用とページ制作は深い関係にあるため、必要以上に距離をとらず一緒により良いものを追求していく関係性が理想だと考えています。