
ユーザーがリードやコンバージョンに至るまでに、広告やメルマガなどさまざまなチャネルと接触することがよくあります。Google Analytics 4(以下、GA4)を用いてチャネルごとに成果をまとめているマーケティング担当者の場合、コンバージョン数の確認はもちろん重要ですが、「単なるコンバージョン数」だけではなく、各チャネルがどのように貢献しているのかをもっと詳しく知りたいと思ったことはないでしょうか?
この問題を解決する1つの方法が、GA4のアトリビューション分析になります。アトリビューション分析をすることで、実際にどの獲得チャネルがコンバージョンに大きく貢献したかや、どのような経路でコンバージョンに至ったかを分析できます。
本記事では、GA4のアトリビューション分析の設定手順から活用方法まで詳しく解説します。

監修:
森野 誠之(運営堂)
運営堂代表。
名古屋を中心に地方のWeb運用を支援する業務に取り組む。豊富な社会・業務経験と、独立系コンサルタントのポジションを活かしてWeb制作や広告にこだわらず、柔軟で客観的な改善提案を行っている。
理系思考&辛口の姿勢とは裏腹に皿洗いを趣味にする二児のパパ。尊敬する人はゴルゴ13。


目次
アトリビューションとは
アトリビューションとは、マーケティングにおける成果を評価する方法の1つで、特定のチャネルやコンバージョンに至るまでの複数の接点が、それぞれどの程度成果に貢献したかをさまざまに目線を変えて割り当てる考え方です。
そして、ユーザーが複数のチャネルと接触する中で、アトリビューションは運用方針を決定する上で重要になっています。
なぜなら、広告の効果は必ずしも直接的なものだけではないためです。広告から直接コンバージョンには至らなかったり、広告をクリックしないものの動画広告を視聴したりした場合も、最終的にコンバージョンに至るのに間接的な効果もあるのではないでしょうか。
このような広告の間接的な効果を評価する視点がないと、ユーザー獲得の機会を逃す可能性さえあると考えられます。
例えば、直接コンバージョンに繋がったチャネルだけに注力して広告配信を行うと、顕在的なユーザーばかりにリーチしてしまいます。その結果、潜在的なユーザーを取りこぼし、最終的にはコンバージョン数の減少を招くリスクが生じるかもしれません。検討度合いの深いユーザーしか獲得できなくなり、結果としてコンバージョン数が減ってしまう恐れがあります。
アトリビューションの詳細について知りたい方は以下のページをご覧ください。
GA4におけるアトリビューション
まず、GA4のアトリビューション分析の説明に入る前に、GA4でどのようにコンバージョンへの貢献度を割り当てているのか見ていきましょう。
コンバージョンが発生した際にGA4において各チャネルの評価を「アトリビューションモデル」の設定によって決めることができ、下記3つのモデルから選択することになっています。
- データドリブン ※デフォルトの設定
- ラストクリック
- Googleの有料チャネル(ラストクリック)
選択したモデルはプロパティ内のすべてのレポートに対して反映されます。
データドリブンアトリビューション
データドリブンアトリビューション(以下、DDA)では、GoogleのAIを活用して各タッチポイント(ユーザーが接触した広告やメディアなど)のコンバージョンへの貢献度を自動的に評価して割り当てます。DDAを利用することで、ラストクリック(CV発生前にユーザーが最後にクリックした広告を評価する考え方)以外の広告の貢献度を定量的に把握できます。
※Google広告に関する記事になりますが、詳細なDDAモデルの情報は以下の記事をご参照ください。(GA4とGoogle広告のDDAの概念は同じです。)
ラストクリック
ラストクリックは、最後にクリックされたチャネルだけにコンバージョンをすべて割り当てるというシンプルなモデルとなります。つまり、最終的な成果に直接影響を与えた最後の接点を重視しています。
Googleの有料チャネル(ラストクリック)
Google広告を利用しているユーザー向けのアトリビューションモデル「Googleの有料チャネル(ラストクリック)」です。このモデルでは、ユーザーがコンバージョンに至る前に最後にクリックしたGoogle広告のチャネルに、コンバージョンをすべて割り当てますので、Google広告内のチャネルの貢献度を評価するための有効なモデルとなります。
一方で、Google広告以外のチャネルのラストクリックでコンバージョンした場合でも、Google広告にコンバージョンが割り当てられるため、仕様を理解し分析に利用することが重要です。
アトリビューション設定の手順
次に、GA4のアトリビューションの基本的な設定手順を紹介します。
設定を変更するにはGA4で「編集者」以上の権限が必要になります。必要な権限がない場合には、一時的に引き上げるなどを管理者に依頼しましょう。
また、広告代理店などの第三者の立場としてGA4のアトリビューション設定にアクセスする場合に注意が必要です。「編集者」以上の権限が付与されているなら、こちらの設定を自由に変更が可能になってしまいます。アトリビューション設定の変更はプロパティ内のすべてのレポートに対して反映されてしまうので、本当に変更して問題ないかを必ず事前に確認した上で行うようにしましょう。
まず、GA4の管理画面にログインし、①「管理」を選択します。
データ表示内の ②「アトリビューション設定」をクリックします。
③「レポート用のアトリビューション モデル」で「データドリブン」「ラストクリック」「Googleの有料チャネル(ラストクリック)」の3つから任意の設定を選択します。
デフォルトでは、「データドリブン」となっており、機械学習に基づいてコンバージョンの貢献度が割り当てられます。
アトリビューションモデルの設定を変更すると、過去のデータにも遡り、コンバージョン(キーイベント)への貢献度の割り当てが変更されます。一方で、ユーザーデータとセッションデータには、アトリビューションモデルを変更しても影響は生じません。
④GA4とGoogle広告のアカウント連携が完了している場合、Google広告と共有しているGA4で設定したキーイベント(コンバージョン)の貢献度を割り当てられるチャネルが選択できます。
- Googleの有料チャネル:コンバージョンに対する貢献度が割り当てられるのは、Google広告のみ
- 有料チャネルとオーガニックチャネル:Google広告にもオーガニックチャネルにもコンバージョンに対する割り当てができる
⑤「クリックスルーキーイベント」の期間を設定します。ここは、コンバージョン発生日から何日前のクリックまで遡ってアトリビューションへの貢献の対象とするかを設定する箇所です。
期間を変更すると、その後のアトリビューションに限り変更が適用され、すべてのレポートに反映されます。
すべての設定が完了したら、「保存」をクリックして設定を終了します。
GA4のアトリビューション分析
次に、具体的な分析方法について説明します。
GA4のアトリビューション分析は、ユーザーがコンバージョンに至るまでの経路や間接効果の詳細を分析できるレポートです。具体的には、以下の2つの分析方法があり、チャネルごとの比較や、どのチャネルの貢献度が高かったかの確認ができます。
- アトリビューション パス:ユーザーがコンバージョンに至るまでにどういう経路を辿ったかを確認できる
- アトリビューション モデル:チャネルごとのコンバージョンに対する貢献度を複数のアトリビューションモデルで比較ができる
アトリビューションパス
「アトリビューションパス」は、ユーザーがコンバージョンに至るまでに経由したチャネルの貢献度や経路を視覚的に確認できるレポートです。アトリビューションパスを利用すれば、ユーザーが最初にどのチャネルから訪れ、その後どの経路を辿ってきて、最終的にコンバージョンに至ったかを分析できます。
左側のメニューから「広告」を選択後、「アトリビューションパス」をクリックします。
右上のプルダウンから、レポートの期間を設定します。
左上のプルダウンから、分析したいコンバージョンイベントを選択します。

特定のユーザーに対する分析をしたい場合は「フィルタを追加」から、任意のフィルタを設定します。
表示されたレポートは、上段と下段にわかれています。
上段では、「早期」「中間」「後期」の3つのタッチポイントごとに、コンバージョンへの貢献度を把握できます。
3つのタッチポイントの定義は以下のようになります。
- 早期:コンバージョン経路上の流入のうち、最初の25%のタッチポイント。経路のタッチポイントが 1 つしかない場合はカウントしない。
- 中間:コンバージョン経路上の流入のうち、中間の50%のタッチポイント。経路のタッチポイントが3つ未満の場合はカウントしない。
- 後期:コンバージョン経路上の流入のうち、最後の25%のタッチポイント。経路のタッチポイントが1つのみの場合は、後期にすべて割り当てられる。
下段では、コンバージョン(キーイベント)までの経路を確認できます。該当経路が多い順に表示され、コンバージョン数やコンバージョンまでの日数などが確認可能です。赤枠で囲った部分に関しては、「デフォルトのチャンネルグループ」以外に「参照元」「メディア」「キャンペーン」を選択できます。
また、パーセンテージが示しているのは、各チャネルが「キーイベントへのタッチポイント数」に占める割合です。チャネルの組み合わせでコンバージョン数が多いかを確認することで、具体的なコンバージョンへの貢献度を分析できます。
アトリビューションモデル
「アトリビューションモデル」では、複数のアトリビューションモデルの成果を比較し、異なる視点からチャネルの貢献度を確認できます。
例えば、「ラストクリック」モデルと「データドリブン」モデルを並べて表示することで、直近のタッチポイントと全体のデータに基づいた貢献度の違いを視覚的に分析可能です。
左側のメニューから「広告」を選択後、「アトリビューションモデル」をクリックします。
「アトリビューション パス」と同様に、上部で「レポートの期間」「分析したいコンバージョンイベント」「フィルタ」を設定します。
「アトリビューションモデル(間接)」の列をプルダウンし、比較したいアトリビューションモデルを選択します。
ここからは、具体的にどのように数値を捉えればいいか少し解説します。
上記は、BtoB企業で「コンバージョンイベント:資料請求完了」に設定した際のラストクリックとデータドリブンのアトリビューションモデルの例です。(説明用に数値の端数など修正・加工)
メインチャネル | 「ラストクリック」 コンバージョン数 | 「データドリブン」 コンバージョン数 | 変化率 |
---|---|---|---|
Paid Search | 300 | 320 | 6.7% |
Paid Search(検索広告)の数値に着目してみると、データドリブンの方がラストクリックよりもコンバージョン数が6.7%高いです。つまり、コンバージョンまでの経路において、最後のタッチポイント以外にも検索広告がユーザーとの接点をある程度作っている媒体だと解釈できます。
もし、今後の戦略を考える中で検索広告で「まだ調べる段階にいるユーザー」などへの配信を強化したい場合、間接効果を過少評価されてしまう可能性がある「ラストクリック」から「データドリブン」に切り替えることを検討しても良いのかもしれません。
まとめ
現在、チャネルが複雑化する運用型広告において、ユーザーがどの経路で商品やサービスを検討し、最終的に購入に至ったのか、各タッチポイントの役割を深く理解する必要があります。
今回ご紹介したGA4のアトリビューション分析を活用することで、コンバージョンに至るまでの経路を視覚的に把握できる他に、複数のアトリビューションモデルの比較もでき、より多面的な視点から広告運用の成果を評価できるようになります。
こうして具体的な改善施策の検討材料も増えるため、GA4のアトリビューション分析は広告キャンペーンの効率の向上につながる強力なツールの一つです。
是非この記事を参考にアトリビューション分析の活用で広告運用の最適化を図りましょう。
