採用は一方通行ではなく、双方向。人事になったいま当時の自分の選考を振り返って思うこと|経営戦略室 人事 坂田 奈穂

――「面接は全然手ごたえがなくて不安だった。かなり体力を使う面接だったけど、それだけ採用を大事にしてるのだと思った。」2年前、内定をお伝えした時に坂田さんがこう言っていたのがすごく印象的だったのですが覚えていますか?

いま聞いて、一気に当時の記憶が蘇ってきました!アナグラムが体力を使う面接だったのは、実績やスキルよりも、考え方や思考回路など、人物そのものを問われる質問が多かったからかなと思います。

中途の転職は特に「何ができるか」「どんな実績があるか」「どう貢献できるのか」が重視されるだろうなと思っていました。でも、アナグラムの面接では「何ができるか」よりは「なぜそう考えたの?」「なぜその行動を取ったの?」という、スキルや実績よりも考え方を常に問われました。

特に一次面接はすごくカジュアルな雰囲気で、人事になった今振り返るとスキルより人物を重視していたんだなとわかるのですが、当時は「これで何が伝わったのだろう?」という不安が少しありましたね(笑)

坂田さんは当時転職活動するうえでなにを大事にしていましたか?

一番の軸は「それまでの経験を活かしつつ、新しいことにチャレンジできる環境」です。前職・前々職と自社プロダクトの営業やマーケティングをやっていたので、新しいことにチャレンジという点で代理店は魅力に感じていました。

経験も活かしつつと思っていたので実績を話す準備は一応していたものの、気持ち的には「スキルや実績より人物を見てほしい」と考えていました。なので「あ、この会社さんはスキルを重視されているな」と感じた面接は波長が合わない感覚もあり、結果的にお見送りのご連絡を頂くことが多かったです。

そう考えると改めて採用って一方通行ではなくて双方向なんだな、と思いますね。

アナグラムが第一志望になったのは選考途中で、面接で話す人の雰囲気や大事にしていることなど聞いていく中でいいなと。ただ実は、もう1社の人事の方から「ぜひ来てほしい」とありがたいことにプッシュ頂いていて……。

そうですよね。坂田さんに内定をお伝えするとき、平静を装いながらも受諾してもらえるかなとドキドキした記憶が(笑)

今考えるとそこもアナグラムっぽいなと思うのですが、「なにが何でも来てほしい!!」というよりは、「こちらの気持ちは伝えたので考えてね」という感じでした(笑)正直熱量で言うともう1社さんの方が強かったです。でも迷いはなかったですね。自分の気持ちに素直になった方が後悔しないだろうなと。

あとは入社前に自分で得られる情報がたくさんあったのは良かったです。特にスタッフ紹介のページに全従業員が載っているのは衝撃的で。役員やマネージャーの方が載っているメンバー紹介のページはよく見ますが、全員が載っているというのは珍しくて全員のページを見ました(笑)

無人島に持っていく本とか、座右の銘とかちょっと変わった項目が載っているので、それだけでもなんとなくどういう雰囲気の人が働いているかというのは掴めましたし、その点入社後のギャップもなかったです。

スタッフ紹介のページは結構見ていただいてて、嬉しいですよね。現場から人事へと異動した今、当時とは逆の立場になって意識していることはありますか?

「双方向」という点は大事にしているので、面接でもできる限り対話をしたいなと思っています。少なくとも私が受ける側だった時の面接は一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションだったので、逆の立場になった今そうでありたいですね。とはいえどうしても面接っぽく堅い雰囲気になってしまうこともありますが……。

堅い雰囲気の面接が必ずしも悪いというわけではないですが、お互いに素を出して本音を話すうえでは、面接の雰囲気作りは大事だなと私も日々感じています。

私がそうだったのですが、決してそこに上下はないはずなのに、人によっては面接官の方ってなんとなく「自分よりも上の立場にいる人」に映ってしまうと思うんです。その印象をできるだけ持ってほしくないなと思っています。特に未経験の方だとそう感じてしまいやすいのかもしれないですが、経験があるから偉いってわけではないですしね。

それでいうと坂田さんも運用型広告はほぼ未経験での入社ですよね。選考の中で「本当に未経験でも大丈夫ですか?」という質問を頂くことも多いのですが、その不安はありませんでしたか?

正直そこに不安はありませんでした。ホームページに未経験が64%って書いてありましたし、みんな初めは未経験ですし(笑)

あと上手くいくかいかないかは自分次第だなという感覚が強かったので、不安というよりはやるしかないと思いましたね。顧客志向というのは色んな所に書かれていて、かつ選考を通して皆さんが話している内容にもブレがない。入社後もそこにズレは感じず言行不一致がない。これは環境のせいにする要素が見当たらないぞ!と。求めていた環境であると同時に、ある意味厳しい環境だとは思いました。

最近は一緒に仕事をすることも多いですが、坂田さんって割と楽観的ですよね!(ほめています)。とはいっても「なぜアナグラムさんは未経験の人を採用しているのですか?」というご質問を頂くことも多いですよね。わりと当たり前にご経験を問わず採用活動を行ってはいるのですが、改めてこの質問に対して坂田さんはなぜだと思いますか?

スキルや知識は、必要な時間の差はあれどほとんどの人は身につけられますよね。一方でこのブログにも書いていますが、時間をかけても変わりにくい、あるいは変えられない特性もあると思います。アナグラムはそこがマッチするかを1番大事に考えているからこそ、ご経験の有無は重視していないんです。たとえ入社時点で不足を感じる部分があったとしても、周囲の助けや経験の機会を得られる環境は引き続き整えていきたい。であればむしろ組織の考え方やカルチャーや雰囲気に合わず、入社後に苦しむとか仕事を楽しめないという状況になってほしくないですよね。

あと根本的なところだと、しっかりと会社の売上や利益が出ていることも、経験を優先せずに採用活動を行える理由の1つだと思います。会社が目の前の短期的な売上を追わないといけない状況だと、理想論ばかり言ってられず「とはいっても教育にリソースは掛けられないから経験者の採用を優先しよう!」となりますよね。そこの土台が固まっているからこそ、入社後の研修もしっかりと用意でき、理想とする採用活動ができるのかなと。

どんな考えや特性を持っている方だと楽しく働けると思いますか?

誰かの役に立ちたいと思ったときに頑張れる方って素敵だなと思いますし、社内を見てもそういう考え方の人のほうが楽しんで仕事に向き合っているなと感じます。あくまでも私たちは主役ではなく、クライアントの引き立て役なんですよね。「自分のため」という気持ちももちろん持っていたいですが、それだけになってしまうと噛み合わないところが出てくるかもしれません。

坂田さんは、入社して大変だったことはありましたか?

それはたくさんありましたよ。私の場合、自分と周りの人を比較してしまって不安になることがありました。しかも入社して間もないのにベテランの人や全くバックグラウンドの異なる人と比較してしまっていて……。今考えると結果落ち込んでしまう比較なら必要ないし、なんでそんな比較をしていたのだろうと思うのですが、はやく一人前になりたいと焦っていたのかなと。

人事への異動を希望したのも、それがきっかけのひとつです。現場に出ていると自分自身を客観的に見ることって難しいんですが、立場や役割が変わるとそこを客観的に見ることもできると思うんです。早く一人前になりたいと焦る気持ちも大事なんですが、それが原因で仕事を楽しめないのは良くないですよね。自分の経験も踏まえて、当時の自分と同じような、本来感じなくてもいいはずの不安を感じてしまう人を減らせたらいいなと。

素敵な考えですね......!同じ現場を経験したうえで人事へと役割が変わったからこそ、サポートできることって多いですよね。最後に、いま人事として仕事をする上で大事にしていることを教えてください。

「嘘をつかないこと」「真実を伝えること」ですかね。

選考で求職者の方とやり取りをする中で、売上ノルマがない、残業が少ない、フルリモート可能、書籍代全額負担、その他福利厚生などともすれば耳障りの良い側面しか伝えられていないのではと思うときもあります。決して嘘ではないんですが、いい側面だけを伝えるのってフェアじゃないですよね。

「なんていい環境なんだ」と魅力を感じていただきたい一方で、それだけで意思決定をして、入社後苦しんでほしくはないんです。楽じゃない部分も含めて「楽しそう!」と思っていただける、その覚悟と広告への愛がある人が続けられる環境だと感じているので。

それをしっかり伝えるのが私の仕事かなと思っています。