
広告配信において、機械学習により自動的にターゲティングを拡大していく手法は積極的に利用を検討するのをおすすめする機能のひとつです。
Yahoo!広告のディスプレイ広告(YDA)でもコンバージョンする可能性の高いユーザーへ広告を配信するよう、自動的にターゲティングが行える「スマートターゲティング」という機能が提供されています。
今回は「スマートターゲティング」の機能や設定方法、一見すると似ている仕組みと思われる「オーディエンスリスト(類似ユーザー)」との違いを解説していきます。
※2023年8月現在、ベータ版として提供されています。仕様の変更も考えられるため、本記事の内容と実際とで仕様が異なる可能性がありますので、あらかじめご了承ください。
2024年2月28日より正式にリリースされました
※2024年夏頃の正式リリースを目指して、機能改善を行っていく予定とのこと。


目次
スマートターゲティングとは?

スマートターゲティングは、コンバージョンに至ったユーザーのデータや設定されている広告の情報などを基に、ターゲティングを自動で最適化する機能です。
スマートターゲティングを利用することで、新しいユーザーへアプローチする際にこれまでのようにターゲティングを追加することなく、コンバージョンの見込みが高いであろうユーザーへ広告配信対象の拡大が期待できます。
スマートターゲティングの使い方
すべてのキャンペーンの目的、入札戦略でスマートターゲティングを利用できます。しかしながらいくつか推奨される利用条件も提示されています。
推奨される利用条件
キャンペーンの目的 | ・コンバージョン ・アプリ訴求 |
---|---|
入札戦略 | ・コンバージョン数の最大化(目標値あり、なしの両方) ・拡張クリック単価 ・コンバージョン価値の最大化(目標値あり、なしの両方)(※) |
配信対象を抽出するために広告配信時のさまざまな情報を参照しているとのことですが、その中で「コンバージョンのデータ」は明示されている情報のひとつです。そのため、コンバージョンやアプリのダウンロードなどのユーザーの広告配信後のアクションに関するデータがあったほうが上手く機能するものと思われます。
また、抽出されたターゲットに的確にアプローチするには、入札価格に柔軟性があったほうがリーチが損なわれずに済むため、入札戦略にもおすすめがあるのではないでしょうか。
また、一定のターゲティング精度を得るためには学習データの量も必要となるため、コンバージョン数はキャンペーン単位で過去7日間で20件以上が推奨されています。
必ずしもこれらをクリアしている必要はありませんが、上手く機能を活用するためには把握しておきたい情報ですね。
※2025年2月の機能改善で「過去7日間のコンバージョン数が20件以上あるキャンペーン配下の広告グループ」の推奨所権が廃止されています。
スマートターゲティングの設定方法
スマートターゲティングの設定は非常にシンプルです。
広告グループ単位で設定可能なため「広告グループ設定」を選択し「編集」ボタンをクリックします。
「ターゲティング」の項目にて「利用する」を選択して保存すれば設定完了です。
なお、2025年2月の機能改善にて、キャンペーン目的「コンバージョン」「アプリ訴求」のキャンペーンで広告グループを新規作成する際、スマートターゲティングがデフォルトで「利用する」に設定されるようになっています。
スマートターゲティングの注意点
設定は非常にかんたんなスマートターゲティングですが、利用にあたってはさまざまな注意点がありますので、あらかじめチェックしておきましょう。
学習期間への配慮が必要
スマートターゲティングは広告グループに設定済みの情報から一定期間の学習を経て、十分なデータが蓄積されたのちターゲティング最適化を開始します。学習中は設定したターゲットへ配信されます。
学習のステータスは確認できないため、最適化が開始されるまでは数日から2週間ほどは待つのがよいでしょう。
設定しているターゲティングによって配信対象が異なる
ターゲティングを自動で最適化する機能ですが、設定しているターゲティングによって配信が拡大される範囲が異なるため注意が必要です。
指定した範囲内が配信対象となるターゲティング設定
以下のターゲティング設定は、指定している範囲内のみが配信対象となります。
- デバイス
- 性別
- 年齢
- 曜日・時間帯
- 地域
- プレイスメント
- コンテンツキーワード
- サイトカテゴリー
たとえば、デバイスをモバイルに限定している場合には、コンバージョンに至る可能性がいくら高くともPCが配信対象になることはありません。
指定した範囲を超えて配信となるターゲティング設定
一方で、次のターゲティング設定については指定している範囲を超えた対象にも広告が配信される可能性があります。
- オーディエンスリスト
- サーチキーワード
オーディエンスリストターゲティングによる除外対象へも広告配信される可能性がある
スマートターゲティングでは、配信対象に指定しているオーディエンスリストの範囲を超えてコンバージョンに至る可能性の高いユーザーへ配信される仕様ですが、「除外」の設定をしている場合も同様の扱いとなります。
つまり、オーディエンスリストターゲティングによる除外対象のユーザーにも、広告が配信される可能性があるため要注意です。
たとえば、購入者へは広告が配信されないように「ウェブサイト訪問ユーザー」のリストを除外設定していたり、「顧客データ」で会員登録済みのユーザーを除外していたりする場合には意図しない広告配信となる可能性があります。
一部のターゲティング単位のレポートへは数値が反映しない
スマートターゲティングの利用中は、オーディエンスカテゴリー、オーディエンスリスト、サーチキーワード単位のレポートには実績が反映しない仕様となっています。
最適化によって増えた広告配信の数値を正確に把握できません。導入前後(最適化が始まったであろう期間を除く)などの数値で確認をするのがよさそうです。
類似ユーザーとの違い
ターゲットとなるユーザーを自動抽出するための機能には「オーディエンスリスト(類似ユーザー)」(以下、類似ユーザー)が用意されています。一見するとスマートオーディエンスと似ている仕組みかと思いますよね。ここでは類似ユーザーとのおもな違いを確認していきましょう。
基となるオーディエンスリストの指定や類似度を細かくコントロールできない
類似ユーザーは、元となるオーディエンスリスト内のユーザーと似た行動履歴を持つユーザーをリスト化できます。そのため「広告主の特定のページを訪問したユーザー」といった具合に、より柔軟に対象となるユーザーをターゲットにすることが可能です。
また、類似ユーザーの拡張範囲を10段階で選択することができるため、類似度の高いユーザーに絞ったり、逆に類似度は低いユーザーまで拡げることも容易です。
一方、スマートターゲティングはあくまで「コンバージョンに至る可能性が高いユーザーへの拡張」が主体の機能ですので、柔軟性は類似ユーザーのほうが高いといえます。
配信対象となるユーザーの抽出により多くの情報が利用される
配信対象となるユーザーの抽出に用いる情報にも違いがあります。
類似ユーザーは基となるオーディエンスリストのユーザーの行動履歴がおもに利用されますが、スマートターゲティングは詳細は非開示ですが、コンバージョンのデータに加え、広告の設定情報も参照されることが明示されています。
利用時の推奨条件が異なる
類似ユーザーは、基となるオーディエンスリストの過去28日間のユーザーサイズが100以上あれば利用できます。
一方、スマートターゲティングは対象となるキャンペーンで過去7日間に20件以上のコンバージョン数があることが推奨されています。
類似ユーザーのほうが比較的、気軽に活用できる手法であることがわかりますね。ただし、スマートターゲティングはコンバージョンの獲得に特化しているため、データの蓄積状況やキャンペーンの目的によって使い分けるのがよいでしょう。
まとめ
ターゲティングを自動化できる「スマートターゲティング」は、効率よく効果的な広告配信の拡大が期待される機能です。
現状は除外設定しているオーディエンスも配信対象になってしまうことや学習ステータスが確認できないことなど、まだ活用しにくさもあるかと思います。
2024年夏頃の正式リリースまでに行われる機能改善でこのあたりもカバーされることを期待したいですね!
