
Yahoo!ディスプレイ広告では、検索履歴データを活用する「サーチキーワードターゲティング」の提供を2025年7月に終了します。今後は「高度なセグメント」へ移行する必要があります。この対応を行わない場合、意図通りの配信が継続できず、広告配信に悪影響が出る可能性があります。
本記事では、「高度なセグメント」の仕組みや利用時のポイント、サーチキーワードターゲティングからの切り替え方法をわかりやすく解説します。
参考:【ディスプレイ広告】サーチキーワードターゲティングの移行と提供終了について


目次
高度なセグメントとは?

「高度なセグメント」は、Yahoo!ディスプレイ広告(運用型)で利用できるオーディエンスリストターゲティングの1つです。これを広告グループに関連付けることで、特定のキーワードに関連するユーザーに広告を配信(または配信除外)できます。
画像引用元:オーディエンスリストとは
高度なセグメントには、「キーワード」と「URL」の種類が用意されています。
キーワード型:広告主が設定したフリーワードをもとに、検索履歴などから関連性の高いユーザーを自動で拡張・リスト化
URL型:指定したウェブページの内容をもとに、類似した関心を持つユーザーを対象にリストを生成
「キーワード」では任意のキーワードの入力が可能です。そして、任意のキーワードを検索したユーザーだけではなく、任意のキーワードと関連性が強い検索行動を行ったユーザーにも、広告を届ける対象を広げている仕組みになっています。
従来の「サーチキーワードターゲティング」との違い
「高度なセグメント(キーワード型)」と「サーチキーワードターゲティング」は、どちらも検索履歴を活用したターゲティング機能ですが、仕組み・操作・制御方法は大きく異なります。
特に重要なのは、「ユーザーをどう選び出すか」の考え方が変わっているという点です。
「高度なセグメント(キーワード)」と「サーチキーワードターゲティング」の主な違いは以下のとおりです。
項目 | 高度なセグメント(キーワード) | サーチキーワードターゲティング |
---|---|---|
キーワードの設定 | 任意のキーワードを自由に入力 | LINEヤフーが用意したキーワードリストから選択 |
キーワードの検索回数・期間の指定 | 検索回数や期間の指定は不可 | 検索回数や期間の指定が可能 |
配信対象 | 入力キーワード+類似行動を取るユーザーまで自動拡張 | 入力したキーワードを検索したユーザーのみに限定 |
レポート出力 | オーディエンス単位でのみ可能。キーワード別の詳細レポートは不可 | どのキーワードが成果につながったか詳細に確認可能 |
たとえば、「スニーカー」というキーワードで広告配信を行いたい場合、従来の「サーチキーワードターゲティング」では、「スニーカー」と検索したユーザーのみに広告が表示されていました。
しかし、「高度なセグメント」では、必ずしも「スニーカー」と検索していなくても、「ランニングシューズ(※)」や「スポーツウェア(※)」など、関連するキーワードで検索したユーザーにも広告を配信されます。これは、Yahoo! JAPANの検索行動データと機械学習を活用し、関連性の高いユーザーを自動的に抽出・拡張する仕組みがあるためです。
※あくまで想定であるため、実際の掲載対象とは異なる可能性があります
このように、機械学習によって関連キーワードやユーザー行動が分析され、より広範囲なターゲットにリーチできるのが「高度なセグメント」の大きな特徴です。結果として、従来よりも多くの潜在的なユーザーとの接点を持てるようになります。
ターゲティングのコントロール性や透明性は下がる
高度なセグメント(キーワード型)は、フリーワードを自由に入力できる一方で、どのユーザーに広告が配信されるかのコントロール性は低くなっています。
従来のサーチキーワードターゲティングでは、「このキーワードを含む検索をしたユーザーだけ」や検索回数・検索期間といった明確な指定が可能でしたが、高度なセグメントでは、入力したキーワードにYahoo!の機械学習が関連性を判断して拡張するため、配信対象の範囲を厳密に絞り込むことはできません。
たとえば、「電動歯ブラシ」というキーワードを入力しても、実際には「オーラルケア」や「歯のホワイトニング」など、広義で関心が近いと判定されたユーザーにまで配信が広がる可能性があります。
その結果として、意図しないユーザー層への配信が発生したり、CVRのばらつきが大きくなるケースもあるため、過去の設定感覚のまま移行してしまうと、配信効率が悪化するリスクがあります。
また、キーワードごとの効果を個別に分析することもできません。レポートはオーディエンスリスト単位でのみ出力されるため、どのキーワードが成果に結びついたかを直接確認することはできなくなっています。
このように、「高度なセグメント」はこれまでよりも柔軟かつ広範囲なターゲティングが可能である一方、詳細な設定や分析には制限があるという特性を持っています。そのため、目的や運用スタイルに応じて、この新しいターゲティング手法をどのように活用するかを見極めることが重要です。
高度なセグメント(キーワード)の設定方法
高度なセグメントを広告管理画面から設定する方法を説明していきます。
入力できるキーワード数や1キーワードあたりの文字数など、まずは基本仕様を押さえた上で、移行や設定を進めていきましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
入力できるキーワード数 | 最大50件 |
1キーワードあたりの文字数 | 最大25文字 |
区切り方 | 単語ごとに1行入力(スペースやカンマ区切り不可) |
配信に必要なオーディエンスリストのユーザーサイズ(ユーザー数) | 1,000以上 |
①広告管理ツール右上にある「ツール」をクリックして、「ライブラリー」から「オーディエンスリスト」を選択します。

②「オーディエンスリストを作成」をクリックし、オーディエンスリスト一覧から「高度なセグメント」を選択します。
③「オーディエンスリスト名」「キーワード」を入力し、「キーワードを追加」をクリックするとキーワードがリストに追加されます。
なお、登録するキーワードは審査対象となり、Yahoo!広告の広告データ利用基準に抵触するものは使用できません。
【使用できない可能性があるキーワード】
- 病名、宗教、マイノリティに関するキーワード
例)「糖尿病 治療」「LGBT」等
違反すると配信が制限されるため、審査基準を事前に確認しましょう。
④画面下の「作成」をクリックすると高度なセグメントが作成されます。
⑤広告グループのターゲティングからオーディエンスリストターゲティングに紐づけを切り替え、作成した高度なセグメントのリストについて「配信」のステータスをONします。右側の確認画面に設定したオーディエンスリスト名が表示されているか合わせて確認しましょう。
広告グループ内で複数のオーディエンスリストを設定すると「OR」の関係で適用されるため、「AND」指定はできません。
サーチキーワードターゲティングからの移行手順
現在の「サーチキーワードターゲティング」は、2025年7月に完全終了予定です。移行しない場合、自動的に高度なセグメントへリストへ移行される仕組みになっています。自動移行によって意図しない配信が行われる可能性があるため、現状サーチキーワードターゲティングを利用している場合は 自動移行を待たずに自ら移行するのがおすすめです。
高度なセグメントへの移行手順
①広告管理ツール右上にある「ツール」をクリックして、「ライブラリー」から「サーチキーワードリスト」を選択します。
②サーチキーワードリスト一覧から、移行するリストの「移行用リスト作成状況」欄のアイコンをクリックします。
複数のサーチキーワードリストをまとめて移行する場合は、移行するリストすべてにチェックを入れてからアイコンをクリックしてください。
③表示されるアラートから「移行用オーディエンスリスト(高度なセグメント)の作成」をクリックします。
移行元のサーチキーワードリストのキーワード数が50件を超えている場合、システムが最適なキーワードを選択して登録します。
④確認画面が表示されるので、確認のうえ「作成」ボタンを押します。「移行用リスト作成状況」欄の表示が「作成中」になり、リストの作成が開始されます。
移行機能で作成できるリスト数の上限は、他のオーディエンスリストとの合計で400件です。移行後のリストが400件を超える場合は、事前に不要なリストを削除してください。
⑤広告グループのターゲティングをサーチキーワードターゲティングからオーディエンスリストターゲティングに紐づけを切り替え、作成した高度なセグメントのリストについて「配信」のステータスをONします。
1つの広告グループにサーチキーワードリストと「高度なセグメント」を同時にターゲティング設定することはできません。
高度なセグメント設定時のポイント
高度なセグメントはとても便利な機能ですが、適切に活用しないと意図しない配信や無駄な広告費の発生、広告効果の確認がしづらい設計につながる可能性があります。ここでは、設定時のポイントをお伝えします。
① ターゲティング意図ごとにキーワードリストを作成する
一つのリストには、同じターゲティング意図を持つキーワードをまとめて設定しましょう。
異なる訴求軸を混在させると、どの層に対する配信かが曖昧になり、機械学習による拡張方向もブレやすくなります。
ここでは、プロテインを目的別に配信するケースを例にみていきます。
ダイエットを目的とするユーザーと、筋トレを目的とするユーザーとでは、商品やサービスに求める内容が異なります。同じ「プロテイン」に関心があるユーザーであっても、求める情報や効果的な訴求軸はまったく別物です。
NG例ではターゲットが混在するため、ユーザーに応じた広告訴求がしづらくなるでしょう。また、ターゲティングの拡張もどちらの文脈に広がっているのか想定しづらくなります。
一方、OK例ではユーザーの目的に応じて明確にリストを分けられているため、広告での訴求も分けやすく、ターゲティングの拡張の方向性も分かりやすくなることが予想されます。
また、広告管理画面のレポート機能から確認できるオーディエンスリスト単位での成果も、OK例のほうがどのターゲットがより効果的だったかが確認しやすく、広告効果をもとにPDCAを回しやすくなりますよね。
②配信ボリュームを意識してキーワードを選ぶ
設定したキーワードの検索ボリュームが少ないと、ユーザーサイズが不足し、そもそも配信されないという事態が起こり得ます。
特に、オーディエンスリストのユーザー数が1,000件未満の場合、「ユーザーなし」と表示されて広告配信が行われません。ユーザー数が1,000件未満の場合、次のようにユーザー数を増やせるように調整しましょう。
- より一般的で検索数の多いキーワードを追加する
- 類語や関連するキーワードを追加する
ただし、キーワードがあまりに広すぎると拡張されすぎて関係の薄いユーザーまで配信される可能性があります。
たとえば、中小規模の居抜き物件を扱う不動産屋では、「オフィス」を追加するのではなく、「居抜き オフィス」「オフィス 移転」「オフィス ◯平米」など、なるべく検索意図が明確で具体的なキーワードを選ぶのがいいでしょう。
なお、オーディエンスリストの設定画面で推定ユーザーサイズを確認できます。オーディエンスサイズを確認しながら適切なボリュームで配信できるよう調整しましょう。実際に配信されてからも配信が安定するまではこまめに配信量の確認を行うことをお勧めします。
「作って終わり」にしない。高度なセグメントリスト精度は定期的な見直しで変わる
高度なセグメントを使いこなすことで、ターゲティングを機械学習の力も借りながら拡充し、人の手の届かないところまでより多面的にアプローチできるようになります。
ただし、精度の高い配信を実現するには、拡張の仕組みを理解したうえで、適切なキーワード設計と定期的な見直しが欠かせません。
拡張の方向性は設定したキーワードによって大きく左右されます。意図に合った語句を選ぶことで、Yahoo!側の学習が正しい方向に進み、 成果につながるユーザー層にリーチしやすくなります。
さらに、リストに対して適切な広告クリエイティブを組み合わせることで、ターゲティングの精度だけでなく、訴求力も高まり、広告効果全体を大きく伸ばすことが期待できます。
「作ったら終わり」ではなく、定期的にリストの内容や成果をチェックしながら、仮説・検証・改善のサイクルを回すことで、新たなターゲットへの広告配信の可能性を広げていきましょう。
