
ダイナミック広告運用において、避けては通れないのが「タグ実装」です。しかし、エンジニア経験のない方にとって複雑でつまずきやすい部分でもあり、苦手意識を持たれている方も少なくないのではないでしょうか。
ダイナミック広告はユーザーの興味や行動履歴に基づいて、リアルタイムで最適な広告を自動的に出し分けることができることや、商品の在庫状況や価格変更に合わせて、広告の内容を常に最新の状態に保つことができることが利点です。しかし、その利点もタグ実装に不備があると、適切なひとに適切な広告配信が行われず、広告の成果にも繋がりにくくなります。
つまりフィードの内容だけでなく、タグの実装は広告の成果を左右する非常に重要なポイントです。
この記事では、ダイナミック広告の仕組みとタグの役割を理解し、正しいタグの設定を行うための準備から実装までを丁寧に解説していきます。
ダイナミック広告とは?という方は、まずは以下の記事をご覧ください。
目次
なぜタグが大事なのか?
ダイナミック広告の成果を左右する要素は、「タグの実装」「データフィードの運用」「広告管理画面上の設定」の3つに分けることができます。
ダイナミック広告において、タグの担う役割は大きく2つに分類されます。
- 閲覧履歴などのユーザーの行動データの収集
- 商品データフィードとサイトでのユーザー行動(閲覧した商品など)との紐付け
これらの情報を広告配信媒体が学習し、購入意欲の高いユーザーや興味関心に沿った商品のレコメンドや広告の生成を行っています。
そのため、タグの実装が適切でないと、ユーザーのサイト上での行動やアクションを正確に把握できないため、効果的な広告配信が難しくなってしまいます。
ダイナミック広告のタグ実装準備
タグの仕組みと重要性を理解したら、実際にタグ実装の準備を進めていきましょう。
ダイナミック広告タグ実装に伴い、事前に確認しておく実装準備を3つのステップで説明していきます。
- ページごとのイベントとパラメータの値を確認
- データレイヤーのデータを確認する
- 計測タグをカスタマイズをする
※タグ実装にてイベントやパラメータの情報を各広告媒体に送る方法は、サーバーサイドのロジックやJavaScriptで直接必要なデータをタグに含めてイベントを送信する方法など複数あります。
ここでは、ECなど多品目の商品を扱う場合や、さまざまな広告媒体のタグに同じ情報を送る上で、個別の媒体タグごとにカスタマイズをする必要がなく便利という理由から、データレイヤーを利用する方法で説明します。
1.ページごとのイベントとパラメータの値を確認
ダイナミック広告のタグは、「ベースタグ」と「イベント」、「パラメータ」で構成されています。
「ベースタグ」は、すべてのページに共通して設置されるタグで、ページの基本的な情報やユーザーの行動を広告プラットフォームに送信します。
「イベント」とは、ユーザーがサイト上で商品の検索やカート追加や購入などの特定のアクションを行ったときにその情報を広告プラットフォームに送信するために使用されます。
広告媒体によって違いはありますが、主要なイベントとしては以下が挙げられます。
- ページビュー
- コンテンツ閲覧(商品ページ)
- カート追加
- チェックアウト開始
- 購入
また、「パラメーター」は、各イベントに関連する追加情報を提供するために使われるものです。
おおよそ次のようなパラメータが用意されています。
- 購入に関連するデータ(transaction_id, value, currency, items など)
- 商品に関するデータ(product_id, content_name, product_price など)
- ユーザー行動に関するデータ(page_view, add_to_cart, search_string など)
イベントとパラメーターは配信する広告媒体によって値が変動します。そのため、配信する広告媒体のヘルプページからイベントとパラメータを事前に確認しておきましょう。
以下の記事ではMeta広告のイベントとパラメータの種類についてまとめています。
なお、広告媒体との連携機能が用意されている、shopifyなどのeコマースプラットフォーム、カートASPでは、ダイナミック広告で利用される主要なイベントやパラメータの値はタグのカスタマイズを行わずとも自動的にトラッキングが可能です。
使用にあたっては各広告プラットフォームの公式情報をあらかじめご確認いただくのをおすすめします。
参考:
Google広告|動的リマーケティングのイベントとパラメータ
Yahoo! 広告|動的ディスプレイ広告のサイトリターゲティングタグ設定
Criteo広告|すべてのCriteo Tagイベントとパラメータ
LINE広告|標準イベントを利用する
Meta広告|Metaピクセル標準イベントの仕様
2.データレイヤーのデータを確認する
「データレイヤー」とは、Webサイトの情報を収集して貯めておき、Googleタグマネージャー(以下GTM)やGA4などの解析ツールへ受け渡すための箱のようなものです。
ユーザーがWebページを閲覧した際に、そのページ上のさまざまなイベントやデータ(例:商品ID、購入金額、ユーザーの行動など)を記録し、これをGoogleタグマネージャー(GTM)などのタグ管理ツールが取得できるようにします。
データレイヤーから受け取った情報を各広告媒体のタグを経由して広告プラットフォームへ送信することで、ダイナミック広告の配信に活用できます。
データレイヤーはダイナミック広告の配信において根幹をなします。データレイヤーに出力されたデータが正しくないと、ダイナミック広告の強みも十分に発揮できません。
GTMにおけるデータレイヤーについては以下の記事もあわせてご覧ください。
また、データレイヤーに値が出力されていない場合は、データレイヤーへのデータの出力するためにサイトの改修が必要な場合があります。サイトの管理者または、開発チームへ相談するところから始めましょう。
3.計測タグをカスタマイズをする
広告配信媒体から提供されている標準タグでは、Webサイトの構造によっては、商品データを適切に読み取れない場合があります。
また、購入やリード獲得などの標準イベント以外に、独自に設定したイベントをトラッキングしたい場合も同様に、広告配信媒体から発行したタグをJavaScriptのカスタマイズによって、各サイトの環境に合わせてタグをカスタマイズする必要があります。
一方で、Shopifyなどの広告媒体媒体と連携が可能なカートシステムを利用している場合や、GTMのテンプレートを活用したタグ実装が可能な場合はコードのカスタマイズは不要です。
ここでは、Meta広告でのダイナミック広告の実装を例にして、コードのカスタマイズについて解説します。
まず、Metaピクセルのベースコードを用意します。
新規でMetaピクセルを実装する場合は、カスタマイズは不要です。ダウンロードしたベースコードを使用してください。
一方で、すでに複数のMetaピクセルがサイトに設置されている場合は、「track」の記述のままだと別のMetaピクセルに重複計測されてしまうリスクが高まります。
そのため、「tracksingle」への書き換えを推奨します。
ベースコードが準備できたら、次にベースコートとは別に標準イベントを用意します。標準イベントとは特定のページに来訪したり、閲覧した商品情報や価格の情報を取得することができます。
ここでは、商品詳細ページの「ページ閲覧」(View Content)を例にコードのカスタマイズを解説していきます。
動的な値をカスタマイズする場合は、標準イベントでのカスタマイズに加えてダイナミック広告に必要な情報を取得できるようにカスタマイズします。
タグの実装方法
タグの実装準備が完了したら、実際にタグ実装を進めていきましょう。
タグの実装方法でよく利用するのは「利用しているカートシステムと広告配信媒体を自動連携する方法」と「Googleタグマネージャー(以降、GTM)を利用する方法」の大きく2パターンがあります。
手軽で簡単な方法は、カートシステムと広告配信媒体を直接連携する方法です。Shopifyのカートシステムを利用していれば様々な広告配信媒体と直接連携が可能なので、最小限の手間でタグ実装ができます。
一方で、Shopifyなどのカートシステムは直接連携できる広告媒体が限定されているため、GTMを利用してタグ実装を行う必要があります。ここからは「GTMを利用したタグ実装」について説明します。
ダイナミック広告のタグ実装において、つまずきやすい点が商品IDや価格など動的に変化する変数の設定です。ここでは、商品詳細ページでダイナミック広告のタグ実装の設定方法をMeta広告を例にして解説します。
最初にベースタグを設定します。
次に、商品詳細ページ閲覧の標準イベントを設定します。
商品IDと価格の動的な値を取得するために、「商品ID」「価格」の部分を波括弧2つで括り変数を割り当てます。この変数はサイトにより異なり、GTMの変数設定の画面で設定者が設定した数値が入るため事前に確認しておきましょう。
タグの挙動確認
タグの実装が完了したら、本番への反映を行う前にタグが正常に動作するかを確認しましょう。
GTMのプレビュー機能でもタグが正常に動作しているかの確認は可能ですが、サイトの本番環境でタグが動作していなかったという事象が起こる可能性もゼロではないため注意が必要です。そんな時は、GTMのプレビュー機能と合わせて、デベロッパーツールからも同様にタグの発火確認をすることをおすすめします。
タグの動作状況の確認方法については、下記の記事で詳しく紹介されているので合わせて参照ください。
最初の一歩を踏み出して、効果的な広告配信を
ダイナミック広告のタグ実装は、広告媒体によってダイナミック広告の運用方法が異なると思われがちなだけではなく、手順が複雑で面倒に感じる方も多いでしょう。
しかし、実はタグ実装の基本的な流れはほぼ同じということだけではなく、最初の配信準備さえ成功すれば、他の媒体にも応用しやすくなることがこのブログを通じて伝わったら嬉しいです。
タグの実装方法で悩んだ際はこの記事に立ち返ってぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。
