
「人に頼るのは、なんだか申し訳ない気がしてしまう」
そんなふうに感じて、一人で仕事を抱え込んでしまった経験はありませんか?私も以前は「他の人の時間を奪うのは良くない」と考え、何でも自分で抱え込むタイプでした。けれど今では、迷わず相談し、チームで壁打ちするのが当たり前になっています。

ちょうど先日の半期振り返りで「変なプライドを持たず、周りに相談して成果を出す姿勢がすごい」と言ってもらえました。照れくささもありましたが、“周りの力を借りて成果を伸ばしてきたんだ”と改めて気づいた瞬間でした。
今回はとくに個人プレーになりやすい広告運用者に向けて、具体的な頼り方を紹介します。


目次
なぜ広告運用は孤独になりやすいのか
広告運用の仕事は、一見チームで進めているように見えて、実際には一人で判断を下す場面が多い仕事です。
入札調整やクリエイティブの切り替えなど、日々の細かな判断は担当者の手に委ねられています。成果がすべて数字で見えてしまう仕事だからこそ、「この結果は自分の判断のせいだ」と感じやすいのも広告運用の特徴です。
そうしているうちに、「誰かに相談するより、まず自分でやりきらなければ」と思い込み、気づけば孤独に戦っている状況に陥りやすいのです。
人に頼ること=成果を最大化するための手段
私が人に頼る価値に気づいたのは、アナグラムの社内勉強会「グロースハック(※)」がきっかけでした。
※グロースハック=1つの広告アカウントを複数人で1時間ほど徹底分析して、打ち手をプレゼンし合う社内活動。ゆるいブレストではなく、鋭い指摘が飛び交う本気の場です。
私も担当案件を分析してもらったことがあります。正直、それまで「毎日クライアントのことを考え、思いつく施策はすべて実装してきた」という自信がありました。ところが実際には、背景が違うメンバーだからこそ気づく視点で、自分では思いつかない施策案が次々と出てきたのです。
そのフィードバックを素直に実装してみると、成果が劇的に改善しました。そのとき「自分1人で2倍の成果を出すより、周りの知見を借りて10倍の成果を出す方がクライアントのためになる」と思うようになったのです。
案件を長く見続けて思考が固まりかけたときでも、チームの力を借りれば成果をさらに伸ばせる。そうした経験を重ねるうちに、「人に頼ること=成果を最大化するための手段」だと実感しました。
周りに頼る具体的な4つの場面
「人に頼る」といっても、やみくもに相談すれば良いわけではありません。頼ることで効果を発揮する場面と、私自身がどのように周りを頼ったか具体例を4つご紹介します。
①判断に迷ったとき
「複数の選択肢があり、どれを優先すべきか決められない」
「新しい挑戦をするにあたって、視野が狭くなっていないか不安」
こんな風に判断に迷ったとき、自分とは違う視点が大きな助けになります。
とくに広告運用の現場では、目先の目標達成に意識が向きすぎて、「細かな設定変更」や「クリエイティブの追加」といった今すぐできる短期的な手段に偏ってしまうことも少なくありません。
でも、たとえばデザイナーの視点からサイト全体の構造を見直したり、営業の視点でリード獲得後のアプローチを変更したりすることで、中長期的に大きく成果を伸ばせることがあります。
<具体例:自分以外の広告運用者やデザイナーから意見をもらう>
私の場合、たとえば「広告の成果が悪化しているとき」や、「新たな媒体にチャレンジしたいが、どこから手をつけるべきか迷うとき」などは、積極的に周りの運用者・デザイナーに相談しています。
広告予算や過去施策、ターゲットなどを共有しながら、 「そもそも何が課題なのか?」「本当に改善すべきはどこか?」を多角的に議論します。
その中では、管理画面の設定見直しのようにすぐ実行できる施策もあれば、サイトの構造を改修する、セールスフローを見直すといった中長期的な取り組み案も出てきます。
どちらか一方ではなく、短期施策と中長期施策を組み合わせて実行できたとき、成果が大きく伸びることを何度も実感してきました。
②ユーザー理解が足りないと感じたとき
広告の成果を伸ばすうえで、ユーザーの解像度をどこまで上げられるかは大きなポイントです。公式サイトの情報や広告管理画面の数字だけでは、「ユーザーはなぜその行動をしたのか、具体的にどんなシーンで困っているのか?」までは把握しきれません。
そこで有効なのがターゲットや既存顧客に行う「N1インタビュー」です。数字やデータではつかみきれないリアルな声を聞くことで、顧客像の解像度が上がります。
課題や不満、利用シーンまで具体的にヒアリングすることで、施策やクリエイティブにそのまま反映できるのです。
<具体例:社内でN1インタビューを実施>
法務担当者向けの業務改善プロダクトの広告運用を担当したときは、社内の法務担当者や、グループ会社の法務担当者にインタビューをお願いしました。質問内容は以下のようなものです。
- 契約書確認をする際、大変なことや解決したい課題はありますか?
- その課題は、どんなシーンや状況で特に強く感じましたか?
- 課題解決のために、これまで試してきたことはありますか?
- 実際にLPを見て導入したいと思いましたか?それはなぜでしょうか?
インタビューでは、次のようなリアルな声を聞くことができました。
- 一人法務として働くうえで「自分だけで本当にミスがないか」という精神的な不安が常にある。また過去の契約書と整合性が取れているか見返すのに時間がかかる
- 弁護士に外注する安心感はあるものの、お戻しまでのスピードが落ちるのが現場では負担になる
これらは、管理画面を見ているだけでは気づきにくいポイントです。実際の現場でどんな不安をかかえているのかを理解できたことで、「安心感」「スピード感」「コスト効率」といった訴求軸をより強調する必要があると再確認できました。
③原因が分からず立ち止まったとき
「タグがうまく発火しない」「広告が突然配信されなくなった」など、自分なりに試行錯誤しても原因が特定できないことがあります。
そんなときは1人で抱え込んで悩み続けるよりも、その分野に詳しい人に相談し、状況を一緒に整理してもらうことが、突破口になると感じています。
もしも特定の人が思い浮かばない場合は、社内チャットやSNSで詳しい人がいないか広く呼び掛けると、「実は私も似たような経験があるんだけど」と申し出てくれる人がいるかもしれません。
<具体例:社内のチャットツールで質問する>
アナグラムには 「ヘルプセンター」 というSlackチャンネルがあります。社内の誰もが自由に質問できる“全社のヘルプデスク”のような場所です。
投稿から数分以内に、その分野に詳しいメンバーが具体的な回答を返してくれます。

もちろん「質問するのは恥ずかしい」と感じる人もいるかもしれません。ですが大切なのは 「お客さまの成果を最大化すること」です。
そう考えるようになってから、私自身迷わず周りに質問できるようになりました。
④リソースやスキルが足りないとき
広告運用の現場では、自分だけで解決できない課題に直面することも少なくありません。
手が回らない領域や専門性の高い分野は、思い切って他の部署のメンバーや外部パートナーに頼ることで、スピードも精度も上がります。
<具体例:広告以外の部分を外部パートナーに依頼>
BtoBの案件では、インサイドセールスの人員不足やマーケ部門との連携不足が典型的な課題です。そんなときは広告改善にとどまらず、インサイドセールスの支援・派遣を専門とするパートナー企業に協力していただき、包括的にご支援することもあります。
また、BtoCの案件で、商品ページのUI改善やカート離脱対策、クリエイティブ制作のリソース不足などの課題があるときは、外部の制作会社やツールベンダーに協力いただくことで、成果を伸ばしたこともありました。
このように、成果が伸び悩む原因は、必ずしも「広告運用」の中だけにあるとは限りません。だからこそ課題をきちんと見極め、必要に応じて外部パートナーと手を組みながら解決していくことが大切です。
「自社が得意な領域だけにとらわれず、どうすればビジネス全体に貢献できるか」と考える視点が、成果を大きく左右します。
頼ることで、1人の限界を超えていく
頼ることは、個人の限界を超えて成果を広げるための重要な戦略です。
ただし「頼る=ただお願いすること」という話ではありません。大前提として、日頃からの信頼関係があってこそ機能するものです。
社内メンバーに相談をするときは、背景や前提を丁寧に共有し、不明点を解消したうえで考えやすい環境を整えるようにしています。いただいたアウトプットには感謝を伝え、結果をフィードバックすることも重要です。
同じことは社外パートナーにも言えます。まずは目の前の成果をしっかり出すことが前提です。そのうえで「この情報を渡せばさらに成果を出してくれそう」「信頼できるから任せよう」と思っていただけるような存在であることが重要です。
一人でできることには限界がありますが、周囲と頼り合うことで視点も広がり、成果も大きく伸ばすことができます。
今回は具体的な頼り方・頼られ方の取り組みを紹介しましたが、そもそも「人を頼る」こと自体に抵抗感がある方は、こちらの記事もぜひ読んでみてくださいね。
