新しい商品に興味を持ってもらうきっかけは、偶然の出会いであることが多いのではないでしょうか。このような予期せぬ発見は、「セレンディピティ」や「ハッピーアクシデント」という言葉で表現されることがあり、従来はデパートや商店街を散策しているときなど、おもにオフラインで起こるものでした。
しかし、コロナ禍で自宅の巣ごもり状態が続いている中、こうした発見はますます少なくなっており、多くのブランドにとって課題となっていると思われます。そのため、デジタル空間に存在する「セレンディピティ」の場所について考えることが商品の宣伝においても大きな意義があると言えます。
「ウィンドウショッピング」はECに代替される兆し
これに関してCNBCのとある記事がヒントを提供しているかもしれません。当記事によると、 コロナの時代になってから、若い世代では「ウィンドウショッピング」というお馴染みの行為がECに代替されているような兆しが見えはじめ、商品をカートに入れても離脱してしまうケースが増えている現象が観察されました。
しかも、ショッピングカート放棄の数が増えているだけではなく、意図も読み取りにくくなっている傾向があるため、次のようなカートの役割の多様化に目を向ける必要がありそうです。
- 欲しいものリスト
- 他社サイトと比較用
- 後で買うための備忘録
このように即時に購入に繋がらないパターンが最近目立ちはじめている中、血まなこになってすぐリマーケティングで全てを回収しようとする広告主中心のコミュニケーションはおすすめできません。
ただし、パンデミックが進むにつれて、ウィンドウショッピングに留まらず実際に購入に至るケースが徐々に増えていることが明らかになっています。オンラインショッピングはユーザーが新しいインスピレーションを得られ、商品を購入する場所として機能しているとも捉えられます。
思えば、品揃えが世界最大級に豊富でレコメンド機能も優秀なAmazonこそが、こういった偶発的な出会いをするのに適した場所にもなれます。コロナパンデミック以降、Amazonはますます多くの買い物客が利用するようになり大な成長を遂げているだけでなく、顧客の大多数が非指名の検索ワードでコンバージョンしていることから、ある種の「セレンディピティ」の可能性を秘めていると解釈できます。
参考:Amazon says majority of brand purchases are serendipitous | Advertising | Campaign Asia
また、ここでさらに注目すべきは、Amazonの広告プラットフォームとしての成長です。スポンサーディスプレイ広告などという新しいプロダクトが活発に展開されているだけでなく、近年より多くの広告主がAmazonに投資していることもあり、多くのリテールやDtoCの広告ポートフォリオにおいて、Amazon広告がコンバージョンファネルのあらゆるレベルで中心的な役割を担いつつあります。
TikTokやPinterestも顧客とのファーストコンタクトの場に
もちろん、Amazon以外にも「オンラインのセレンディピティ」という意味で商材やターゲット層によっては非常に似た役割を果たせそうなプラットフォームがあります。コロナ禍で特に驚異的な成長を見せたTikTokやPinterestは、ユーザー数・利用頻度を考えると、新規顧客との重要なファーストコンタクトとなり得るチャンスがありそうです。こうして新しく生まれたポテンシャルを見込んでの動きか、先日Pinterestが2022年に日本で広告プラットフォームを展開することを発表したことは、アーリーアダプターへアプローチしたいブランドにとっても興味深いニュースだと言えます。
参考:「Pinterest」が2022年前半に日本で広告事業を開始--成田敬氏が責任者に就任 - CNET Japan
一時的なトレンドではない
いずれのプラットフォームを利用しても、デジタル空間でのセレンディピティを追及する際に重要なことは、今回の話が一時的なトレンドではなく、コロナ収束後にも大きな意味を持ち続ける可能性が高いということです。Accenture社の調査によると、コロナ禍でユーザーが覚えた新しい購買行動や習慣については、パンデミックが終わっても大多数(サービスによって76%から87%)が「続けたい」と答えている結果になりました。
したがって、ポストコロナのマーケティング戦略は、コロナ前の状態に巻き戻す方針よりは、コロナ禍で確立した購買行動や習慣を考慮したものの方が適していると思われます。