デジタル化が加速する中、中小企業にとってSEOと運用型広告の活用は、もはや生き残りをかけた喫緊の課題と言えるでしょう。また、広告運用でもAIの活用が本格化してきています。しかしながら、中小企業ではまだ自分たちには関係ないと捉え注力していないことも少なくありません。さらに生成AIの登場でSEOも広告もそのトレンドは早いスピードで変化し続けており、対応を一歩誤れば致命的な結果を招きかねません。
本セミナーでは、そうした中小企業の関心に応えるべく、SEOと広告運用の最前線に立つ二人のエキスパートが登壇。具体的な戦略と実践のポイントを惜しみなく伝授してくれました。
ウェビナー概要
開催日時:2024/03/29 (金) 14:00 - 15:30
主催:サクラサクマーケティング株式会社
登壇者
根岸 雅之(ねぎお社長)
サクラサクマーケティング株式会社
取締役社長
SEOコンサルタントとして大規模サイトから新規サイトまで、売上向上に繋がるコンサルティングを武器に200サイト以上の実績を持つ。毎年米国ラスベガスで開催される世界最大規模のカンファレンスPUBCONに7年連続参加。
山元 勝雅(Katsumasa Yamamoto)
アナグラム株式会社
運用型広告事業部 マネージャー
関西の保険代理店にてブランド戦略や数値分析を担当。インハウスで運用型広告に初めて接してから運用型広告の虜に。より専門的に取り組むために上京し、運用型広告の代理店へ転職。100を超えるアカウント担当し様々な業界業種を経験した後、2017年よりアナグラムに参画。 プロフィール
目次
SEO対策の本質的なポイント
検索エンジンは常に改善され続け、Google検索のコアアップデートなどによる掲載順位の上がり下がりに一喜一憂している企業も少なくないのではないでしょうか?
SEOコンサルティング、コンテンツマーケティングなどに強みを持つサクラサクマーケティングの根岸さまからはどのように考えてコンテンツを作っていけばいいのか、最新のトレンドとあわせて語られました。
2024年3月のGoogle検索のコアアップデート
「今回のアップデートは非常に複雑で、広範囲に影響が及んでいます。特にユーザーに役立つコンテンツを重視する一方、生成AIコンテンツや中古ドメインの不正利用へのペナルティが強化されました。」
サクラサク 根岸氏
セミナー前半は、サクラサクマーケティング社の根岸雅之社長によるSEOパートでした。根岸氏は、2024年3月に起きたGoogleのコアアップデートについて詳細な解説を行いました。
このアップデートは非常に複雑で、影響範囲も広い。また、スパムポリシーの厳格化により、新たに3つの項目が追加されたことも明らかになりました。
Googleの基準は常に変化し続けるだけに、そうした最新情報を吸収することの重要性を、参加者一同が再認識する場面でもありました。
ユーザー満足度を高めるコンテンツ作りのコツ
「Googleは常にユーザーファーストの姿勢を貫いています。単にキーワードを詰め込んだだけの薄っぺらなコンテンツでは評価されません。また、ユーザーのニーズを捉え、わかりやすく伝え、サイト内の回遊性を高める工夫が必要不可欠です。
今後のSEOでは中小企業が大手企業にドメインの評価で勝つのはなかなか難しいです。コンテンツこそ中小企業の生きる道で、どれだけこだわれるかが重要になってくる」
サクラサク 根岸氏
続けて根岸氏は、今後のSEO対策において最も重要な要素は「ユーザー満足度の高いコンテンツ」を作ることだと力説しました。
一般的には、知名度やブランド力が高く多くのユーザーから認知され信頼されやすく、さまざまなリソースも豊富な大手企業に対し、中小企業が太刀打ちするにはドメイン評価だけではなく評価されるコンテンツが重要です。
具体的には、Googleアナリティクスなどのデータを活用し、自社のターゲットユーザーの関心事や悩みを深く理解すること。そして、そこから見えてきたニーズに合わせて、読みやすく、分かりやすい構成でコンテンツを設計していく。また、サイト内の回遊性を高めるために、関連記事へのリンクを適切に配置したり、読者とのコミュニケーションを促すコメント欄を設置したりするのも有効な施策だと根岸氏は述べました。
このようなユーザー目線に立ったコンテンツ作りを地道に続けることが、Googleからの評価を高め、検索順位の向上につながるのです。
独自性のあるコンテンツが評価される
「Googleが求めるコンテンツを作ろうとするのではなく、ユーザーに喜ばれる良質のオリジナルコンテンツを発信し続けることが何より重要です。」
サクラサク 根岸氏
さらに根岸氏は、今回のアップデートで高い評価を得たサイトの共通点についても言及しました。
- コンテンツのスペシャリストが書いている
- ニッチで深い考察である
- 個人の体験・経験に基づくものである
第一に専門性の高い分野で、その道のプロフェッショナルが書いたコンテンツであること。第二に、ただ表面的な情報を羅列するのではなく、実際の体験に基づいた臨場感のある解説がなされていること。そして第三に、サイトやドメイン自体のブランド力や信頼性が高いこと。
こうした点を評価軸として、Googleはコンテンツの質を総合的に判断しているようだと根岸氏は分析しました。つまり、Googleのアルゴリズムに振り回されることなく、ユーザーに長く愛される良質なオリジナルコンテンツを作り続けることこそが、中小企業がSEOで勝ち残るための王道戦略だというわけです。
AIを活用した広告運用の秘訣
生成AIをはじめ、「AI」というフレーズを聞くことが増えましたよね。広告でもAIの利用が活発です。そのなかで広告運用にAIをどのように活用していけばよいのか、現場の知見をもとにアナグラムの山元さんからお話しいただきました。
ユーザー行動の複雑化と広告へのAI活用の台頭
「スマートフォンの普及によって、消費者の行動は多岐にわたるタッチポイントを経由するようになりました。新婚旅行の計画一つ取っても、平均検索回数は230回以上。こうした複雑化したユーザー行動を捕捉し、最適な広告配信を実現するのがP-MAXです。」
アナグラム 山元
まず、GoogleのAIを活用したソリューション「Performance Max(P-MAX)」について、詳細な解説が行われました。
山元さんによれば、スマートフォンの普及によって、消費者の購買行動は極めて複雑化しているのが現状だといいます。商品やサービスを認知してから購入に至るまでの過程で、GoogleやSNS、動画サイト、口コミサイトなど、実に多岐にわたるタッチポイントが存在しています。
こうした消費者の複雑な行動パターンを的確に捉え、効果的な広告配信を実現することが求められる中、P-MAXの重要性が高まっています。P-MAXは、Googleの様々なサービス上で発生するユーザーの行動シグナルを機械学習によって解析し、最適なオーディエンスにリーチするためのAIソリューションです。これまでバラバラに存在していたデータを統合的に活用することで、従来の運用型広告では成し得なかった高度な最適化が可能になるというわけです。
P-MAXの活用事例と留意点
「P-MAXで十分な成果を出すには、安定的なコンバージョン数の確保と、ある程度の学習期間が必要です。また、必ずしもP-MAXが全ての業種に最適というわけではありません。予約サイクルの長い商材などでは、従来の検索広告の方が効果的なケースもあります。」
アナグラム 山元
とはいえ、P-MAXを導入すれば誰でも簡単に成果が出せるわけではありません。山元マネージャーは、P-MAXで十分なパフォーマンスを発揮するための3つの条件を挙げました。
1つ目は、安定的なコンバージョン数の確保。2つ目は、広告運用の変更を最小限に抑え、できるだけAIに任せること。そして3つ目が、少なくとも十分な学習期間を確保することです。
つまり、ある程度の広告予算と配信ボリュームがあり、かつ運用面である程度自動化に任せられる体制が整っていることが、P-MAXを活用する上での前提条件になるわけです。
また、業種によってP-MAXの適性が異なる点にも注意が必要です。例えば、一定の検討期間を要する高額商材や、ニッチな商材を扱う企業の場合、P-MAXよりも従来の検索広告の方が、コンバージョンに繋がりやすいケースがあるそうです。
結局のところ、P-MAXをはじめとする自動化ツールは、あくまで広告運用を補助する手段のひとつに過ぎません。広告主のビジネス特性をしっかりと見極めた上で、P-MAXと従来手法を適切に組み合わせることが成功の鍵を握ると、山元さんは強調しました。
「顧客にメッセージをどう伝えるか」を考える
「たとえ最新のテクノロジーを駆使しても、肝心の広告メッセージが顧客の心に響かなければ意味がありません。常に『誰に、何を、どのように伝えるか』という原点に立ち返ることが大切です。機械的な最適化に頼るのではなく、創造性と戦略性を発揮し、ユーザーの記憶に残るようなメッセージを発信し続けることが、AIを利用した広告運用の極意だと思います。」
アナグラム 山元
セッションの最後に、山元さんは改めて広告クリエイティブの重要性について言及しました。
要するに、P-MAXのようなAIツールは、最新のテクノロジーを駆使してデータを収集・分析し、最適な配信を実現してくれます。しかし、広告やランディングページなどから得た情報の組み合わせで広告テキストのパターンを提案するのには長けていますが、肝心の広告メッセージを新たに生み出すのはまだ難しいのではないでしょうか。
結局のところ、ユーザーの心を動かすクリエイティブは、マーケター自身の手で生み出していく必要があるというわけです。
機械的な最適化に終始するのではなく、人間らしい感性と創造力を最大限に発揮すること。そして生み出したコンテンツの効果を検証し、PDCAサイクルを回し続けること。その二つの要素が、P-MAXをはじめとするAI広告運用において極めて重要だと、山元さんは力説しました。
まとめ
今回のセミナーを通じて、改めてSEOとAI広告運用の重要性を認識すると同時に、いずれにおいてもユーザー視点に立った真摯な取り組みが不可欠であることを痛感しました。
SEOの分野では、自社の強みを活かしたオリジナルのコンテンツを、読者の関心事に合わせてわかりやすく発信し続けること。広告運用におけるAIの活用は、ビジネスの特性を理解した上で、P-MAXをはじめとする手法を柔軟に活用しながら、同時に人間らしい創造性とブランドメッセージを大切にすること。
ユーザーファーストの姿勢を貫きながら、テクノロジーの力を味方につけていくことが、中小企業がデジタル時代を生き抜く上で避けては通れない道標ではないでしょうか。
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