「このユーザー層は取れない」を疑ったら、コンバージョンが純増した話

「このユーザー層は取れない」を疑ったら、コンバージョンが純増した話

広告運用をしていると、「この層は取れない」「この訴求は刺さらない」といった考察が、いつの間にかチーム内の前提になっていることがあります。

過去の配信結果に基づく判断なので、間違っているわけではありません。ただ、状況が変われば前提も変わります。一度立ち止まって疑ってみると、意外なところに純増の余地が眠っているのかもしれません。

今回は、あるオンライン英会話サービスの運用で「もう作らないことになっていた層」へ、あえてバナーを当ててみた事例を共有します。結果として、純粋にCV数が積み上がるかたちになりました。

※本記事はクライアントとの機密保持の観点から、業種・ターゲット・数値・コピーなど具体的な内容を一部編集・抽象化しています。実際の運用事例そのままではなく、ナレッジとして共有できる範囲で再構成したものです。


「40・50代女性向けは作らない」という前提があった

担当していたのは、オンライン英会話サービスの広告運用です。無料体験レッスンの申込と、その後の有料コース受講申込の獲得が主な目的でした。

過去の配信データから、運用チーム内ではこう共有されていました。

「年齢高めの女性ユーザーは、無料体験までは進むが、有料コースには繋がりにくい」

配信ターゲットとして40・50代女性は含まれていました。ただ、この層に向けたクリエイティブはずっと作っていない状態が続いていました。

「有料コースに進んでくれないから作っても意味がない」という判断が、いつの間にか定着していたのです。

アイデアの源は、別業界の雑談だった

きっかけは、社内メンバーが飲み会で話していたマッチングアプリ業界の話でした。

未開拓のユーザー層にアプローチすることで純増が生まれる、という考え方です。既存層の奪い合いではなく、まだ届いていない層を取りにいくという発想は、英会話サービスでも当てはまるのではないか。そう感じたメンバーが、社内の業界経験者へのヒアリングを企画してくれました。

業界経験者のインサイト

ヒアリング相手は、過去に大人向け英会話スクールのマーケティングに携わっていた方です。40・50代女性の学び直しについて、実態をよく知っている方でした。

主なインサイトは次のとおりです。

  • 育児などが一段落した40・50代女性で、「英語を話せるようになりたい」と思っている人がかなりいる
  • 「何のために英語を使いたいか」よりも、まず「とにかく英語が話せるようになりたい」というニーズが先にある
  • 学生時代に英語を学んで以来、長くブランクがある人が多い
  • ブランクがある分、「中学レベルすら忘れているのに大丈夫か」という不安を強く持っている
  • 自分のペースで進められる環境さえ整えば、有料コースまで進む可能性は高い

まずは「初心者OK」「中学英語からやり直し」の訴求軸で試してみるのがよさそう、という結論になりました。

訴求設計:インサイトをバナーに落とし込む

ヒアリングで得た実態と心理を、バナーの各要素に直接つなげていきました。

ユーザーの実態・心理バナーでの対応
「英語が話せるようになりたい」ニーズが最優先メインコピーで「いまから英会話、はじめてみませんか?」と正面から訴求
学生時代以来のブランクへの不安「中学英語からやり直しOK」で学び直しの心理的ハードルを下げる
人前で話す恥ずかしさへの抵抗「マンツーマン/自宅で受講」で安心感を明示
自分のような人でも続けられるか不安同世代女性が自宅でレッスンを受ける笑顔ビジュアルで「自分にもできる」を表現
冒頭で自分ごと化させたい「40・50代の女性の方へ」とターゲットを明記

検証したクリエイティブ

初動では、コピーを軸に3パターンを並行検証しました。

  • 問いかけ型:「いまから英会話、はじめてみませんか?」(学び直しを考えているが踏み出せていない層への問いかけ)
  • 共感型:「英会話を始めて、世界が広がった」(すでに学び始めた人の声を借りた背中押し)
  • 増加訴求型:「大人の英会話デビュー、増えています」(受講者数の増加を訴求する、別軸で成果が出ていたパターン)

図1:検証した3パターンのバナー比較(左:問いかけ型/中:共感型/右:増加訴求型)

結果:問いかけ型が勝った

配信してみると、有料コース申込までしっかり繋がることがわかりました。これまでの「取れない」という考察とは真逆の結果です。

特に好調だったのは、問いかけ型のコピーでした。3パターンを並べた結果は、次の構図になります(実数値は割愛し、相対比で示します)。

広告コピー相対CPA
いまから英会話、はじめてみませんか?最良(基準)
いまから英会話、はじめてみませんか?(別セット)基準の約1.7倍
その他のバリエーションCVなし

問いかけ型がもっとも低いCPAで安定的にCVを獲得し、他のバリエーションを上回りました。

なにより重要だったのは、これが「既存ターゲットとの奪い合い」ではなかった点だと考えます。これまでリーチできていなかった層からの獲得なので、アカウント全体のCVが純粋に積み上がる構図になりました。

獲得につながったバナーの要素を分解する

勝ちパターンとなった「問いかけ型」のバナーを要素ごとに分解すると、次の狙いがありました。

図2:勝ちパターンのバナーを要素ごとに分解

要素内容狙い
ターゲット明示「40・50代の女性の方へ」スクロール中に「自分への広告だ」と感じさせる。ターゲット外を自然に弾き、CTRの質を上げる
メインコピー「いまから英会話、はじめてみませんか?」「いまから始めて間に合うか不安」という心理に直接訴求。疑問形で語りかける
不安払拭の3点訴求中学英語からOK/マンツーマン/自宅で受講ためらいの障壁を正面から解消し、ブランクや恥ずかしさに対する安心感を提示
ビジュアル同世代に見える女性が自宅でレッスンを受ける笑顔の写真「自分と同じ年代の人が学び始めている」という共感・未来イメージを喚起
CTA「無料体験レッスンを予約する」まずは試してみるという低いハードルを提示し、有料コースへの心理的障壁を下げる

逆に獲得につながらなかったのは、「英会話を始める人が増えています」「英会話を始めてよかった」といった呼びかけ型でした。情報としては成立しているのですが、「ここなら自分も話せるようになれるかも」という期待感に繋げにくかったのではないかと考えます。

問いかけ型のほうが顕在層に直接届きやすく、クリックに繋がりやすかったのではないでしょうか。今回のケースでは「40・50代の方へ」のように自分ごと化させるワードも、重要な役割を果たしました。

やってみてわかったこと

「取れない」という過去の判断は、一度疑ってみる価値がある

一度うまくいかないと、「その手法はダメ」と決めつけてしまいがちです。

しかし、うまくいかなかった理由を丁寧に紐解いてみると、新しい切り口が見えてくることがあります。「当時の訴求が合っていなかっただけ」かもしれませんし、今となっては「目標や状況が変わっている」のかもしれません。一度立ち止まって振り返ることが大切だと感じました。

図3:広告クリエイティブで前提を疑うサイクル

未開拓の層へのアプローチが、もっとも純粋な増分になる

既存ターゲットへの訴求を磨くことも大事です。ただ、「まだ届いていない層」にアプローチするほうが、純粋な増分につながりやすいと改めて実感しました。

年齢・性別・ライフステージなど、ターゲットの切り口を少し変えてみるだけで、結果が変わることがあります。案件のフェーズによっては、大胆に試すことが難しい場合もあります。それでも、クリエイティブで拡大を狙いたいときは、広範囲に検証することも有効だと考えます。

雑談から新しいアイデアが生まれる

今回は、別業界の雑談 → 業界経験者へのヒアリング → 施策化、というルートで生まれたアイデアでした。数値だけを見ていたら、たどり着けなかった可能性が高いです。

何気ない会話も大事ですし、そこからチャンスを得るためにも、日頃からアンテナを張っておくことが大切だと実感しました。

まとめ

今回の事例で学んだのは、シンプルに3つです。

  1. 「取れない」と諦めていた層は、もう一度疑ってみる価値がある
  2. 未開拓の層を取りにいくことが、もっとも純粋な純増の作り方
  3. 雑談やヒアリングなど、数値の外側にも答えはある

過去の考察をそのまま引き継いでいると、気づかないうちに機会損失が生じているのかもしれません。「あなたのアカウントで、いま当てていない層はどこか?」を一度棚卸ししてみると、新しい純増の余地が見つかるかもしれません。

参考: デマンドジェネレーション キャンペーンについて(Google 広告 ヘルプ)

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