コネクテッドTV広告の今後のチャンスと課題は?

コネクテッドTV広告の今後のチャンスと課題は?
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特に若い世代を中心に「テレビ離れ」が謳われている中、コネクテッド TV(CTV)の視聴者数が世界的に右肩上がりです。

CTVとはインターネットに接続されたテレビでの動画コンテンツを指す言葉です。スマートテレビだけでなく、Apple TVやゲーム機などのデバイスを経由して視聴され、近年ではデジタル広告のチャネルとしても話題を集めるようになっています。

以下では広告チャネルとしてのCTVを中心に、今後のチャンスと課題について紹介していきます。



広告媒体としてのCTV

コネクテッドTV(以下、CTV)は最近、広告チャネルとして非常に大きな成長を遂げ、以前にも増して注目されています。CTV広告に割かれている広告予算の推移を見ると、このチャネルにどんどん投資していく傾向が見られます。

画像引用元:Q4 2021 Digital Video Trends - Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics

デジタル広告を専門とする市場調査会社eMarketerは、CTV広告の予算が2019年の34億4,000万米ドルから2021年には102億9000万米ドルに拡大したことを示しています。プログラマティック広告の予算におけるCTV広告のシェアも、この間に倍増し、現在は10%前後です。これは、CTVが幅広い業種の広告主にとって、ますます魅力的なチャネルになっていることを物語っているのではないかと思います。

幅広いリーチが可能

CTV広告の利点の一つは、リーチの広さです。エンターテインメントメディアを専門とする市場調査会社Leichtman Research Groupの調査によると、米国では約8割の世帯がCTV対応機器を所有しているそうです。

参考:80% of US TV Households Have at Least one Connected TV Device | Leichtman Research Group

また、日本においても概ね同様なトレンドが確認できています。国内では、約3分の1がインターネット接続可能なテレビを所有しており、その傾向は年々強まっている模様です。

参考:コネクテッドTV普及における「テレビの見られ方の変化」〜インテージ調査レポート(前編)|Screens|映像メディアの価値を映す

画像引用元:若年層を中心としたコネクテッドTVの利用拡大から考えるこれからの消費者コミュニケーション~ニールセン 消費者のマルチスクリーンの利用状況を発表

このような状況から考えて、広告主にとって非常に魅力的な媒体であると言えます。特に若い世代を中心にCTVの視聴が拡大していることを加味すると、このユーザー層をテレビ経由でリーチするのに適していると考えられます。

最初のハードルは高いが、効率は良好か

CTV広告のメディアバイイングの状況は、やや複雑で多層的です。インターネット対応テレビそのものやAmazon Fire TVなどのデバイスから、ストリーミングアプリやプログラマティック広告プラットフォームまで広告在庫の選択肢が多く、相性の良いポートフォリオを作ることは、比較的ハードルが高いかもしれません。

しかし、互いの競争の激しさが時にはCPMの低下に繋がる可能性もあると、CTVを専門とするマネタイズプラットフォーム The ViewPointが示唆しています。

参考:CTV Fragmentation: What You Need to Know | TheViewPoint

画像引用元:Reasons US Agencies and Brand Marketers Are Shifting Linear TV Budget to OTT/Connected TV (CTV) in 2021, Nov 2020 (% of respondents) | Insider Intelligence

加えて、従来のTV広告に比べてより精度の高いターゲティングが可能になっていることは、費用対効果という観点で、CTV広告の魅力的なポイントの一つです。そのためか、最近従来のテレビ広告からCTVへ、一部の予算シフトが進んでいるとも考えられます。

さらなるデータの活用に高まる期待

従来のテレビ広告には、広告の成果を正しく測ることが困難であるのは周知の事実だと思いますが、CTV広告はデジタル広告のため、リーチ、インプレッション、視聴率などの指標を容易に把握することができ、キャンペーンが効果に数値化することが可能です。

ただし、CTV広告のエコシステムは多くのプロバイダーやサービスから構成されているため、アトリビューションの精度にはまだ課題があると言わざるを得ません。また、デバイスの電源を切った状態でもCTV広告のインプレッションが発生した例もあるなど、CTV広告のビューアビリティについても改善の余地があるように思います。

参考:The TV Is Off But The Ads Are On: Solving CTV's Viewability Problem — TVREV

CTVは広告媒体としてまだ比較的新しいということも忘れてはならないため、遅かれ早かれ、できるだけ信頼性の高いレポーティングを可能にするために、統合的なソリューションが主流になるのではないかと思われます。

ユーザー体験の課題とチャンス

ユーザーがCTVの広告にどのように反応するかを見ると、まだ賛否両論な部分が目立ちます。

画像引用元:eMarketer Podcast: The holy grail of CTV, Nielsen ratings alternatives, and MLB viewership challenges - Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics

米国の広告・メディア業界誌Ad Ageの調査によると、対象者の約8割が「同じ広告を何度も見せられる」「広告出稿のタイミングに不満」と回答したことが目立ちます。また、広告が配信されている間にネットサーフィンなどの他の行動に専念する人も多く、CTV広告が従来のテレビ広告と非常によく似た問題と戦わなければならないことを示しています。

一方で、約半数の回答者はCTV広告とのエンゲージメントに抵抗がないと答えており、また約3分の1は表示された商品を購入する意欲を示していることも分かりました。

ここでは、デバイスのメーカーをはじめ、広告プラットフォームやパブリッシャーにも、ユーザー体験をより快適にするためのソリューションが求められていると言えます。

今後のイノベーションに期待

今後、CTV分野のイノベーションドライバーは、デジタル広告ビジネスの大手プレーヤーである可能性もあります。Googleはすでに昨年10月の時点にCTVを優先テーマとすることを発表しており、Amazonもほぼ同じ時期に、動画コンテンツの視聴中にスムーズに購入できるような新しい広告フォーマットを提供していました。

参考:Google CEO Says Connected TVs Are A “Top Priority”

参考:Amazon Interactive Video Ad For US & UK Amazon Marketplaces - ZonHack

理想論で言えば、CTV広告は、従来のテレビ広告の視覚的な利点と、デジタル広告フォーマットのデータ活用の利便性を組み合わせる可能性を秘めた広告媒体になり得ます。これが現実になるまでまだ時間がかかるでしょう。

けれども、CTVはすでに非常に興味深いトピックであり、多くの広告主にとって近い将来のロードマップに載せる価値のあるものなのではないでしょうか。

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