「セール品ばかり売れてしまう…」
Meta Advantage+ カタログ広告(旧:Facebookダイナミック広告)を運用していて、そんな悩みに直面したことはありませんか? 私自身も、売上は伸びているのに広告費用対効果(ROAS)がなかなか改善せず、頭を抱えた経験があります。
その原因の一つは、Meta広告の学習ロジックにあります。
媒体の機械学習を促進させ、配信を安定させるために多くの運用者が選ぶ「コンバージョン数の最大化」は、より多くの件数を獲得するために低単価商品に配信を偏らせがちです。
その結果、セール品やアウトレット品ばかりが売れ、短期的な売上は伸びても平均購入単価やROASは思うように改善しないということがありました。
この記事では、この課題に向き合う中で私が試した3つの施策と、それぞれの結果から得られた学びをご紹介します。
目次
なぜ、Meta Advantage+ カタログ広告で低単価な商品ばかり売れてしまったのか?
Meta Advantage+ カタログ広告は、商品フィードを基に自動で広告を生成し、ユーザーごとに「反応されやすい」「購入されやすい」といった関連性が高い商品を自動で表示する仕組みです。
このアルゴリズムの学習を安定させるには、一定数のコンバージョンデータを確保することが重要になります。そのため、多くの広告運用者が最初に採用しやすいのが「コンバージョン数の最大化」という入札戦略です。私もこの設定で配信をスタートしました。
しかし、この入札戦略ではより多くの購入が発生するよう最適化されるため、低単価なセール品やアウトレット品が優先して配信されやすくなります。
これらは購入ハードルが低く、コンバージョン数を増やすには最適ですが、配信が低単価商品に偏りやすくなります。
その結果、購入数は伸びても平均購入単価やROASは改善しないという状況になっていました。
ここからは、この課題にどうアプローチしたのか、実際に行った施策を順に紹介していきます。
アプローチ①:「高単価商品」を切り出して配信強化
最初に試したのは、高単価商品群だけを切り出した商品セットを作り、それを用いたキャンペーンを配信する方法です。
仮説
元々はすべての商品を同じ商品セットで配信していましたが、それでは購入ハードルの低い低単価商品に配信が偏り、高単価商品の配信機会が少なくなってしまうのではないかと考えました。
そこで、「高単価商品のみの商品セットを分けて配信することで、高単価商品を購入する見込みがあるユーザーへリーチが広がりやすくなり、結果として平均購入単価やROASが向上するのではないか」と仮説を立てました。
結果
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 平均購入単価 | 約1.5倍に伸長 |
| クリック率(CTR) | 大きく低下 |
| クリック単価(CPC) | 高騰 |
| ROAS | 200ポイントほど悪化 |
媒体仕様から見た要因
この結果になったのは、媒体の仕様から見て以下の3つの要因が考えられます。
1.最適化に必要なデータの減少
Meta広告は、最適化の対象イベント(今回は「購入」)の数が多ければ多いほど、機械学習の精度は上がっていきます。商品数が限定されたことで、購入者数も減りコンバージョンデータ量が不足、アルゴリズムが「どのユーザーに出せば良いか」を適切に推定できなくなったと考えられます。
2.推定アクション率の低下
高価格帯の商品は、低価格帯の商品に比べて購入のハードルが高く、反応するユーザーが限られるため、クリックされにくい傾向があります。
Metaの広告オークションは、推定アクション率(その広告でユーザーがアクションをする可能性)も加味して決まるため、クリック率が低いとオークションで不利になり、結果として広告の表示単価(CPM)やクリック単価(CPC)が高騰してしまったと考えられます。
3.ユーザーの選択肢の制限
ダイナミック広告の最大の強みは、数多くの商品の中から「その人にとって最適な商品」を自動で提示できる点にあります。しかし、商品を高単価なものだけに絞り込んだことで、ユーザーにとっては選択肢が限られ、欲しい商品と出会う機会が減ってしまったことも、クリック率の低下につながった一因だと考えられます。
この結果から、「配信する商品を操作する」こと自体はゴールにならないと痛感しました。
Meta広告は、十分なデータ量と多様性を与えてこそ学習が進み、適切なユーザーに適切な商品を届けられる仕組みです。高単価商品を売りたいなら、「表示機械を増やす」よりも「学習対象やシグナルをどう設計するか」を工夫すべきだと気づきました。
アプローチ②:「入札戦略」でコンバージョン値の最大化を目標に
高単価商品を切り出して配信を強化したアプローチ①は、平均購入単価こそ伸びたものの、CTR低下とROAS悪化という結果に終わりました。
そこで、配信する商品を直接コントロールするのではなく、アルゴリズムの学習対象そのものを見直すアプローチに切り替えました。
仮説
当初の入札戦略「コンバージョン数の最大化」では、購入件数は増えるものの、低単価な商品に偏りがちでした。
そこで、一定期間の運用でコンバージョンデータが十分に蓄積されてきたタイミングで、入札戦略を「コンバージョン値の最大化」に変更。
購入金額の最大化を目指し、機械学習の最適化の方向性そのものを変えることで、購入単価の高いユーザーに最適化されるのではないかと仮説を立てました。
また、既存の入札戦略と並行して配信することで、トータルの獲得数が減らないようにしつつ、成果の違いを比較できるようにもしました。
結果
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 平均購入単価 | 大幅に上昇 |
| ROAS | 100ポイント改善 |
配信当初は、「コンバージョン数の最大化」で配信しているキャンペーンと比べ、配信ボリュームが少なかったものの、数か月にわたる運用で高額購買を行うユーザーのデータ蓄積が進むと、配信精度・ボリュームともに向上しました。
また、「コンバージョン数の最大化」と「コンバージョン値の最大化」の両キャンペーンでリーチしたユーザーの重複率は約15%にとどまり、それぞれが異なる層に最適化されたと考えています。
この経験から、機械学習の対象をどう設計するか、という視点が重要だと再認識しました。
アプローチ③:公式SNSへのエンゲージメントデータをシグナルとして活用
アプローチ②の入札戦略の見直しによって、配信する商品自体を変えなくても、最適化されるオーディエンスが変わったことでROASは改善しました。
この結果から、他にも高単価商品の購買につながる見込みの高いオーディエンスにアプローチする方法がないかと考え、次に目を向けたのが自社の公式SNSと接点のあるユーザーでした。
仮説
公式SNSのプロフィールへアクセスしたり、投稿に反応しているユーザーは、ブランドへの興味・関心が高いと考えられます。加えて、このECでは高価格帯の商品を紹介する投稿が多く、反応しているユーザーは購入単価も高そうだと感じていました。
そうしたユーザーに対して広告で購入の後押しをできれば、購入単価が上がり、ROAS改善にもつながるのではないかと考えました。
そこで、「過去180日以内に公式SNSでアクションを実行した人」を対象にエンゲージメントカスタムオーディエンスを作成し、ターゲティングに活用しました。
Meta広告、エンゲージメントカスタムオーディエンスとは?種類や活用方法、注意点を解説
結果
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 平均購入単価 | 高水準で維持 |
| ROAS | 全体の改善に貢献 |
公式SNSアカウントの投稿を見て、一定の興味は持っていたものの購入には至らなかったユーザーに、広告で商品の別画像を見せたり、遷移先で特徴や使用シーン、口コミといった追加情報を伝えることで、購買意欲を高められたと考えています。
ダイナミック広告では、サイト訪問者へのリターゲティングを実施することが多いかと思います。しかし、Meta広告ではInstagramやFacebookでの行動に基づくオーディエンスに加え、顧客リストやアプリ内アクションなど、多様な行動シグナルを活用できます。
自社の持つデータや目的に応じて仮説を立てながら、有効なシグナルを活用することで、平均購入単価が高いユーザーへより効率的にアプローチでき、ROASの向上につながりました。
アルゴリズムを活かすには「ユーザー理解」が大切
Meta Advantage+ カタログ広告の改善で、商品セットの切り出しや入札戦略の変更、公式SNSのシグナル活用を試して実感したのは、「どんなユーザーに届けたいのか」という視点から逆算しなければ、再現性のある成果にはつながりにくいということです。
Meta Advantage+ カタログ広告は、利用者の興味・関心や行動データに基づき、その人にとって関連性の高い商品を自動で表示できます。
しかし、機械学習にすべてを任せるのではなく、「どんな行動や関心を持つユーザーを狙いたいのか」を意識的に設計していくことで、より成果が安定しやすくなります。
もし平均購入単価やROASが伸び悩んでいる場合は、まずはユーザーの過去の購買データ、SNS・サイト・アプリ等の行動履歴などをもとに、「平均購入単価が高いユーザーはどんな人か?」を整理してみてください。
そのうえで、「どうすれば、平均購入単価が高いユーザーと効率的に接点を作れるか?」の仮説を立て、広告設計を定期的に見直していくことで、ROAS改善に向けた新しい打ち手が見えてくると思います。



