企業がLINEを使ってユーザーに訴求できる方法が徐々に増えてきました。LINE公式アカウントを開設しているだけではなく、LINE広告の配信や、LINEポイントADを活用している方も多いのではないでしょうか。
また、ブランドごとに複数の公式アカウントがあり、それらのデータを上手く活用していけないかとお悩みの方もいらっしゃると思います。
そのような時にLINEが提供する「ビジネスマネージャー」を活用すれば、LINE内のデータと広告主が持つデータを使った広告配信や分析が可能になります。
この記事では、LINEビジネスマネージャーを使うとどのようなことができるようになるのかを詳しく解説していきます。
LINEビジネスマネージャーとは
LINEビジネスマネージャー(以下、ビジネスマネージャー)は、LINE公式アカウントやLINE広告などLINEの法人サービスを通じてユーザーの許諾を得て取得したデータと、広告主が持つ自社データをまとめて管理できるサービスです。複数の広告サービスのアカウントデータを、LINE公式アカウントやLINE広告での配信に利用することができます。
ビジネスマネージャーがリリースされた背景には、サードパーティCookieの規制やiOS14.5における計測環境の変化が関係しています。
Safariは2020年3月にサードパーティCookieを完全にブロックし、Chromeも2022年3月までにサードパーティCookieを段階的に廃止することを発表しています。
またiOS14からはプライバシーポリシーの保護機能が強化され、広告の効果測定やオーディエンスデータの取得が厳しくなりました。
各広告プラットフォームが影響を受けている中、様々な対応策が講じられています。
このような背景がある中で、LINEは企業とユーザーの双方にとって透明性のあるデータ活用の仕組みが必要であるという考えからプラットフォームやサービスの改善を進めており、その一環として今回のビジネスマネージャーがリリースされました。
クロスターゲティングとの違い
LINE内のサービスを横断して広告配信に利用できると聞くと「クロスターゲティング」を思い出す方も多いかと思いますが、ビジネスマネージャーとクロスターゲティングではどのような違いがあるのでしょうか。
LINEは2019年12月にLINE内の各サービスを横断して広告配信に活用する「クロスターゲティング」をリリースしました。クロスターゲティングとはLINE公式アカウントやLINEポイントADで取得したデータをLINE広告での配信に活用できる機能で、例えばLINE公式アカウントで配信したメッセージを開封したユーザーに対して広告配信をすることなどが可能でした。
しかしながら、このクロスターゲティングはLINE公式アカウントに紐づいたプロダクト内のデータを横断して活用するもので、LINEが持つすべてのサービスを横断した広告配信や配信後の分析はできませんでした。
この課題を受けて、LINEのユーザーIDに紐づくデータ収集、データ統合・連携、分析・レポート、オーディエンス活用までLINE内外のサービスを横断した広告配信や分析を一気通貫で利用できるように提供されたのがビジネスマネージャーなのです。
クロスターゲティング
ビジネスマネージャー
※ 構想中のため、実装有無や時期は予告なく変更される場合があります。
画像引用元:媒体資料の一覧ページ|LINE for Business
上記ページ内 PDFファイル LINE Business Guide 2022年1〜6月期 P.376
ビジネスマネージャーのリリース時点ではすべての機能が揃っておらず、オーディエンスやLINE Tagで取得したデータを共有するためには、ビジネスマネージャーを保有している広告主の認証と各広告サービスのアカウントごとの接続認証が必要です。
将来的にはZホールディングス傘下のグループ企業が提供している各サービスのデータについても、広告主単位で統合可能になるよう検討しているとのことで上図のような体系になる見通しです。この前段階として2022年前半には、Yahoo!JAPANへの広告配信や複数の広告サービスでのリーチ計測やアトリビューション分析など、サービスを横断した広告配信の効果を可視化して分析できるように機能改善が進められています。
それでは具体的に、ビジネスマネージャーを利用するとどのようなことができるのでしょうか。
ビジネスマネージャーでできること
ビジネスマネージャーの2022年3月現在での主な機能は、オーディエンスやLINE Tagの共有と作成です。
Talk Head View、LINE公式アカウント、LINE広告、LINE NEWS TOP ADの4つサービスのデータを接続できます。
ビジネスマネージャーの管理者はオーディエンスやLINE Tagなどの設定のみが可能で、各LINE公式アカウントや各LINE広告のアカウントにログインして、閲覧や編集、運用、配信ができるわけではないため注意が必要です。
ビジネスマネージャーを活用して共有できるオーディエンス
2022年3月現在では次のオーディエンスの共有が可能です。
Talk Head View
データタイプ | データの内容 |
---|---|
画像クリック | Talk Head View (静止画) のバナーをクリックしたユーザー |
動画視聴 | Talk Head View (動画) を視聴したユーザー |
アクションボタンクリック | Talk Head View (動画) の「詳細はこちら」をクリックしたデータ |
LINE広告
データタイプ | データの内容 |
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IDFA/AAID アップロード | アップロードしたIDFAリスト |
電話番号 アップロード | アップロードした電話番号リスト |
Email Address アップロード | アップロードしたEmailアドレスリスト |
ウェブトラフィック | LINE Tagのトラッキング情報を基にしたリスト |
画像クリック | 画像をクリックしたユーザー |
動画視聴 | LINE広告で動画を視聴したユーザー |
アプリイベント | アプリイベントのオーディエンス |
友だち/ブロックユーザー | 該当のLINE広告のアカウントに紐づくLINE広告アカウントの友だち/ブロックユーザー |
類似拡張 | ソースオーディエンスに類似したユーザーをLINE内で拡張したオーディエンス |
LINE公式アカウント
データタイプ | データの内容 |
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インプレッション | メッセージを開封したユーザー |
クリック | メッセージのリンクをクリックしたユーザー |
ユーザーIDアップロード | アップロードしたユーザーIDリスト |
チャットタグ | Chat Tag を利用したオーディエンスリスト |
IDFA アップロード | アップロードしたIDFAリスト |
追加経路 | 友だち追加経路別のリスト |
ウェブトラフィック | LINE Tagのトラッキング情報を基にしたリスト |
ビジネスマネージャー
データタイプ | データの内容 |
---|---|
ウェブトラフィックオーディエンス | LINE Tagのトラッキング情報を基にしたリスト |
IDFA/AAIDアップロード | アップロードしたIDFAリスト |
電話番号アップロード | アップロードした電話番号リスト |
メールアドレスアップロード | アップロードしたEmailアドレスリスト |
LINE NEWS TOP AD
データタイプ | データの内容 |
---|---|
静止画Click | LINE NEWS TOP AD (静止画) のバナーをクリックしたユーザー |
動画視聴 | LINE NEWS TOP ADの動画を視聴したユーザー |
アクションボタンClick | LINE NEWS TOP ADの「詳細はこちら」をクリックしたデータ |
活用方法
上記のデータを使って具体的にどのような配信ができるのでしょうか。ここでは活用事例を紹介します。
ブランド横断施策によって効率的に顧客を獲得
複数のブランドを横断したキャンペーンの動画広告を配信した後、動画広告の視聴データをそれぞれのブランドで活用します。例えばそれぞれのLINE公式アカウントでメッセージ配信する際や、それぞれのLINE広告配信時に視聴データを使い、効率的に顧客獲得を狙うことができます。
既存ブランドのデータを使い、効率的に別ブランドの友だちを増やす
既存ブランドのLINE公式アカウントで反応の良い友だちと類似するユーザーに、別ブランドの友だち追加広告を配信します。友だち追加見込みの高いユーザーに配信することで、効率的に友だちを増やすことに繋がります。
Talk Head Viewの接触ユーザーへリターゲティング配信を行い、効率的にコンバージョンを獲得
Talk Head Viewの動画を視聴したユーザーに対してLINE広告とLINE公式アカウントでリターゲティング配信を行います。動画視聴ユーザーは自社キャンペーンや自社商品に興味を持っているユーザーである場合が多いと考えられるため、効率的なコンバージョン獲得が見込めます。
利用方法
ビジネスマネージャ―はどのようなもので、どのように活用できるか紹介してきましたが、実際にどのような場合にビジネスマネージャーを導入すると良いのでしょうか。
- クロスターゲティングを一通り実施し、さらにデータ活用を行っていきたい場合
- クロスターゲティングにまだ取り組めていなかったが、これから挑戦したいと考えている場合
- 各アカウントによって管理する部署や管理画面にログインできる関係者が違い、スムーズにクロスターゲティングを進められなかった場合
- 企業全体としてLINEのアセットを1つの権限に集約してフルファネルでデータを活用していきたい場合
クロスターゲティングを一通り実施していてLINE公式アカウントをブランドごとなどに複数持っている場合、特にビジネスマネージャーの利用がおすすめです。クロスターゲティングではできなかった異なるLINE公式アカウントに紐づくLINE広告のデータ共有が可能になるため、より効率的なアプローチに繋がります。
利用開始までの流れ
それではビジネスマネージャーの利用を開始するには、何が必要なのでしょうか。
利用開始までの流れは次の通りです。
- ビジネスマネージャー組織の作成
- ビジネス情報の登録
- 組織へアカウント接続
- 組織とアカウント接続の認証審査
- オーディエンスやLINE Tagの共有
ビジネスマネージャーの組織とはビジネスマネージャーを構成する単位のことで、原則1企業で1組織のみ認証が可能です。
まとめ
LINE内外のデータをまとめて管理して活用できるようになると、ユーザーとの接点を作ってからゴールまで導くために様々な手法を取り入れることができるようになり、広告配信の幅が広がります。今後Yahoo!JAPANのサービスとの接続やグローバルでのリリースを計画しているとのことなので、引き続き動向に注目していきたいですね。