カスタマーマッチとは?Google 広告で顧客データを活用した広告を配信する方法

カスタマーマッチとは?Google 広告で顧客データを活用した広告を配信する方法
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「顧客から提供された情報を、広告配信にも活用したい」
「既存顧客と似ているユーザーにアプローチしたいけど、良いターゲティングがない」

このようなお悩みがある場合、顧客データを活用して広告配信を行うGoogle 広告の「カスタマーマッチ」がおすすめです。この機能を利用することで商品を購入済みのユーザーに新商品をおすすめしたり、購入者や登録者の属性に似たユーザーへアプローチが可能です。

今回の記事ではカスタマーマッチの仕組み、具体的な設定方法についてご説明します。


カスタマーマッチとは

カスタマーマッチとは、広告主が保持しているメールアドレスや電話番号を活用し、顧客データに基づいたユーザーリストを作成できるGoogle 広告のターゲティング機能のひとつです。

ユーザーリストを作成したあとキャンペーン・広告グループに紐づけを行うことで、既存顧客へ再アプローチしたり、既存顧客の類似ユーザーに広告を配信することができます。逆に既存顧客への広告配信を避けたい場合、ユーザーリストを除外対象にすることも可能です。

カスタマーマッチは検索、ショッピング、ディスプレイ、ファインド、動画キャンペーンで適用することができます。

カスタマーマッチの仕組み、特徴

画像引用元:カスタマーマッチの仕組み - Google 広告 ヘルプ

1と2のステップにあるとおり、顧客データとGoogle アカウントを照合しリストの作成が行われますので、タグを利用して作成できるリストよりもデータが正確で精度が高いのが特徴です。

たとえば、「購入完了ユーザー(サンクスページを訪問)」を一括にターゲットとするのではなく、対象の商品やサービスを長年利用してくれている、いわゆるロイヤルユーザーの方だけを広告配信の対象にするなど、広告主が保持している顧客データをより柔軟に活用できます。

データの機密性や安全性への配慮も

管理画面から顧客データをアップロードすると、SHA256というアルゴリズムでハッシュ化されたコードへと自動で変換が行われます。暗号化前の形式に変換することができない一方向ハッシュ関数によりデータの機密性・安全性が確保されているので、安心して利用できます。

参考:Googleによるカスタマー マッチ データの使用について

カスタマーマッチの利用要件

Google 広告ではアカウントの状態により利用できる機能が異なります。利用要件と活用できる機能について、確認していきましょう。

利用できる機能ポリシーを遵守しながらGoogle 広告を90日間利用した実績があり、ご利用金額が通算5万米ドルを超えているアカウントポリシーを遵守している全てのアカウント
ターゲティング設定
モニタリング設定
カスタマー マッチ向けの類似ユーザー機能○モニタリング設定と除外設定で利用可能
個別の入札単価調整
除外設定

ポリシーを遵守していればモニタリング・除外の機能は利用できますが、ターゲティング設定や個別の入札単価調整を行うためには利用金額の条件があります。施策を提案・実施する前に、条件を満たしているか確認しておきましょう。

顧客データの活用に欠かせないハッシュ化とは?

広告配信に顧客データを活用する際に欠かせない「ハッシュ化」についてご説明します。

ハッシュ化とは、元のデータを不規則な文字列に置換する処理です。代理店に広告運用を依頼している場合、顧客のメールアドレスを直接渡すのは難しいケースが多いですよね。このような場合、事前に広告主側でハッシュ化したメールアドレスを用意しておくことで、安心して顧客データを渡すことができます。

SHA-256という形式であれば、メールアドレスを事前にハッシュ化したうえでリストをアップロードすることが可能です。

〇マクロを活用してメールアドレスをハッシュ化

本記事では、メールアドレスをSHA-256でハッシュ化できるExcelマクロをご紹介させて頂きます。

※マクロの利用は自己責任となるため、ご心配な方は別ツールをご使用下さい

<Excelマクロでメールアドレスをハッシュ化する手順>

①:C列にメールアドレスを貼り付ける

②:変換ボタンをクリック

③:E列にハッシュ化されたメールlアドレスが反映

※注意①:Yahoo!広告ではソルト値を使ってハッシュ化したメールアドレスが利用できなくなったため、(青枠)の部分は空欄のまま変換してください

※注意②:ソルト値を付けた上でハッシュ化する場合は、B16セル(青枠部分)にソルト値を入力してから変換ボタンをクリックしてください。D16セルにて、ソルト値をメールアドレスの前に付与するか後ろに付与するか選択可能です。デフォルトではメールアドレスの後ろにソルト値をつけてハッシュ化します。

カスタマーマッチの設定方法

Google広告では、下記の顧客データを活用することができます。

  • メールアドレス・電話番号・氏名・国名・郵便番号
  • 顧客データを取得しているアプリデータを使用したモバイル デバイス ID (※)
  • タグに追加した識別子「user_id」を元に特定の顧客を内部で関連付ける「ユーザー ID」

※モバイル デバイス ID :モバイル端末を区別するために使用される一意の顧客 IDです。IDFA(Appleを利用しているユーザーの端末に割り当てられるID)またはAAID(Android端末を利用しているユーザーに割り宛てられるID)のいずれかとなります。

実際に管理画面から顧客リストの作成を行う前に、顧客データを含めたデータを用意しておく必要があります。まずはそれぞれのフォーマットを確認していきましょう。

メールアドレス・電話番号・氏名・国名・郵便番号を活用する場合のフォーマット

上図のとおり、1行目・2行目以降で記載内容が異なります。

1行目(赤枠):メールアドレスは「Email」、電話番号は「Phone」のように指定された項目名を記載
2行目以降(青枠):各データを入力。Phone(電話番号)では、日本の国コード(81)を冒頭に追加したうえで「-」が必要。Zip(郵便番号)は「-」なしの入力


参考:顧客データファイルのフォーマットについて - Google 広告 ヘルプ

補足として、メールアドレス・電話番号・氏名・国名・郵便番号全ての情報を入れ込む必要はありません。メールアドレス・電話番号の両方がわかっている場合は(例1)、メールアドレスのみの場合は(例2)のように入力を行うことで、ファイルのアップロードが可能です。

(例1)の電話番号・メールアドレスに加えて、氏名・国名・郵便番号がマッチすれば、その分ターゲティングの精度が上がることが想定されます。

反対にメールアドレスは複数所有しているユーザーが多いため、(例2)のようにメールアドレスのみの場合、精度は下がります。メールアドレス・電話番号両方のデータを所有している場合は、(例1)のように両データをアップロードしたほうが良いです。

モバイル デバイス ID を活用する場合のフォーマット

メールアドレスや電話番号ではサイト外の情報(新規客・常連客か、過去に来店した行動があるかなど)を加味できましたが、モバイル デバイス ID ではアプリ内での行動に関する情報を加味できます。例えばアプリを利用したことがあるユーザーや、アプリ内で特定の行動をとったユーザーを絞ってアプローチが可能です。

参考:モバイル デバイス ID を使用したデータ セグメントについて - Google 広告 ヘルプ

モバイル デバイス ID の情報を収集するためには、Google のアプリ ソフトウェア開発キット(SDK)、分析ツールの Firebase、または、アプリ内での顧客の行動に基づいてイベントを呼び出すサードパーティのアプリ解析ツールの使用が必要ですのでご注意下さい。「モバイル デバイス ID」を選択した場合のフォーマットは下記のとおりです。

1行目:「Mobile Device ID」という文字を記載
2行目以降:実際のモバイル デバイス ID を入力

ユーザーIDを利用する場合のフォーマット

グローバルサイトタグに「user_id」という最上位パラメータを追加することで、特定の顧客を識別することができます。この仕組みを活用することで、「店舗で1万円以上の商品を購入したユーザーのリストを作る」などオフラインの行動も考慮できます。具体的なアップロード方法については、下記Google 広告ヘルプをご参照下さい。

参考:User ID を使って広告を掲載するデータ セグメントについて - Google 広告 ヘルプ

それでは、ここから顧客リストの作成方法についてご説明していきます。

顧客リストの作成方法

①:Google 広告管理画面 [共有ライブラリ] より [オーディエンス マネージャー] をクリック



②:「+」ボタンをクリックし、顧客リストをクリック

③:セグメント名を入力


④:アップロードする顧客データの種類は「メールアドレス、電話番号、住所をアップロード」を選択(モバイル デバイス ID の場合は「モバイル デバイスのIDをアップロード」を選択)

⑤:持っているデータに合わせて「ハッシュ化されていない書式なしテキストデータをアップロードする」または「ハッシュ化データをアップロードする」を選択し、CSVデータをアップロード
※具体的な内容ついてはこのあと「フォーマット」の項目で説明

⑥:Google のカスタマー マッチに関するポリシーを確認して同意
個人情報を取り扱う為、広告主には利用規約も事前に共有した上で同意を行う事や、不明な点があれば、広告主側の法務部門などと連携して導入を進めましょう。

⑦:有効期限は「期限切れなし」か「期限を任意で設定」して選択(※1日~540日の間で設定可能)

⑧:「アップロードして作成」をクリック

キャンペーン・広告グループへ紐づけ

リスト作成が完了したあとは、キャンペーンにオーディエンスリストの紐づけを行います。紐づける方法について確認していきましょう。

①:ツールと設定からオーディエンスマネージャーをクリック

②:該当するリストをクリック

③:赤枠部分をクリックした後、紐づけたいキャンペーンまたは広告グループを選択

キャンペーン・広告グループから除外

キャンペーン・広告グループからオーディエンスリストを除外する方法についてご説明していきます。

①:キャンペーンを選定 

②:オーディエンスをクリック

③:除外設定を編集(キャンペーン、広告グループを選択)

④:該当のリストをチェック

⑤:顧客リストに④のリストが反映されているのを確認 

⑥:保存

カスタマーマッチを利用するときのポイント

カスタマー マッチを活用するためのポイントカスタマー マッチを実装したあと、意識したほうがよい運用ポイントをいくつかご紹介します。

個人情報に十分な配慮を

メールアドレス・電話番号のような顧客データは慎重に管理する必要があります。個人情報に細心の注意を払うためにも、リストの作成(管理画面の権限を付与する必要があります)はクライアントに依頼するのがおすすめです。あるいは広告運用を代行する立場であれば、あらかじめハッシュ化済みのデータを頂くなど、個人情報の取扱いについては十分に注意することが大切ですね。

リストが正しくアップロードできているか

リストに誤りがあると、ファイルをアップロードしたあとエラーがでます。その際はリストのフォーマットが正しいか改めて確認しましょう。ファイルがcsv形式になっているか、見出しがEmail・Phone・First Name・Last Name・Country・Zipのみになっているか、メールアドレスにドメイン名(gmail.comなど)が含まれているかなどダブルチェックするべき点が複数あります。全ての項目については、Googleヘルプの「アップロードに関する問題とリストのサイズ不足のトラブルシューティング」をご参照下さい。

リストのサイズが小さすぎないか


カスタマーマッチを利用した広告配信には、一定数のアクティブ ユーザーが必要です。リストがサイズが小さすぎると、配信ボリュームが十分に出ない可能性があります。安定的に広告を表示するためには、オーディエンスリストは「1,000ユーザー以上」のサイズが推奨されていますので、ターゲットの絞り込み過ぎには注意しましょう。

リストのマッチ率が低くないか

なお、アップロードしたリストのサイズが、実際のデータ数より少ないことがあります。

これはアップロードした顧客リストのうち、Google ユーザーと結びついた割合を示す「マッチ率」が低いことが要因です。マッチ率を把握することで、実際にどれくらいのデータをアップロードする必要があるか逆算することもできますので、下記の方法で確認しておきましょう。

画像引用元:カスタマーマッチのマッチ率について

顧客リストを作成したあと、上図のとおりファイルのアップロード完了ページでマッチ率が確認できます。過去にアップロードしたリストのマッチ率も次の方法で確認できるので、リストが少なかった場合は念のためマッチ率を確認しておきましょう。

①ツールと設定>オーディエンスマネージャーからセグメント名をクリック

②をクリック

Google ヘルプサイトによると、一致キー(メールアドレス・電話番号・郵便番号など)を 2 つアップロードした場合、リストのサイズは平均で 28% 増えるようです。マッチ率を上げたい場合は、一致キーを増やすことも検討したいですね。

リストを定期的に更新しよう


カスタマー マッチを利用してコンバージョン済みのユーザーを配信から除外しているとします。同じリストを何ヶ月も使用し続けた場合、その間にコンバージョンしたユーザーは除外できていません。これを避けるためにも、リストは定期的に更新するようにしましょう。毎日更新できればそれに越したことはありませんが、1ヵ月に1回や月初にリスト更新を行うなど、ビジネスや状況に応じて日程を事前に決めておくのがおすすめです。

参考:カスタマー マッチの問題(リストのアップロード失敗、リストサイズが小さい、ボリューム不足)の解決 - Google 広告 ヘルプ

最後に

個人情報は慎重に管理する必要がありますが、正しく利用すれば精度の高いターゲティング手法の1つになりえます。サードパーティーCookieの制限でターゲティングが難しくなっていくうえで、自社で保有している顧客データを使った配信は今後より重要になっていく可能性があります。

個人情報の管理方法、どの顧客データを活用するか社内ですり合わせたうえで、適切に活用してみてはいかがでしょうか。

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